■公明党は“ホクホク”状態なのか
公明党・創価学会側の動揺も相当なものだ。
2月8日に投開票が行われた衆議院議員選挙で、立憲民主党と公明党が合併する形で立ち上げられた新党・中道改革連合は、歴史的な大敗を喫した。何しろ今回の衆院選前に公明党と立憲民主党が持っていた議席の合計は165だったにもかかわらず、当選できた中道改革連合の候補者はわずか49人だ。惨敗としか言いようがない。
ただし今回の衆院選で、公明出身の候補者たちは小選挙区に出馬せず、全員が比例代表に回った。その結果、公明系議員の議席数は選挙前の21から、28に増えている。しかし、原則として小選挙区に挑んだ立憲出身の候補者たちはほとんどが落選し、当選者は実に21人だった。
これをもってSNSなどには、「中道改革連合とは結局、公明系が立憲系をだまして利用するための道具にすぎなかった」といった論評が多々書きこまれるような事態にもなっている。そして選挙結果それ自体は、そう言われても仕方がないような数字を確かに示している。
実際のところ、公明系議員は本当にこの惨敗の裏で舌を出し、“ホクホク”の状態なのだろうか。
■「宗教票」は衰退し続けている
そもそも公明党とは周知のように、新宗教団体・創価学会をその母体とする政党である。その創価学会とは会員(信者)数・827万世帯を公称する、日本最大の新宗教団体だ。その組織的基盤の上に公明党は、全国の衆院小選挙区において1選挙区あたり1万~2万票程度の集票力を持っているとされる。
そのこと自体は確かにものすごい話なのだが、現在の衆院小選挙区にて1万~2万票という数字は、それ単体で独自の候補を当選させられるものではない。よって公明党は1996年から衆院選に小選挙区制が導入されて以来、大半の期間を自民党と連立を組み、自民党との選挙協力体制を構築することで乗り切ってきた。つまり、衆院小選挙区から出馬する公明党の候補は、自民党から保守票をいわば借りることで、選挙戦を勝ち上がってきたのである。
しかし、1999年から続いてきた自公の連立は、昨年10月に崩壊した。繰り返すが実は公明党とは独力にて、衆院小選挙区で勝利することが基本的にできない政党である。そして比例代表にしても、衆院選で公明党が集める比例票は2005年の898万票を頂点にして、24年には596万票まで落ちた。
最大の原因は、2023年に死去した創価学会のカリスマ・池田大作名誉会長と直接触れ合った記憶を持つ、熱心な学会員たちの高齢化である。そして、創価学会が池田氏に代わる新しいカリスマを生み出せていない状況で、この流れが好転する可能性はあまりない。
こうしたことを前提に、特に自公連立が崩壊した昨秋以降、創価学会の周辺では「このまま次の衆院選に突入したら、公明党は10人ちょっとくらいしか当選者を出せないのではないか」といった懸念が、深刻に語られてもいたのだ。
■「中道」結党で生き残りをかけたが惨敗
中道改革連合とはまさに、創価学会側から見れば「実は独力で選挙に勝てない公明党」が何とか生き残りをかけて、立憲民主党を新しいパートナーにして立ち上げた党と見ることのできる存在だ。
もちろん、この新党が具体的にどういう話し合いの結果として結党されたのか、またなぜ公明系が小選挙区から撤退することになったのかなどは、合流した関係者(特に立憲系の一般議員たち)からですら、「何も聞いていない」といった批判が出ている状況で、現状において外部から詳細な分析をすることは難しい。
ただ結果として、比例代表に集中した公明系候補は、従来からの公明票に立憲支持層からの票を加えた数字で勢力を拡大させ、一方で小選挙区から選挙に打って出た立憲系候補たちは、自民党に吹いた“高市早苗旋風”に蹴散らされて惨敗を喫することになった。
■「公明系にしてやられた」と語る落選候補たち
さて、ではこれからどうなるかだ。
すでに述べたように、現在SNSなどでは「公明系は立憲系をだまして利用し、自分たちだけが勝利を得た」などといった書き込みが散見され、「結局創価学会は、公明系候補が出ていた比例代表の票集めだけに集中し、小選挙区の旧立憲候補をほとんど応援しなかったのだろう」といった意見も目立つ。
しかし各種の世論調査や出口調査などをながめてみれば、公明支持層は割と手堅く中道改革連合支援のためにまとまって動いていて、彼らが意図的に立憲系勢力を見捨てたような証拠を見出すことは難しい。実際に一般の創価学会員たちに尋ねても、「今回の選挙では結局、今までと同じような熱量で立憲系候補を応援することになった」と語る人がほとんどだ。
しかし、負けは負けだ。そして落選した立憲系候補たちがいま、「われわれは公明系にしてやられた」と言わんばかりの発信を行っている例も見える。
