子育て、家事、仕事に追われ「回らない」と感じていないだろうか。多くの人は頑張ろうとするが、8人暮らしのママFP・橋本絵美さんが出した答えは逆だった。
暮らしを立て直す鍵は足すことではなく、手放すことにあるという――。
■本当に必要なのは、頑張ることではない
子育て、家事、仕事、家計管理、人付き合い。毎日やることであふれ、気づけば1日が終わっている。ちゃんとやりたい気持ちはあるのに思うように進まない。やってもやっても終わらないまま朝がまた来る……そんな感覚を抱えたことはありませんか?
日々の暮らしは、本来は単純な作業の集合体です。でも、同時進行が重なり、順番が崩れ、気づけば絡まり合っている。多くの人は、もっと頑張ればほどけると思い込んでいます。でも、絡まった毎日をほぐすために本当に必要なのは、実は頑張ることではありません。
私はお片づけプランナーとファイナンシャルプランナーとして活動しながら、6人の子どもを育てています。どうやってそんな生活が成り立つんですか? とよく聞かれますが、特別な能力があるわけではありません。今回は、大家族ママFPが実践する、子育て・家事・仕事を両立させるための、「絡まる毎日のほぐし方」をお伝えします。
■パズルが難しければ、ピースを減らせばいい
子育て中の毎日は本当に目がまわるくらいの忙しさです。
子どもの世話、学校や保育園対応、洗濯、料理、片づけ、掃除などの家事、仕事、家計管理、親族や地域との付き合いなどなど、どれか一つでも滞ると、他も連鎖的に滞っていきます。しかも、放っておくとタスクは年々積み重なって増えていきます。子どもが成長すれば行事は増え、提出物は増え、役割も責任も増える。仕事も年数とともに求められることが増えていきます。それなのに今までと同じ感覚で暮らしを回そうとしてしまいます。だから苦しくなるのです。
片づけや家計相談で必ず聞く言葉は、「時間がない」「余裕がない」「やるべきことが多すぎる」。でもそれは、みなさんが怠けているからでも、能力が足りないからでもありません。単純に、パズルのピースが増えすぎているだけなのです。
ちょっと考えてみてください。小さいこどもは2ピースのパズルから始めます。2ピースなんて大人から見るととても簡単! でも300ピースのパズル、1000ピースのパズルだと、どうでしょう? 同じ絵だったとしても、ピースが増えると難しくなると思います。
日常のパズルも知らない間にどんどんピースを増やしてしまって、完成させるのが難しくなっているのです。
■処方箋1:動作を1つ減らす
私がいつも意識しているのは“パズルのピース”を減らすこと。同じ絵ができるのであれば、パズルのピースは少なくていい。やらなくていいコトはなるべく減らす。持たなくていいモノはなるべく持たない。暮らしのパズルのピースを減らすようにしています。
例えばわが家では洗濯物は干しません。しかもタオルや子ども服は畳みません。全てドラム式乾燥機で回したら、ポイポイかごや引き出しに投げ込んでいます。しわになると困る大人の衣類はクローゼット収納にしていますが、干す・取り込む・たたむ、の作業がなくなり、家事は格段にラクになりました。
また、干さないので物干しや洗濯ハンガーもありません。
動作を1つ減らす、持っているものを1つ減らす、それだけで毎日の小さな疲労が確実に減ります。
減らすことは我慢でもなければ怠惰でもありません。減らすことでほころびがひとつ減り、暮らしは勝手に回りだします。
■処方箋2:“モノ”を減らす
モノが多いと知らず知らずのうちにお金もエネルギーも浪費しています。散らかった部屋は、見ているだけで疲れますよね。片づいた机の方が仕事効率も上がります。
そもそもモノは、私達の貴重な時間を使って稼いだお金で買ったもの。必要なモノであればいいのですが、必要以上にモノを持っていると、管理する時間、探す時間、迷う時間、そして重複して買ってしまう時間がかかります。もちろん出費も増えます。更には増えすぎたモノの収納が必要になったりと、モノのためにモノを増やしてしまう悪循環です。
わが家は6人の子どもたちがいるので、気を抜くとおもちゃ、服、学用品、子どもの作品……と、あっという間に家の中がモノで溢れかえります。そんなわが家では定期的に「いる・いらない会議」をして手放すことを習慣にしています。
学用品は学期末ごとに子どもたちと一緒に「いる・いらない会議」をします。
本人たちにいるか、いらないかを判断させて、不要なものはすぐ処分します。
衣替えのときには、サイズアウトした服や子どもが気に入らず着てくれない服も、もったいないからと言って取ってはおくのではなく、すぐにおさがりで譲るようにしています。
買ったけれど使わなかった物や、頂き物などもなるべく早く判断し、きれいなうちに必要としている人に売ったり、譲るようにしています。
モノが減ると本当に必要なものだけが手元に残るため、家事効率が上がります。モノの管理に費やしていた時間と労力を家族との時間やリラックスする時間にあてられるようになります。モノを手放すと、お金と時間、空間にゆとりが生まれ、絡まった毎日がほぐれていくことを実感できると思います。
■処方箋3:選択肢を減らす
私たちは一日に何度も何度も選択をしています。服、朝食、献立、買い物、支払い方法。選択肢が多いほど脳は疲れます。わが家では買い物や料理、家事をリスト化やパターン化、ルーティン化するようにしています。選択肢を減らすことは自由がなくなるということではありません。迷う時間を減らし、本当に大切なことにエネルギーを残すための工夫です。
選ばなくていい、迷わなくていいだけで、暮らしは驚くほど楽になります。
■処方箋4:スケジュールを減らす
予定が多すぎると、私たちの心は常に先回りで疲れています。今日のタスクをこなしながら、明日の準備、来週の予定、来月の心配まで、同時に抱えてしまう。これもパズルのピースが増える原因です。
私は「やらなくていいことはしない」を意識しています。本当に行きたい予定か、本当に必要な用事か、行かなかった場合どうなるかを考えて、優先順位の低いものは、予定をとりやめることもあります。スケジュールを減らすことは人間関係を切ることではなく、逆に本当に大切な家族、友人との人間関係を強くすることができます。スケジュールが減ると、気持ちに驚くほど余裕が生まれ、暮らしのパズルは一気に解きやすくなります。
■処方箋5:1つずつ完了させる
多くの人が無意識にしているのが「同時進行」です。料理をしながら洗濯を回し、子どもの話を聞きながら洗濯物を畳み、片づけをしながら次の予定を考える。一見効率的に見えますが、結局は一つの動作しかできません。同時進行でなんとかしようとするのは、暮らしが絡まる原因です。

