※本稿は、宮島賢也『自分の「うつ」を治した精神科医の方法』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
■「精神科医=心の専門家」ではない
一般の人は、精神科医のことを「心の専門家」と思っているでしょうが、それは大いなる誤解です。僕はこのことを、「心の専門家幻想」と呼んでいます。
なかには「精神科医は医者ではなくカウンセリングのプロだ」と思っている人もいるようですが、それもまったくの認識違いです。病院には「臨床心理士」がいて、医者の指示で、カウンセリングをおこないます。つまり、精神科の医師がカウンセリングをおこなうわけではありません。
一般的には、精神科医は、患者さんから症状を聞き取り、標準的な診断基準にあてはめて診断をして、病気に応じて投薬をします。このように分業体制になっています。医師は、患者さんの症状に加え、仕事や家族関係についてまで聞くこともあります。しかし、うつの原因となっている考え方や人間関係にまでは踏み込みません。
精神科の病気は、症状によって診断します。症状が該当すれば、「うつ病」「統合失調症」などと診断します。
いっぽうで、精神科では、脳生理学に準拠して、うつ病や統合失調症は、脳の機能不全によって起こると考えています。
■うつの原因とされる脳内物質
「心の変化は脳の変化」という考え方に立っています。脳には、感情や感覚にかかわる神経があります。
大まかにいうと、図表1のように、「興奮系の神経細胞」「抑制系の神経細胞」「調整系の神経細胞」の3つがあります。これら3つの神経細胞のバランスによって、心はさまざまな状態になります。
それぞれの神経細胞からは、固有の神経伝達物質が、分泌されます。「興奮系の神経細胞」からは、ノルアドレナリン、ドーパミン、アセチルコリン、グルタミン酸などが分泌されます。
これらがバランスよく分泌されると、気分がよいし、しかも適度な緊張感が保てます。この状態では、元気もあるし、やる気もあります。いっぽう、これらの物質が不足すると、元気も覇気も失われ、気分が沈滞します。
「抑制系の神経細胞」からは、ギャバ(GABA、γ-アミノ酪酸)などの神経伝達物質が分泌されます。ギャバは、脳が興奮したさいに歯止めをかけます。
「調整系の神経細胞」から分泌される神経伝達物質がセロトニンです。セロトニンの働きは特異的で、元気を出すいっぽうで、興奮し過ぎるとそれを鎮める働きがあります。そして「セロトニンの不足はうつをもたらす」といわれています。
■アメリカ精神医学会の診断基準
心や感情が安定している状態では、それぞれの神経細胞からそれぞれの神経伝達物質が、よく分泌されています。
ところが、これらのバランスが崩れると、心や感情、情動に変化が起こります。そして、こんな症状が現れます。「やたらと怒りっぽくなる」「イライラする」「覇気ややる気がなくなる」「悲しみに沈む」「不安にとりつかれる」などです。
うつ病の治療薬は、これら脳内物質の生理学に立って開発されたもので、神経伝達物質のバランスを整えるのを目的にしています。精神科では「セロトニンの異常がうつを引き起こす」との仮説に立ちますが、それはあくまで仮説。
僕は、セロトニンの異常もストレスの結果ではないかと考えます。
「意欲が湧かない」「食べられない」「眠れない」「体重が減少してきた」「焦る」「集中力がなくなった」「性欲が湧かない」「死にたい」のうち、5つぐらいが該当すれば「うつ病」と診断されます。
もしもあなたが「うつ病と診断されたい」と思うなら、この基準に当てはまる症状を精神科医に伝えてみると、多くの医師が「うつ病」との診断を下してくれるでしょう。
■原因不明でも薬が出る
しかし、なぜ「うつ病」と診断されたいと思ったのでしょうか。そのことを、もう一度考えてみてほしいのです。ここが「うつ病」を克服するうえでの大きなポイントになると僕は考えます。
精神科を訪れた人は、自分のしたいことができていない状態にあり、医師や周囲の人の助けを必要としていたのではないでしょうか。あるいは、“病気”という理由がほしかったのではないでしょうか。
いずれにしても、精神科を受診すれば、なんらかの病名がつき、薬が処方されます。患者さんは、ずっと薬を飲みつづける治療を希望して病院を訪れたのでしょうか。
そうではないでしょう。健康を回復したくて医師を頼ったのに、医師はブラックボックスのなかにある病気の原因を探すことなく、薬を処方するのです。
精神科医が「心の専門家」であると思っていると、医師も患者さんも互いに不幸です。
