確定申告の時期が近づいてきた。副業容認の企業も増加傾向にある中、会社員でも確定申告が必要な人が増えている。
経済ジャーナリストの荻原博子さんは「副業している人や、フリマ、ネットオークションで儲けた人は内容を要チェック。確定申告をすることでお得になるケースも、逆に損するケースもある」という――。
■副業の収入、確定申告はどうなる
給料が増えない中で、本業以外の「副業」で収入を得る人が増えています。
企業も副業を容認するところが増えていて、みずほ銀行のように、希望する社員を対象に週休3、4日制を導入し(週休3、4日制を利用すると給料は週休2日の約8~6割に)、本格的に副業ができる企業も出てきているほど、すでに、副業は“普通”の時代になりつつあります。
そうなると、収入に対する税金はどうなるのでしょうか。
企業勤めの会社員で、収入が会社の給料だけなら、税金については会社が源泉徴収してくれ、毎年末に行う年末調製で払いすぎの税金を戻してくれるので、年収2000万円を超えなければ確定申告の必要はありません。
ただ、会社以外の副業で、年間所得が20万円を超えると、確定申告が必要なケースも出てきます。
■副業所得20万円以下でも確定申告で戻る可能性も
会社員が副業で得た収入は、一般的に年間20万円を超えたら、「雑所得」として確定申告するケースが多いです。
この場合の20万円とは、収入から経費を引いたもの。なので、たとえば25万円の収入で、経費が何もかかっていない場合には20万円を超えているので確定申告をしなくてはなりません。ただ、同じ25万円でも、それを稼ぐために電車代や資料代が6万円かかったというのであれば、収入−経費=所得は19万円なので、確定申告の必要はありません。
本業とは別の仕事をいくつか掛け持ちしている場合も、合計所得が年間20万円を超えていたら確定申告が必要ですが、それ以下だと必要ありません。

ただし、20万円以下でも所得税が源泉徴収されている場合は、確定申告をすると、払いすぎていた所得税の一部が還付される可能性が高いです。けれども合計所得が上がることで、住民税が増額されるケースもあるので、本業と副業の合計所得で、住民税がいくらになるか、さらに副業の確定申告でいくら戻るかを計算し、その差額で、どちらがお得かを判断するとよいでしょう。

※住民税は別途、居住する自治体に申告する義務がありますが、確定申告をすることで、結果、総所得額が増え、住民税が増額される場合があります。
メルカリ、ヤフオクは「稼ぎ方」が分岐点
最近は、会社員でも積極的にインターネットオークションやフリマアプリなどを使って売買して儲けるという人も出てきています。
たとえば、「ヤフオク」や「メルカリ」で古着や家具、自転車など日常生活で使っていた不要品(生活用動産)を売るという人も多いですが、この場合、利益が20万円を超えていても原則非課税(ただし、貴金属、書画、骨董など30万円を超えるものは対象外)なので税金はかかりませんし、確定申告も必要ありません。ただし、「転売」は営利目的となるため、利益が20万円以上ある場合には、確定申告が必要です。
また、手作りアクセサリーなどを売ってコンスタントに利益を上げている場合や、営利目的の「転売」などを繰り返している場合は、事業として継続的にサービス提供や物品販売をして稼ぐ「事業所得」となるために、売り上げから経費を差し引いた利益が、所得税の対象になります。
「事業所得」の場合には、儲かった額から損した額を引く「損益通算」ができ、さらに、税制上の優遇がある「青色申告特別控除」も使えるというメリットもあります。
■ダブルワーカーの確定申告はどうする
派遣、フリーランスなどで、どちらの仕事が本業という区別なく2つの仕事を掛け持ちするダブルワーカーも増えています。たとえば、昼はコンビニで働き、夜は塾講師をするなどといった働き方です。
会社員の場合には、2カ所から給料を受け取っていても、給料の高い勤務先で年末調整を行ってもらうのが一般的で、もう片方の仕事が20万円を超えたら確定申告が必要です。
ただ、ダブルワーカーで、両方から年末調整を受けていたり、どちらからも年末調整を受けたりしていない人は、確定申告が必要です。


