※本稿は、規格外『すべては言葉からはじまる』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
■40歳手前で「人生の3分の2は終わり」なのか
昔話から始めたい。かつて私はそれなりに有名な中高一貫の進学校に通っていた。
同級生の結婚式に参加したときのことである。当時私たちは40歳になる少し手前で、社会人として脂の乗っている時期だった。
参加した同級生はキャリア官僚であったり、日本を代表する企業に勤めていたり、外資系コンサルティング会社のコンサルタントとして活躍していたり、それなりに順風満帆な人生を歩んでいた。
そのうちの一人が二次会の最中に、何気なくこんなことを言った。
「俺らの人生も3分の2が終わったな」
社会人の初期に挫折を味わい、転職した先の倒産を経て立ち上げた事業を運営していた私にとっては、人生の3分の2どころか、ようやく始まったばかりくらいの感覚だったのだけれども。
私は、「彼は何を言っているのだろう」と思いながらその続きを聞いていた。
東京大学を出て、財閥系の大手メーカーに勤めていた彼が言うには、「順調にいけば50歳前後で役員になれるが、役員になれなければそのあたりが人生のピークであり、そのあとは消化試合が待っている。23歳で社会人になったときから計算してみると、今は人生の3分の2が終わったくらいになる」というような話だった。
私が否定しようと身を乗り出した瞬間、周りの友人たちがみんな「言われてみればそうだよな」と同調した。
議論しても仕方のない話なので、その場は何となく「そういう考え方もあるよね」という曖昧な感じで終わらせた。
■言葉の限界が思考の限界
このとき私は、言葉の限界が思考の限界を決めるのだと強く思った。
おそらく彼もそんなに深く意識して言ったわけではなく、何となくの感覚で「人生の3分の2が終わった」と言ったにすぎないのだろう。
けれども「予言の自己成就」という心理学の言葉がある。
人が何かを予期したり信じたりすると、その予測や信念が、現実の行動や状況を無意識のうちに変え、最終的に予期した通りの結果が実現してしまう現象のこと。
これは、以下の3つのステップで起こる。
①予期する:「自分は成功するに違いない」あるいは「自分は失敗するだろう」と予期したり、信念を抱く
②行動の変化:その思いに沿った行動を無意識的にとってしまう(成功を信じる人は積極的に行動し、失敗を信じる人は挑戦を避ける)
③結果の実現:その行動が、当初の予期通りの結果を引き寄せる
「人生の3分の2が終わった」と言葉にすると、きっと無意識のうちにこう思うだろう。「俺の人生、あと3分の1しかない(ここから何をやったところで大したことはできない)」
こんな風に思ってしまうと、新しいチャレンジができるだろうか?
新たなことを学ぼうと思えるだろうか?
おそらくそのようなことは考えもしないか、考えたとしても行動に移すまでに至らないケースがほとんどになるのではないか。
結果的に残り3分の1の時間を挑戦することなく過ごすことになる。
■人生は言葉選びが9割
この例からも分かると思うが、今風の言い方をするなら「人生は言葉選びが9割」といえるのではないか。
言葉の扱い方で未来が決まる。
日々、「あいつムカつく」と文句ばかりの人と、「あの人にはこんな良い点もある」と美点を見つけようとしている人の、どちらが友だちが多そうか考えてみればいい。
ふだん脳内で回している言葉で、人生はほとんど決まってしまうといっていい。
極論を言えば、脳内で回している「上位10語」が思考の枠組みを作り、選ぶ行動を決めていく。
「前倒し」「複利」「積み上げ」「信用」「信頼」「ご縁」……これらは一例であるが、たとえばそんな言葉で頭の中が埋まっていれば、未来は末広がりになるだろう。
逆に、「ウザい」「ヤバい」「ダルい」「キモい」「ムカつく」、といった言葉で世界を切り取る人の未来がどうなるかも、容易に想像がつく。
日々、どんな言葉(フィルター)を通して世界を見るかで、行く末が決まるのである。
似たような話でこんなことがあった。「アンガールズの田中卓志さんが二級建築士の資格に挑戦する」というネットニュースの記事を読んだときのことである。
何気なく記事のコメント欄を眺めていたら、「何がすごいって、この年齢で挑戦するのがすごいと思います」というコメントに、「共感した」のボタンがたくさん押されていた。
■年齢を重ねるごとに「若返る人」と「老いていく人」
もちろん田中さんの挑戦は素晴らしいことだが、「この年齢でとか書いてるけど、田中さんって、そんなに歳いってたっけ?」と調べてみると、49歳(当時)だった。
あなたは49歳と聞いて、どう思うだろうか? 私の周りには、その前後の歳で起業しようと考えているような人はざらにいるし、「これから第2の人生に挑戦だ」と燃えている人だってたくさんいる。
こうした両者の認識の差が、年齢を重ねるごとに「若返る人」と「老いていく人」を隔てるのだなと思ったものである。
「もう歳だから」とか「自分なんか……」と、自らの可能性に蓋をする言葉を発してしまう人は実に多い。
ずいぶん前の話になるが、シャープの副社長をされていた佐々木正氏と食事をご一緒したことがある。
ソフトバンクの創業者・孫正義氏が学生時代、自らが開発した「音声機能付き電子翻訳機」を売り込みに行った相手。
