運命を切り開くにはどうすればいいか。経営者の規格外さんは「私が20年以上、億単位の営業利益を生み出し続ける会社を経営できるようになったのは、数多くの重要な意思決定の基準を明確な言葉として持つことができたからだ」という――。

※本稿は、規格外『すべては言葉からはじまる』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
■意思決定の基準を言葉にする
意思決定の基準。
これは本書における重要なキーワードの一つである。
やや硬い言葉だが、要するに、何かを決めたり行動するときに、頭の中で使っている「モノサシ」や「ルール」のことと思ってもらうといい。
これについては後ほど詳しく書くが、この「モノサシ」や「ルール」を明確な言葉として持っているかどうかが、人生を決定づける重要な要素になると私は確信している。
人生は一つのシステムとして捉えられる。そして、人生という大きなシステムの中に、仕事や人間関係、時間(タイムマネジメント)、健康、家族といった、人生を支えるための様々な、いわばサブシステムのようなものがある。
そして、それらのサブシステムをより良いものに更新していくことで、人生という大きなシステムを、目指す姿に近づけていけるようになる。
先ほどの「貢献」というドラッカーの言葉を、私が仕事における意思決定の基準とすることで人生が好転し始めたというのは一つの例であるが、同様に、それぞれのシステムにおける基準を明確に言語化していくこと。
それが、より良い人生を手に入れるためには欠かせない。
もう一つだけ例を挙げると、私は「貢献」の他に「仕事と作業の違い」を明確に言語化し、それを重要な基準としている。
これは私が20年以上、経営者として生きてきた中で、強く意識してきた基準でもある。

・仕事:一度やれば、永続的に価値を生み続けるもの。今日かけた労力が明日も来月も、さらには10年後にもリターンをもたらし、良い影響を及ぼし続ける営み。

・作業:その場限りで消えていくもの。一度やったら跡形も残らず、翌日にはゼロに戻ってしまう営み。
たとえば、一般的なメール返信は作業といえる。ほとんどのメールは、いくら丁寧に返しても、その瞬間に意味はあっても、翌日には同じ労力をまた注ぎ込まなければならず、積み上がらない種類のものだから。
■可能な限り「作業」はせず、「仕事」に時間を使う
一方で、ビジネスの仕組み化を図ったり、商品やサービスを磨き上げるために投資する時間は仕事になる。
サラリーマンであっても経営者であっても、作業をゼロにすることはできないけれども、意識して「仕事」の割合を高めることはできる。
私自身、どうしても避けられない事務的な用件や一時的なタスクは「作業」として対応するけれども、それ以外は一切自分でやらないと決めている。
そしてそれを可能にしたのは、可能な限り「作業」はせず、「仕事」に時間を使うという意思決定の基準を定めたところからだった。
この徹底は単なる効率化の話ではなく、自分の人生をどのようにデザインし、形にしていくかという哲学の問題でもある。
作業に時間を奪われれば、いくら頑張っても毎日ゼロからやり直し。
一方、仕事に時間を投じれば、それは雪だるまのように積み上がり、どんどん楽に、楽しくなっていく。
ここまでに二つの例を挙げたが、私は仕事という、人生を支えるための大きなサブシステムにおいて、数多くの重要な意思決定の基準を明確な言葉として持つことで成果につなげてきた。
結果的に独立して数年目から、20年以上、億単位の営業利益を生み出し続ける会社を経営できるようになった。
■「言葉によって自分を躾ける」
以上はあくまで仕事についてのことであるが、私はそれぞれのサブシステムにおいて、意思決定の基準の一つひとつを明確な言語にし、自分自身を「躾けて」きた。
「躾ける」という言葉は少し強く聞こえるかもしれないが、「言葉によって自分を躾ける」という表現ほど、しっくりくる言葉が存在しない。
その理由は、日常における意思決定のほとんどが無意識レベルで行われているからだ。
想像してほしいのだけれども、スキマ時間が生まれたときにあなたは何をするだろう?
本を読むのか、ゲームをするのか。
あるいは会食を終えたら、すぐさまお礼メッセージを送るのか否か。
朝起きて一番最初に何をするのか……。
私たちは毎日、毎分毎秒、何かしらの決断に迫られている。
大げさではなく、誰かの言葉に対して反応する際のトーンまでもが、習慣化された無意識のパターンに支配されている。
それを書き換えようとするならば、書き換えるための「言葉」を持つ必要があり、さらにはそれを何度も反芻することによって、ようやく行動に反映させられる。

