「夢のマイホーム」を購入する際に、どんなことに気を付ければいいのか。税理士の森田貴子さんは「共働き家庭ならではの悩みとして、名義や持ち分の問題がある。
安易に決めてしまうと余計な税金を払うことにつながるため、注意が必要だ」という――。(第1回)
※本稿は、森田貴子『世帯年収1000万円超の人が知っておきたいお金のルール』(あさ出版)の一部を再編集したものです。
■「支払い額」と「持分」の割合は同じに
「家を買うとき、名義ってどうすればいいの?」
実はここを間違えると税金がかかることがあります。
共働きで不動産を購入するとき、「夫婦どちらの名義にするか」「共有なら割合はどうするか」で悩む人は少なくありません。ポイントは、実際の支払い額と所有権(持分)の割合を一致させること。そうしないと思わぬ税金(贈与税)が発生してしまう可能性があります。
たとえば、5000万円の物件を購入するとして、夫が3000万円、妻が2000万円を負担したなら、持分は「夫6:妻4」として登記するのが正解です。妻が支払い負担していないのに「夫5:妻5」としてしまうと、妻は夫から財産(不動産の一部)を無償でもらったとみなされ、贈与税の対象になります。
贈与税は親族を含む他人からタダで財産をもらった人にかかる税金ですが、もらった財産が年間110万円を超えると課税され、10~55%の税率がかかることもあります。
「収入がない妻の名義を半分に入れたいんだけど?」
その場合は要注意です。妻(または夫)に収入や貯金がなく、親からの資金援助もないなら、無理に共有名義にするのは、むしろリスクになります。このケースでは、お金を出した側を100%の名義にするほうが安全です。

不動産購入は人生の大きな支出。名義や持分を「実際の支払い」と一致させるのが、もっともシンプルで安心なルールです。
■夫婦でローンを組む場合も“考え方は同じ”
「ローンを一緒に組むなら、名義の割合はどうすればいいの?」
不動産を買うときに悩んだことがある人は多いのではないでしょうか。住宅ローンを夫婦で組むときも、年収や貯蓄の割合に応じて借入額を分担し、その割合に合わせて不動産の所有権割合を設定します。
たとえば夫の年収が600万円、妻が400万円なら、ローンの負担も「6:4」、所有権の持分も「6:4」にします。もし貯金を頭金に入れる場合は、「年収+貯金」で総負担額を考え、その比率で持分を決めます。
「借入額と持分が合っていないとどうなるの?」
その差が贈与と見なされます。実際のローン負担と所有権の割合をそろえることで、あとから「贈与扱い」されるリスクを防ぐことができます。大切なのは、出したお金と登記上の持分を一致させること。このルールを守るだけで安心して家を持つことができます。
ローンを組むときも「実際に出す金額」と「所有権割合」をそろえる。これがシンプルで確実な基本ルールです。

■「税務署からのお尋ね」は正確に回答したほうがいい
不動産を購入すると、税務署から「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」という書類が(以下「お尋ね」)届くことがあります。
不動産購入後に届く「お尋ね」は、資金の流れを確認するためのものです。購入した所在地・種類・細目・面積(㎡)などが記載され、別添の書類に必要事項を記入し、同封の返信用封筒で返送する形式になっています。
これは税務署が「不動産の取引内容や資金の出どころに不自然な点はないか」を確認するために送付するものです。回答の法的義務はありませんが、回答しないと「何か隠しているのでは?」と疑われ、不明点が解消されないと直接確認が必要と判断され、税務調査に発展する可能性があります。正確に記入して返送することをおすすめします。
税務署は不動産購入からローン返済するまでの期間に資金贈与が行われていないかとチェックしています。「お尋ね」でチェックされる主なポイントは以下のとおりです。
・共有者の持分割合→持分と実際の出資割合が一致しているか

