本当に評判がいいビジネス書はどんな本か。グロービス経営大学院とフライヤーは2月、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2026」を発表した。
その結果を紹介しよう――。
■「読者が選ぶビジネス書グランプリ2026」受賞作
総合グランプリ:『億までの人 億からの人』(田中渓著、徳間書店)
イノベーション部門賞:『1つの習慣』(横山直宏著、すばる舎)
マネジメント部門賞:『冒険する組織のつくりかた――「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(安斎勇樹著、テオリア)

※本書はflierには掲載されておりません。
経済・マネー部門賞:『億までの人 億からの人』(田中渓著、徳間書店)
自己啓発部門賞:『科学的に証明された すごい習慣大百科』(堀田秀吾著、SBクリエイティブ)
リベラルアーツ部門賞:『お金の不安という幻想』(田内学著、朝日新聞出版)
ビジネス実務部門賞:『人は話し方が9割 2』(永松茂久著、すばる舎)
<特別賞>ロングセラー賞:『【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学』(両@リベ大学長著、朝日新聞出版)
<特別賞>グロービス経営大学院賞:『アフターAI』(シバタナオキ著、日経BP)

※「読者が選ぶビジネス書グランプリ」では、2024年12月から2025年11月の間に日本国内で刊行された書籍を対象に、読者による投票を行った。また、2014年12月から2024年11月の間に日本で刊行された書籍を対象に、ビジネスパーソンが「この1年で特に注目を集めた」と考える書籍に投票する「特別賞 ロングセラー賞」も実施している。エントリーした書籍は全133冊。出版社がエントリーした書籍に加え、グロービス経営大学院・flier(フライヤー)・協力各社が選んだ書籍がエントリーしている。
■「億からの人」は勝ち癖を身につけている
総合グランプリと経済・マネー部門賞をダブル受賞したのは『億までの人 億からの人』でした。著者の田中渓さんは、ゴールドマン・サックスで17年間にわたって活躍し、「兆円」規模の資産家や海外の王族など、300人以上の超富裕層と交流してきた人物です。本書では、その豊富な経験をもとに、「億からの人」に共通するマインドセットや行動習慣が紹介されています。
特に印象的なのは、多くの富裕層がROI(投資対効果)を基準に「やること」を厳選し、小さな成功体験を積み重ねることで「勝ち癖」を身につけているという点です。
その考え方を最もわかりやすく示しているのが、田中さん自身のエピソードでしょう。運動習慣を身につけようとした際、田中さんはまず「継続できない可能性が高いもの」を徹底的に排除しました。
例えば、ジムのクラスは時間の自由度が低く続けにくい、ダンスは環境的に不向き――そうした理由で選択肢から外したそうです。
その結果、残ったのがランニング、自転車、水泳。最初は15分という小さな負荷から始め、徐々に強度と時間を増やしていった結果、現在では毎朝3時45分に起床し、「25km走る」「60km自転車に乗る」「7000m泳ぐ」のいずれかを毎日こなす習慣にまで至っています。
ROIを基準にして「やること」を選び、日々コツコツと積み上げることで勝ち癖をつくって、自信を育てていく。そのプロセスは決して派手ではありませんが、だからこそ再現性が高く、誰もが今日から実践できる行動指針ではないでしょうか。
■うまくいく人は「楽しむこと」を大切にする
イノベーション部門賞は『1つの習慣』でした。
著者の横山直宏さんは、国内外で8社を経営する起業家です。しかし、そのキャリアは決して順風満帆なものではありませんでした。
大きな転機となったのは、26歳で創業した会社が経営危機に陥ったこと。「いったい何のために働いているのか」と自問自答する中で、横山さんはある行動指針を定めます。その結果、会社はV字回復を遂げ、13年間で累計100億円の売上を達成したといいます。
その行動指針こそが「楽しむこと」。
これが本書で語られる、うまくいく人が大切にしている「たった1つの習慣」です。
なぜ、楽しむ人はうまくいくのか。横山さんはその理由を、物事に自発的に取り組めるようになり、良い成果を継続的に積み重ねられるからだと説明します。さらに、楽しそうに取り組む姿勢は周囲にも伝播し、「応援したい」「協力したい」と思われやすくなって、成功に近づいていくのです。
とはいえ、つらい状況をそのまま楽しむのは簡単ではありません。本書ではその点も踏まえ、「楽しむ」を実践するための具体的な方法が丁寧に紹介されています。例えば、「やりたくないことリスト」の作り方や、つらい出来事の意味づけを変える思考法など、今日から試せるノウハウが詰まっています。
「楽しみながら成果を出したい」と思わない人はいないはず。仕事だけでなく、生き方そのものを見直したい人におすすめの一冊です。
