チャレンジが「三日坊主」にならないようにはどうすればいいのか。心理カウンセラーの矢場田つとむさんは「1日3分、自分が課題に思っていることの解決につながる『ベビーステップ』から始めてほしい。
部屋が汚れているなら、出したままのペン1本を片付けるだけでいい」という――。(第2回/全2回)
※本稿は、矢場田つとむ『すごい自己受容』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■心の充電ができたら、一歩踏み出そう
自己受容で心のエネルギーを充電して、安心感の土台を築いたら、次にやってほしいことがあります。
挑戦行動です。
人生においては、やるべきこと、やりたいこと、たくさんありますよね。行動を起こさないかぎり、停滞していた人生を動かして、前進していくことはできません。
わざわざ「挑戦」行動と言っているのには理由があります。それは、「やらない」という選択もできる中で、あえて「やる」という選択をするからです。
自己受容によって、心のエネルギーを回復させても、そのエネルギーを使わずに何もせずにいたら、引きこもりになってしまいます。そういう人生もありではありますが、宝の持ち腐れとも言えますね。
自分を癒すだけでは、現状維持はできても、望む未来へ進むことはできません。
多くの人はもっと充実した、張りのある人生を望んでいるのではないでしょうか。
挑戦行動と、それに伴う経験によって、あなたの心はどんどん育っていくのです。これはゲームのRPG(冒険しながら敵と戦うジャンル)における、経験値とレベルアップにも似ています。
■刺激的な経験が人生を力強く前進させる
HP(体力)を回復させてばかりでは、成長できません。外に出て、敵と戦うから、経験値が入ってレベルが上がり、「最大HP」や「ちから」「すばやさ」などの能力が上がっていくのです。
そして、どんどん冒険の範囲が広がっていきます。小さな地元の町から、大都会、不思議な洞窟や、高くそびえる塔など……。新しい景色と刺激的な経験が待っています。
それは、あなたの人生も同じです。
心のエネルギーを回復させながら、無理なく行動や経験を積み重ねて、人生を力強く前進させつつ、大きくしなやかな心へと成長させていきましょう。
STEP1の自己受容が、無条件に包み込む「母性愛」だとすれば、STEP2の挑戦を支えるのは「父性愛」です。
母性愛は、「いつでも帰ってきなさい」「あなたは、そのままでいいのよ」と、心の安全基地として、優しく無条件の愛を注いでくれます。一方で父性愛は、「君ならできるよ」「行ってきなさい」と、あなたの可能性を信じて背中を押す力強い愛情です。

この2つの愛情は、車の両輪のようなもので、どちらも心の成長に欠かすことができません。母性愛という「安心感の土台」があるからこそ、私たちは父性愛という「勇気」を受け取り、外の世界へ一歩を踏み出すことができるのです。
■ロケットスタートはしない、「ギア1」から始める
「よし、挑戦するぞ!」と意気込んだものの、三日坊主で終わってしまった……そんな経験は誰にでもありますよね。
これはあなたの意志が弱いからではありません。
人間の脳には「ホメオスタシス」という、変化を嫌い、現状を維持しようとする強力な本能が備わっているからです。脳にとって、大きな変化は「命の危険」と同じです。だから、いきなり「2拠点生活を始めるぞ!」とか「毎日1時間勉強するぞ!」といった大きな目標を掲げると、脳は全力で抵抗し、フリーズしてしまいます。
この脳の抵抗を防ぐ唯一の方法、それが「ベビーステップ」です。
その名の通り、赤ちゃんサイズの一歩のことで、脳が「これくらいなら変化じゃない」と油断するくらい、極限までハードルを下げてスタートするのです。
自転車にたとえてみましょう。
止まっている状態から、いきなり一番重いギアでこぎ出そうとしたら、どうなりますか? ペダルは重いし、ふらついて、すぐに足を着いてしまいますよね。
でも、一番軽い「ギア1」なら、クルクルと回して簡単に進み出せます。
一度スピードに乗ってしまえば、そこからギアを上げていくのは簡単です。
挑戦も同じです。まずは「ギア1」から始めましょう。
■小さな目標をつくって、小さな一歩を踏み出す
自転車で、別のたとえをしてみましょう。
自転車に乗れるようになった過程を思い出してみてください。
歩けるようになった頃に乗り始めたのは、三輪車。その後、小学校に上がるまでは補助輪付きの自転車。小学校に入るとペダルをこぐイメージが膨らみ、両親に自転車の後部を持ってもらって、手が離れた瞬間に1人で自転車に乗ることができる。
いま、あなたの挑戦行動は、三輪車でOKなのです。
少しずつできることをクリアしていけば、自然と目標も少しずつ上がっていく。自分に甘いと思われがちですが、けっしてそんなことはなく、着実に人生に必要なステップを踏んでいるのです。
■ベビーステップの4条件
小さな目標をつくって、小さな一歩を踏み出すことを、これから「ベビーステップ」と呼びます。

ベビーステップの条件は以下の4つです。
●すぐ終わる(苦にならない)

●1人でできる(誰かに頼らなくていい)