・預貯金の額→出資した金額が、本人の収入・蓄えに見合っているか

・借入金の額→収入に見合わない借入であれば名義人以外が実質負担していないか

・ほかの資産を売って資金としている場合→売却したときの申告(譲渡所得の申告)が正しく行われているか

・親からの贈与→年間110万円を超える贈与があった場合、申告されているか。加えて、住宅取得等資金贈与の非課税特例や、相続時精算課税制度を利用した購入か
■「安易な名義・持分決め」は税金トラブルのもと
なお、親から住宅購入のためにまとまった資金の援助を受ける場合は、「住宅取得等資金の贈与の特例」を利用すれば省エネ等住宅の場合は1000万円まで、それ以外の住宅の場合は500万円までの住宅取得資金の贈与は税金がかかりません。
親が子の住宅ローンを肩代わりすると、その返済額は原則として贈与とみなされます。
よくある誤解ですが「住宅取得等資金の贈与の特例(いわゆる住宅資金の非課税制度)」は、住宅を取得するための資金が対象であり、すでに借りた住宅ローン返済資金には使えません。

一方、相続時精算課税制度を選択すれば、累計2500万円までは贈与税は課税されません。
不動産の購入は、人生の中でも大きな買い物です。「共有名義にしたほうが平等だから」と安易に決めず、出資額・ローン返済の実態に合わせて名義・持分を決めることが、税金トラブルを防ぐ最大のポイントです。
では、持分を決めたとしても、それだけで安心はできません。次に重要になるのが「ローンの組み方」です。
共働き夫婦が住宅を購入し、持分割合を夫6割・妻4割に設定したとします。このとき住宅ローンを組む方法として、「連帯保証」と「連帯債務」の2つがあります。名前は似ていますが、法律上の立場や返済リスクの大きさは大きく異なります。
■「連帯債務」と「連帯保証」の違い
連帯保証とは、住宅ローンの契約者(主たる債務者)が返済できなくなった場合に、連帯保証人がその債務を全額返済する仕組みです。借入の名義は夫、妻は保証人となる形です。万が一、夫が返済できなくなった場合、妻が全額を返済する責任を負います。
ただし妻は借入人ではないため、住宅ローン控除を利用できるのは夫だけで妻は全額支払う義務が生じます。

・連帯債務は夫と妻の両方がローンの借入人となり、返済義務を共有する形
持分割合に応じて返済負担を背負うことになり、住宅ローン控除も夫婦それぞれが利用できます。一方で、返済リスクも夫婦両方にかかってきます。
・連帯保証は片方が主、もう片方が保証する

・連帯債務は両方が借入人となる
シンプルにこう整理しておくと、仕組みの違いがわかりやすくなります。
「結局、連帯保証と連帯債務って、どっちが得なの?」と思った方も多いでしょう。仕組みを知れば答えが見えてきます。
共通点としては、どちらも債権者からは全額請求される可能性があります。ただし、連帯保証の場合は、保証人が全額支払ったときには主債務者に対して全額求償できます。一方、連帯債務の場合は、内部で定めた負担割合に応じてのみ求償することになります。
■“肩代わり”したときの相手への請求は「負担割合」で決まる
妻が全額返済した場合に夫に対して請求できる金額は、負担割合によって決まります。少し詳しく説明すると、負担割合は以下の優先順位に従って認定されます。
(1)連帯債務者間の特約(合意) 

