※本稿は、大野和基『世界基準の「質問力」』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
■ゆっくり話す相手と同じスピードで話さない
話を聞く、核心に迫る、欲しい答えを引き出す……。
この質問の最終目標を達成するため、気を配るべきことのひとつが話すテンポだ。なぜなら、相手に気持ちよくしゃべってもらうことが、先に挙げたゴールへの大きな近道になるからである。
よく、「君ってめっちゃ早口やね」とか、あるいは「あなたの話し口はエライ落ち着いてますな」などと言うように、話すテンポは人それぞれだろう。たとえば、ユーチューブなどを見ていただければわかるように、私は非常に早口だ。
反対に――比較対象として大物すぎるのは百も承知だが――アメリカの外交官、政治家として冷戦時代に活躍したヘンリー・キッシンジャーは、やはり動画を見れば一目瞭然だが、ものすごくゆっくりとしゃべる。おそらく、私とキッシンジャーの話すスピードは何倍もの開きがあるだろう。
では、ゆっくり話す相手と同じスピードで話せばいいのか。実はそういうわけではない。
当然のことながら、自分自身で普段のテンポをキープできるのであれば、気分よく相手に質問できるだろう。
人間が話したり考えたりしているときに頭に築き上げる“train of thought”すなわち「思考のつながり」がなかなか自分の頭のなかで構築できない。あるいは構築できても、そのスピードと話すスピードに乖離があるため、スムーズに質問できなくなってしまう。
■話すテンポの強弱は、相手との駆け引きで決める
その点、若干感覚的な話で恐縮だが、早いテンポで話す人には、なるべく同じようなスピードで話したほうがいいだろう。相手の“train of thought”のスピードに合わせてあげたほうが、相手は気持ちよく話せる。そうなると、この項目の冒頭で述べたようなゴールに、より早く近づくことができるだろう。
一方でこちらが早くしゃべろうとテンプアップしても、まったく自分のリズムを崩さなかったのが、世界的ジャーナリストのボブ・ウッドワードである。
彼は、まるで私にバトンを渡したくないかのように、自分のペースで話し続ける。私がテンポアップしようとしても、向こうはまったく意に介さず。
それもあって、私はなかなか核心に斬り込めなかった。彼自身ジャーナリストだから、聞く側の狙い、それに対する聞かれる側の守り方をわかっている。つまり、話の主導権を常に握っていたかったのだ。
ただ、聞く側は最終的には、話す側に合わせるしかない。何度も述べてきたように、こちらの思いがどうであれ、相手が気分よく話せるか否かが、いい答えを引き出すための重要な分岐点となるのだ。
■「相手の気持ち、快適さファースト」
それに加えて、もうひとつ気にしなければならないのが、集団で話しているときだ。1対1なら、相手とのある意味でせめぎ合いのなかで、話の主導権を握るチャンスを探ることができる。
ところが、集団の場合は、それだけを意識していればいいというものでもない。周りに自分の話していること、質問の内容等をわかってもらう必要があるのだ。
実際、私もテレビに出るときは、何とか“loose my train of thought”すなわち、自分の思考のつながりを見失わないよう、言いたいことを忘れないよう気をつけながら、“徐行運転”を心がけている。
会話、質疑の流れは自分ひとりでつくれるものではない。まさに、マラソンのように、ペースがあまりに遅ければ、自ら先頭に立ってペースメーカーの役割も果たす。だが、集団で進む場合は、けん制し合う。それと似たような感じだ。
ただし、マラソンレースとの違いは、あくまで「相手の気持ち、快適さファースト」だということ。
ついつい、自分が気持ちよく話すあまり、相手の気持ちを置き去りにしがちだが、そうならないよう、ときに「待ち」の姿勢を見せながら、核心に迫っていくのが王道の聞き方だと言えるだろう。
CONCLUSION
待ちの姿勢を見せながら
核心に迫っていく!
