■ロス五輪日本代表選考レース出場権ゲット
2月1日に行われた別府大分毎日マラソンで“シン・山の神”黒田朝日(青山学院大)が再び、輝いた。大学の先輩、吉田祐也(GMOインターネットグループ)との日本人トップ争いに4秒差で敗れたが、2時間7分03秒の3位でフィニッシュ。
2028年のロス五輪代表選手選考レースであるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の出場権を獲得したのだ。
「箱根が10だとしたら5~6割ぐらい」と状態は良くなかったが、2度目のマラソンも好走。黒田朝日の“凄さ”はどこにあるのだろうか。
黒田はインターハイ3000m障害のチャンピオンで法政大のエースだった父(将由さん)を持つ。父と同じく岡山・玉野光南高では3000m障害で活躍した。インターハイは留学生に敗れたが、三浦龍司が保持していた高校記録(当時)に0秒42と迫る8分39秒79をマークしている。
青学大に進学して、1年時は箱根駅伝5区の候補だった。2年時はチームの主力となり、3大駅伝にフル参戦。箱根駅伝は花の2区で区間賞を獲得した。
【2025年】
1月2日/箱根駅伝2区 3位&区間新
1月19日/都道府県駅伝7区 区間3位
2月24日/大阪マラソン 2時間6分05秒(6位、学生新)
6月5日/日本インカレ10000m 28分09秒18(3位、日本人トップ)
7月4日/日本選手権5000m予選3組 13分42秒97(8着)
9月24日/絆記録挑戦会5000m 13分34秒01(全体トップ)
10月13日/出雲駅伝6区 区間賞
11月2日/全日本大学駅伝7区 区間賞&区間新
11月22日/MARCH対抗戦10000m 27分37秒62(大会新&青学大記録)
【2026年】
1月2日/箱根駅伝5区 区間賞&区間新
1月18日/都道府県駅伝3区 区間5位
2月1日/別府大分毎日マラソン 2時間7分03秒 3位
筆者は黒田がレースを“外して”いるのを見たことがない。今季、唯一よくなかったのが日本選手権5000m予選(8着)で決勝進出を逃している。箱根駅伝直後の都道府県駅伝も精彩を欠いたが、練習の一環で出場しており、その後のマラソンでしっかりと結果を残した。
■なぜ、レースセンスがずば抜けているのか
黒田の強さについて、青学大・原晋監督は「故障しない身体。両親に感謝ですよ」と話している。故障がないから練習を継続できる。だからこそ、安定感があり、右肩上がりで成長を続けているのだ。
そしてレースセンスがずば抜けている。他の選手を風よけなどとしてうまく活用しながら、省エネでレースを進行。
マラソンは30kmまでテレビ中継にさほど映らなかった。向かい風を受けないように集団のなかで流れるように走っていく。その代わり、終盤の勝負どころでは攻めの走りを見せている。
箱根駅伝でいえばペース配分が絶妙だった。前々回2区の個人タイムは、横浜駅前(8.2km)をトップと25秒差の13位、権太坂(15.2km)はトップと30秒差の7位で通過。残り7.9kmで逆転して区間賞を獲得している。前回の2区も横浜駅前は12位、権太坂は6位で通過して、最終的には区間記録を上回った。
2026年大会は初めて5区に出場。「山の名探偵」を2分12秒差で追いかける展開ながら冷静だった。函嶺洞門(3.5km)の通過は早大・工藤慎作より7秒遅かったが、本格的な上りに入り、ギアを上げていく。
前年に同区間で1時間9分11秒の区間記録を樹立した先輩・若林宏樹の通過タイムと比較しても上りの強さが際立っていた。
■腕時計なしで自分の感覚を信じて走る強み
日々のポイント練習のタイムが決まっており、コーチやマネジャーがトラックなら400mごと、ロードなら1kmごとのタイムを読み上げている。選手たちはペースを確認しながら走ることで“ペース感覚”を養っていく。
駅伝でも各自に設定タイムが設けられることが多い。レース状況を見ながらも、設定タイムを上回れるようにペースを作っていくことになる。しかし、同じピッチで1kmを走ったとしても、追い風と向かい風ではタイムが異なる。そのため、あえて腕時計をせずに、自分の感覚を信じて走るランナーも少数派だが存在する。そのひとりが黒田だ。
タイムに固執しすぎると、設定を大きく上回ると、「オーバーペース」という判断になりがちだ。そのため“特大の快走”は生まれないが、黒田のようにタイムを気にせず、自分の“感覚”で走るランナーは周囲が驚くタイムを叩き出すことがある。
先述した通り、普段の練習はタイムやペースを意識して走っているため、感覚だけでスタートからゴールまで走る能力は“才能”の部分が大きいだろう。
■世界の舞台で“朝日”が昇る条件
箱根駅伝の5区で「シン・山の神」と呼ばれるヒーローになり、1カ月後にあたる今回のマラソンでも不調のなかで好走。黒田朝日が素晴らしいポテンシャルを持っているのは間違いない。
しかし、この先、世界と勝負できるかどうか。それは今後の取り組みにかかっている。2月のマラソンの好成績は、原監督ならではのコンディショニング術でここ12年間で9度の箱根駅伝Vを成し遂げている“青学メソッド”の延長ともいうべきものだからだ。
マラソンの日本学生歴代で、青学大勢はトップ10に黒田朝日(2時間6分05秒)、若林宏樹(2時間6分07秒)、横田俊吾(2時間7分47秒)、吉田祐也(2時間8分30)、白石光星(2時間8分42秒)の5人がランクインしている。
なお今回の黒田は昨年の若林とまったく同じスケジュール(箱根駅伝5区→都道府県駅伝3区→別府大分毎日マラソン)だった。おそらくマラソン練習も同じようなメニューで行ったはずだ。
「こんなんでマラソンを走れるかというほど練習の負荷は低いんですよ」と原監督は話しており、実業団選手のように40km走を何本もこなすようなトレーニングはしていない。それでも青学大には2時間6~8分台で走る選手がバンバン出ている。
ただし、国内では称賛を浴びる結果かもしれないが、本気で世界を目指すなら物足りない。
別府大分で日本人トップに輝いた吉田祐也は昨年9月に開催された東京世界陸上に青学大勢として初めて日本代表に選ばれた。しかし、まったく通用しなかった。A・シンブ(タンザニア)が2時間9分48秒で制したレースで、吉田は2時間16分58秒の34位。「自分自身、練習をちゃんと積んできたなかで、あれだけの差がついた。どこを課題として埋めていくのか。いまいち分からない……」とこぼしていた。
今回の別府大分で世界との差は縮まったのだろうか。そして黒田は春から先輩・吉田と同じGMOインターネットグループの所属となる。
2028年のロス五輪については「狙えるものは狙っていきたい」と語った黒田。
はたして原監督がEKIDENダイレクターを務めるGMOインターネットグループは2時間3分台で走るマラソンメソッドを確立できるのか。そして、そのメニューを黒田が故障なく、パーフェクトにこなすことができれば、今度は世界の舞台で〝朝日〟が昇るだろう。
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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)
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(スポーツライター 酒井 政人)

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