わが子にお金について教えるためには、どんなことをすればいいのか。起業家の河村真木子さんは「私は当時9歳の娘に『1カ月5万円』のおこづかいを丸投げした。
親が手取り足取り細かく教えるより、『まるっとお金をあげて、まるっと自分で考えさせる』ことが大切だ」という――。
※本稿は、河村真木子『外資系金融ママがわが子へ伝えたい 人生とお金の本質』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■大人になってからでは遅すぎる
私はお金について教えるのは、早いほどいいと思っています。
だから娘には9歳から、私のやり方で「お金のレッスン」を始めました。
世界を見れば、「お金の授業」がある国は珍しくありません。
たとえばアメリカでは、2025年現在、「高校卒業時に個人金融の授業を受講すること」が決まっています。アメリカは州ごとに教育が異なりますが、全米50州のうち36州ですから、かなりの割合です。
その授業では、収入、支出、貯蓄、リスク管理という「お金の常識」ばかりか、株式投資についても学びます。
アメリカのある調査によると、7割の親が、「お金の価値観や原則を育むために、教育費、住居費など、家族の金銭的判断に子どもを参加させている」と答えているそう。
つまり「大学に行くのにこれだけ積立が必要なんだよ」「大きい家に引っ越すと、ローンはこんな感じ」と、子どもにも話し、時には意見を求めているのです。
また、多くの親が「おこづかいは子どもに使い方を決めさせて、経済的な成長を促している」と回答しています。
「アメリカのZ世代(1995年~2012年生まれ)の約半数が株式投資をしている」という別のデータもあります。

Z世代のアメリカ人女性にとって、投資は当たり前なのでしょう。
■Z世代の半数が投資をしている
そして面白かったのは、Z世代の彼女たちの「投資の情報源」です。
SNSが情報源という人と同じくらい、「家族や友人が情報源」と答えた人がいました。
そして「信頼できる情報源」のトップは家族や友人なのだそう。
このデータからも、「家庭内できちんとお金について話し合っていること」がわかります。
Z世代の最年少は中高生ですから、お金についての教えは早い時期に始まっていると考えてよさそうです。
日本でも2022年から高校での金融教育が義務化されましたが、科目ではなく「家庭科の一環」というのが残念なところです。
ちなみに、アメリカと日本では、大学教育でもかなりの差があります。
外資系金融機関の元同僚で、日本の大学を出ている人が、言っていました。
「ニューヨーク研修で、アメリカの経済学部卒業生との知識レベルの違いに愕然とした」と。
アメリカでは就職後、すぐに実践で使える知識を大学で教えているからです。理論はもちろん、実践的な内容まで徹底的に教え込み、卒業と同時に即戦力として働ける人材を育成しているのです。

■外資系金融ママの「意外な過去」
日本でも岸田政権から「資産所得倍増と金融教育強化」を政策に入れていますが、国任せにしておくより、自分の家庭から始めるほうが現実的だと私は感じます。
なぜなら、「今すぐ」「毎日」できますし、しっかりと身につくのは結局、自主的にやったことだけだからです。
私自身が高校生の時はどうだったかといえば、「もちろん若くして金融知識を身につけて、将来設計をしていた」――というわけではありません。
むしろ、その対極。
日本の実家にいる頃は派手な格好をして遊びまくり、かなりやさぐれていました。
やんちゃな男の子と付き合ったり、警察のお世話になり、母が青ざめた顔で警察署に迎えに来てくれたこともありました。
しかし3年生になって、ふと思ったのです。
「このままヤンキー女子の王道を行き、10代で結婚して母親になる人生でいいの?」

「姉のように一流大学を出て就職する、キラキラした人生もあるんじゃないの?」
■17歳でアメリカ留学を決意
そこで一大決心をし、両親に必死に頼み込んで17歳でアメリカの高校に留学したのです。プロローグに書いたように、お金で命のリスクが変わるようなシビアなアメリカに。
父は普通の会社員でしたから、ずいぶん負担をかけたと思います。
「あー、今月は電気代が高い。ランチを節約しないとまずい」
日本で普通に生きていた女の子が、いきなり外国で、すべての家計をやりくりする日々が始まりました。

自分の生活は全部、自分で管理しなければいけません。今まで日本にいるときは、お金がなくなれば「ねーねー、おこづかいちょうだい」と母に手を突き出していた私が、「このお金で1カ月生きていくにはどうしたらいいか? ランチは自分でサンドイッチを作る?」と真剣に考えました。
このサバイバル生活は過酷ではありましたが、私の人生にとっては、本当にためになりました。
一人で必死に暮らし、猛勉強したアメリカ生活が転機となって、私は今の私になったと思っています。
■9歳の娘に「月5万円」のお小遣い
それから時が流れ、自分が母親になったとき、私は娘にお金について教えるために、「おこづかい丸投げ制度」を実践しました。おこづかいの金額は「1カ月に5万円」です。娘は当時、9歳でした。
お金について細かく教えるのではなく、「自主性をもたせたい。どうすればいいだろう?」と考えたときに、「そうだ、私がアメリカで体験したことをやればいい」とひらめいたのです。
普通の9歳は、おこづかいをもらって小さな買い物をし、大きな買い物やお出かけは親と一緒というのが日本の一般的なケースかもしれません。そして娘の同級生は、だいたい5000円くらいのおこづかいをもらっているようでした。5万円というのは当時も今も9歳にはかなり大きな金額でしょう。

