■敗因は「中道」結成以前の立憲にある
自民党との「政権の選択肢」となり得る「もう一つの国民政党」の一歩手前まで来ながら、衆院選直前の新党結成を経て今回の衆院選で惨敗し、再び「戦後最小の野党第1党」に逆戻りしてしまった中道改革連合(立憲民主党)。選挙直前に新党が誕生したので、党名の書き方に苦慮してしまうが、本稿は基本的に「新党結成より以前の立憲民主党の動き」に敗因を求める方向で進めたい。「立憲」「中道」の混在が読みにくさを感じさせてしまうかもしれないが、ご容赦いただきたい。
さまざまな敗因分析があるが、ここでは筆者が以前よりこの場でも指摘し続けてきた「消費減税」を、改めて取り上げる。政策論を超えて考えるべき、さまざまな論点があると考えるからだ。
■そもそもの立憲の「存在意義」とは
①「目指す社会像」はどこへ
最初に考えるべきは「立憲は何のために結党されたのか」ということだ。
立憲は2017年の「希望の党騒動」で当時の民進党(民主党から改称)が、強い改革保守志向を持つ「希望の党」と合流を図った際、排除された枝野幸男氏らが初代代表となり結党した政党だ。排除された議員らの「救命ボート」だったのは確かだが、同時に立憲の結党は、希望の党騒動によって政界が「保守2大政党」に引き寄せられかけたことに抗い「自民党と異なる社会像を掲げた」意義があった。
こう書くと「それが反原発だ」「反安保法制だ」などと言い出す向きもあるが、それは大きく違う。立憲の存在意義は、21世紀に入って以降の自民党が進めてきた「自己責任を強いる社会」ではなく、公助の充実で国民の暮らしの不安を取り除く「支え合う社会」を掲げたことだ。
立憲は結党直後の衆院選で、希望の党を抑え野党第1党となった。「自民党と異なる社会像の対立軸」が明確な政党が、初めて野党第1党になったのだ。
■「消費減税」という劇薬
今回中道が公約の一つとして掲げた消費減税は、この「立憲が目指す社会像」と、ほぼ真逆であった。
一般的に減税とは、国民から徴収する税金の額、つまり国の税収を減らし、公共サービスの切り捨てを図る「自己責任社会」志向の政策だ。多くの左派政党が低所得者対策の観点から消費減税をうたうが、消費減税でより多くの恩恵を受けるのは、多額の消費を行う富裕層である。低所得者は減税によって、財布から出て行くお金は一時的に減るかもしれないが、その分公共サービスの自己負担が増え、長い目で見れば格差は拡大する。
消費税の税率を変えず、富裕層から多額の税を徴収し、それを財源に公共サービスを充実させて低所得者に再分配する方が、立憲が目指してきた「支え合いの社会」に合致する。
「減税=低所得者対策」のイメージが染みついた社会で、有権者に理解してもらうのは至難の業だが、政権を担おうとする政党が、いつまでもそこから逃げていいわけがない。2024年に3代目代表となった野田佳彦氏は、就任直後に行われた衆院選で消費減税を掲げずに戦い、50議席増(148議席)の躍進を果たした。
■消費減税が招いたコア支持層離れ
ところが、昨夏の参院選を控えた頃から、党内に消費減税の公約化を求める声がわらわらと出てきた。野田氏ら執行部が手をこまねくうちに、その声は無視できないほど大きくなり、この党としては初めての党内政局の空気すら漂い始めた。野田氏は党内きっての減税慎重派だったにもかかわらず、消費減税の公約化へと方針転換を迫られた。
苦渋の決断だったことは理解する。
財政規律以前に、消費減税をうたうことは立憲にとって「私たちはどんな理念を掲げてこの党に集っているのか」という、党の根本を毀損する行為だ。そのことを野田執行部も、減税派議員たちも、十分に理解していたとは思えない。結果としてこのことは、党の理念に共感していたコアな支持層の熱量を、大きく損なうことにつながった。
■無党派層をも失望させた「消費減税」
②「政権の選択肢」の気概はどこへ
もう一つの問題は、このことがコア支持層のみならず、立憲に「自民党に代わる責任政党」としての役割をぼんやりと期待していた、ゆるい支持層や無党派層の失望も招いたことだ。
立憲の議員に直接声が届く「目に見える支持者」の間では、消費減税を求める声は、確かに大きかったのだろう。しかし、消費減税に慎重な考えを持つ層は、国民の中に少なからずいる。
今回の衆院選における読売新聞の出口調査で、物価高対策としての消費税に関する考えを尋ねたところ「いまの税率を維持すべきだ」と答えた人が25%いたという。「食料品などに限定して税率を引き下げるべきだ」(32%)、「廃止すべきだ」(13%)を合わせた数と比べれば少ないかもしれないが、4人に1人が「税率維持」というのは、結構なボリュームではないだろうか。
