■結局、高市首相は日本に「移民」を増やすのか
結局、移民は増やすのか――。在留外国人をめぐる管理の厳格化や中国への強行姿勢などタカ派政策を推進した高市早苗首相が衆院選を圧勝した。しかし、選挙前から国民が注目する外国人の居住者人口が「増えるかどうか」の維新との連立合意でもある在留外国人の量的コントロール(総量規制)の方向性については、1月19日の会見や、同27日の党首討論会など、選挙期間中に他の党首が言及する中、高市首相は一切、説明しなかった。
昨秋の自民党総裁選では「毎年、文化等が違う人たちを(国内に)入れる政策はいったん見直さなければいけない」と発言。外国人の受け入れ政策をゼロベースで見直す姿勢を強調して支持を集めた。任期中に外国人問題が注目され、受け入れ政策に融和的と捉えられていた石破政権の3倍近い高支持率で総選挙を圧勝した高市政権への評価は、「受け入れ人数」そのものを減らす期待が込められていると見るのが自然だろう。
しかし、高市政権が1月23日に取りまとめた外国人政策では、将来的な国内人口の民族構成を大きく左右する可能性のある「総量規制」を見送っていた。もはや、自民単独で3分の2以上の議席を手にした高市政権は維新との連立合意を尊重する動機もなくなった。
■123万人は「打ち止め」ではない
これまでの高市政権の政策を見ると、外国人が「入る際」と「入国後」の管理は確かに厳格化の方向だ。しかし、「入れるため」の受け入れ拡大路線を継続している点は、見過ごされている感がある。
例えば、人手不足分野とされる分野では、外国人労働者123万人の上限枠(28年度まで)を新たに設定したが、これは過去数年実績の特定技能や技能実習の増加ペースより多い数字だ。
また、1月23日の衆院解散直前に開かれた閣議では、特定技能の対象分野が拡大。「リネンサプライ」「物流倉庫」「資源循環」の3分野の追加が駆け込み的に決定された。インバウンド政策の波及効果を謳いながら、ホテル関連のリネンサプライすら賃上げによる人材確保ができないのか疑問だが、この分野で働く外国人が新たに入ってくることになった。政権発足後の昨年11月には、新たに技能実習の2国間協定をフィジーとの間に結んでいる。
つまり、ほとんどの外国人が善良で適法に在留しているという前提に立てば、彼らの流入増加の抑制に繋がる政策は、ほぼとられてないことが分かる。高市政権が注力しているのは、外国人の増加抑制ではなく、外国人による不適切な問題の抑制である。
■自民党が続ける「曖昧戦略」
これまでの自民党政権は、在留外国人の増加(流入超過)という国民が心配する「状況」そのものの直視を避けていた。そして、政府が決めることができる移民という言葉の「定義」を否定し、労働目的だけ強調して、外国人を住民として受け入れる政策を正当化してきた。これは一種の“曖昧戦略”とも揶揄されていたが、1月26日のテレビ朝日「報道ステーション」の討論会では高市首相も「自民党は移民政策を推進は、しておりません」と発言、管理の厳格化と“秩序ある共生政策”の推進を強調していた。
結局は、高市首相もこの手法で受け入れ路線は踏襲し、どんどん増やす政策なのかもしれない。
肝心の管理の厳格化についても、決まったのは従来の報道通り、帰化要件を永住権並みに引き上げたのと福祉制度や土地規制への対応を盛り込んだ程度だ。見方を変えれば、想定とは異なるライフハック的な活用が可能な緩すぎた規制を、少し正しただけにも見える。直近の調査では、「技能実習」を上回り、余剰感すらあるホワイトカラー人材向けの用途で、家族帯同や規定の年数が経てば永住権や帰化申請も可能な在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」に対する規制も限定的だ。
■「秩序ある共生」という言葉のワナ
高市首相は総裁選を戦った際の「ゼロベース」発言以降の政権成立後は、一貫して「外国人との秩序ある共生推進」を掲げていた。“秩序”という文言に期待し、「在留外国人の人口を減らしたり、増加を抑えてくれる」と勘違いしているのは自民党に圧勝をもたらした支持者のほうなのかもしれない。とはいえ、事実上の「受け入れ拡大」の継続なら、まずは選挙前に国民に対してそれを明確に説明しておくのが筋だったはずだ。
現在、日本人人口は24年に90万人減少し、出生数は66万人に減る中、国内に居住する在留外国人の増加は年36万人ペースで増えている。総人口における外国人比率は現在3.2%だが、働く世代である生産年齢人口においてはすでに4.6%に上昇している。現在、静かに、そして物理的に「日本人の国」から「移民の国」へという“民族置換”的な変化が進行中だ。欧米のように不法越境が難しい日本においては、外国人の増加は、ビザ行政を司る政府自民党の完全コントロール下にある。外国人比率の高まりは、不可抗力ではなく、歴代自公政権による「政策の結果」なのだ。
