■第1志望校に進学できる子は全体の約3割
2026年の中学受験が終了した。晴れて第1志望校に進学することになった子、惜しくも第2、第3志望だった学校に進学することになった子、まったく予想外の学校へ進学することになった子などさまざまだろう。中学受験の成功を「第1志望校に合格すること」と捉えるのであれば、第1志望校以外の学校へ進学することになったのは、残念な結果かもしれない。
しかし、私はそうは思わない。なぜなら、中学受験の挑戦においては、「合格」という分かりやすい結果よりも、それまで「どのように勉強をしてきたか」という過程のほうが遙かに重要だと思っているからだ。
中学受験は、その子の長い人生から見れば、1つの通過点に過ぎない。難関校に合格したからといって、その子の幸せが保証されるわけではないし、第2、第3、またはそれ以降の学校に進学することになっても、悲観することはまったくない。実際、中学受験で第1志望校に進学できる子は、全体の約3割と言われている。大事なのは、これまでの親のサポートから離れて、自分の力で学ぶ力をつけていく「これから」だ。
■「誰が励ますか」がポイント
そうはいっても、目標に掲げていた学校が不合格だったという現実には、どんな子でもショックを受ける。ここで大事になってくるのが「誰が励ますか」だ。
そういう事態を予測して、ぜひやっていただきたいのが、「誰が励ますか」の人選だ。最もふさわしいのは、子供が心から信頼している人。例えば、塾の先生であったり、家庭教師であったり、これまで中学受験をサポートしてきた大人の中で、「この人の言うことなら、素直に耳を傾けられる」という人に、お願いするといいだろう。
そのとき、次の2つのことを伝えてもらうようにする。1つは、その人(例えば先生)から見た、これまでのわが子の頑張りを伝えてもらう。これは誰にでも当てはまりそうなありきたりのことではなく、その子ならではの頑張りにスポットを当てることが大切だ。もう1つは、「今後が大事」であることを伝えてもらう。これも一般論ではなく、具体的に何をすればよいか教えてあげるといい。
■教科書ワークで1日1時間「数学・英語」を予習
どんな結果であれ、中学受験が終わると、子供は開放的な気分になる。これまで我慢していたゲームがやりたければ、まずは思いっきりやらせてあげてほしい。
入学前にぜひやってほしいのが、これから中学の授業で学習する教科の予習だ。「えっ? 受験が終わったばかりなのに、春休み前からまた勉強しなければいけないの?」と思うかもしれないが、ここでやっておくのとまったくやらないのとでは、その先で大きな差がつく。
ただ、これまでのようなハードな勉強はしなくていい。やっておきたいのは、中学からスタートする数学と、本格的な勉強が始まる英語の2教科のみ。この2教科だけ、「教科書ワーク」などを使って中1の半分まで進めておく。「まだ習っていないのに半分も進められない」と思うかもしれないが、中学受験をした子にとっては非常に易しい内容なので、自分の力でどんどん進められるだろう。受験勉強のように毎日何時間も勉強する必要はない。2教科合わせて1日1時間やれば十分だ。
ここで最も大事なのは、中学受験で培ってきた学習習慣をなくさないことだ。
■最初の中間テストでは「平均以上」を目標にする
入学前の予習は、入学後、必ずアドバンテージになる。
一番良くないのは、自分の学力より下の学校に入学したと思い込み、手を抜くことだ。そういう子は、中1の夏まではこれまでの貯金で上位にいられるが、2学期以降あれよあれよと学力が急降下するだろう。一方、入学前からコツコツ勉強を続けてきた子は、必ず学力が上がっていく。『ウサギとカメ』のイメージだ。
ただ、1つ気をつけなければならないことがある。それは、中学受験の勉強と中学の勉強はまったく違うということだ。中学受験の勉強は合格点、すなわち6割強を目指す勉強だったが、中学の勉強は100点を目指す勉強に変わる。つまり、緻密さが重要になってくるということだ。その切り替えができず、毎日の学習習慣はついているのに、テストで平均点が超えられないという子がいる。
■入った学校を「いい学校」にする
成績はその子の学校生活に大きな影響を与える。勉強に自信がある子は、「自分は頑張ればできる子」と肯定的に捉えることができ、部活動や学校行事にも積極的に取り組むようになる。そこで多くの友達ができ、視野が広がり、ますます楽しい学校生活を送れるようになるという好循環を生む。
中学受験直後は、「第1志望校に合格できたかできなかったか」に気持ちが向きがちだが、その学校がいい学校かどうかは、実際に入ってみなければ分からない。入学時は「1番の学校」ではなくても、その中に入って勉強ができて、友達ができて馴染んでいけば、その子にとってその学校が「1番の学校」に変わっていく。そして、その姿を見て、親にとっても「良い学校」に変わっていく。
■親が第1志望校に執着するのはNG
私はいつも受験半年後に、教え子の家に連絡をして、学校の様子を聞いている。すると、ほとんどの家庭から「本当にいい学校に行けて良かった」という声が返ってくる。この言葉を聞くたびに、中学受験の良さを実感する、しかしごく稀に、うまくいっていない子もいる。そういう場合は大抵、親が第1志望校に執着し過ぎている。それは親子にとって不幸だと思う。
冒頭で、第1志望校に合格できなかったときに「誰が励ますか」について述べたが、親にぜひともお願いしたいのは、どこの学校に行くことになっても、受験した学校である限り、その学校の良さを感じたはずだから、「いい学校に決まって良かったね! お父さんもお母さんも嬉しいよ」と伝えてあげてほしい。その一言があるかないかで、この先の中学生活が大きく変わることを知っておいてほしい。
学ぶ楽しさを本当に実感できるようになるのは、「これから」なのだから。
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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。新著『受験で勝てる子の育て方』(日経BP)。
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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康 構成=石渡真由美)

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