「人見知り」は、どんなときに発動するのか。起業家で作家の豊留菜瑞さんは「人見知りは性格ではなく、自分を守るためにつける“仮面”。
脳の中にある『扁桃体』という部位が、『この状況、危ないかもしれない』と危険信号を出すことがきっかけで発動する」という――。(第1回/全3回)
※本稿は、豊留菜瑞『人見知りの仮面』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
■扁桃体が「危険」を判断して暴走
心理学や脳科学の研究を調べていくうちに、ある重要な発見にたどり着きました。
「人見知りの仮面」は、脳の中にある特定の部位が「危険だ!」と判断した瞬間に発動していたのです。
初対面で緊張する時

言葉が出なくなる時

頭の中が真っ白になる時

これらは性格ではなく、脳の中にある「扁桃体」という部位が、次のように叫んでいる状態です。
「この状況、危ないかもしれない!」
扁桃体は本来、敵や猛獣から身を守るために発達しました。
でも現代の生活では、そうした命に関わる危険に遭遇することは稀です。
代わりに扁桃体は、相手の鋭い視線に遭遇した時や、認めて欲しい人が目の前に現れた時、もしくは話す順番が近づいてくる時間に、危険信号を発信します。
“変な人だと思われるかも”という予感、つまり、「人からどう見られるか」という社会的な危険を“命の危険”レベルで処理してしまう装置なのです。
やはり、初対面で固まってしまうのは、弱いからではなく、“脳があなたを全力で守っている証拠”だったのです。
■相手を“巨人”と錯覚してしまう
扁桃体が危険信号を発信し出すと、次に働くのが「自意識」というレンズです。
私は長い間、このレンズの存在を知りませんでした。

でも振り返ってみると、当時の私はこんなふうに世界を見ていました。
今の返し、変じゃなかったかな?

この話、つまらなくないだろうか?

相手は、退屈していないかな?

今、笑われた? 気のせい?

これ、全部、心のカメラが自分にばかり向き、自意識のレンズにより映ったものが屈折している状態なのです。
「自意識」が強くなりすぎると、相手の表情が“評価”に見え、相手の沈黙が“否定”に聞こえます。
すると、知らず知らずのうちに、相手を“巨人”と錯覚し、自分が“とても小さい存在”に感じられてしまう。
これは臆病さではなく、「自分を守るためのレンズの過剰反応」です。
そう、つまり幻想だということです。
■たった一度の傷が、未来の自分を縛りつける
「人見知り」で悩んでいる方たちと話していると、ほぼ全員に共通することがあります。
それは、必ずと言っていいほど「過去の痛い記憶」を持っているということ。
初めてのプレゼンで固まってしまった。

自己紹介で噛んで笑われた。

誤解されて嫌われた。

教室で発言したら白けた。


そんな経験が、私にもありました。
実は、そのたった一度の経験を、脳は“危険”と学習します。
すると次の同じ状況で脳はこう判断します。
「あの痛みをもう一度味わうわけにはいかない!」
この“学習された警戒心”こそが、「人見知りの仮面」をぶ厚くしていきます。
つまり、緊張してしまうのは、あなたの臆病さが原因ではなく、現在のあなたを守ろうとする過去のあなたの必死の努力なのです。
■感受性の強さが起こした誤作動
HSP(Highly Sensitive Person)の研究では、繊細な人ほど人間関係の“温度変化”をよく感じ取れることが示されています。
相手が少し黙った瞬間、「つまらないと思われたかも」と感じ取ってしまう。
相手の表情がわずかに曇った瞬間、「何か失礼なことを言ったかも」と察してしまう。
この繊細なセンサーにより、扁桃体が「危険かもしれない」という信号を送り続け、人見知りの仮面を作動させてしまう。
感受性が強いからこそ、人見知りの仮面が生まれやすいのです。
でも、この繊細さは、使い方を変えれば強力な武器になります。
人見知りの人が持つ繊細さとは、具体的にはこんな力です。

・相手の本音を察知する力:表情のわずかな変化や、声のトーンの揺れから、「この人、今、何か悩んでいるな」と気づける。

・言葉を慎重に選ぶ力:「この言い方は相手を傷つけるかもしれない」と考えられるからこそ、丁寧で誠実な言葉を紡げる。

・場の空気を整える力:誰かが気まずそうにしていると気づいた時、さりげなく話題を変えたり、フォローできたりする。

これらはすべて、「相手の気持ちを深く感じ取る力」から生まれています。
つまり、あなたは弱いのではありません。やさしすぎて、相手の気持ちを感じ取りすぎるため、慎重になっているだけ。
人見知りとは「直すべき欠点」ではなく、「感受性の強さ」という才能が、一時的に誤作動を起こしている状態なのです。
この構図を知ると、人見知りの見え方が全く変わってきませんか?
■緊張する会話は脳のエネルギーを消費する
緊張する相手との会話の場って、相手の表情を読んだり、会話を組み立てたり、自分の感情を抑えたり、失敗しないように注意したり、脳にとってはトライアスロンをしているような状態です。
ですからこの時、脳はエネルギーを大量に使います。
そのことをもう少し脳科学の観点から見ていきます。
実は、脳は身体の中で最もエネルギーを消費する臓器です。
体重のたった2%しかないのに、全身のエネルギーの約20%を消費します。

特に、人見知りが発動している場面では、
・相手の表情から感情を読み取る

・適切な言葉を瞬時に選ぶ

・失礼にならないか常に評価する

・自分の感情を抑え込む

・会話の流れを予測し続ける

といった高負荷な作業を全部同時進行しています。
■人見知りは「脳の節約モード」
ですから、このモードが続くと、脳は急速にバッテリーを消耗していきます。
そして、ある時点で脳はこう判断するのです。
「このままだとエネルギー切れで危険! 黙っておくほうが省エネで安全だ」
スマートフォンのバッテリーが20%を切ったら、省電力モードに切り替わるのと同じです。脳も、エネルギー残量が減ると、自動的に「省エネモード」に入るわけです。
人見知りで言葉が出なくなるのは、あなたが怠けているわけでも、逃げているわけでもありません。
脳が、生存のために下した合理的な判断なのです。
「話せない」のではなく、脳が「話さないほうが安全だ」と自動判断しているだけ。
この仕組みを知ると、自分を責める必要がないことがわかります。

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豊留 菜瑞(とよどめ・なつみ)

インフルエンサー

1989年生まれ。年間240冊の書籍を読破する、ビジネス書の探究者。読書アカウント集団・BUNDANを運営。
代表を務める。読書を通して得た「働き方」や「生き方」の知恵を自身の人生で実践し、複数のフットケアサロンを起業・経営。著書に『忙しさ幻想』(サンマーク出版)がある。

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(インフルエンサー 豊留 菜瑞)
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