■自民も中道も「総量規制」に否定的
そもそも、「総量規制」は選挙前から自民、中道の2大政党が否定的だった。つまり、国民にとっては極めて重大な政策に対して、賛否が問われる機会すら十分でなく、「移民の国に変わっていく」政策の政党しか、選択の余地が元からなかった。仮に中道が勝っていたとしても、形式上は、国民が事実上の移民政策推進を信任したことになってしまう。これ以上の移民抑制が民意だとすると、票を集めやすい主要政党がその民意を黙殺すれば「国民主権」は葬られてしまう状況とも言える。
この事実上の移民政策推進の大きな目的が、人手不足とされる分野の労働力確保だ。だが果たして合理性はあるのか。
「外国人がいないと社会インフラが崩壊する」「募集賃金を上げても、とにかく人が来ない」。これはよく聞かれる言説だ。確かに年齢別の人口動態を見るともっともらしく聞こえ、失業率は2.6%と完全雇用に近い状態だ。25年の「人手不足倒産」も前年から25%増の過去最高の427件となっている(帝国データバンク調べ)。
■人手不足なら給料は上がるはずなのに…
しかし、経済の教科書に照らすなら、人手が足りなければ、必ず賃上げが起こるはずだ。まずは人手不足業種の賃金が大きく上がり、他業種からの雇用流動が起きて労働市場全体の実質賃金の上昇がもたらされるのが、労働市場の本来のメカニズムだ。
しかし、実際の政策では、賃上げが限定的な、事実上の単純労働の労働力を外国人で補う政策となっている。しかも、マクロ経済に目を転じると、この「人手不足」とは真逆の実態が見える。有効求人倍率は2019年に1.6のピークを付けてから、直近では1.22と落ち着いており、実質賃金はコロナ禍に見舞われた2020年比からさらに低下している。
「人手不足」倒産といっても、価格に転嫁して賃金を上げられないなら、厳しい言い方をすると淘汰の現象を言い換えただけである。一方で、24年の新設法人数は年間15万件と過去最多であり、新陳代謝の片側にだけ注目することに意味はない。
「賃上げしても、人間自体がいない」とも言われるが、そもそも、引っ越しがあってもそこで働いていいという賃金水準の均衡点が、その会社で働く際の募集賃金の妥当な相場となる。地方であっても、高給で知られるTSMCの熊本工場には全国から多くの日本人労働者が移住している。少子化が進行し、希少性がある新卒の賃金も急激に上がっている。
実際、人手不足とされながら外国人労働者の参入が難しい業界は賃上げが著しい。例えばタクシー運転手の賃金は、2014~23年で、年収309万円→418万円(全国ハイヤー・タクシー連合会調べ)となり35%上がっている。都心部では最近では600万円を超えるケースも珍しくなく、異業種からの転職を増やしている。
■特定技能追加の「本当の目的」
タクシー業種のような賃上げを促すことが、政治の本来の役割のはずだが、現実の政策は残念ながら真逆だ。
こうした政府の姿勢を裏打ちするように、政府自らが賃金をコントロールできる分野ですら、賃上げは限定的だ。例えば、通常、3年に1度改定される介護報酬は、26年度に2.03%アップの臨時改定が決まった。しかし、これは25年の物価上昇率の3.7%より低い上げ幅だ。一方、一般会計税収(26年度)は物価上昇の追い風を受けて当初予算比で7.6%増と過去最高を更新したことから考えれば、その渋チン具合は事実上、政府自ら賃金水準を「切り下げている」に等しい。そして、介護分野でも政府は「人が来ないから」と、大々的に外国人に門戸を開いているのである。
■大企業の営業利益率は30年で倍増
例えば、建設業種は極度の人手不足であり、実際、賃金上昇は著しく、こうした分野の外国人労働者の受け入れはまだ理にかなっている。しかし、賃上げが限定的な分野でも外国人受け入れの門戸は政策的にどんどん開いている。本来、人が集まるかは賃金の“上げ幅”次第であり、それが無理なら事業として成り立っていないだけの話である。必要不可欠なライフラインを支える事業であれば、優先的に補助をするのが真っ当な分配政策だろう。
また、直接、現場で外国人を雇用する企業の多くは利益率が低い30人以下の小規模事業者であり、全体の63%を占める。「人が足りない」という悲痛な声に嘘はないだろうが、それは、高い賃金を出せないこととイコールでもある。そして彼らから成果物を仕入れる、取引の重層構造に連なる会社の利益率は年々拡大しており、法人企業統計ベースでの営業利益率は30年で倍増している。経済全体では、賃上げの原資に大きな余裕があるのはデータが示す間違いのない事実だ。