■逆転の“カウンターパンチ”として「ほめ」を入れる
本書ですでに触れたように、質問をし、まだ誰にも言っていないことや、こちらが聞きたかったこと以上の発言といった、ヴァリューのある答えを相手から引き出すというのが、質問力を鍛えた先にあるゴールである。
そのためには、相手が気持ちよく感じる環境、ノリノリになってくれる心持ちにしなければならない。それを実現するための、一番手っ取り早いやり方が「ほめる」である。
言ってしまえば「ほめ」も一種のアイスブレイクだ。“先制パンチ”として雑談や面談の初期段階、あるいは沈滞ムードのときの逆転の“カウンターパンチ”として「ほめ」を入れれば、場の形勢は一気に自分のほうに傾くだろう。
ナチュラルにほめられて気分を害する人は、よっぽどひねくれている人以外、まずいないだろうからだ。
ただし、ジョーク同様、TPOをわきまえなければ、逆に空気を悪化させてしまう危険性もはらんでいる。
「あなたの考え方はとても面白いですね。一体、どういうきっかけでそのようなアイデアを思いついたのでしょうか?」
「トランプ政権の関税政策がおかしいと思ってね。それで関税の歴史を調べているうちに気づいたんだよ」
「へぇ、素晴らしい。物価が高くなるので早く関税をもとに戻してほしいですね。
こんな感じでは逆効果だ。つながりがないため、気持ちが入っているように感じられない。普通の会話でつながりが悪くても、せいぜい「ちょっと強引な展開だな……」と思わせるぐらいだ。ところが、ほめ言葉前後のつながりが悪いと、相手に一発で見透かされてしまう。
「コイツ、ゴマすっているだけやな」と。
■根拠をきちんと示すと非常に高い効果に
私なら、たとえば最後の言葉を以下のような感じにする。
「へぇ、素晴らしいですね。将来、ノーベル賞候補になるかもしれませんよ。なぜなら、私が懇意にしているポール・クルーグマンも、そこに気づいていませんでしたから。では、その流れで言うと、米中関係は今後……」
ただ単に「ノーベル賞クラスですね」であればゴマすりにすぎない。しかし、たとえば私の場合、クルーグマンと付き合いがあり、彼の考えを知っているから、ある程度、自分の知識で相手とクルーグマンを引き寄せることができる。
そのように、根拠をきちんと示すだけで、相手は本当に自分のことをほめてくれていると感じ、気分も上がっていくのだ。
もちろん、これは、別にクルーグマンと知り合いでなければ言えないような話ではない。彼の本や記事、メルマガを読んでいるだけでも、そのくらいのことは言えるだろう。
要は、「自分のほめは正当な評価である」ということが、相手に伝わればいいのだ。とくに先述したように、空気が悪くなったときの的確な「ほめ」は非常に高い効果を発揮する。まさに流れを一気に変える“game changer”の役割を果たしてくれるのだ。
■表に出ていない善行に言及する
ところが、日本のテレビ番組などでは、逆にヨイショ質問が多すぎる。というよりは、徹頭徹尾ヨイショ質問だけというのが圧倒的だ。これでは、先ほど説明したように「ほめ」の効果はまったく発揮できない。
相手に「ゴマすりやな」と一発で見抜かれ、端的に言えば、自分の都合のいいことしか話さなくなってしまうのである。言うまでもないが、これでは何度も述べてきた質問の目標を達成することなど到底できない。
では最後に、どのようにして効果のある「ほめ」を発することができるのか。もちろん、アドリブ力も重要だが、それとともにもうひとつ大事なのが、やはり準備である。
毎回できるわけではないし、まして相手が会社の上司など一般人なら、なかなか確認するのも一苦労だろうが、ひとつに相手のバックグラウンドを調べるというやり方がある。
たとえば、表に出ていない善行、すなわち寄付やボランティア活動などをしていたことがわかればチャンスだ。そういったことにこちらが言及すると、まず間違いなく喜ぶ。
「おお、よくご存じですね。表立っては言ってきませんでしたが、私は貧乏だったときも、毎月、チャリティに10ドル寄付していました。どれだけお金がなくてもです」という感じだ。
こういう、相手をくすぐる「ほめ」ができれば、ガードも確実に甘くなる。必然的に、望ましい答えを得られる確率も高くなるわけだ。
■場の空気を一変させる強力な効果
だから、ここまで効果的でなくても、たとえば「毎日、朝早く出社してすごいですね。どうすれば続けられるんですか?」とか「部下全員の誕生日を覚えていて、メッセージを送るなんてなかなかできることじゃありませんよ。いつからこんないいことをしようと思ったんですか?」などというレベルのエピソードでもいい。
こうしたネタを、相手が「もう、面倒くさいな」「疲れたから、終わりにしたい」というような、ネガティブなムードが漂うときに投下する。そうすれば、先ほど述べたように、まさに“game changer”の役割を果たしてくれるのだ。
このように「ほめ」はTPOさえ間違えなければ、場の空気を一変させる強力な効果を発揮するのである。
CONCLUSION
ここぞというときの「ほめ」は、
力強い“game changer”となる!
----------
大野 和基(おおの・かずもと)
国際ジャーナリスト
1955年、兵庫県生まれ。大阪府立北野高校、東京外国語大学英米学科卒業。1979~97年在米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。その後、現地でジャーナリストとしての活動を開始、国際情勢の裏側、医療問題から経済まで幅広い分野の取材・執筆を行なう。1997年に帰国後も取材のため、頻繁に渡航。アメリカの最新事情に精通している。
----------
(国際ジャーナリスト 大野 和基)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
