老化や体のダルさを招く糖化を防ぐにはどうすればいいか。医師の溝口徹さんは「一度糖化して老化物質・AGEsが増えた組織は、元に戻すことができずに体の機能が落ちる。
そのため糖化を招く血糖値スパイクを起こさない食生活を心がけるといい」という――。
※本稿は、溝口徹『「朝からダルい」は糖質が原因だった!』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■血糖値スパイクを一発で見破る検査項目
今の日本の医療現場では、空腹時の血糖や、血糖値の平均を示すヘモグロビンA1cが上昇しているとき、糖尿病と診断されます。ところが、糖尿病の診断基準を満たさないときでも、食後一時的に血糖が上昇する血糖値スパイクが起きています。
しかし、ある検査項目を追加すると、空腹時の採血でも血糖値スパイクの有無を調べることができるのです。それが「1.5-AG」(1.5-アンヒドログルシトール)です。
1.5-AGは野菜や穀物、糖などに含まれる物質であり、高血糖になると尿中に排出されるため、血液中の濃度が下がります。つまり、1.5-AGが低いほど血糖値スパイクが起こっていると推測できるのです。
空腹時血糖やヘモグロビンA1cで評価しづらい数日以内の食後高血糖の有無を反映するデータとして、とても有効です。
実はこの検査方法は日本で開発された検査指標であり、すでに健康保険でも認められています。最近では、アメリカやヨーロッパでも承認されました。
ただし、1つ問題があります。
日本の場合、その診断基準が甘すぎるのです。
私は、数年前に開かれた人間ドックや健康診断を扱う学会で、血液検査項目に1.5-AGを加えることによって、糖尿病と診断されていなくても血糖値スパイクを含む血糖乱高下が見つけられることを発表しました。
■ガイドラインが金科玉条のように扱われる日本の医療
そのうえで、たとえ1.5-AGを測定しても、従来の基準範囲では初期の血糖値スパイクを見逃してしまう危険性があると話したのです。
講演後、1人の初老の紳士が近づいてきて話しかけてくれました。その方は、なんと1.5-AGの測定原理を実用化するために尽力された研究者だったのです。そしてその方も、通常の基準範囲では見落としがあることに同意してくれました。
自らが研究してきた検査項目を取り上げ、その重要性について講演したためか、嬉しそうに握手をしてくれたのが印象的でした。
今の日本の通常の医療では、ガイドラインが金科玉条のように扱われ、それに沿わないと認められることがありません。オーソモレキュラー栄養療法を頭から否定されてきた私は、その初老の紳士に強いシンパシーを感じました。
血糖値スパイクが起きているのに、健康診断などでは見逃され、さらなる不調や糖尿病などにつながる人を減らすために、1.5-AGの基準値を見直し、広く活用されることを願っています。
■糖尿病患者の半数は不眠に悩んでいる
血糖値スパイクや夜間低血糖が起こることで睡眠に悪影響を与え、朝からダルさを感じる「朝ダル」につながります。
血糖値の調節がうまくいかない状態が糖尿病です。
ということは、糖尿病の人は睡眠の質がよくないのではないかと推測されます。
実際、日本内科学会の調べによると、不眠症を抱える人の割合は、健常者が23.8%なのに対し、なんと糖尿病の患者さんは約47.4%と2倍になっています。
睡眠中にしばしば呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群についても、健常者が約10%なのに対し、糖尿病の患者さんは約30%と3倍となっています。
4人に1人は糖尿病になるといわれています。血糖値を意識して食事を見直していくことは、「朝ダル」はもちろん、将来の糖尿病のリスクを下げることにもつながるのです。
■血糖値スパイクは認知症のリスクも上げる
高血糖状態の何が怖いのかというと、糖が血管の内膜を傷つけ、血管病変を引き起こすことです。その結果、さまざまな病気のリスクが跳ね上がることは、先にお伝えした通りです。
そのため血糖値スパイクは、血管そのもののトラブルだけでなく、酸化ストレスの増大、不眠やうつ、イライラ、過食といったメンタル症状、動悸(どうき)、発汗、めまい、頭痛といった自律神経に関わる症状、ニキビやアトピーなど、さまざまな病気や不調を引き起こします。最近では認知症との関連も指摘されています。
ここで注目したいのが、酸化ストレスの増大です。
酸化とは、細胞を傷つける活性酸素が細胞にダメージを与える反応、つまりサビつかせることです。そして活性酸素とは、あらゆる細胞を傷つける有害な物質であり、諸悪の根源といってもいいほど厄介な存在です。
紫外線やストレス、暴飲暴食、激しい運動など日常のあらゆるところで発生します。
もちろん、体は活性酸素の暴挙に手をこまねいて見ているわけではなく、酵素などが活躍し、活性酸素を消去していきます。
■飲酒やストレスでも尿酸値が上昇しないなら注意
しかし、これらの酵素は年齢とともに減っていくため、活性酸素を消去する力も落ちていきます。消しきれなかった活性酸素が細胞を傷つけまくり、機能を失った結果が「老化」なのです。
活性酸素は多くの酵素によって消去されますが、食材に含まれるビタミンCやビタミンE、カロテノイドなども活性酸素を消去してくれます。さらに、もともと私たちの体でつくられる尿酸も、活性酸素を強力に消去してくれます。
尿酸は血液検査で測定されますが、高値になると痛風の原因になるとされ、一般的には低いほうがいいとされています。しかし、実は尿酸が高い状態とは、活性酸素が多くストレスがかかっている状況にあることを示すサインなのです。
見方を変えると、飲酒やストレスなどでも尿酸値が上昇しないのは、活性酸素を減らすことができていないということです。また、日頃から尿酸値が低い場合には、血管のトラブルが起こりやすいことも知られています。
■タンパク質の機能を低下させる「糖化」も関係
血糖値スパイクの問題はまだあります。それが「糖化」です。

