※本稿は、猪原敬介『科学的根拠(エビデンス)が教える 子どもの「すごい読書」』(日経BP)の一部を再編集したものです。
■子どもが本に興味を示さない“置き場所”
「家にはそれなりに本があるが、子どもはそれらの蔵書にも、家にない新刊などにも興味がない」という状態を想定して書きたいと思います。読み聞かせのための絵本、本人の一人読みのための本、どちらにも当てはまる話です。
子どものために買った本はどこにどのように配置するのがよいでしょうか。
買ってきた本に子どもが興味を持てば、子どもに渡しておしまい。子どもが興味を持たなかったら、保護者自身の本棚に差し込んだり、下手をすれば、押し入れに入れてしまっていたりするのではないでしょうか。
本は基本的に、子どもの部屋に置くのがよいと思います。子どもの部屋がない、という場合でも、どこか一角を子どものスペースとして準備してあげることができれば十分です。子どもの本を収めるための専用の本棚は、やはりあったほうがよいです。
せっかく買った本を、子どもが見られない、手に取れないような場所に置いていては、何の意味もありません。
このとき、背表紙だけが見えるように本を差す「棚差し本棚」のスペースとともに、表紙を見せてディスプレイすることもできる「ディスプレイ本棚」の購入を検討しましょう。新しく買った本や、以前に買ったけど読んでくれなった本のうち、今なら興味を持ってくれるかもしれない本などは、表紙を見せるディスプレイをします。
■思わず本に手を伸ばす仕掛けとは
本屋さんの児童書コーナーや学校図書館をイメージするといいでしょう。子どもの目の高さくらいまでの大きさの本棚で、表紙がこちらを向いて(さらにポップ広告なども添えて)本が魅力的に映るように工夫されています。
ディスプレイ本棚はけっこう高価な場合もありますので、購入は普通の棚差し本棚にして、部屋の中にディスプレイできる別の場所を見つけるというのもよいでしょう。ちなみに我が家では、子どもがまだ3歳なので絵本や図鑑ばかりですが、小さいけれどしっかりしたディスプレイ本棚を購入し、それではスペースが足らないので、段ボールで自作した棚差し本棚を置いています。うまいこと節約しながらやりましょう。
もうひとつのお勧めは、少しだけ本棚以外にも別置することです。子どもの部屋の本棚以外の場所、リビング、食事をする場所、廊下、トイレ、玄関などのうち、本を置いても差し支えなさそうな1~2カ所に、2~3冊程度の本を置いておきます。ちょうどよい置き場所がなければ、キャスター付きワゴンなどをちょっと物を置くスペース兼本の別置場所として使うのもよいでしょう。
本棚は、配置によっては子どもにとってアクセスしやすいものではなくなります。
■あえて生活動線にも配置するメリット
我が家もそうなのですが、おもちゃや遊び道具がだんだん増えてくると、本棚の前にそのときの子どものお気に入りが山積して、本棚が「背景」になってしまうのです。そこで本棚から1冊でいいので取り出して、子どもがよく座る辺りの壁に立てかけて置いたりします。
子どもの部屋以外にも本を置けるような環境であれば、子どもの部屋以外にも別置することを検討しましょう。子どもの部屋では、読書以外の遊び道具も多く置いてあるはずですので、それほど本に注意が向かないかもしれません。そこで、そういった物がない場所にも配置しておくわけです。
どちらも「子どもが本を目にする確率、手を伸ばす確率」をより高めるためなので、本棚だけで十分に目立つような家であれば、無理して行う必要はないでしょう。
我が家では、子ども部屋の中の子どもがよく座る辺りの壁に3~4冊立てかけたり、リビングに子どもが持ち込んだおもちゃカゴがあるので、そこに大きめの本を1冊くらい、表紙が見えるように差しておいたりしています。同じ本ばかりを読んでくれとせがむので、興味を持ってほしい別の本や、表紙がきれいな本を飾りのつもりで置いたりもしています。
本棚や別置場所の本は、定期的に更新します。新しく買い足したり、図書館で借りてきた本を入れてみたり、これまでは棚差しや倉庫に眠らせていた本をたまにはディスプレイ棚や別置場所に置いてみたり、といった具合です。
■「読ませる」ではなく「目に入る」環境を作る
本を替えて、新鮮な風景をつくることで、「子どもが本を目にする確率、手を伸ばす確率」を高めます。また、更新された本棚を見ることで、「保護者が本を重要視しているんだな」ということが自然と伝わるでしょう。
