※本稿は、中井彰人『図解即戦力 小売業界の仕組みとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)の一部を再編集したものです。
■百貨店市場規模は90 年代以降縮小傾向が続く
90年代以降、百貨店は市場縮小が続き、コロナ禍では大きなダメージを受けました。コロナ後は大都市では富裕層、インバウンドの追い風もありますが、地方百貨店の状況は極めて厳しい状況です。
1991年をピークに、12兆円規模であった百貨店市場規模は、ほぼ一貫して右肩下がりで推移し、2019年には6.3兆円と半分程度にまで落ち込んでいます。90年代に縮小傾向に転じた百貨店は、売れ筋であったシニア女性向けの婦人服に売場をシフトし、紳士服、家電、家具などの商品を削減していきました。
また 2000年代からは海外ブランド品の取り扱いを強化するなどして、減収に歯止めを掛けようとしましたが、減収傾向は止まりませんでした。シニア女性ニーズへのシフトは結果的には、百貨店の商品の幅を狭めただけでなく、男性客や若者、ファミリー層の足を遠ざける結果となってしまったのです。その後、婦人服の市場縮小が続くようになると、顧客層を自ら絞り込んだ百貨店は、さらに力を失っていきます。
中でも、地方百貨店は地方都市中心市街地の衰退もあって、急速な減収に追い込まれる企業が増え、店舗閉鎖、経営破綻を余儀なくされるという事例が増えていきました。 2010年以降はインバウンド需要の取り込みがあり、特に「爆買い」がピークとなった2015年頃には経営が上向く時期もありましたが、その恩恵は地方まで及びませんでした。
■大都市では盛況ながら、地方には及ばず
百貨店業界の業態別売上ランキングは図表1の通りです。
現在では、百貨店は大都市圏でないと成立しない業態となってしまいました。
コロナ後に大都市の大手百貨店はインバウンドの回復と富裕層消費の拡大で活況を呈していますが、地方までは恩恵は及ばず、閉店のニュースも相次いでいます。
※中心市街地
都市機能の中心となっている街の中心街を指す。地方においてはモータリゼーションの進展から都市機能が郊外に分散しており、その存在感が急速に衰退していることが問題となっている。
■江戸時代創業の老舗「呉服系百貨店」
百貨店は、その出自をみると、江戸時代からの老舗呉服商から転換した呉服系百貨店と、鉄道会社がターミナル駅の利用客へのサービス向上のために作った電鉄系百貨店の2類型に大別されます。
大手百貨店は今でこそ、三越伊勢丹、高島屋、エイチ・ツー・ オーリテイリング、J-フロントリテイリング、そごう・西武の5社ですが、かつては多くの企業が存在していました。中でも、呉服系百貨店と呼ばれる、江戸時代の呉服商から発展した百貨店に松坂屋、白木屋(後の東急百貨店)、越後屋(後の三越)、大丸、高島屋、そごう、などがあり歴史ある老舗からの転換組なのです。
その他、地方百貨店の中でも、福岡の岩田屋、仙台の藤崎、岡山の天満屋、甲府の岡島、盛岡の川徳、金沢の大和(だいわ)など、多くの名門地方百貨店も呉服系百貨店にあたります。
百貨店が長きにわたって小売業の名門とされたのは、こうした老舗としての「格の高さ」もあってのことです。
■大都市でも百貨店が消える未来は近づいている
呉服系とは全く異なる発祥で、立地創造という考え方からできたのが電鉄系百貨店という類型でした。阪急電鉄グループの創始者である小林一三氏が、1920年代に鉄道の始点である梅田駅(現 大阪梅田駅)に作った百貨店は、当時の乗降客数約12万人をベースとした、世界初の鉄道立地の百貨店です。
以降、近鉄、東急、京王などの電鉄会社が駅立地百貨店に参入し、その後、1960年代にかけて、南海と西鉄を除くすべての大手私鉄(南海もなんば駅に高島屋、西鉄も天神駅に福岡三越を誘致している)が百貨店事業に参入するまでになりました。2019年時点の百貨店の店舗別ランキング上位20位も、11店舗を電鉄系または駅ビル誘致組が占めています。
