学校に行きたがらない子どもは、どんな思いを抱えているのか。不登校・引きこもり解消支援を行う寝占理絵さんは「不登校児の親に話を聞くと、お母さんがお父さんに不満を抱いているケースは多い。
夫婦仲の悪さから親がストレスを抱えていると、それが子どもに影響してしまう」という――。
※本稿は、寝占理絵『不登校が解消できる 親の「働きかけ方」がわかる本』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■子どもにとって親は一番身近な人生の先輩
大前提として、不登校や引きこもりの子どもは、人生を楽しいものだとは思っていません。大げさではなく、人生に絶望して、生きる自信を失い、追い詰められています。
そんな状態だからこそ、まずは、お母さんやお父さんが人生を楽しんでいる姿を子どもに見せて、「人生は素晴らしい」と態度で伝えてあげてください。
子どもにとって、親は一番身近な人生の先輩です。
実際に職場に不満を持っていたお母さんに転職をすすめて、お母さんがアドバイスどおりに転職した途端に、不登校だった小学校4年生の女の子が学校に通い始めたという例もありました。
ご夫婦の仲がうまくいかずに、親がストレスを抱え、それがそのままお子さんに影響してしまうことも少なくありません。ご夫婦がうまくいっていないと、子どもは不安になり、それが不登校につながることもあります。できれば、夫婦仲はよいに越したことはありません(難しいかもしれませんが)。
■夫が妻に積極的に愛情を伝えることが重要
夫婦の仲が万全ではないけど、決定的に悪くもない。というときには、ぜひお父さんにがんばってもらえたらと思います(本稿をお母さんが読んでくださっているなら、この部分だけでもお父さんに見せていただきたいものです)。

お父さんはお母さんに積極的に「愛」を伝えましょう。スキンシップも大切です。そうすることでお父さんがお母さんの安全基地として機能できれば、お母さんの自己肯定感も上がり、お子さんにも前向きに接することができます。
もちろん、お母さんもお子さんだけでなく、家族みんなに「愛」を伝えていきましょう。
■母が父に不満を持っていると子どもに伝わる
不登校支援の際に、しばしば「お父さんに不満がある」というお母さんに出会います。お父さんに不満があり、お子さんはとても可愛がっている。つまり、家庭のなかでお父さんが孤立している状況です。
お子さんには愛情深く接しているのだから問題ないと感じるかもしれませんが、実は、ここにも不登校の原因が潜んでいたりします。
被災地で支援活動をしていたとき、お父さんへの不満からお母さんの心が不安定になり、中学生の女の子が不登校になったというケースに関わりました。
これは、そんなお母さんからの報告です。
「アドバイスされた言葉がけを子どもにしたら、子どもの表情がどんどん変わってきて、楽しくなりました。だから、ためしにお父さんにも同じように接してみたら、お父さんまで変わってきて、夫婦の会話が戻り、夫婦仲もよくなり、子どもが学校に行くようになりました」
そう、お父さんだって大変なんです。
遅くまで家族のために働いたり、職場で気を遣ったり。お父さんが遅く帰ったときに、ぶすっとした態度を取ったり愚痴を言ったりしたら、お父さんは余計追い詰められます。それでいい結果につながるわけがありません。
だから、お母さんはお父さんに労いの言葉や優しい言葉をかけてあげてくださいね。
■妻の心は夫への不満でいっぱいだが…
私のセミナーや直接ご支援をさせていただく場合には、必ずご家族でいらしていただきます。ほとんどの場合、お母さんがお父さんに不満を持っています。
「子どもが不登校でこんなに大変。私も毎日が不安。夫には早く帰ってきてほしいのに毎日遅く帰ってくる」
お母さんはお父さんにぐちぐちモード全開です。
家族面談では、お母さん、お父さん、最後にご夫婦で……と、別々にお話をうかがいます。その際に感じるのは、お父さんは、お母さんの不安をなんとかしてあげたいと心から思っているということ。面談のときにお父さんからお母さんへの愛を感じます。

