健康維持につながる食習慣は何か。医師の牧田善二さんは「アルコールは飲みすぎなければ血糖値を下げ、患者さんにもおすすめしている。
私はウイスキーにはまっているが、食事時に家族や友人とおしゃべりしながら飲むのにおすすめのお酒がある」という――。
※本稿は、牧田善二『糖が脳を破壊する』(SB新書)の一部を再編集したものです。
■血液をドロドロにして血流を悪化させないために
習慣 1日2リットルの水を飲む

血流は、全身の健康にとっても脳にとっても非常に重要なファクターです。
脳の血流が悪くなれば思考力が落ちるだけでなく、ひどくなると、しびれやろれつが回らないといった症状が起きることがあります。これは「一過性脳虚血発作」といって、脳卒中のまえぶれと考えられます。たとえ症状が落ち着いたとしても、決して甘く見ることなく医療機関を受診する必要があります。
このように、血液をドロドロにして血流を悪化させないために、日ごろからしっかり水を飲んでください。
日本の夏は「酷暑」が当たり前になってしまい、水分摂取の重要性を国民の誰もが理解するようになりました。こうして身につけた「こまめに水を飲む」という行動を、1年を通した習慣にしましょう。
季節に関係なく、私たちは汗や尿として1日約2.5リットルの水分を排出しています。だから、脳や体を正常に動かすために、その分を補わなければなりません。
食事自体にも水分が含まれていますし、お茶を飲むこともあるでしょうから、それとは別に1日2リットルを目安に、ミネラルウォーターや浄水器を通した水を飲むようにするといいでしょう。

■「のどが渇いた」と感じる前に飲む
そのときに、一度にたくさん飲むとすぐに尿として出てしまうので、少しずつ飲んでください。しかも、「のどが渇いた」と感じる前に飲むのが体調を維持する秘訣です。1時間に1回コップ1杯ずつなどと決め、スマホのタイマーで自分にリマインドを入れるのもいいかもしれません。
もちろん、激しい運動や労働でたくさんの汗をかく人は、もっと飲んで構いません。日本腎臓学会では、1日3リットルの水を飲むようにすすめています。
なにしろ、人間の体は1日最大15リットルもの汗をかくことができるそうです。だから、マラソン選手が給水に神経質になるのは当然のこと。排出した水分を補えなければ、完走は不可能です。
私たちが遊び半分で行うレベルのテニスやサッカーなどでも、適切な水分補給を行わないと、足がつったり、吐き気や頭痛に襲われたりします。
このように、体に何かしらの不調が現れているということは、脳にも水分不足による悪影響が出ています。脱水症状を侮らず、水分補給に努めてください。
■アルコールは血糖値を下げる
習慣 ほど良い飲酒のススメ

アルコールについて、「飲まないほうがいい」という見解を示す医療関係者は多くいます。
しかし、私は「飲める体質の人は飲んでください」と患者さんにも伝えているし、私自身も毎晩適量をいただいています。というのも、アルコールが体に及ぼす良い側面を身をもって実感しているからです。
私は「リブレ」という血糖値自己測定器を用いて、自分の血糖値の変化を見ています。そこでわかるのは「アルコールは血糖値を下げる」ということです。
生化学の教科書『デブリン生化学』にも、アルコールを摂取したことで低血糖に陥った39歳の女性の事例が紹介されています。
その女性は、バーでお酒を飲んでいるうちに意識もうろうとなって救急搬送されました。しかし、診察してみると、昏倒した原因は酔っぱらったことではなく、多忙な仕事を終え、空腹状態でお酒を飲み血糖値が下がり過ぎたことだと判明します。
女性は、「アルコール性低血糖」と診断され、オレンジジュースを飲んで血糖値を上げることで回復したそうです。
このように、多くのアルコールは血糖値を下げます。ビールや紹興酒、甘いリキュールは糖質が多いので血糖値が上がりますが、ウイスキー、ブランデー、ウオッカ、ジン、焼酎などの蒸留酒はまったく糖質を含んでいません。
醸造酒であっても、辛口のワインや日本酒、糖質ゼロタイプのビールなら血糖値を上げることはありません。
■おすすめはワイン。
赤白それぞれの効果
最近、私はウイスキーにはまっていますが、食事時に家族や友人とおしゃべりしながら飲むには、なんといってもワインがおすすめです。
赤ワインのポリフェノールには強い抗酸化作用が期待できますし、白ワインに含まれる酒石酸という成分には痩せる効果があることがわかっています。
もちろん、日本酒でも蒸留酒でも構いません。お酒が飲める人は、いろいろ楽しんでください。
もちろん、これは「飲みすぎなければ」という条件付きです。
依存症になるほど飲めば、確実に脳も内臓も血管もダメにします。あくまで、1日の終わりに美味しい食事とともに適量を飲むというのが理想です。
では、適量とはどのくらいなのか。これは個人の体質でかなり違いが出ます。
もともと日本人には、アルコールを分解する酵素の働きが弱い人が多く、そういう人が無理して飲むと、悪酔いするだけでなく、将来的に食道がんなどの発症リスクが高まります。
だから、すぐに顔が赤くなったり、気分が悪くなったりするなら、無理して飲んではいけません。宴席などですすめられても、きっぱり断りましょう。

■焼魚より刺身やカルパッチョで
習慣 青魚を食べる

アメリカのロードアイランド病院の研究チームが1000人を超える高齢者を対象に行った大規模研究で、「オメガ3系脂肪酸」のサプリメントを常用していた人は、そうでない人に比べ、認知機能に関わる脳の部位の萎縮が軽減されていることがわかりました。
実際に行った認知機能テストでも、有意に機能低下が抑制されていたそうです。
オメガ3脂肪酸とは、主に「DHA」「EPA」「α-リノレン酸」と呼ばれるもので、DHAとEPAは青魚に、α-リノレン酸はアマニ油やエゴマ油に多く含まれます。
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳や神経細胞に多く含まれ、脳の健康を維持するために必須の脂肪酸です。
EPA(エイコサペンタエン酸)は、血液中の中性脂肪を下げ、血液をサラサラにして脳をはじめ全身の血流を改善してくれます。
つまり、これらを多く含む食品を摂れば、私たちの脳を守ることにつながります。青魚の代表的なものとして、サバ、イワシ、サンマ、アジなどが挙げられます。焼き魚にしても美味しいものばかりですが、できれば刺身やカルパッチョにして食べましょう。
というのも、オメガ3脂肪酸は熱に弱く、加熱するとその効果が薄れてしまうからです。また、AGEを増やさないためにも、生食がベストです。
■サプリメントもOK。ただし油脂の「質」に注意
もちろん、それが難しいという場合、加熱しても構いません。
あるいは、ロードアイランド病院の研究にならって、サプリメントを活用してもいいでしょう。
ドラッグストアに行くと、DHAとEPAが配合されたサプリメントがいろいろ売られています。ただし、前にも述べたように、油脂は「質」が重要です。安価な製品に飛びつかず、信頼のおけるメーカーのものを選んでください。

----------

牧田 善二(まきた・ぜんじ)

AGE牧田クリニック院長

1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。
2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。
著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。


----------

(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)
編集部おすすめ