一方で、地方に関してはモータリゼーションの進展で、公共交通基盤が衰退したため、駅前立地は消失してしまい、ロードサイド立地に変わっていきました。しかし、東京圏、大阪圏の鉄道ターミナル駅は、その乗降客数を背景に、今でも日本で最も優良な立地であり続けています。
大都市鉄道網が作った世界的にも珍しい鉄道ターミナル立地、そして、その後のモータリゼーションが生み出したロードサイド立地、日本の商業立地はこの二重構造となったのです。しかし、コロナによる大きなダメージを経て電鉄系の風向きも変わりました。ターミナル再開発のタイミングで多くの電鉄系が複合商業施設への建替えを計画しているからです。再開発後に再出店することを表明している電鉄系百貨店は皆無です。大都市でも百貨店が消える未来が近づいています。
※エイチ・ツー・オーリテイリング
阪急阪神百貨店を運営する企業グループの持株会社。
※J-フロントリテイリング
大丸松坂屋百貨店、PARCOを運営する企業グループの持株会社。
■ショッピングセンターに奪われた若年層・ファミリー層
かつてファミリー層が休日を過ごす場所だった百貨店は、ショッピングセンターなど他の選択肢に、顧客を奪われてしまいました。快適な競合施設が増えている中、百貨店の対抗策は未だ見つかっていません。
百貨店の市場規模は90年代以降、継続的な縮小が続きましたが、その最大の背景としては若年層やファミリー層などの需要が、百貨店以外の商業施設に分散したのだと考えられます。他にも、正確なデータはありませんが、中元歳暮の長期的な需要縮小、外商顧客の高齢化による需要縮小などの影響も大きいといわれています。
昭和の時代には百貨店とは休日に家族で行って一日かけて時間を過ごす場所でした。そのため、買物をしているお母さんを待っている間、お父さんと子どもが時間をつぶすための遊園地が屋上にあり、一家そろって最上階の大食堂でランチをする、というのが一般的な昭和の百貨店の姿でした。
現在は、若い層向けには、ECサイトがあり、友人と時間を過ごすのであれば、さまざまなショッピングセンターやファッションビルがあります。そうなると百貨店の顧客層は昭和のユーザーであったシニア層ばかりとなり、新陳代謝が行われなくなったまま、時間の経過と共に急速にアクティブな顧客が減っていくという危機的な状況にあるということになります。
■インバウンドと富裕層への依存が高まる
図表3に見る通り、百貨店売上が着実に落ちていくのに対して、ファミリー層、若年層の消費者が分散したとされるショッピングセンターの売上は2000年代以降、着実に伸びていることが見て取れます。
特にファミリー層の休日の「時間消費」に選ばれているのは郊外の大型ショッピングセンターになりました。
百貨店はこうした顧客層の新陳代謝を事実上あきらめ、大都市中心部ならではのインバウンド需要取り込みに大きくシフトしました。コロナ後は、復活したインバウンドと富裕層の余剰資金が高級ブランドや宝飾品へと流入して、大都市の基幹店は好調です。ただ、インバウンドと富裕層への依存を強める百貨店はますます大衆からは離れつつあるのです。
※時間消費
消費の形態としてモノを買って消費するだけではなく、快適な時間を過ごすことに対してお金を払うという消費のやり方。
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中井 彰人(なかい・あきひと)
流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部を経て、nakaja lab代表取締役。執筆、講演活動を中心に、ベンチャー支援、地方活性化支援なども手掛ける。著書『図解即戦力 小売業界』(技術評論社)、共著『小売ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)。東洋経済オンラインアワード2023ニューウエーヴ賞受賞。
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(流通アナリスト 中井 彰人)

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