■政治に強まるネットメディアの影響
本書『「右派市民」と日本政治 愛国・排外・反リベラルの論理』ではこれまで、右派市民の実生活での「つながり」についてみてきましたが、最後に、「どのようなメディアを日々利用しているのか」に注目します。メディアもまたある種の「つながり」といえますし、それを通じて私たちはさまざまな情報のやり取りをしています。
近年、政治や社会の新しい動きを考える際、メディアの影響に大きな注目が集まっています。もちろんメディアの影響については昔から関心が寄せられてきましたが、インターネットが広く浸透することで、より強い関心が向けられるようになりました。
現在、多くの人がオンラインニュースやSNSで情報を取得するようになっています。新聞の購読者数が激減し、若い世代の「テレビ離れ」も話題となって久しいでしょう。情報環境の変化によって、フェイクニュース、バッシング、分極化といったさまざまな問題が指摘されるようにもなりました。
こうした情報環境の変化と政治に関する意識や行動との関連については、すでにさまざまな調査研究がなされ、さまざまな論考が示されています(*1)。
■マスメディアに飽き足らない右派市民
では、右派市民のメディア利用はどのようなものでしょうか。右派市民は、ものの考え方や感じ方の“ある部分”において極端な人々です。これまでの調査研究をふまえるならば、これらの人々はインターネットを利用することによって、それまで目にしなかったような新たな視点を得て、極端な考えを持つようになったとみることができます。
他方、逆の因果関係として、極端な考えを持っているから、マスメディアには飽き足らずインターネットで積極的に情報収集を行っているのだとみることもできます。
一回きりの調査では、どちらの因果関係がより強いのかを見極めることはできませんが、右派市民がどのようなメディアをよく利用し、逆にどのようなメディアを利用しないのか、その特徴を明らかにしたいと思います。
調査での質問は、「政治や社会の問題に関する情報の入手先として、以下のものをどの程度利用されていますか。」というもので、テレビや新聞、インターネットなど主要なメディアを列挙しています。それぞれについて「よく使う」「時々使う」「ほとんど使わない」の3つの選択肢から回答するというものでした。ここでは「よく使う」と回答した割合に注目します。
■オールドメディアvs.ネットメディア
先の分析では性別、年代別での分析を行いました。メディア利用についても層別の違いはみられるのですが、先の分析に比べるとその違いはさほど大きいものではなかったため、層を分けずに分析した結果を右派市民・左派市民ともに示しています(図表1)。空欄になっているところは、全体との差があまりみられませんでした。
先に、左派市民について簡単に確認しましょう。左派市民は、新聞、本・雑誌によって情報を入手する傾向がみられます。新聞は非‐愛国主義者と親左主義者で際立って活用されていることがわかります。本・雑誌は左派市民のすべてのタイプで活用されていて、彼らは活字メディアに親しむ「知識階級」だといえるでしょう。
一方、左派市民はテレビを忌避する傾向があります。
左派市民はインターネット利用についてはあまり明確な特徴はありません。ただ、表からは読み取れないのですが、高年層の左派市民は同年代と比べるとネットをよく使いこなしているようです。
■“愛国”と“反左”が多用しているインターネット
さて、右派市民はどうでしょうか。「ネット右翼」という用語が普及しているように、インターネットとの親和性が強いというイメージがあります。インターネットの情報のみに依存する人たちが右派的な志向を極めてしまう、あるいはマスメディアの情報に飽き足らずにネットで情報を掘り下げようとする、といったことが想定されています。前者は批判的な立場、後者は共感的な立場からの解釈といえるでしょう。
解釈の妥当性はともかく、表をみる限りでは、左派市民よりもネットの活用の程度は大きいようです。伝統主義者の利用が少ないようにみえますが、これは、このタイプに高年層が多いことによるものです。とくに、ブログやまとめサイトは年代によらず、広く活用されていることがうかがえます。
ネット利用は愛国主義者と反左主義者でとくに多いようです。一般的には嫌中・嫌韓の排外主義者がネットの影響を強く受けているイメージがあるように思いますが、ほかと比べるとそれほどでもありません。
■右派も左派もテレビは観ない
本書における愛国主義者は、国(大日本帝国から連続する日本)を愛しすぎている人であり、反左主義者は、政敵(左派)を嫌いすぎている人のことでした。こうした人々は、とりわけインターネットのニュース、ブログやまとめサイト、SNSから情報を引き出しているようです。あるいは、そうしたメディアの情報から強く影響を受けていると考えられます。
インターネット以外に目を転じると、左右の違いよりもむしろ共通性のほうが多くあることに気がつきます。
右派市民も左派ほどではないですが、本・雑誌から多く情報を得ています。先にみたように右派市民には大卒層が多く、右派=情弱といった見方は偏見でしかありません。右派市民もまた活字メディアに親しんでいる人が多いのです。
そして、左派市民と同様、テレビを情報源とはみなしていません。愛国主義者と反左主義者でその傾向を確認できます。右派市民の自由回答にはとにかく、マスコミに対する批判の言葉が多く書き連ねられていました。この場合のマスコミというのは、新聞をイメージしてしまうかもしれませんが、まずもってテレビが流す情報への不満が強いのではないでしょうか。
■反左主義者はとくにテレビが嫌い
考えてみれば、新聞は自分好みのものを購読すればよいわけですから、有用なメディアとなりうるのですが、テレビはそうはいきません。
右派市民のなかでも、とくに反左主義者のテレビ嫌いが顕著です。この人たちにとっては、テレビは野党と一緒になって保守・右派勢力を批判するメディアだと認識されているのではないでしょうか。
以上の結果から、大枠として右派市民はネットメディアを左派以上に重視し、活字メディアを活用しつつもテレビの情報は重視しない、というように整理できそうです。
さらに付け加えるならば、右派市民と左派市民のメディア環境は意外と似たり寄ったりであり、むしろ極端な意見を持たない穏健な人たちとの違いのほうが大きいといえるのではないでしょうか。その違いとは、テレビを情報源として重視するかどうかということです。
■右派と左派の情報をめぐる共通性
こうして結果を示してしまえば、当たり前のように思えるのですが、右派市民も左派市民も政治や社会の問題に少なくない関心がある人たちです。
だから自分で勉強したり、より詳しい情報を集めたりしようと、ネットメディアや活字メディアを駆使するのです。テレビは平均的な視聴者に向けて当たり障りのない情報を発信するメディアですから、そうした人たちの役には立ちません。せいぜい批判の対象になるくらいのものです。
説明の端々で特定の因果関係を想定したような書き方をしてしまっていますが、これは私にとって妥当と思える解釈を優先的に示しているだけです。繰り返しになりますが、因果関係が明確に特定されているわけではありません。その点はよくよくご注意いただきたいと思います。
*1 田中辰雄・浜屋敏『ネットは社会を分断しない』角川新書、2019年。谷原つかさ『「ネット世論」の社会学 データ分析が解き明かす「偏り」の正体』NHK出版新書、2024年。辻大介編『ネット社会と民主主義 「分断」問題を調査データから検証する』有斐閣、2021年
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松谷 満(まつたに・みつる)
中京大学現代社会学部教授
1974年、福島県生まれ。1998年、名古屋大学文学部卒業。2004年、大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、中京大学現代社会学部教授。博士(人間科学)。著書に『ポピュリズムの政治社会学 有権者の支持と投票行動』(東京大学出版会)、共著に『ネット右翼とは何か』(青弓社ライブラリー)、共編著に『3・11後の社会運動 8万人のデータから分かったこと』(筑摩選書)などがある。
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(中京大学現代社会学部教授 松谷 満)

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