東京のよみうりランド(東京都稲城市)に2月5日、世界初の常設ポケモンパーク「ポケパーク カントー」がオープンした。海外紙は「チケットは即完売」と人気ぶりを報じているが、発表当初、反応は散々だった。
それを覆したのは、日本流の高いクオリティだった――。
■世界初の常設型ポケモンパーク
2月5日、東京近郊の遊園地よみうりランドに、世界初の常設屋外ポケモン施設「ポケパーク カントー」がオープンした。メディア向け内覧会に訪れた海外記者陣は、その完成度に得心。「デザイナーが一切妥協していないことが分かる」「5倍長くてもきっと喜んで歩いたことだろう」といずれも満足した様子のようだ。
入場ゲートを抜けると、まず目に飛び込んでくるのがオーキド博士の研究所だ。そこで来場者が目にするのは、ポケモンの傷を癒やす回復マシンに、そして最初のパートナーとなる“御三家”が入ったモンスターボール。大きな木戸をくぐれば、広がる草原に思い思いのポーズを取るポケモンが点在する。初代ゲーム「赤・緑」の世界が、そのまま現実に再現されている。
訪れた米著名エンタメメディアのバラエティは、「あらゆるディテールが、完璧に再現されたポケモンの小宇宙へと誘うのである」と絶賛する。子どもの頃にゲームの中で夢見た世界が、来場者の目の前に広がる趣向だ。米著名ゲームメディアのIGNは開園前の1月27日、「生粋のポケモンファンにとっては、もうすでに、絶対に行くべき場所になりつつある」と報じた。
ポケパークは都心から約30分のよみうりランドの敷地内に、約2万6000平方メートルの新エリアとして誕生した。
東京ディズニーシーやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのようなジェットコースター中心の絶叫系とは異なり、ポケモンの模型600体以上が配置された「歩いて楽しむ森」がコンセプトだ。
チケットは抽選制で、価格は標準の大人1日券「トレーナーズパス」が7900円~、待ち時間を短縮できる優先パス「エリートトレーナーズパス」が1万4000円~。5月からは一部エリアのみに入れる「タウンパス」4700円~が加わる。いずれもよみうりランドへの入園料が含まれている。
ガーディアン紙はオープン前の1月28日時点で、「3カ月先まで売り切れている」状態だと報じた。2月17日現在も、この先2カ月間のチケットは数日分を残してほぼ完売の状態だ。
■ポケモンのありのままの姿に出会う「フォレスト」
パーク入口のポケモン研究所を抜けると、実物大のポケモンたちが暮らす「ポケモンフォレスト」が広がる。
最初に出迎えてくれるのはピカチュウとイーブイだ。米エンタメ業界紙バラエティは、実に数十匹というピカチュウが草むらを駆け回り、木の実を頬張ったり、しっぽの上でバランスを取ったりしていると紹介。イーブイは頬を寄せ合ったり、仰向けに転がったりしているものもいれば、輪になって食事をしていたりと、何とも愛らしい日常の姿に心をほどかれたという。
フォレストではこのように、ポケモンたちが自然の中で暮らす情景が再現されている。英ガーディアン紙は、「ポケモンずかん」を片手に歩いたなら、まるで大自然ドキュメンタリー番組の撮影者にでもなった気分で園内を散策できると伝えている。
ポケモンはすべて実物大で再現されており、大型種の迫力は圧巻だ。
この森ではまた、迷うことも魅力のひとつになっている。メインルートを外れれば、そこは隠れたポケモンの宝庫だ。木々や草むらの中には隠れたポケモンも点在しており、目ざとい子どもたちはきっと自分だけが見つけたポケモンを誇りに思うことだろう。
サイホーンの群れにまたがって記念撮影を済ませたなら、その先に待ち受けるのは暗いトンネルだ。ただの洞窟かと思いきや、ここにもポケモンの姿が。おなじみのズバットが群がり、宝石を抱え込むヤミラミや、トロッコのような姿のトロッゴン、さらにはポケモンの化石まで潜んでいる。
■英記者も没頭「5倍長くても喜んで歩いただろう」
元BBC記者でスコットランド在住のジョーダン・ミドラーさんは、パークを訪れた体験を英ゲームメディアのビデオゲームズ・クロニクルに寄稿。
入口で迎えたピカチュウ、イーブイ、御三家の像からすでに、「印象的なまでに高品質」に驚いたという。フォレストに足を踏み入れると、ただの散策とはまったく異なり、まるでアトラクションのようにムードが盛り上がったようだ。「私のグループでは全員がポケモンスナップ状態になり、新しいポケモンを見つけるたびに歓声を上げていた」と振り返る。
パーク内随所に出現するバトル中のポケモン像も必見だ。
ギャラドス、ライチュウ、ガブリアス、バンギラスなどの2対2バトルの像については、足元のコンクリートに足跡やバトルによる破損まで再現されている。ここに「極めて高いクラフトマンシップ(職人技)」を感じた、とミドラーさんは言う。
楽しい体験時間はあっという間に過ぎ、特にフォレストの旅路は「5倍の長さがあっても喜んで歩いただろう」とも言及。興奮は冷めやらず、記者仲間たちと弾む会話は「まるで本物のポケモントレーナーたちがバスで冒険談を語り合っているようだった」と明かした。
「ポケパークは、よみうりランドを東京郊外のこぢんまりした遊園地から、ポケモンファン必訪の聖地へと変えた」とまで断言している。
■「デザイナーが一切手を抜いていない」
訪れたメディアが口をそろえるのが、徹底した細部へのこだわりだ。
IGNは、ポケモンたちの像があらゆる空間に緻密に配置されている様子に感嘆し、「パークデザイナーたちは一切手を抜かなかった」と称賛している。とくに「ポケモンフォレストは間違いなく今回の訪問のハイライトだった」といい、アニメやゲームで目にしてきたポケモンが、屋外で生き生きとしたポーズで再現されている点に心奪われたようだ。
壁にパーク内ポケモン像の写真が飾られたグッズショップについても、「ショップ全体が温かく居心地の良い雰囲気だった」と言及。また、ジムでは観客席それぞれに、図鑑番号に対応したポケモンの画像が配されている点も目ざとく発見し、「細部へのこだわりが素晴らしい」と述べている。
記者向けの内覧会では乗り物やショーが稼働していなかったが、単純に歩き回るだけでも2時間は楽しめたといい、「ポケモンが好きなら、ポケパーク カントーで私がそう感じたように、子どものような驚きの感覚を呼び起こしてくれると確信している」と結んだ。
『ゴジラ』などを製作する米レジェンダリー・エンターテインメントが運営するポップカルチャーメディアのナーディストは、ゲームやアニメでおなじみの看護師キャラクター「ジョーイさん」に注目。

