良好な親子関係を築くためには何が必要なのか。不登校・引きこもり解消支援を行う寝占理絵さんは「甘やかしと愛情を履き違えると、子どもはわがままになってしまう。
たとえば大人同士の会話に子どもが割り込んだとき、話を中断して向き合うのはその子のためにならない」という――。
※本稿は、寝占理絵『不登校が解消できる 親の「働きかけ方」がわかる本』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■不登校の子どもの家庭によくある共通点
以下は、不登校の子どもの家庭によくある共通点です。
「よくある共通点」なので必ずというわけではありません。いずれかに当てはまる場合が多いということです。チェックし、家庭の状況を確認しましょう。
□ いつも子どもを尊重している

□ 親が子どもの顔色を見すぎて、ダメなものをダメと言えない

□ 親が子どもの顔色を見すぎて、気を遣いすぎる

□ あれこれ厳しく言いすぎる

□ 過保護・過干渉で、あれこれ細かく口を出しすぎる

□ 親が子どもをほめていない

□ お手伝いをさせていない

□ 家族で一緒に食事をしていない

□ お母さんの自己肯定感が低い

□ 子どもが外に出られずかわいそうなので、「○○買って来て」に親が応える

□ ついお母さんがぐちぐち言ってしまう

□ 子どもの話を最後まで聴くことができない
■子ども自身にもよくある共通点が存在する
不登校の子どもによくある共通点というものもあります。
こちらも「よくある共通点」なので、必ずというわけではありません。いずれかに当てはまることが多いということです。
□ 1歳未満で保育園や祖母などに預けられていた

□ 比較的成績がよかった

□ 不登校になる以前は、いわゆる「いい子」だった

□ いまは「わがまま」である

□ 自己肯定感が低く、自分に自信がない

□ 自分に自信があったのに、何かの原因でなくなった

□ 不登校になってから、昼夜逆転している

□ 不登校になってから、夜中までデジタル機器をいじっている
これを見ると混乱しませんか? だって、家庭の共通点の「いつも子どもを尊重している」と「あれこれ厳しく言いすぎる」は一見、対極ですよね。
不登校の子どもの共通点の「いい子だった」と「わがまま」も対極です。
要は、子育ては「バランス」と「いつの時点で何をどのように育てるか?」の順番が大切だということです。

■「愛情」と「甘やかし」の違いとは何か
愛情と甘やかし。この違いは難しいですね。子どもの成長の機会を奪うものは「甘やかし」、子どもの成長を助けるのが「愛情」と考えれば、わかりやすいかもしれません。
次に挙げるものは「甘やかし」です。
・子どもがほしがるものを「なんでも」買ってあげる

・「いつでも」子どもの言いなりになる

・子どもができることでも「なんでも」やってあげる

・「いつも」子どもを叱れない

・「いつも」子どもを尊重する
一方で、こちらは「愛情」です。
・子どもに言葉や態度、スキンシップなどで愛情を伝える

・子どもをほめたり、励ましたりする

・子どもの話を聴いて共感し、受け止める

・子どもがどんな状況であれ、受け止めて、愛情を示す/信じて見守る

・社会のルールやマナーを教える/人生の楽しさを教える

・あれこれ口を出さずに失敗も見守る
子どもは年齢に関係なく、親が自分の要求を受け入れてくれるかどうかで愛情を測ろうとします。
しかし、生存や安全に関わる欲求に応えることは「甘やかし」にはなりません。赤ちゃんが何かを求めて泣くことに応えるのは愛情です。お母さんが「安全基地」の役割を果たし、健全な愛着関係を築くことができ、親子の絆が深まります。
■なんでもしてあげるのは甘やかし
もう少し大きくなった子どもも、親が自分の要求を受け入れてくれるかどうかで愛情を測ろうとします。それに対し、「いつも子どもの言いなりになる」「何でもやってあげる」「なんでも買ってあげる」のは明確な「甘やかし」で、わがままな子どもになってしまいます。
学校や社会では、「なんでも自分の思い通りになる」なんてことはありません。
子どもの成長のために、「我慢を教える」「できるように励まして、自分でやらせる」ことこそ「愛情」なのです。
愛情と甘やかしを混同しないように。かわいがるべきときはかわいがる、叱るときは叱るというように、メリハリをつけましょう。
「愛情と甘やかしの区別がつけづらい」という方は、お子さんに接する際に、次のポイントを意識するようにしてください。
《正しい親子関係を築く7つのポイント》