私は、娘にこのように言っていました。
「あのね、この5万円は好きなように使っていいけど、1カ月、絶対にこれ以上はあげない。洋服を買いたいならここから買えばいいし、学校帰りにアイスを買うのも、ノートや本を買うのも、全部自分で考えてやってみて。お出かけもこのお金でやるんだよ。ママはもう、何も買ってあげないからね」
最初は「えーっ」と戸惑っていた娘ですが、放っておいたら、自然にいろいろ考えるようになりました。
「この5万円を、どうやって使えばいいのかな?」
■ディズニーランドも「自腹」で
9歳の子どもなら余裕で余るというわけではありません。授業で必要な文具なども全部そこから出すように指示しましたし、裕福なお友だちも多かったので子どもなりの「付き合い」もあります。
「ディズニーランドに行きたい」となったら、10年前でもワンデーパスポートは4500円。ドリンク代やチュロスなどの軽食代、好きなキャラのぬいぐるみを買ったりすれば1万円は消えますし、うかうかしていると5万円はすぐに消えます。
小学生もおしゃれをするので、「H&Mのワンピースとジャケットが欲しい」となれば、1万円はします。
「大きい買い物がしたいなら、ちょっと節約しなきゃいけない」
だんだん自分でわかってくると、娘は「今月は節約して、その分と足して次の月に買おう」と工夫を始めました。
「真木子さんは大胆すぎる」

「すごいと思うけれど、うちじゃ真似できない」
そんな声も聞こえてきそうですが、私は気にしませんでした。

人は人、私は私、娘は娘、わが家はわが家です。
私の人生は私のもので、それは自由ではないでしょうか。
ちなみに「おこづかい丸投げ制度」のポイントは、5万円という「金額」ではなく、「丸投げ」にあります。つまり、親が手取り足取り細かく教えるより、「まるっとお金をあげて、まるっと自分で考えさせる」ことが肝なのです。
■「金額」ではなく「丸投げ」が肝
金額を大きくしたのにも理由があり、これが仮に「5000円のおこづかい」だったら、「ディズニーランドは別枠」「お友だちの誕生日プレゼントを買うのに足りない」となり、その都度、親が介入することになります。それでは、子ども自身が自分の頭で真剣に考えることになりません。
「投資は早いうちからしたほうがいい」

「株だけじゃなくて不動産も視野に入れなさい」

「お金を稼ぎたいなら、サラリーマンじゃなく事業家になるのが一番」
こういう具体的なこと、実用的なことは、あとからいくらでも教えられます。
しかし、「お金の感覚・考え方」は違います。
根本的な「哲学」とも言える部分です。
感覚や考え方、哲学は「早期から」、「自分で考えさせないと」、育まれないと私は考えています。
お金について教える第一歩は、「日常的に何か教える」というより、「自分で考える環境を整える」という大きな軸を作ることです。
娘はもう大学生ですが、今振り返ってみても、私が細かく「こうしなさい、ああしなさい」と言わなくてよかったと思っています。

また、私はシングルマザーにしてハードワーカーで、体を壊して入院したこともあります。ビジネスや投資、体のメンテナンス、やりたいことで猛烈に忙しいというのもあって、「時間」という人生の貴重なリソースを、「いちいち細かく管理する子育て時間」に使わずにすんだのもプラスだと感じています。
時間をかければかけるほど、子どもを大切にしているというわけではありません。ポイントをしぼって、短い時間でも最大限の教育と愛を注ぐのが、私の考える「レバレッジの効いた子育て」です。

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河村 真木子(かわむら・まきこ)

起業家

「Holland Village Members’ Club」主宰。1976年奈良県生まれ。一児の母。アメリカのUCバークレー卒業後、外資系金融機関などでキャリアを積む。2021年に、オンラインコミュニティ「Holland Village Members’ Club」を設立。オンラインコミュニティの総会員数は約2.7万人と日本最大級の規模を誇り、2026年、DMMオンラインサロン主催のSALON AWARDにて、4年連続で大賞を受賞した。2025年6月、学生を主な対象にした次世代型オンライン学習コミュニティ「金融経済アカデミー」を開講。また、日本全国に会員制カフェを7店舗展開し、2025年10月には東京・麻布十番にラグジュアリー スパ・ラウンジ複合施設「Holland Village BEAUTY Lounge & SPA」をオープン。著書に『超フレキシブル人生論“当たり前”を手放せば人生はもっと豊かになる』(扶桑社)がある。

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(起業家 河村 真木子)
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