ご夫婦は、もともと「愛」があって結婚したはずです。愛着障害を持っている人は、ちゃんと愛されているのに、それを感じることができにくいんです。
だけど、本当はあなたは愛されています。あなた自身が「愛」を伝えることで、「愛」を感じることができるようになるかもしれません。
相手に求めるだけでなく、自分から愛を伝えましょう。自分から愛を伝えることで、きっと素敵な家族になれるでしょう。是非試してみてください。
■趣味や仕事を辞めて子どもと向き合うべきか
もう一つ、お子さんが不登校になったしまったときの親の生活についても注意点があります。それは、「なるべくハッピーに過ごしてください」ということ。
子どもが不登校になると、自分だけ楽しんではいけないと、好きだったことすべてを封印し、大好きだった趣味までやめるお母さんもいます。
でも、これは自分を追い詰めることにつながってしまい、逆効果です。お子さんが不登校のときこそ、好きなことを我慢するのではなく、ご家族が「ハッピーに過ごす」ことを心がけてください。

趣味だけでなく、お仕事も同様です。いまのお仕事が、あなたの好きな仕事ならば、仕事をやめる必要はありません。お子さんが家にいて心配でしょうけど、ある程度の年齢なら留守番もできます。
「仕事に行くよ。留守番よろしくね」と伝えて、いつも通り仕事をしてください。
だけど、もしも好きな仕事でなかったら、これは転職のチャンスかもしれません。実際に、お母さんが転職した途端に、子どもが学校に行き始めたという例もありました。前述した通り、お母さんと子どもの心の状態はシンクロするんです。
■自分のやりたいことがわからない母親たち
仕事が好きだから続ける、嫌いだからやめる、と判断できる人はまだ幸せです。
不登校のお子さんを持つお母さんのなかには、「自分が何をやりたいのかわからないんです」と答える方も少なくありません。
いつも他人のこと、家族のことなどを気にかけ、自分を抑えて、誰かのために一生懸命生きてきた結果、自分のことが見えなくなったのでしょう。さらに、愛着障害を抱えている人は、子どものころに親にほめてもらえず、何かを始めても、逆に親に否定されがちな環境で育った人が多いことも相まって、「自分の気持ちがわからない」という方も多いと感じています。

そんな方は、まず自分の「好き」を見つけるために、いろんなことにチャレンジしてみましょう。たとえば、次のようなことをおすすめしています。
【映画を観る】
ホラーなど気持ちが暗くなるような映画ではなく、明るい気持ちになれたり、癒されるような映画を選びましょう。映画館に行かなくても、ご自宅でDVDやネットで観られるもので十分です。いい映画は気持ちを前向きにしてくれます。
【アート活動やものづくりをしてみる】
美術館でのんびり過ごしたり、アート活動ができるワークショップや教室に参加してみたり。続けて行かなくても1回限りのワークショップなどもあるので、気軽に参加してみましょう。
■週に一度は自分の時間を持つ
要は、自分の心を好きなことや癒しによって整えるのです。
週に一度は自分の時間を持ちましょう。理想は1日1時間程度の自分の時間を持つことです。
「忙しすぎて無理です!」という声が聞こえてきそうですが、忙しすぎて自分を見失いそうなときほど、自分の時間を持つことは必要です。
このままお子さんが一生引きこもりでいいとは思えませんよね? それにこのメソッドを実践すれば、不登校も引きこもりも一生続くことはありません。

ですから、「お母さんが自分の時間を持つため」と「お子さんと向き合う時間を確保するため」に、職場に事情を話し、1カ月くらい、就労時間の調整をつけてもらうのもいいと思います。

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寝占 理絵(ねじめ・りえ)

NPO法人マザーリンク・ジャパン代表

青山学院大学卒業。1996年、不登校の子どもと親のためのWebサイトの企画を担当したことをきっかけに発達心理学を学び、10年以上運営に携わる。その後独立しWeb制作プロダクションの経営を経て、東日本大震災を機に2011年にNPO法人マザーリンク・ジャパンを設立。2016年より不登校・引きこもり解消支援を始める。

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(NPO法人マザーリンク・ジャパン代表 寝占 理絵)
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