例えば、住宅ローンを組んだ際の契約書に明記されている負担割合、契約書で夫:妻=7:3と決まっている場合に妻が全額返済すれば、70%求償可能です。

(2)合意を明確に認定できない(契約書に記載がない)場合

次の順序で判定します。


①連帯債務によって受けた利益の割合

例:全額ローンで住宅を購入した場合であれば、購入住宅の登記簿記載の共有持分割合が負担割合と推定されます。

②各自平等の割合

上記で決まらない場合は頭割りです。夫婦であれば50%となります。
連帯債務は住宅ローンが1本で、夫婦や親子など複数人が同一のローンについて返済責任を負う仕組みです。主債務者・連帯債務者という立場の違いはありますが、契約上はいずれもローン全体について返済義務を負います。そのため、共働き世帯では、収入や持分に応じて借入割合・持分・実際の返済負担を一致させることで、家計の実態に即した形で住宅取得を進めやすい方式といえます。
■共働きなら「連帯債務」が実態に合っている
なお、これらが一致していない場合には、夫婦間・親子間で贈与とみなされる可能性がある点には注意が必要です。
結局、どっちを選んだほうがいいのかというと、共働きなら連帯債務のほうが負担と責任の実態に合いやすいです。なぜなら、夫婦それぞれが収入を持ち、持分に応じて返済を負担しているからです。さらに、連帯債務であれば住宅ローン控除を夫婦それぞれが利用できるメリットもあります。住宅ローン控除は税金から直接控除額を差し引く「税額控除」のため手取りが増える効果が大きい控除です。
また、ペアローンという制度もあります。
これは、夫婦それぞれが独立した住宅ローンを組む方式です。それぞれが主債務者になるため、双方が住宅ローン控除を利用でき、返済の責任範囲も明確です。
ただし、ローンが夫と妻で2本になるので手数料や諸費用がその分かかり、手続きも煩雑になります。ペアローンは、夫婦がそれぞれ独立したローンを契約するのに対し、連帯債務は夫婦で1つのローンを契約するため2人で共同で責任を持つという違いがあります。
■夫婦で連帯債務の場合は「それぞれに団信」が必須
夫婦で住宅ローンを組む際には、もう1つ重要なポイントがあります。
それは、「万が一」に備える保険の加入です。住宅ローンの契約者は、通常「団体信用生命保険(団信)」に加入します。これは、契約者が死亡または高度障害になった場合に、その人の借入残高がゼロになる保険です。
次の場合、1つのローンに対してどのような加入が必要になるのでしょうか。
・夫のみが借入れ=夫だけに団信が適用。

・夫婦で連帯債務=それぞれの借入に団信加入が必要
連帯債務は、借入、返済、経済的リスクを現実どおりに2人で背負う設計です。法的構造が、結果として実態に合った責任分担になるわけです。
連帯債務であっても、団信に加入していなければ、相手が亡くなったあとに残された借入れを背負うリスクがあるため、各自での保険加入は必須です。取り扱う金融機関は限られていますが、一部の金融機関では、夫婦のどちらかが死亡した場合にペアローン全体の債務が完済される連生団信という商品を提供しています。
「連帯保証」と「連帯債務」の違いを知っておくことは、共働き世帯にとって非常に大切なことです。
・実態に即した持分割合と借入割合

・万が一に備えた保険加入

・借り方によって変わる責任の範囲
これらを踏まえて、家族にとって最適な形でのローン契約を選択していきましょう。

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森田 貴子(もりた・たかこ)

富裕層専門税理士

税理士30年、起業22年目。山口県の起業一家に生まれ社長を支えたいと大学院卒業後25歳で税理士に。経済学修士・商学修士・MBA(豪州)。アーサーアンダーセンなど世界4大会計事務所を経て2003年会計事務所を創業。YojiYamamoto、ダイエーなど100件以上の大型再生案件を税務チームとして担当。日本有数のお金持ちの領収書1000万枚以上や申告から共通するお金の使い方と価値観を発見。栄枯盛衰を見た学びから、税金の正しい知識と自分資産を継続的に積み上げることの大切さを伝えている。明治大学や会計大学院での特別講義、東京都年収の壁セミナー講師、東京商工会議所税務相談員を務める。2023年フジテレビ「めざまし8」専門家出演。著書に『億万長者になるお金の使い方』(SBクリエイティブ)、『儲けのしくみがわかる!決算書の読み方』(三笠書房)、『幸せへのマネーバイブル 新・女性のライフステージ別ガイドブック』(中央経済社)などがある。

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(富裕層専門税理士 森田 貴子)
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