ピンクの髪に、ふわりとしたピンクのドレスとナースキャップを身につけたイメージ通りの姿に、パーク内のポケモンセンターでお目にかかれるとしている。来場者がモンスターボールを乗せたトレイを渡すと、それぞれのボールに入ったポケモンが画面上にアニメーションで表示。ゲームさながらにポケモンの回復を体験できる。
■「壮絶にひどい」と酷評された発表映像
だが、好評を博している今とは対照的に、発表当初の反応は散々だった。
2025年7月の公式配信番組「ポケモンプレゼンツ」で初公開された映像には、テーブルの上に並んだ安っぽいプラスチック製のポケモン玩具や、木々のそばに置かれたグラスファイバー製の像が映るのみ。米ゲーム情報メディアのコタクは、「ポケモンが本当に存在する場所」という公式キャッチフレーズからは程遠い、なんとも冴えない光景だったと振り返る。
それから4カ月後、開園日の発表とともに新たな映像が公開された。しかし今度は全編がアニメーションという構成。アニメのキャラクターがアニメで描かれたパーク内を歩き回るだけで、実際の施設がどんな姿なのか、依然としてイメージがほとんど掴めない状態だった。
こうしたことから、SNS上ではファンの失望が相次いだ。そもそもポケモンのメインシリーズは、2022年の『スカーレットバイオレット』を最後に新作が出ていない。ファンは次回作の情報を待ち望んでいただけに、「ポケパーク」という名前を聞いた瞬間、新作ゲームの発表かと胸を躍らせた人も多かったようだ。