両方で年末調整を受けていると、所得税額を計算する上で差し引かれる控除が重複して本来の納税額よりも少なく計算されてしまうことになる可能性があり、税務署から指摘されると追徴課税が発生する可能性があるからです。
また、どちらからも年末調整を受けていないなら、確定申告が必要です。
ただし、個人事業主やフリーランスは、利益が基礎控除額内であれば所得税が発生しないので、確定申告は不要です。
ちなみに、これまで給与所得控除と基礎控除合わせて103万円までの年収には、所得税はかかりませんでした。けれど、「手取りを増やす」政策により、103万円だった「年収の壁」が160万円に引き上げられました。2025年以降は基礎控除額が変わっていますから、これまでとは確定申告が必要なボーダーラインが変わっています。この先も178万円までの引き上げがありそうですから、動向を注視しておきましょう。
■年の途中で会社を辞めた人は確定申告を
確定申告しなくてもいいけれど、したほうがお得、というケースもあります。
対象となるのは、家族で年間に10万円以上医療費がかかっている、住宅ローン控除が受けられる(1年目)、ふるさと納税でワンストップ特例制度を使っていない、自然災害や盗難で被害を受けた、年末調整後に出生や結婚をした、親や祖父母の面倒を見はじめた(生計を一にする)など家族に変化があった、年の途中で会社を退職した、などという人です。
特に、年の途中で退職して年末調整を受けていない人は、前年の収入をもとに所得税及び復興特別所得税を毎月の給料やボーナス等から源泉徴収されていますが、年の途中での退職だと収入が下がる可能性があるので、取り過ぎの税金が戻ってくるかもしれないからです。
ちなみに、会社都合などで会社を辞めるとすぐに失業保険が受給できますが、失業保険として支給された給付金は、所得とは見なされないことになっています。
■所得を申告しないとどうなるか
確定申告をすべき人が申告をしないで、税務署にその事実が知られると、本来の税金に加えて、期限後申告のペナルティ(無申告加算税、重加算税、延滞税)などが課されます。

例えば、本業の年収が400万円、副業で60万円稼ぐと、経費ゼロとして所得税が6万円、住民税が6万円となり、税金は12万円増加します。ただ、住民税は自治体によって違うので、ここでは所得税の増加分について見てみます。
所得税6万円を1年間確定申告せず、帳簿隠しなど悪質とみなされたと仮定して計算してみると、無申告税と重加算税で40%かかるので、追加の税金は2万4000円、延滞金として1年分(365日)(※)で4800円が加算されます。
※延滞税は、2カ月(60日)までと、61日目からでは税率が変わります。延滞税額100円未満の端数は切り捨て。
延滞税の計算式:1日~60日(6万×2.8%×60)÷365+61日~365日(6万×9.1%×305)÷365=4800円
つまり、所得税だけで3万円余計に税金を支払うことになるということです。
また、住民税については、進んで確定申告をしなければ副業の収入はわかりませんが、もし無申告が知られたら延滞金が発生しますので、こちらもきちんと申告すべきでしょう。
延滞金については、自治体ごとに決められていて、東京都世田谷区の場合、1カ月以内の延滞金は7.3%、1カ月を過ぎると14.6%となっています。仮に60万円の副業で住民税6万円だと、1年の延滞で約5000円が追加課税されます。
このように、確定申告をしていないことが知られると、もっとも重い場合で、3万5000円(※)の損をすることになるのです。
※世田谷在住で年収400万円の人が、60万円の副収入分の所得税・住民税を1年間無申告かつ滞納したことが知られ、悪質と判断されたと仮定
「この程度の額なんて、どうせバレない」と思っていても、税務署側は、銀行の入出金記録、取引先から提出される「支払通知書」や、メルカリ、ネットオークション、暗号資産などの、匿名性の高い電子取引データなども把握しています。副業する人が増えたこともあり、無申告者や過少申告の調査は年々強化されていると言えます。
無申告は、「いつかバレる」と思っていたほうがいいでしょう。
ちなみに、1000万円を超える多額の収入を申告しないなどは“悪質”と判断されることもあり、場合によっては刑事罰に発展する可能性もあり、それこそ人生大損です。
金額にかかわらず確定申告が必要な場合は、期間内にきちんと申告するようにしましょう。

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荻原 博子(おぎわら・ひろこ)

経済ジャーナリスト

1954年、長野県生まれ。経済ジャーナリストとして新聞・雑誌などに執筆するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとして幅広く活躍。難しい経済と複雑なお金の仕組みを生活に即した身近な視点からわかりやすく解説することで定評がある。「中流以上でも破綻する危ない家計」に警鐘を鳴らした著書『隠れ貧困』(朝日新書)はベストセラーに。『知らないと一生バカを見る マイナカードの大問題』(宝島社新書)、『5キロ痩せたら100万円』『65歳からはお金の心配をやめなさい』(ともにPHP新書)、『年金だけで十分暮らせます』(PHP文庫)など著書多数。

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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)
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