■「日本のため」というポジショントーク
要は、常々、改善を謳う「下請法」も、結果としてほぼ機能しておらず、大企業がリスクとコストを協力会社に転嫁し、重層構造の下層では利益が蒸発した結果、敬遠される低賃金の職場だけが残る。この「穴」を埋める調整弁として、高齢化した氷河期世代に代わり、途上国との賃金格差のみに着目した外国人受け入れ政策が加速しているというのが実態だろう。
賃金調整メカニズムを無視して日本人雇用の流動性を無効化し、日本との親和性や受け入れ負担を無視した受け入れ政策自体に問題があるのだ。もちろん、外国人に罪はないが、これでは、地域コミュニティが混乱するのは当然だ。
労働規制の緩和の影響や人口の多さによって団塊ジュニア世代の賃金は上がりにくくなり、少子化が加速した。今度は人口減で現役世代の賃金がとうとう上がるはずのチャンスを、企業側の都合で奪い去る――。
このような外国人労働者の受け入れなど、企業側が望む政策は、しばしば「日本のため」「経済のため」と正当化されるが、個人消費に直結する実質賃金は「経営のため」として、容赦なく引き下がる。主語が大きいこうした言葉は、政策恩恵の「偏り」を覆い隠すポジショントークの手段にもなっているのだ。
■「移民政策」継続の根底にあるもの
移民政策とは、「損」の多い国民と、「得」が多い企業、および彼らが支援できる政権が利害対立する政策でもある。そして「現状の受け入れ政策の継続」だけで、国の民族構成が目に見えて変わりうる規模にまで、10数年というわずかな時間で到達するのである。
こうしたいわゆる、移民政策の継続は、経済システムの設計が、「国民生活のための企業」という本来の関係が逆転していることが根底にある。企業にとっても外国人労働者への依存状態は、「前年比プラス」を強いられる株主資本主義のラットレースが終わらない限り、その呪縛は解けないだろう。
企業は、政治家やマスコミには「営業利益、前年比プラスのため、仕入れ先が利用する外国人労働者の受け入れを拡大してほしい」などとは口が裂けても言わない。「国民の生活を守るには、外国人がいないと回らない」と説明するのだ。賃金水準が低い外国人労働者は、入れれば入れるだけ、とりわけ、重層構造の上位企業はその差額を手にできるため、彼らにとっては多ければ多いにこしたことはない。
■国民の声は「誤情報」扱いか
こうした「国民不利」な政策が実施されるのも、企業には政治献金やパーティ券購入など、政治家を日常的に直接支援できる環境があるからだろう。結果、時間をとって会議室や会食を通じて直接、政治家に伝えられる経済界の要望は、“悲痛な叫び”として受け止められる。外国人政策を担当する小野田紀美大臣も、自身のSNSで「我が国らしさを守り続ける事は絶対に譲れない一線」と強調する一方で、「地方自治体の首長も、様々な職種の業界も、農林水産業も、とにかく外国人労働者を入れてくれという要望は各所からひっきりなしにあります」と明かすほどだ。
しかし、政治家に直接要望を伝えることが難しい国民は、数年に1度の選挙しか、政治に関与できない。せいぜいSNSで書き込んで、ガス抜きする程度すら、時には「誤情報」扱いされてしまう始末だ。自分の職場が特定技能の対象分野になって賃上げが抑制される運命の日本人労働者の悲痛な叫びは、残念ながら政治家に届く動線は用意されていない。
■高市首相に問われていること
その結果、政治に反映されるのは、労働者の賃金抑制を利益に転換できる経済界の声に偏り、政治家はそれを正当化するのが仕事になる。
本来、政府がすべき対応は、外国人労働者受け入れという賃金ダンピング的な政策の旗を振るのではなく、下請法の適応を徹底し、協力会社の賃上げのための価格転嫁を大企業に認めさせ、賃金のミスマッチの解消を図ることだろう。
そして、外国人労働者受け入れを検討するのは、少なくとも、現在、史上最低水準の実質賃金や労働分配率が大きく改善した後に考えるべきことであり、順番が逆転している。
衆院選圧勝で強固な権力基盤を手にした高市首相は、選挙後もこうした状況を放置するのか、それとも「ゼロベース」発言が本心だったことを証明するための基盤として使うのか、果たして――。
----------
九戸山 昌信(くどやま・まさのぶ)
フリーライター
大学卒業後、新聞社で勤務。社会やスポーツ面を担当。そののち出版社勤務を経て独立。現在は雑誌、ウェブ記事等に寄稿。取材範囲は経済、マネー、社会問題、実用、医療等。
----------
(フリーライター 九戸山 昌信)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