ポイント1:子どもの顔色を見ない

ポイント2:子どもと議論しない

ポイント3:子どもを尊重しすぎない

ポイント4:家庭のボスは親、子どもの奴隷にならない

ポイント5:好ましくない振る舞いは、見なかったことにする

ポイント6:毅然とした態度で、親の本気度を伝える

ポイント7:過保護・過干渉はやめる
ここでは上の3つを解説します。
■親のおどおどした態度が余計に不安を煽る
○ポイント1:子どもの顔色を見ない
不登校になると、どの親も子どもの顔色を見るようになり、腫れ物に触るように接するようになります。
しかし、それでは逆効果。不登校になったからといって、子どもの顔色を見て態度を変えるのではなく、いつもと同じ態度で何事もなかったようにデンとかまえてください。そうすることで子どもの不安は軽減されます。
また、暴力が出ていたりすると、それが怖くて子どもに気を遣うようになる方もいらっしゃいますが、それは逆効果です。
子どもは親のおどおどした態度で余計に不安になったり、腹が立ったりするものです。子どもがどんな状況であっても、慌てず、騒がず、冷静に、何事もなかったようにデンとかまえて、明るい態度を心がけてください。

■議論で子どもをねじ伏せても意味がない
○ポイント2:子どもと議論しない
なぜ議論しないのか?
子どもをうまく納得させられるのであれば、話をしてもかまいません。しかし、話をしてバトルになってしまうのは最悪です。よほど、コミュニケーション能力の高い人でない限り、子どもを納得させることはできないでしょう。
納得と説得は違います。納得は子ども自身の意思がそこにあり、主語は子どもです。「子ども自身が納得する」ものです。
説得はあなたが主語。そこに子どもの意思はなく、子どもは従ったとしても「しかたなく」ということになり、押しつけられる感じがします。
最悪の状況を避けるためにも、「議論は避ける」が得策です。
さらに、上から押さえつける態度で子どもと向きあうこともやってはダメです。不登校の子どもは「親への信頼」がなくなっています。その状態で上から押さえつけるような態度を取ったら、ますます親を信頼することができません。

「どうせ親は自分のことをわかってくれない。話も聴こうとしない」という思いをより強くする、という結果にしかなりません。
また、議論すると、ついついお互いに暴言を吐いたりしがちです。暴言を吐いてしまうようであれば、議論を避けるほうが「マシ」ということです。
議論することで、ますます親子関係が悪くなるようなことは避けましょう。
■「あなたが決めていいよ」は要注意
○ポイント3:子どもを尊重しすぎない
「あなたはどうしたいの?」「あなたが好きなようにしていいのよ」「あなたが決めていいのよ」
いまどき、そんなふうに、いつも子どもを尊重しているお母さんは多いと思います。だけど、実はこれは要注意!
もしも、あなたが会社の上司に「君の好きなようにしていいんだよ。すべて君が決めて動いていいから」と言われたら、どう感じますか? ほとんどの人が不安になるはずです。
子どもも同じです。
子どもの世界はとても狭いです。まだまだ知識も少なく、判断力も育っていないなかで、「あなたが決めていいのよ」と言われても、不安になるだけです。
■「自分が一番尊重されて当たり前」にしない
また、よくあるシチュエーションだと思いますが、大人同士で話している最中に子どもがお母さんに話しかけてきたとき、かなり多くのお母さんが話を中断して子どもに向きあって、子どもの話を聴き始めます。

これ、正しいと思いますか? 絶対にNGです。
まず、人が話しているところに割って入るのはマナー違反ですよね。相手に対しても失礼な態度です。
「いつも子どもを尊重したいので、子どもに話しかけられたら全力で話を聴いています」というお母さん、きっと多いと思います。そのようにすすめる育児書も多いですよね。だけど、これでは、わがままで、いつも自分が一番尊重されて当たり前の子どもに育ちます。
家庭で尊重されすぎた子どもが、学校や外のコミュニティで、「他人が自分の話を聴いてくれない」という体験をすると、それだけで傷ついて、自信のない子どものできあがりです。
そんな子どもにしたくなければ、親は子どもを尊重しすぎずに、「我慢すべきときは我慢させる」「他人を尊重する」「家のなかでもマナーを教える」ことが必要です。

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寝占 理絵(ねじめ・りえ)

NPO法人マザーリンク・ジャパン代表

青山学院大学卒業。1996年、不登校の子どもと親のためのWebサイトの企画を担当したことをきっかけに発達心理学を学び、10年以上運営に携わる。その後独立しWeb制作プロダクションの経営を経て、東日本大震災を機に2011年にNPO法人マザーリンク・ジャパンを設立。2016年より不登校・引きこもり解消支援を始める。


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(NPO法人マザーリンク・ジャパン代表 寝占 理絵)
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