■「軍事的な世界観」から「冒険的な世界観」へ
マネジメント部門賞には『冒険する組織のつくりかた――「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』が輝きました。
著者の安斎勇樹さんは、組織づくりを専門とする経営コンサルティングファームMIMIGURIの創業者。大企業からベンチャー企業まで、累計350社以上の組織づくりを支援してきた実績を持ちます。
昨年の「読者が選ぶビジネス書グランプリ」でグロービス経営大学院賞を受賞した『チームレジリエンス』の共著者でもあります。
本書で安斎さんが提示するのは、「これまでのビジネス・会社経営は、あまりにも『軍事的なものの見方』に傾倒しすぎていたのではないか?」という問いです。そのうえで、「軍事的な世界観」から「冒険的な世界観」へと、組織の前提そのものをアップデートする必要性を説いています。
ここでいう「軍事的な世界観」とは、「兵力を率いて、敵国にいかに勝利するか」を重視する発想。一方「冒険的な世界観」とは、「不確実な世界で、新しい価値を探究する」ことを重視する考え方です。この対比を読むだけでも、「軍事的世界観=古い」「冒険的世界観=今の時代に合っている」と感じる読者は多いでしょう。
まずは本書で提示される、組織の見え方を変える「5つの冒険的レンズ」――目標のレンズ、チームのレンズ、会議のレンズ、成長のレンズ、組織のレンズ――に目を通してみることをおすすめします。組織の課題を「人」ではなく「世界観」から捉え直すことで、これまでとはまったく違う打ち手が見えてくるはずです。
■起床直後に「ポジティブな記憶」を思い出す効果
自己啓発部門賞に輝いたのは『科学的に証明された すごい習慣大百科』でした。
著者の堀田秀吾さんは、作家としても活躍する言語学者。『図解ストレス解消大全』など、科学的な知見を一般の読者にもわかりやすく噛み砕いて伝えるスタイルで、多くの支持を集めています。
本書のテーマは「習慣」。
習慣があらゆる物事の成否を握るとしたうえで、仕事の効率化、勉強、健康、コミュニケーション、メンタル、生活の6章に分け、日常の悩みを解決する112の習慣を紹介しています。
中でも、明日からすぐ取り入れたいのは、起床直後に「楽しかったこと」を思い出す習慣です。
本書によれば、朝はストレスホルモンの分泌量が1日のなかで最も高く、ストレスが生じやすい時間帯。そこで、起床直後にポジティブな記憶を思い出すと、ストレス反応を和らげる効果が期待できるそうです。実際、ある研究では、楽しかった出来事を想起した被験者において、ストレスホルモンの減少や、自己否定的傾向の長期的な低下が確認されています。
このように、本書には今すぐ・お金をかけずに実践できる習慣が数多く詰まっています。一つひとつ試していくうちに、気づけば毎日の生活が少しずつ明るく、前向きなものに変わっている――そんな一冊です。
■これからの日本で「お金」よりも制約になるもの
リベラルアーツ部門賞は、『きみのお金は誰のため』で2年前に総合グランプリとリベラルアーツ部門賞を受賞した社会的金融教育家・田内学さんの『お金の不安という幻想』でした。
「老後のために」と、投資や貯蓄に励んでいる人は少なくないでしょう。本書は、そんな私たちが無意識に前提としてきた“お金観”を強烈に揺さぶる一冊です。
田内さんが本書で繰り返し強調するのは、「これからの日本で本当に制約となるのは、お金ではなく人手だ」という視点です。いくら資産を築いても、サービスを提供する人がいなければ、私たちは何ひとつ享受できません。
お金はあくまで交換の道具であって、それ自体が価値を生み出すわけではないのです。
とりわけ人手不足が深刻化しているのは、教育、介護、交通といった、生活に欠かせない分野です。これらの仕事は社会を支えているにもかかわらず、必ずしも高収入とは言えません。その結果、老後不安が強まるほど人材は流出し、現場はさらに疲弊していきます。加えて、「お金を稼ぐ人が偉い」という価値観が、その流れを加速させている――田内さんはそう指摘します。
「お金さえあれば安心」という常識が、もはや通用しなくなりつつある日本。読み終えたとき、自分自身の老後だけでなく、この国がこれから何を大切にしていくべきなのかについて、自然と考えたくなるはずです。
■「話し下手」の原因は思い込み
ビジネス実務部門賞に輝いたのは、永松茂久さんの『人は話し方が9割 2』です。2019年に出版され、140万部を超える記録的ベストセラーになった『人は話し方が9割』の続編として、本書も引き続き多くの読者から支持を集めました。
本書と他の「話し方本」との最大の違いは、会話がうまくいかない原因を「スキル不足」ではなく「メンタル」にあると指摘している点です。
例えば、「自分は会話が苦手だ」と感じている人でも、家族や親しい友人との会話では、緊張せず自然に話せているはずです。また、大切な人を励ましたい、力になりたいと必死になっている場面では、無意識のうちに心に響く言葉をかけていることもあるでしょう。