それこそ、このプロセスは自分に向けての「躾け」そのものであるといえる。
■「習慣」は強力なシステムとして機能
放っておいても勝手に身についてしまうのが「悪い習慣」だが、言葉で自分を躾けた先に手に入るのが「良い習慣」。
私たちの人生をより良いものとする意思決定を下し、その決定を自動的に行動に移させてくれるものが良い習慣。
意識による「努力」は常に感情に左右され安定しないが、「習慣」は感情に左右されない強力なシステムとして機能するものだとも言い換えられる。
習慣というシステムを構築し、自己の無意識というOS(思考回路)にインストールする唯一の手段が、言葉による躾け。
たとえば、人と接する際には常に「貢献」を意識すると決める。
たとえば、優先して「仕事」を行い、作業は最小限に留めると決める。
たとえば、「前倒し」を自分の行動の型にすると決める。
こうした自分に向けた明確な言葉は、自らの行動に関する厳格なルール設定であり、それは躾けるための基準となる。
それらの言葉を漆塗りするように、何度も何度も反復することによって、少しずつ思考習慣と行動習慣が上書きされていく。
■脳は繰り返されたものしか「本気」と認識しない
その言葉が意識をすり抜け、習慣的な行動に変わるところまで、つまり無意識にパターン化されるまで、繰り返し自分に言い聞かせれば行動が変わり、やがては運命が変わり始めることとなる。
ここで学びを「漆塗り」にたとえたけれども、これは神経科学的にも筋が通っている話で、脳は繰り返されたものしか「本気」と認識しない。

一度だけの決意や、一晩のやる気で脳は動かないし、そうすればもちろん体も動かない。
良い習慣を定着させるには、脳が「仕方ないな、そろそろ従ってやるか」と観念するまで、しつこく言葉を重ねる必要があるのである。
言葉は知っているだけでは意味がない。何度も反復し、無意識のパターンを書き換え、行動に反映されるところまで刷り込んでこそ価値が生まれる。
■私たちの人生は、日々の小さな選択の積み重ね
今日、何を食べるか。誰に会うか。どの本を読むか。どんなメッセージを発信するか。一見些細に見えるこれらの選択が、長い時間を経て「私という人間の軌跡」となる。つまり、私たちの人生は、日々の小さな選択の積み重ねでできている。
ということは、人生において決定的な差を生むのは、選択にあたっての「基準」を持っているか否か。さらに掘り下げれば、その基準をきちんと「言語化」して残しているかどうかということになる。

決断の拠り所となる言葉を持たないなら、人生や仕事は「自ら意図して選んだ人生」ではなく、気づかぬうちに「周囲に流され、誰かに歩かされている人生」となっている可能性が高い。
具体的には、「これまでもそうしてきた」「周りの人もやっている」といった、理由にならぬ理由で動かされることになる。その生き方は短期的には問題ないように見えても、長期的に向かう方向感はバラバラでまとまりがなくなる。
この状態をたとえると、海図も羅針盤も持たずに大海に漕ぎ出した船のようなもの。行き着く先は、良くてたまたま流れ着いた無人島の浜辺、悪ければ難破し、海の藻屑。それが嫌なら、自らに問うべきはただ一つ。
「流されるままの人生でいいのか、それとも自ら行き先を選ぶのか」
決断の基準を言語化することは、この問いに「私は自ら行き先を選ぶ側である」と宣言する行為に等しい。
■自分の言葉に「翻訳」する
ところで私が自分の言動を修正できたのは、意思決定の基準となる言葉が明示的に言語化されていたからである。
ドラッカーが「貢献する」という言葉を用いることによって、誰でも分かる状態にしてくれていなかったら、私は行動につなげることができなかった。
あるいは、仕事と作業の違いを言語化していなければ、未来につながるような行動を積み重ねることもできなかっただろう。
人は、感覚や感情だけでは動けない。
「成功したい」「成果を出したい」といった漠然とした願望は、行動変容につながるエネルギーにはならない。

自身の行動、さらには人生全体を望ましい方向に変えるには、明確に言葉として示された、高い納得性と説得力を持つ「設計図」や「命令」が必要となる。そして、それこそが意思決定の基準。
大きくは「自分がどうありたいか」という目標と、「そこに近づくには何をどうすればよいか」という具体的アプローチ。それらを明確に言葉にする力が求められてくる。
私は自分の立てた目標を叶えるために、お金や時間、人間関係といった様々なサブシステムを言葉を通して、一つひとつ整えていった。
そうして、気づけばとても居心地の良い状態、それは決して華美な生活をするとかではないけれども、経済的にも精神的にも、穏やかで心にゆとりのある生活を過ごせるようになった。
ここまで書いてきて改めて思うのが、あらゆることは言葉ありきであったということ。
そう、すべては言葉からはじまるのだ。

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規格外(きかくがい)

経営者

京都大学大学院中退。米系グローバル企業を経て、起業。ニッチ市場をゼロから創造し、20年以上にわたって億単位の営業利益を継続。自身の挫折と成功の経験から、「使う言葉を変えるだけで、人生いつからでも作り変えられる」という信念に至る。Xフォロワー数6.6万人。

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(経営者 規格外)
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