そもそも中道改革連合は、まず衆議院にいる立憲勢力と公明勢力が合同して衆院選を戦い、参議院と地方議会の勢力はその後に合流するという方針が示されていた。しかし選挙後の2月12日には「参院の立憲民主党と公明党は統一会派を組まない」という報道が流れ、これ以上の立憲・公明の合流構想は頓挫していると判断してもいいような状況だ。
メディアには「中道改革連合はこのまま空中分解するのでは」といった記事も珍しくなく載っており、それは決して、いい加減な推測とも言いがたい。そして、この状況に創価学会・公明党関係者たちは深刻に憂慮しているのである。
■「公明党と手を組んでくれる政党があるのか」
繰り返すように、公明党とは実は独力にて、国政選挙(特に衆院選)で大勝することが難しい政党なのだ。そしてただでさえ地力が弱まっている中で、「選挙協力相手を利用し、だまして成果を得る党」というようなイメージが今回の衆院選で間違いなく発生し、それが独り歩きしようともしている。
「とにかく中道改革連合そのものに、明るい希望が持てなくなっている。しかし、これから新たに公明党と手を組んでくれる政党があるのか。自民党がこれだけ大勝した状況下では、簡単に『自公連立の復活』という方向にも進めないだろう」(ある公明党関係者)
世間では今回の自民党の大勝をうけて、「当面、選挙はない」といったことが言われているが、それはあくまで衆院選に限った話だ。公明党はもともと地方議会の勢力を非常に重視してきた政党だが、来年の2027年には統一地方選があり、その翌28年には参院選だ。
ある古参創価学会員は、「中道改革連合がこんなガタガタの状況で、はたして来年、再来年の選挙を戦えるのか。負けが続けば、希望はまったく見えなくなる」と暗い表情で語る。
■「選挙での負け」がもたらす深刻な影響
なぜならば創価学会とは従来、選挙活動を会員たちの信仰心が試される「法戦」だとし、支援した候補が当選することを、宗教的な功徳につながるものだとしてきた流れがある。つまり“負け”が込めば組織としての活力は失われ、創価学会全体として、いわゆる負のスパイラルに落ち込んでしまう危険性もあるのだ。
そういう意味では、中道改革連合全体として今回の衆院選で大敗し、個々の創価学会員たちも立憲系候補に力を入れてプッシュした以上、「『公明系候補たちは当選したので、それでいい』という話にはならないし、実際にいま、創価学会全体の雰囲気は結構暗い」と、前出の古参学会員は話す。
前述したように、このまま中道改革連合が崩壊しても、公明党として簡単に次の協力相手は見つけられないだろう。次の選挙(統一地方選)まで、実はそう時間もないというなかでは、「やはりベターなのは、中道改革連合という枠組でしっかりとやっていくこと」(前出の公明党関係者)にはなろう。
■創価学会員が呟く“起死回生の秘策”
そんななかでいま、一般の創価学会員たちの間から、次のような興味深い意見が出てきている事実がある。
「斉藤鉄夫さん(公明党前代表)ほか、中道改革連合の公明系議員の何人かは、このまま自発的に議員辞職すべきではないか。そうなると比例代表の名簿が繰り上がり、落選した立憲系候補の何人かが復活当選することになる。そうやって公明系サイドとしての誠意を見せて、中道改革連合全体としての団結を維持していく方向につながればいいと思う」(関東在住のある創価学会員)
突飛といえば突飛な話であり、またこれはあくまで一般層の学会員たちが口にしていることにすぎず、実現可能性がある話かどうかもわからない。しかし、すでに筆者は取材のなかで、このようなことを真剣な表情で言う、複数の創価学会員に会った。そこに共通してあるのは、「このままでは創価学会および公明党は、大変なことになってしまうのではないか」という憂慮の念である。
ひとまず中道改革連合の新代表は、立憲系の小川淳也衆議院議員に決まった。
----------
小川 寛大(おがわ・かんだい)
『宗教問題』編集長
1979年、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙『中外日報』記者を経て、2014年、宗教専門誌『宗教問題』編集委員、15年、同誌編集長に就任。著書に『池田大作と創価学会 カリスマ亡き後の巨大宗教のゆくえ』(文春新書)、『南北戦争 アメリカを二つに裂いた内戦』(中央公論新社)、『誰が「お寺」を殺すのか 貧困化する寺院と多様化する葬儀ビジネスの裏側』(宝島社新書)など。
----------
(『宗教問題』編集長 小川 寛大)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