それにもかかわらず、人前に立ったり、初対面の相手を前にしたりすると急に話せなくなってしまう――これは決してスキルが足りないからではありません。永松さんは、話し下手なのではなく、話し下手だと思い込んでいることこそが問題だと説きます。
この前提を踏まえたうえで本書を読み進めると、提案されているアドバイスの多くが、驚くほど実践しやすいことに気づきます。相手が喜ぶ話をする、ネガティブな言葉よりポジティブな言葉を選ぶ、相手の話に「感嘆→称賛→反復→共感→質問→感嘆」の順でリアクションする……どれも今日から試せて、会話をぐっとスムーズにしてくれそうなものばかりです。
「自分は話し下手だ」と思い込んでいる人に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
■「貯める力」を身につける第一歩は固定費の見直し
<特別賞>ロングセラー賞は、YouTuberの両@リベ大学長さんによる『改訂版 本当の自由を手に入れるお金の大学』でした。
本書は、2020年に刊行されて142万部を超える大ベストセラーとなった『本当の自由を手に入れるお金の大学』の改訂版として、2024年に発売されました。社会・経済環境の変化を踏まえて内容をアップデートするとともに、両@リベ大学長さんがコミュニティ運営を通じて得た「多くの人がつまずくポイント」も新たに反映されています。
本書の最大の特徴は、働かなくても生活できる「経済的自由」の実現を目指し、「貯める・増やす・稼ぐ・使う・守る」という5つの力を軸に、お金との付き合い方を体系的に整理している点。しかも、理論にとどまらず、誰でも実行できる具体的な行動レベルまで落とし込まれています。
例えば「貯める力」を身につける第一歩として挙げられるのが、固定費の見直しです。スマホを大手キャリアから格安SIMに切り替える、使っていないサブスクを解約する……こうした具体例が示されているため、読後すぐに行動に移しやすくなっています。
固定費を削減し、少しずつお金が貯まり始めたら、次に考えるべきはお金を「増やす」こと。経済的自由を手に入れるには、労働収入だけに頼るのではなく、資産を働かせる(=投資する)という発想が欠かせないと、両@リベ大学長さんは語ります。
難しい専門知識は最小限で、「今日から何をすればいいのか」が明確に示されている点が、本書が長く支持され続ける理由でしょう。「お金の勉強を始めたい」「将来に向けて行動したい」と思う人に最適の一冊です。
■AIでビジネスはどう変わるのか
<特別賞>グロービス経営大学院賞は、エンジェル投資家として50社以上のスタートアップへ投資してきたシバタナオキさんの『アフターAI』でした。
AIの急速な発展によって、結局ビジネスはどう変わるのか――。本書は、この問いに真正面から答えてくれる一冊です。
シバタさんは、生成AIが社会インフラとして定着する局面において、「社会実装をきちんと仕込んだ企業がその果実を得られる」と指摘します。つまり、生成AIを導入すること自体ではなく、生成AIによって産業がどのように破壊され、再構築されていくのかを見極める視点こそが重要だというわけです。
そのために押さえるべきトレンドとして、本書では次の「5つの波」が提示されます。
・生成AIの加速的進化

・AGI、ASI(人工超知能)シンギュラリティー

・AIネイティブなスタートアップ

・BIGTEC

・既存産業内の競争
さらに本書では、こうした変化が「アフターAI」の世界でどのように具体化するのかを、業務領域ごとに丁寧に論じています。
例えば、顧客対応・カスタマーサポートの領域では、コールセンター業務の約4割に影響が及ぶという試算が紹介されています。生成AIによって顧客の待ち時間を限りなくゼロに近づける一方、低付加価値の業務をAIに任せ、人間は本当に判断力や共感が求められる複雑なケースに集中できるようになる――。これはコスト削減にとどまらず、顧客体験そのものを変えるインパクトを持っています。
今後、世界に何が起こるのか。生成AIの「次のフェーズ」を理解したい人にとって、本書は今まさに目を通しておくべき一冊でしょう。
読者が選ぶビジネス書グランプリ2026」では、どの部門にも、2025年を象徴するような、学びにあふれる作品がランクインしました。
現在、全国の約1700店舗の書店で受賞作品のフェアを開催中です。まだ読んでいない本や気になっていた本があれば、この機会にぜひチェックしてみてください。

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flier編集部
本の要約サービスflier(フライヤー)は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだだけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

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(flier編集部)
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