■薬はうつの根本を治せない
「抗うつ薬」は、脳の神経伝達物質のバランスを整えて、うつを改善させるのを目的にしています。
この薬には、いろいろな種類があります。代表的なものに、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」があります。脳内のセロトニンを増やすのが目的です。このほかにも、ノルアドレナリンを調整する薬もありますが、現在の主流はセロトニンに作用する薬です。
うつの原因として、先に述べた「セロトニン仮説」がまことしやかに喧伝されるからですが、仮説にすぎません。
患者さんのなかには、抗うつ薬を服用して、症状が改善し、再発しない人もいます。しかし、そういう患者さんは、うつになったのをきっかけに、人間関係や生き方に関しての考え方を変えています。
再発の予防には、むしろ、そのことが功を奏していると考えられます。脳内の神経伝達物質に関しては、「それらのバランスが崩れると、うつになる」といわれています。
現在多いのは、人間関係や考え方が原因でうつになった人たちであること。そのことからも、薬ではうつは治せません。抗うつ薬を服用することで一時的に症状を抑えることはできても、抗うつ薬を使うのは対症療法であり、根本的な治療ではありません。
■苦しみを麻痺させるだけ
一般に、抗うつ薬には副作用があります。というより「副作用がない抗うつ薬はない」といってよいでしょう。
たとえば「SSRI(「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」)では以下のような副作用が報告されています。
・不眠・不安・焦燥感
・易刺激性(音、接触など、刺激に過敏になった状態)
・衝動性の亢進(衝動的に行動し、抑えがきかない)
・躁状態
・自傷、自殺の念慮の高まり
などです。こうした副作用の面からも僕は、抗うつ薬の使用を勧めません。
しかし、それ以上に、抗うつ薬をお勧めしない理由は、根本の原因を隠し、症状を消してしまうことです。本来、うつ状態とは、ストレスを受けていることを教えてくれる体からの愛のメッセージなのです。
というより、「これ以上無理をしつづけてはいけない」と、体が発する“警告”だと考えています。
抗うつ薬にもいろいろな種類がありますが、いずれも、落ち込んでいる気分を「麻痺させる」ものといえます。表面的には、落ち込んでいた気分が回復します。
■薬が増える悪循環
人によっては、気分が高揚し、テンションが高くなります。高揚し過ぎて、暴力的になることもあります。
しかしそれは、鳴っている警報装置のスイッチをムリヤリ止めたことになるのです。たとえば、家庭の警報装置がけたたましく鳴ったとしましょう。「うるさい!」と、スイッチを切ってしまうでしょうか。もしも火災なら、消火しませんか。
薬を服用してうつの症状を抑えるのは、警報装置を切っただけで、火災を見て見ぬふりをしているのと同じことなのです。薬を飲みつづけることは、警報装置をオフにしっぱなしにしているということです。症状を消すことはできますが、うつの根本原因は解決されていません。
自分を苦しめる考え方をつづけていたり、厳しい人間関係のなかに居つづけたりすると、警報装置がさらに、大きく鳴り始めます。それを薬で抑える医師は、さらに薬を増やして、警報装置である症状を消そうとします。
これでは、根本的治癒からますます遠のいていくことは明らかです。このときこそ、人間関係や考え方を見直す「チャンス」です。
抗うつ薬の服用は、その機会を逃すことになり、もったいないことなのです。
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宮島 賢也(みやじま・けんや)
精神科医・産業医
1973年、神奈川県生まれ。防衛医科大学校卒業。研修中、意欲がわかず精神科を受診、うつ病の診断を受ける。自身が7年間抗うつ剤を服用した経験から、「薬でうつは治らない」と気づき、食生活と考え方、生き方を変え、うつ病を克服する。その経験を踏まえ、患者が自ら悩みに気づき、それを解決する手伝いをする方向へと転換。うつの予防と改善へ導き、人間関係を楽にする「メンタルセラピー」を考案する。著書に『メンタルは食事が9割』(アスコム)など多数。
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(精神科医・産業医 宮島 賢也)

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