安易な減税や1回限りの給付金といった「おかしな積極財政」に対し「国の財政は持つのか」と不安を抱く層の思いを、誰かが受け止めなければならない。その役割は「支え合う社会」を掲げる立憲こそが、たとえ苦しくても引き受けるべきだった。
今回の衆院選で、立憲と公明党が合流した中道が打ち出した基本政策は「食料品の消費税を恒久的にゼロ」。
長く与党にいた公明党は、昨夏の参院選でも「物価高対策のために一時的に税率を下げることは適切ではない」と訴えていた。政権の選択肢を目指すなら、立憲はエネルギー政策でも安保法改正でもなく、この点こそ「与党・公明党」の立ち位置に寄せるべきではなかったか。
■消費減税反対の「チームみらい」が躍進
選挙戦では高市早苗首相(自認党総裁)までが「食料品消費税ゼロ」に言及し、与野党ともに「消費減税一色」となった。それだけ目の前の物価高が厳しい、ということだろうが、これでは経済政策で、与野党の対立軸は作れない。だいたい、いくら有権者に減税派が多かったとしても、多くの政党がパイを取り合えば、そもそも選挙対策にならない。
結果として、唯一消費減税を掲げなかったチームみらいが、今回議席を伸ばした。同党の躍進は、ここ数年選挙のたびに躍進する政党が移り変わる「政党ザッピング」の結果かもしれないが、消費減税に賛成できない有権者の一定の受け皿となった可能性もあるのではないか。
高市首相が消費減税に飛びついたのなら、立憲は選挙戦でその訴えをフェードアウトさせ、自民党と対立構造を作りやすい「円安を止める」などにシフトすべきだったのではないか。高市首相の「円安ホクホク」発言の直後に一斉に切り替えるなど、方法はあったはずだ。
■「野田代表を選んだ=消費減税には走らない」ではなかったのか
③「代表選で示した意思」はどこへ
政策論とはやや異なるが、最後に指摘しておきたいのは、消費減税策を採らないのは「代表選で決めた党の意思」だったことだ。
野田氏が代表に選ばれた2024年秋の代表選は、任期満了に伴い地方議員や党員も有権者に含まれる正規の選挙だった。
それが簡単に覆される。国会議員の中では一定の議論はなされたかもしれないが、置いてきぼりを食らった党員や地方議員の「私たちの投票行動は何だったのか」という無力感を、立憲の執行部はどれだけ感じていただろうか。
もともと立憲は「ボトムアップの政党」をうたってスタートした。結党当初は政党には珍しい「フェス」の開催など、党員や地方議員の政治参加を促しネットワーク化を図る動きもあった。
党勢の拡大につれ、そうした動きが取りにくくなったことを全否定はしないが、現在の立憲に党員や支持者との「双方向性」が足りなかったことが、支持者の熱量を削いだことは想像に難くない。それが周辺の無党派層や他党支持層などへの働きかけの勢いを欠いたことも、選挙結果に影響したのではないか。
■消費減税は立憲の崩壊の象徴
立憲改め中道惨敗の理由は、他にも多々あるだろう。ただ、党勢低迷期の国政選挙で、党の理念も責任政党を目指す気概も安易に捨ててしまったことが、こうした結果を招いたことは否定できないと考える。立憲にとって消費減税とは、単なる経済政策の一つを超え、ガバナンスの問題を含めこの党が解決できずにいた多くの課題の象徴のようなものだった、と筆者は考えている。
中道の立憲出身勢力は、今回の敗因を安易に「公明党との合流」のみに求めて片付けてはいけない。確かに合流については、執行部ですべてを決めて短期間に全党を従わせたことへのていねいな総括が必要だが、それ以上に大きな敗因は、合流以前の立憲自身にあった。
まずはそのことにきちんと向き合った上で、公明党の出身者とともに今度こそ「真の国民政党」となり得る党組織を育て上げてほしい。それが、小さくとも野党第1党の座を維持した、中道の責任である。
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尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト
福岡県生まれ。1988年に毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長などを経て、現在はフリーで活動している。著書に『安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ』(集英社新書)、『野党第1党 「保守2大政党」に抗した30年』(現代書館)。
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(ジャーナリスト 尾中 香尚里)

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