他社が相手にしなかった若き学生のアイデアに資金を出したことでも有名な方で、この資金供給と経験がなければ、のちのソフトバンク創業はなかったとされている。
その佐々木氏、当時すでに96歳だったが、非常に好奇心旺盛な方で、「江崎くんからハガキを貰った」とノーベル賞受賞者の江崎玲於奈氏から送られたハガキを見せてくださったり、先週アメリカから帰ってきたばかりなのに翌週にはロンドンに行くんだとワクワクされていた。
■高齢でも精力的に動ける「渋沢栄一の言葉」
ところで当時、私は「100歳研究」と名付けて、人生100年時代を見据え、100歳まで心身ともに健康で、かつ経済的にも自立した幸せな状態を維持するための方法を探る、独自の探求をしていた。
その過程で渋沢栄一が言ったという、
「四十、五十は洟垂れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと追い返せ」
という言葉を知ったのだが、佐々木氏の姿を見て、まさにこういうこと、と思ったもの。
これも言葉で世界を規定しているわけであるが、これが「六十、七十で枯れ落ち葉」とかだったら、その時点で散ってしまっていることになる。
花は蕾だからこそ咲こうとするわけだし、70・80歳で働き盛りだと思っていれば、精力的に動くことができる。高齢になってから活躍している人は他にもたくさんいる。
こうした違いがどこから生まれてくるのかといえば、自分自身について、そして年齢に対してどのような言葉で定義してきたか、によるのではないか。
ただ、言葉を書き換えたり、定義し直すといっても、言葉そのものを持っていなければ書き換えも定義のし直しもできない。そのためには何をすればいいのだろうか?
■どんどん元気が湧いてくる名言集
そのための方法の一つが自分だけの名言集を作ることである。
私が言葉の持つ力を強く感じるようになったのは、大学3年生のときだった。
当時20歳だった私は、子どもの頃にイメージしていた未来の姿と比べて、大きく外れつつあった。そして、どこか自分が世の中とカチッとはまっていないという鬱屈した想いを抱えていた。
そんなとき、年上のある人と出会ったのだけれども、その方は趣味で名言を収集し、独自の名言集のようなものを作られていた。
名言集なので、やる気の出る言葉、元気の出る言葉、モチベーションが高まる言葉などが、それこそ何百個、何千個と集められていた。
世間知らずだった私は、長い時間をかけ、多大なエネルギーを注いで作られたのであろう、その名言集を「コピーさせて下さい」とお願いしたのだけれども、気の良い人で「いいよいいよ」とすべてをコピーさせてもらえることになった。
それ以降、名言集を繰り返し読むにつれて、どんどん元気が湧いてきて、やがて自分でも同じように言葉を集めるようになっていった。
■そのうち名言が身体化され「その気」になる
不思議なもので小説、エッセイ、自伝、詩歌から新聞記事や漫画に至るまで、あらゆるジャンルの活字から集め続けた名言集を読んでいると、「よし、やってやろう」と、その気になってくる。
これはカンフル剤として使えるなと思い、常に持ち歩くようになり、暗記しようと思ったわけでもないのに、気に入った言葉は自然と暗誦できるようにもなっていった。
そのうち、その言葉が身体化され、最初はエナジードリンクを飲んで意図的にやる気を出すような感じだったものが、意図しなくても「その気」になっていく。
「やる気」は浅井戸の水のようなもので、意図的に汲み上げる必要があるし枯渇するが、「その気」は地下水のように枯れることなく持続する。
良い言葉というのは、ありがたいことにあらゆる活字の中に存在している。
それらを拾い集めてまとめ、自分だけの名言集を作ることは、言葉を手に入れる方法としておすすめである。
■心を震わせる文章1000個を抜き書きする
では、そうした名言をどのようにして集めるかといえば、私のおすすめは「抜き書き」である。
抜き書きとは、心を震わせる文章を見つけたら書き留め、何度も読み返し、自らの血肉にしていく営み。
書き写しの基準は「これは記録し、残しておきたい!」と思えるかどうかだけでよい。
まずは、1000個を目標に集めるといい。大変に思えるかもしれないが、慣れてきたらどんどん集めたくなり、自然と増えていくから、思っているほど時間はかからない。まずは小さく始めるところから。
抜き書きを重ねるうちに、人は必ずある衝動に突き動かされるようになる。それは「自分でも言葉を紡ぎたい」という欲求。
このあたりから他者の言葉に鼓舞されるだけでは満足できなくなり、自らの言葉を生み出す段階へと移行する。
やがて自分の言葉を紡ぎ、量産せずにはいられなくなった頃から、人生に揚力が生まれ、浮き上がる感覚とともに、好転し始める。
その瞬間が訪れるまでには相応のタイムラグがあるが、そこまで諦めなければ、必ず一気に成果が加速する局面に入る。自らの言葉に力を得て、主体的に人生を切り開いていけるようになる。
----------
規格外(きかくがい)
経営者
京都大学大学院中退。米系グローバル企業を経て、起業。ニッチ市場をゼロから創造し、20年以上にわたって億単位の営業利益を継続。自身の挫折と成功の経験から、「使う言葉を変えるだけで、人生いつからでも作り変えられる」という信念に至る。Xフォロワー数6.6万人。
----------
(経営者 規格外)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