そうした懸念が特にないのであれば、月に1~2回、あるいは、「最近、子どもが本を読んでいる姿を見かけないな……」と思ったときで十分だと思います。いったん子どもが読書家になってしまえば、子どもが本をせがんでくるので、保護者が意識しなくても本棚は自動的に更新されていくでしょう。
もっと大きくなって、子どもが自分で本棚をアレンジするようになれば理想です。その場合も、子どもの本選びに新風を吹き込む意味で、別置の本くらいは保護者のチョイスを入れるとよいでしょう。
子どもの読書をテーマとした他の本では「読書専用の子ども部屋をつくる」「家のあらゆる場所に本を置いておく」といった方法を提案していることもありますが、家庭は子どもの教育だけの場ではなく、ましてや読書をするためだけの場でもないことを考えれば、少々やりすぎだと思います。
むしろ、ここに書いたくらいの仕掛けで反応してくれるようになるまで、じっくりと子どもが育つのを見守るという態度が肝要だと思います。
■学力の高い家にある本の数
ちょっと余談になりますが、家庭の蔵書数は子どもの読解力を予測するかなり有力な指標です。
15歳を対象に4年に1度行われる国際学力調査(PISA)の結果を見てみると、まず家庭にある本の数(雑誌・新聞・教科書は数に含めない)は、参加したOECD加盟国(37カ国)の平均でも、日本に限ったデータでも、「26~100冊」と回答した参加者がもっとも多く、3割前後でした(OECD平均:29.1%、日本:34.3%)。
そして蔵書数と読解力の関係を見てみると、家庭に本が101冊以上ある子どもは、100冊以下しかない子どもよりも、読解力が44ポイント高かったことが報告されています(※)。この読解力の差は参加したOECD加盟国(37カ国)の平均値にもとづいたもので、親の学歴と職業を統計的に統制した後の数値です。44ポイントというのは、学力偏差値に換算すると、10分の1の4.4ポイントにあたります。
(※)Ikeda,M.,&Rech,G(2022).Does the digital world open up an increasing divide in access to print books? In PISA in Focus(Vol. No. 118). OECD Publishing.
■「蔵書数」が示す学力の差
もっと極端に、「0~10冊」と「201~500冊」を比較すると、参加国平均で118ポイント、日本でも95ポイントの差がありました(学力偏差値に換算すると、それぞれ11.8ポイント、9.5ポイント)。こちらは親の学歴と職業を統計的に統制していない結果ですが、かなりインパクトのある差ですよね。
ここで念のため補足しておきたいのは、「家に本を置くと、学力が勝手に高まる」なんて魔法のようなことはもちろん起こらない、ということです。蔵書数の多い家は、それだけ落ち着いていて、教育に高い価値を置く家である可能性が高いです。そこでは親が勉強に付き合ったり、塾に通わせたりもしているかもしれません。
そんな環境のひとつの特徴が「家にたくさん本がある」であり、子どもも読書をよくする傾向があるかもしれない、ということなのです。
少し前に、本はある程度の「数」が必要、と書きましたが、それは決して表面的に蔵書数を増やすことが目的なのではなく、短期的には「子どもに本を読んでもらうため」であり、長期的には「蔵書数が多いことをひとつの特徴とする、落ち着いた家庭をつくるため」なのです。
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猪原 敬介(いのはら・けいすけ)
教育心理学・認知科学者
北里大学一般教育部専任講師。京都大学大学院教育学研究科修了。博士(教育学)。専門は教育心理学・認知科学。研究・教育の傍ら、エビデンスに基づいて子育て・教育・自分時間を考えたい人のために、読書・ことば・学びの研究知見をわかりやすく発信する活動も行う。
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(教育心理学・認知科学者 猪原 敬介)

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