●いますぐこの場でできる(準備が必要ない)

●「終わった!」とわかる(完了が一目瞭然)
■1本のペンを戻すだけ、スクワット1回でもいい
たとえば、次のように、ベビーステップを踏み出します。
「部屋を片付けたい」→机の上にあるペンを1本ペン立てに戻す

「運動不足を解消したい」→スクワットを1回だけやる

「資格の勉強をしたい」→参考書のページを開く

「ペン1本を戻したからって、部屋は片付かないじゃないか!」という声が聞こえてきそうですね。おっしゃる通りです。
ただし、ペン1本を片付けるという、偉大なる小さな一歩を踏み出したことには変わりありません。
また、「行動がやる気を連れてくる」という心のメカニズムもあり、もっとやりたい気持ちが湧いてくることも多いのです。
その場合は、ペン1本にとどまらず、その勢いに乗って、机の上を全部片付けてもいいでしょう。ただし、後述するようにあまりやりすぎず、物足りない6割くらいにとどめておくのがおすすめです。
とはいえ、まずは10秒からでいいので、エンジンを点火させるための最小の一歩を踏み出してください。
■3分チャレンジをこなすと幸せホルモンが分泌される
といっても、明確な指針があったほうが「挑戦行動」はしやすいでしょう。
「すぐ終わる」といっても、ちょっと困ってしまうかもしれませんね。
時間の目安を決めましょう。
3分です。
まずは、「3分チャレンジ」から、やってみてください。
たとえば次のようなものが考えられます。
●3分間、何もしない時間を持つ

●3分間、自分の部屋の一角を、片付けるようにする

●3分間、家のまわりをウォーキングする

●3分間、YouTubeを見ながらストレッチをする

●3分間、クッションを抱いて深呼吸をする

●3分間、お客様の会社のニュースをチェックする

●3分間、企画のアイデア出しをする

●3分間、次につくってみたい料理のレシピを探す

●3分間、次の休日に読む本を探す

●3分間、今日のタスクをメモに書き出す

仕事、人間関係、健康、片付けなど……いまあなたが一番気になっていることから、お題を1つ決めましょう。そして、先ほど示したベビーステップの4条件を満たした「3分チャレンジ」を1つ決めてみてください。できれば、紙やスマホのメモに書いておくといいですね。
せっかくですので、本を読む手を止めて、それをやってみましょう!
先ほどの例を参考に、なんでもいいので、「これをやる」と決めて、いまから3分間やってみてください。
ただし、いまの自分に確実にできることにしましょう。外出中、書店にいるなどの理由でできない人は、帰宅して落ち着いたら、やってみてくださいね。
……。
いかがでしたでしょうか?
3分以内の小さなタスクを完了させるだけで、報酬中枢(線条体)で、幸せホルモンの一種、ドーパミンの放出量が増加することがスタンフォード大学による研究で証明されています。何か大きなことを成し遂げる必要はないのです。

この小さな成功体験が「またやりたい!」「もっとやりたい!」という自然な欲求を生み、挑戦行動が勝手に続いていくのです。
■ギアアップは2分刻みで
「3分チャレンジ」をやっていると、だんだん、3分間では物足りなく感じてきます。
段階的に、ギアを上げていきましょう。
最初の「3分チャレンジ」でエンジンに点火できたら、次は「5分チャレンジ」(+2分)、その次は「7分チャレンジ」(+2分)と、少しずつ時間を延ばして加速させていきます。
ギア1:3分チャレンジ → エンジン点火

