■当初から疑問視されていた「モームリ」の問題点
退職代行ビジネスが注目され、そのネーミングの秀逸さによって、一気に知名度と業績を上げたのが、株式会社アルバトロスが運営する「退職代行モームリ」です。ところがその社長夫妻が逮捕されるという衝撃的な事件が起きました。何が問題なのか、そもそも退職代行ビジネスをどう捉えるべきなのか、を考えます。
モームリの谷本慎二容疑者らは、弁護士資格を持たないにもかかわらず、報酬を得る目的で退職希望者を特定の弁護士に紹介したという弁護士法違反(いわゆる非弁行為)容疑で逮捕されました。利用者からの相談に対して、弁護士へのあっせんを行い、弁護士側から紹介料を受け取っていた疑いがあると報道されています。
弁護士法では、弁護士資格を持たない者が報酬目的で法律事務に関わる行為や紹介・あっせんを、「非弁行為」として法律で禁止しています。さらに、退職日の確定や有給残処理、制服や貸与品など交渉や調整を、弁護士以外が行うことも非弁行為となります。
退職代行サービス自体は「本人の意思を伝える」範囲であれば違法ではありませんが、法律的な交渉・あっせん行為を含め、それを報酬目的に行うことは、当初から問題だと言われていました。筆者もこのビジネスが登場した際、交渉ができないのに「代行」と銘打つ名称には非常に違和感がありました。
本稿を執筆時点(2月4日)で、直接の逮捕理由として公表されているのは弁護士紹介においてマージンを得たことですが、弁護士法人ではない「モームリ」が退職交渉をしていたとするなら、これもまた法的には問題となります。
■モームリを祭り上げたテレビ局
LINEなどSNSの普及によって、退職までSNSで済ませるという動きも出てきました。めんどうな交渉や会社からの引き留めを厭う若者中心には、対面もせずSNS上で依頼できる退職代行は歓迎され、爆発的な成長を遂げました。
そのマーケットリーダーとなった同社は、サービス名称・モームリという秀逸なネーミングで、マスコミからの注目も独占し、多くの同業他社を押しのけて、「退職代行=モームリ」と思われるほどの高い浸透を果たせたと思います。
トラックの荷台を看板にしたアドトラック。屋外広告手法として、アピールしたい地域を重点的に回れるなどメリットがあります。都心部の繁華街などで、一時期は「バニラカー」と呼ばれる、ナイトワーク中心の求人情報の宣伝が目を引きましたが、東京都の規制などもあり、一時期の勢いは減りました。
偶然かもしれませんが、それに代わって新宿の歌舞伎町周辺を、モームリのアドトラックが周回しているのを私は何度も見ています。 テレビのワイドショーやYouTubeの番組、ネットニュースから、時代を代表する社会現象として注目されたPR効果によって、とてつもない成功に結び付いたと思います。特に若者のニーズに合致していたことは間違いないでしょう。
■そもそも「退職代行」できないはず
筆者が日頃接している大学生たちの中で、自分の意見を言えなかったり、表現するのが苦手な者、何より年齢や属性の異なる人とのコミュニケーション経験がほとんどない者にとって、退職という非常にハードルの高い交渉を代行してくれたら助かるというのは明らかだと思います。
ネットニュースや記事も含めた爆発的なPRと困っているユーザーからのニーズが合致し、さらには、退職を認めないブラックな体質の企業の存在など、複合的な要因がすべて重なることで、モームリは時代の寵児となり、大々的な成功を収めたと考えます。
退職の代行をしてくれるニーズと書きましたが、今回の逮捕容疑は、弁護士あっせんに伴う手数料のことだと公表されています。
最も本質であるところの「退職の代行」、つまり退職を認めない企業に、正当な権利として退職を認めさせることは、法律上弁護士や労働組合しかできません。
それらに該当しない民間業者の場合、できることは退職交渉の代行ではなく「退職の意思伝達の代理」なのではないでしょうか。
■「退職代行」からの電話で確認すべきこと
筆者は企業側から、退職代行の連絡を受けた時の心得や対応についてもよく聞かれますが、交渉ができない相手であれば、そもそも対応の必要性もないことになります。ゆえにそうした連絡が入った際は、必ずその連絡をしてきた存在が誰で、どんな立場かを確認して対応を決めるようにアドバイスしています。弁護士や労組であれば、対応を拒絶はできません。
しかし「代行」ユーザー側、つまり労働者側は、こうした法的な知識が無いことも少なくないので、単に料金で比べて安い業者を選んでしまうということはあり得るでしょう。いずれにしても会社側は、退職代行からの連絡があった場合は、カッとならず、冷静に、相手の素性を確かめて対応する必要があります。
「退職代行は業者以上に、そのようなサービスを依頼する者がけしからん」という考えもあります。会社がコンプライアンスを理解していれば、そもそも代行を依頼する必要性に疑問もあります。しかしいわゆるブラック企業、ブラック職場も現実に存在し、「退職する時は3カ月前までに申告」とか「退職時は有給使用・消化は認めない」「退職する時は代わりの社員を見つけてくる」といった、そうとうめちゃくちゃなことを言われたという話は実際にあるようです。
■情報弱者をターゲットにしたビジネスモデル
世の中の会社すべてが、立派な、コンプライアンス意識を持った組織とは、当然ですが言えません。無法な圧迫によって辞めさせないなどは、典型的ブラック企業の特質の一つでもあります。そういった職場で働く人の中で、十分な法律知識の無い人がこのビジネスでは主な顧客になると考えられます。
ネット上、SNSなどでも間違った情報含めてさまざまな意見も交錯し、疲弊して、何が正解なのかわからなくなっている人はいるでしょう。そんな時に、SNSでサッと申し込めて、嫌な思いや厳しい言葉を投げかけられることもなくさっさと辞めることができるのであれば、それに飛びつく人がいても仕方ないだろうと思います。
退職代行というビジネスの問題点は、法的な不整備がありながら、このようなある種の情報弱者の弱みにアピールした点が挙げられるかもしれません。藁をもすがる思いで、退職代行によって苦痛から解放された人は実際にいるはずです。しかしそのやり方には大きな違法性があったというのが、今回の事案でしょう。
■見直すべきはビジネスの問題と会社の労働環境
問われるべきは退職代行を認めないことでも、退職代行を使った個人を断罪することでもなく、コンプライアンスがもはや経営の大前提となっているという認識の有無です。このとらえ方を理解・遵守する意識が欠け、今回の「モームリ」のように法律違反とも疑われるようなことをすれば、時代の寵児のような企業であっても一般企業でも、一気にビジネスの存続が危ぶまれるというのが、現在の企業環境だと捉えています。
モームリや退職代行ビジネスの違法行為が断罪されても、コンプライアンス無視のブラックな職場がある限り、この種のニーズが消えることはありません。
退職代行ビジネスについては、その意義や賛否を議論してもあまり意味がないと思います。ニーズは人間の原始的、本源的欲望や必要性から発するものであり、倫理観や価値観は正に「多様化」しており、統一する方が無理です。
純粋なコンプライアンスの問題として扱うべきですし、過度な熱狂や幻想、誤解については、今回の逮捕はタイミングとして退職代行というビジネスの危うさを浮き彫りにすると同時に、会社の労働環境を見直す機会になったのではないでしょうか。
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増沢 隆太(ますざわ・りゅうた)
東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家
東北大学特任教授、人事コンサルタント、産業カウンセラー。
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(東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家 増沢 隆太)

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