■近ごろ耳にする「2月病」とは
2月も半ばに入りましたが、いまだに寒い日が続いています。この時期は「身体が重だるい」「意欲が湧かない」「集中力が散漫になる」といった心身の不調を訴える方が少なくありません。
近年、メディアやSNSを中心に「2月病」という言葉が飛び交うようになりました。これは医学的な診断名ではありませんが、現代社会において多くの人が直面している「季節変化を起因とする心身のエネルギー低下」を象徴している言葉だと言えます。
「2月病」は、複数の社会的・心理的要因が重なり合って発生する現象です。主な要因としては以下が挙げられます。
まず、年末から年始にかけてのライフイベントによる疲労です。12月の年末仕事や1月の正月行事など、非日常的なイベントに伴う緊張や高揚感が去り、その反動が2月にピークを迎えます。また、お正月明けに高まったやる気の反動が、目に見えて表れやすくなる時期でもあります。
次に、新年度を迎える前に高まっている不安です。
私自身、2月は、新年の賑わいが去ったのに春の訪れもまだ遠い、1年で最も閉塞感の強い時期だと感じます。この閉塞感や停滞感こそが、メンタルを不安定にさせるベースになっているのです。
■「2月病」と「冬季うつ」の関係性
この時期は、秋から冬にかけて発症し、春から夏の間に消失する「冬季うつ」も見られます。
冬季うつは「2月病」と異なり、「季節性情動障害(SAD)」という疾患の一種です。典型的な症状として、一般的なうつ病とは逆に「過食」や「過眠」といった、いわば冬眠に近い状態が挙げられます。特に炭水化物への欲求が高まったり、寝ても寝ても眠かったりするのは、冬季うつのよくある症状です。
こうした状態を招く要因として、主に次の3つが考えられます。
1つ目は、セロトニンの働きの低下です。
■冬ならではの「うつ」の要因
2つ目は、メラトニン分泌の乱れです。日照時間が減って暗い時間が長くなると、体内時計が後ろにずれます。その結果、睡眠ホルモンであるメラトニンが過剰に分泌され、日中の眠気や活動性の低下を引き起こすのです。
3つ目は、ビタミンDの生成不足です。日光を浴びることによって体内で生成されるビタミンDは、気分の調整に関与しています。冬期はビタミンDの生成量が減少しやすく、これが気分の落ち込みに影響を及ぼすとされています。
このほか、寒さは交感神経を刺激し、慢性的な疲労感を生むことがあります。ただでさえ冬は感染症が増え、身体的ストレスが高まりやすい時期です。こうした要因も少なからず体調に影響しているでしょう。
つまり2月の不調は、個人の意志の強さ・弱さではなく、生物学的・生理学的な反応の結果として生じているのです。
■人のメンタルヘルスに影響する「3要素」
今話題になっているのは「2月病」ですが、春を過ぎたら「5月病」が、そして夏が過ぎたら「9月病」がやってきます。
そもそもなぜ、人間のメンタルヘルスは季節によって左右されるのでしょうか。それは、先述した「生理面」に加え、「心理面」「社会面」の3つが相互に影響し合っているためだと考えられます。
・生理面:気温や日照時間などによるホルモンバランスの変化
・心理面:冬の「停滞感」や春の「期待と不安」など、季節に対する意味づけ
・社会面:年度末や長期休暇後など、社会のリズムが変わる影響
人には、季節に「意味」を持たせる習慣があります。例えば、新年なら「心機一転、今年の目標を立ててがんばろう」、3月から4月なら「春は別れと出会いの季節」などです。こうした意味づけは、人の心理状態に少なからず影響し、場合によってはストレスの元になり得ます。
また、年末年始のイベント疲れが2月にやってくるように、季節ごとに社会のリズムが変わる点も、心理状態に波が生まれる原因です。先ほど挙げた「5月病」や「9月病」は、長期休暇後のリズム崩れが大きな要因となっています。
■メンタルを良好に保つための方法
これから新年度にかけて季節や環境が変化する中、良好な心理状態をキープするためにぜひ行ってほしいことが3つあります。
まずは、生活リズムを固定することです。
次に、予定の詰め込みを避け、スケジュールの“余白”を設けることです。2月から春先にかけては、仕事の期末やイベントごとが重なり、知らず知らずのうちに心理的な負荷が増大します。そこで、意図的に「内的余白」を作るようにしましょう。これが心理的な余裕を生みます。
おすすめなのは、あらかじめカレンダーに休養日を書き込むことです。特に3月後半から4月前半にかけては、意図的に予定を入れない日を多めに確保してください。外的ストレスが増える時期こそ、戦略的に“余白”を作りましょう。
それから、季節の変化を踏まえて、期待値を下げるアプローチも重要です。心理学的に見て、過度な期待はストレス耐性を低下させます。
■ストレスコーピングの引き出しを数多く持つ
1年を通して健康な心理状態を保つ方法も3つお伝えします。
1つ目は、ストレスコーピング(ストレス解消法)の引き出しをたくさん持っておくことです。そして「気分の落ち込みには、軽い運動が効果的だった」など、不調の内容とその解消法を紐付けてメモしておくと、後から有効活用できます。
ストレス解消法は何でもかまいませんが、アルコールや過度な糖分摂取など、依存性の高い手段を多用することは避けてください。もしこうした手段にばかり依存している自分に気づいたら、それを「深刻な疲労のサイン」として認識し、休息の質を見直す契機にするとよいでしょう。
2つ目は、「有意味感」を高める習慣を作ることです。有意味感とは、自分の存在意義も含めた「意味がある」という感覚です。この有意味感の向上は、ストレスに打ち勝つ手法となります。
例えば、その日にした「良い行い」を日記などに記録するだけでも、有意味感を自覚することができます。「コンビニで100円を募金した」「同僚にきちんとお礼を言えた」など、自己満足であっても、ほんの小さな行動でかまいません。
■冬はとにかく「無理をしない」
3つ目は、「バウンダリー(心理的境界線)」を確立することです。バウンダリーを意識すると自分の疲労の限界値がわかり、他者の課題や周囲の喧騒に左右されにくくなります。自己理解を深め、自分を守る術を身につけることが、長期的なメンタルヘルスの維持に不可欠です。
2月の不調は、決して自己管理不足によるものではありません。厳しい季節環境や環境の変動に、心身が懸命に適応しようとしている結果です。まずはカレンダーに「予定を一切入れない日」を記入することから始めてみてはいかがでしょうか。
----------
舟木 彩乃(ふなき・あやの)
心理学者
心理学者〈ヒューマン・ケア科学博士/筑波大学大学院博士課程修了)。博士論文の研究テーマは「国会議員秘書のストレスに関する研究」/筑波大学大学院ヒューマン・ケア科学専攻長賞受賞。メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長。官公庁カウンセラーでもあり、中央官庁や自治体での研修・講演実績多数。文理シナジー学会監事。AIカウンセリング「ストレスマネジメント支援システム」発明(特許取得済み)。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタント技能士2級などを保有。Yahoo!ニュース エキスパート オーサ-として「職場の心理学」をテーマにした記事、コメントを発信中。著書に『あなたの職場を憂鬱にする人たち』(集英社インターナショナル)や『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SB新書)他。
----------
(心理学者 舟木 彩乃)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