ところが蓋を開けてみれば、テーマパークの発表だった。「『ポケパーク』という名前で心臓がバクバクしたのに、新作ゲームじゃなくてテーマパークだった」という落胆の声があふれた。
パークの内容そのものへの批判もある。規模は比較的小さく、子供向けのメリーゴーランドなどがあるのみで、本格的なアトラクションが少ない。中心となるのは森の中を散策できる遊歩道とショッピングエリアだ。一部では「巨大なグッズ売り場にすぎない」「テーマパークとは呼べない」といった辛辣な意見も聞かれた。
■「ずっと夢だった」海外ファンの聖地に
しかし、詳細が明らかになると風向きは変わった。とくに日本在住者や日本旅行を計画中の海外ファンを中心に、歓迎の声が相次いでいる。
米ネットカルチャーメディアのデイリー・ドットは、日本のファンがXで、「これはいい! 絶対行きたい……!」と投稿したと紹介。アメリカのファンは、「ポケモンのテーマパークはずっと夢だった。8歳くらいの頃、2005年の元祖ポケパークの映像を何時間も見ていたので、ポケパーク カントーがとても楽しみ!」と語っている。期待していたほどスケールが大きくないなどの声もあるが、ファンの心を着実に捉えつつあるようだ。

前述のようにライド系のアトラクションが少ない点は不満のひとつとなり得るが、他のパークとうまく棲み分けができているとの分析もある。
ビデオゲームズ・クロニクルは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでも今後ポケモンのアトラクションがオープン予定だが、そちらはスリル重視になる見込みだと指摘。一方、ポケパーク カントーはのんびりと森の中を散策できる設計になっており、まったく別のコンセプトだ。
記事はまた、歴史ある人気シリーズがテーマパークになる際、往々にして特定の年齢層にしか響かない施設になりがちだが、ポケパーク カントーは子どもから大人まで幅広く楽しめていると分析する。シリーズ30周年にちなんだ演出も随所に施されており、「熱心なファンなら思わず涙ぐんでしまう場面もあるかもしれない」と記している。
記者はパークに強く惹かれたようで、「ポケパーク カントーは私が7歳の頃に夢見たような場所であり、ポケモンのアニメやゲームの世界に最も近い現実世界のアトラクションだ」と評した。
■世界のファンが集うパークに
今までポケモンの常設テーマパークがなかったことのほうが、むしろ不思議だったとも言える。
今年で誕生30周年を迎えるポケモンは、依然として世界で最も収益を上げているメディアブランドだ。ガーディアン紙は、累計収益は推定1500億ドル(約23兆円)に達し、ディズニー傘下のスター・ウォーズやマーベルといった巨大フランチャイズさえ大きく上回る規模だと報じている。
ほかにも近年、日本発のゲーム関連IPをテーマパークとして展開する動きが広がっている。2021年にユニバーサル・スタジオ・ジャパンで誕生したスーパー・ニンテンドー・ワールドは、その後ハリウッドやフロリダのユニバーサルパークにも進出した。
ゲームの世界をまるごと体験できる、ポケパーク カントー。東京旅行の際の新たな必見スポットとして、今後国内外のファンのあいだで関心が高まりそうだ。共通の趣味を持つトレーナーたちが世界から集い、質の高い没入空間に共に驚き、そして新たな絆を育むスポットとなるかもしれない。

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青葉 やまと(あおば・やまと)

フリーライター・翻訳者

1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。

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(フリーライター・翻訳者 青葉 やまと)
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