ギア2:5分チャレンジ → 慣らし運転

ギア3:7分チャレンジ → 少しだけ加速
「2分間しか延ばさないの?」と思ったかもしれません。
そう、時間は一気に増やさず、最大「+2分」まで。
私たちはどうしても、やるからにはなるべくしっかり、完璧にやり遂げたいと思いがちです。しかし、あえて「60%くらいの出来」や「キリのいいところ」で止めるようにしましょう。
というのも、面白いドラマがいいところで終わるのと同じで、脳を「続きが気になる」状態にさせるためです。これにより、翌日の再開、エンジンの再点火が圧倒的にラクになります。
反対に、やっていて「つらい」「難しい」と感じたら、遠慮せずにハードルを下げましょう。
無理にギアを上げず、子どもが自転車の練習で補助輪を付けるように、「いまの自分でも100%できそう」と思えるレベルまで再びハードルを下げてやり直します。
「挑戦行動」は、このようなルールで行いましょう。
急激な変化に対する脳や潜在意識の反発を防ぎ、スムーズに行動を続けながらステップアップすることができるでしょう。
■「できそう!」と「できた!」の繰り返しが自信になる
私は、この記事を読んでいるあなたに、自信をつけてほしいと思っています。
自信とは何かというと、あなたが何か行動を起こし、やり遂げ、成長したときに与えられる、父性愛の「条件付きの愛」のことです。
母性愛の「無条件の愛」は、あなたがどんなにダメでも、包み込むように、それを受け入れてくれました。これは自己受容とイコールで、人生のベースとなるべきものです。
しかし、それだけでは不十分なのです。
あなたの目の前に、なんらかの課題や問題が立ちはだかったとします。
そのとき、あなたの頭の中には「できそう!」か「無理そう……」のどちらかが浮かび上がると思います。そして基本的に「できそう!」は「できた!」とセットです。なぜなら、できそうだと思っている時点で、ハードルの低い課題を選んでいるからです。
反対に「無理そう……」は「できなかった」あるいは「やらなかった」と結びつきます。難しい課題を選んでいるからです。
このうち、「できそう!」だけを選んで、「できそう!」と「できた!」をひたすら繰り返して、確実に自信をつけながら成長していこう……というのが、本書『すごい自己受容』であなたにお伝えしたいことです。
■人生はRPG、最初は弱い敵から倒していく
小さな一歩から始めて、大きく成長していくのは、やはり『ドラゴンクエスト』などゲームのRPGと同じです。
最初は「ひのきのぼう」「こんぼう」などの貧弱な武器で、スライムなどの弱い敵を倒すところから始まります。
そのうち仲間も増えたりして、異国を旅しながら、主人公は少しずつ強くなっていきます。そして終盤では、伝説の武器を手に入れて、ついに物語の核心に近づいていく……というわけです。
一気にラスボス(最後の強敵)を倒せるわけではなく、身の丈に合った弱い敵を倒しながら、そこにジリジリと近づいていくから没入感が増すのです。
「徐々に自分が強くなっていって、できることが増えていきながら自己効力感が増していく」という過程は、まさに私たちの人生そのもの。ゲーム感覚で、いまの自分から少しずつ変わっていけるとしたら、面白いと思いませんか?
RPGと同様に、今日か明日までに大きな成果を得なければなどと、あせる必要はまったくありません。あまり急ぎすぎると、自己受容サイクルが逆回転して、自己否定のサイクルに戻ってしまう可能性があります。
じっくりと、のんびりと、理想の自分に近づいていきましょう。
■自分の顔が嫌いな女性が鏡を見られるようになった方法
最後に、「ベビーステップ」「3分チャレンジ」のエピソードをお伝えしましょう。
「部屋の一角だけ3分間片付けるようにする」
こんなベビーステップを行ってもらったのは、片付けが苦手な40代の女性。
子どもが大きくなってきたので仕事に復帰したのですが、旦那さんが家事を分担してくれず、ワンオペ状態。
忙しいだけでなく、片付けへの苦手意識も夫への不満もあるため、片付けを先延ばしにしがちになり、かなり散らかってから、嫌々片付けをしていたそうです。
最初は「こんなことで、変わるわけない」と半信半疑でしたが、1週間後には「毎日少しずつ片付くのが楽しくなった」と笑顔で報告してくれました。
片付けへのハードルが下がって、やれたという自信もつき、苦手意識もなくなりました。いまでは、もう楽しいくらい。
しかも子どもたちまで真似をして、自分から片付けを始め、つられて旦那さんも手伝ってくれるようになり、家族全体の空気が変わったそうです。
「毎日3分間だけ歩く」
運動不足だった30代男性は、「3分だけ歩く」から始めました。
「今日は天気がいいから、もう少し歩いてみようかな」と、となり町の公園まで足を延ばしてみたり、「ここから家まで、ちょっと走ってみようかな」と、ランニングに発展していったり……。
そして、次第に少しずつ目標がふくらんで、驚いたことに、3年後にフルマラソンを完走しました。
「1日3回、鏡をチラッと見る」
これは3分間ではないですが、こういう目標設定もありです。ちょっと変わったベビーステップですね。
20代前半の女性会社員には、見た目へのコンプレックスがありました。
私から見れば全然かわいらしいと思うのですが、鏡に映る自分を見られなくなってしまっていたのです。
私は「1日3回、鏡をチラッと見る」ことを提案しました。直視はできなくても、少しずつ、鏡に映る自分に慣れてほしかったのです。
そして、「見たくない」という感情を否定せず、静かに「ああ、いま、そう感じているんだね」とそっと胸に抱きしめるように伝えました。
その後、鏡も増やしたりして、その1週間後には、彼女は「自分の顔、こんなだったんだ」と笑っていました。
そのうち、自分の顔を魅力的に見せるおしゃれやメイクを試すようになり、1年後、彼女は「素顔の自分を好きになれた」と報告してくれました。
ほんの小さなベビーステップが、こんな奇跡を起こすのです。

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矢場田 つとむ(やばた・つとむ)

心理カウンセラー

10代半ばから不登校や引きこもり、不安神経症、うつ病等で悩みはじめるが、20代半ばで克服。さまざまな職業を経験したあと、2008年にカウンセラーとして開業。うつ病、不眠症、パニック障害、強迫性障害、社会不安障害、過食症、心身症、対人恐怖といった悩みを抱えたクライアントの心を癒し、成長させるためのサポートを行う。5年間毎月安定して100万円を売上げた経験から、現在はカウンセラー専門の開業・集客コンサルタントとして活動中。

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(心理カウンセラー 矢場田 つとむ)
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