糖化とは、体内で余った糖がたんぱく質と結びつき、変性が起こることで、老化物質・AGEs(終末糖化産物)がつくり出される反応をいいます。
そして体内で余った糖があるということは、血糖値スパイクが起きた状態であることを意味します。
糖化の説明でよくたとえに出るのが、ホットケーキです。フライパンにホットケーキの生地を流してゆっくり加熱すると、生地はきつね色に変わります。これが糖化反応です。食欲をそそるパンやステーキの焼き色も同じです。
ホットケーキ生地には、卵や牛乳に含まれるたんぱく質と、小麦粉や砂糖に含まれる糖質が混ざっています。加熱されて変色し、きつね色になった部分が、糖化した物質AGEsです。これと同じことが体内でも起こっており、体のコゲとも呼ばれるゆえんです。
調理の世界ではメイラード反応とも呼ばれ、「おいしさの秘密」と謳われていますが、健康面から考えると、あまり歓迎すべきことではないのが本当のところです。
体内が糖化すると何が起こるのでしょうか。わかりやすいところでいえば、肌のたるみやシミ、シワなどが起こりやすくなります。
肌の黄ばみも糖化が原因です。甘いもの好きの女性にとってはドキッとする話ではないでしょうか。
■果糖はブドウ糖に比べて糖化のリスクが10倍以上
それだけではありません。骨に起これば骨質の低下や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、血管に起これば動脈硬化、目なら白内障と、糖化は体の至るところで起こります。さらに脳に起これば認知症を引き起こす原因となります。
特に影響を受けやすいのが、コラーゲンを多く含む組織です。実はコラーゲンは全身のたんぱく質の3割を占めており、至るところに存在します。なかでも前述した皮膚をはじめ、腱(けん)や軟骨、血管壁、歯周組織がダメージを受けやすくなります。
年齢を重ねると、変形性膝関節症などをはじめ、関節まわりにトラブルを抱える人が増えていきますが、私は理由の1つには甘いものの食べすぎも深く関係していると推測しています。
また、最近では骨量は減っていないのに骨折をしてしまうケースが注目されています。骨といえばカルシウムを思い浮かべる人が多いでしょうが、実はその中身はコラーゲンでできているため、糖化すると骨のしなやかさが失われてしまいます。実際、骨折しやすい人にはAGEsの一種であるペントシジンが多いことがわかっています。

困ったことに、一度糖化してAGEsが増えた組織は、元に戻すことができません。これは私たちの体の機能が落ちることを意味しています。どんなに運動して体を鍛えても、どんなに栄養たっぷりのものを食べても、糖化があることで、いい習慣も効果を発揮できないのです。
ちなみに、果物や清涼飲料水に多い果糖は、ブドウ糖に比べて糖化のリスクが10倍以上も上がることがわかっています。とりすぎには注意が必要です。
■糖化は「体のサビ」も引き起こす
糖化の恐ろしさはそれだけではありません。糖化は先ほど述べた「酸化」も引き起こしてしまいます。
糖化によりAGEsが体内で増えると、細胞はもちろん、ホルモンなど、ありとあらゆるものが被害を受けます。
それは活性酸素を消去する酵素も例外ではありません。その結果、抗酸化力が低下してしまうのです。加えて、AGEs自体も酸化をつくり出す原因物質になります。
糖化と酸化のダブルパンチにより、筋肉をはじめとする細胞が変性したり破壊されることで何が起こるか――それはダルさを加速させることです。結果、糖化によって「朝ダル」が起こりやすくなります。
そのためには、血糖値スパイクを起こさない食生活を送ることはもちろん、糖化を防ぐ食材や栄養素を取り入れるのもいいでしょう。
ショウガ、シナモン、クミン、黒コショウ、バジルといったハーブやスパイス類、お茶(カテキン)、オリーブオイル(オレウロペイン)などのポリフェノール類には、抗酸化作用があります。こうした食材を毎日の食卓に取り入れるのもいいでしょう。

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溝口 徹(みぞぐち・とおる)

医師

1964年生まれ。神奈川県出身。福島県立医科大学卒業。横浜市立大学病院、国立循環器病センターを経て、1996年、痛みや内科系疾患を扱う辻堂クリニックを開設。2003年には日本初の栄養療法専門クリニックである新宿溝口クリニック(現・みぞぐちクリニック)を開設。著書に『2週間で体が変わるグルテンフリー健康法』『発達障害は食事でよくなる』『お酒の「困った」を解消する最強の飲み方』(いずれも青春出版社)、『花粉症は1週間で治る!』(さくら舎)などがある。

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(医師 溝口 徹)
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