私は忙しいときほど、「1つずつ完了させる」を意識しています。そうすると、スピードが高速になるのです。1つずつとりかかることで、より集中力が高まり、早く進めることができます。完了! 完了! 完了! と1つずつ完了させます。仕事や家の雑務はやるべきタスクを書き出し、終わったら線を引いていくと、やるべきことも明確になり、達成感も得られます。子どもがいるとどうしても同時進行になってしまうのですが、それでもひとつずつ完了を意識すると、それだけで家事効率が驚くほど変わります。
■処方箋6:家電に頼る
「家事は自分でやるもの」「母親だから頑張らなきゃ」……そんな思い込みが、知らないうちに私たちを追い込んでいることがあります。でも、今の時代、家事は一人で背負うものではなく、家電と分担していい仕事です。わが家では、ドラム式洗濯乾燥機、食洗機、自動調理器、ロボット掃除機など、家電が代われるものは全て家電に代わってもらっています。
洗濯物を干さなくて済むだけで、どれほど時間と労力が浮くかわかりますか。特に、わが家は子どもが6人なので、洗濯物を干さなくてすむだけで、1時間は他の時間に回せます。以前は、8人分の洗濯物を干せるベランダがあるということが物件選びの条件でしたが、それもなくなりました。
食洗機や自動調理器に任せることで、キッチンに立つ時間は驚くほど短くなります。食洗器に食器を入れるときには、「1分間チャレンジ」をしています。1分以内で入れ終わるようにしています。自分の手で洗うと1回の食事の後に30分はかかっていました。朝ご飯、晩ご飯だけでも1時間は他の時間に使えます。
物価高の今、家電は確かに高価です。でも、時は金なりですから、家電を買うことは浪費ではなく、私たちの時間を生み出してくれる、立派な投資です。そのほかの無駄な支出を減らして家電を買うことは、現代を生き抜く賢い暮らし方だと思います。
■処方箋7:完璧主義をやめることは手抜きではない
部屋は常に片づいている、台所も常にピカピカ、毎日のごはんは1汁3菜。そんな完璧な家事は私にはできません。だから私は完璧主義をやめました。散らかっても片づけようと思えば片づくのだったらそれでいい。ごはんも1汁1菜で十分。子どもがいると片づけたはしから散らかすもの。いちいち片づけていては体がもちません。完璧をやめることは手抜きではなく、持続可能な暮らしを選ぶことです。短距離走ではなく、長距離走の戦略でいきましょう。完璧主義をやめると、絡まった毎日は自然とほどけていきます。
■処方箋8:常識を手放す
「こうあるべき」という常識に縛られすぎると、自分たちの幸せが見えなくなります。「みんなやっているから」「みんな持っているから」と、知らず知らずのうちに「常識」に縛られて、自分にとって本当の幸せではないものにお金や時間を使い、ストレスを感じて生きていませんか。常識を手放して、「わが家の正解」を選んでください。無理のない暮らしは、絡まる毎日をほぐしてくれます。
橋本家は車もマイホームも持っていません。移動は自転車か公共交通機関を使います。駐車場代もかからず、自転車であればドアツードアで目的地まで移動できます。賃貸なので、ライフステージの変化に合わせて住まいを選ぶことができます。
私は、家事を毎日完璧にこなすという常識を手放しました。洗濯物は全て洗濯乾燥機で乾燥機にかけ、下着やタオル、子供服は畳みません。
常識にとらわれない橋本家流の生活や家事をすることで、時間や心の余裕が生まれています。
本当に大切なのは「わが家にとっての最適解」を見つけること。常識ではなく、わが家の幸せを優先することで、無駄な支出をすることなく、豊かな人生を送ることができるのではないでしょうか。
まとめ
家事や育児に追われる毎日は、まるで複雑に絡まったどこまでも長い毛糸のようです。私たちはつい、もっと頑張らなきゃと足し算で解決しようとしますが、本当に必要なのは減らすことです。あふれるモノ、詰め込みすぎた予定、そして完璧なママでいなきゃという思い込み。それらを一つずつ手放してみましょう。ママの笑顔は家族を笑顔にします。“減らす”ことは、大切なものを守るためのポジティブな選択です。今日から1つ、重荷をそっと下ろしてみませんか。

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橋本 絵美(はしもと・えみ)

はしもとFPコンサルティングオフィス 代表

6人の子どもを持つママFP&お片づけプランナー。福岡県出身。小さな頃から「大家族のママになりたい!」という夢を持ち、慶應義塾大学商学部卒業後、学生時代から交際していた夫と結婚。現在、中学2年生から3歳まで2男4女の子育て中。

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(はしもとFPコンサルティングオフィス 代表 橋本 絵美)
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