「話が長い」「で、結論は?」「何を言っているかわからない」。自分の話にそんな厳しめのフィードバックがくることがある。
マーケティングコンサルタントで会社経営者の宮脇啓輔さんは「私も新卒で入社したサイバーエージェント時代に何度もそうした指摘をされた。もし、あなたの職場がピリついているなら、それはむしろ成長のチャンスかもしれない」という――。
※本稿は、宮脇啓輔『できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■なぜ結論から話すべきなのか、その本当の理由
結論から簡潔に話す、いわゆる「結論ファースト」は、ビジネスにおける基本として、皆さんもこれまで散々言われてきたのではないでしょうか。しかし実際には、意外とできていない人が多いのが現実です。
結論ファーストを意識して、「結論は~」と切り出したものの、肝心の結論を言わないまま説明を始める人も少なくありません。
「ちょっといいですか?」とだけ言って、雑に話し始める人もいます。これでは相談なのか報告なのか、どのくらい時間がかかるかもわからず、聞き手はストレスを感じます。
「結論ファースト」が浸透しているにもかかわらず、なぜ実践できる人が少ないのか?
それは、結論から話すべき本当の理由を理解できていないからではないでしょうか。
ここでは二つの視点から解説します。
理由1 結論から話せないことは機会損失である
結論から話すべき理由として、「相手の知りたい結論を先に伝えたほうがわかりやすい」「時間短縮になる」の二つがよく言われます。しかし、それだけでしょうか?
結論から話すべき本質的な理由の一つ目は、「結論から話せない人は、仕事ができないと思われる」ことです。

話が長く結論が見えない人は、自分の考えが整理できていないまま話し始めているケースが多い。さらに、相手の時間を奪っているという自覚もないため、「頭の整理ができていない」「要約して簡潔に話す能力がない」と評価されがちです。
その結果、「大きなプロジェクトに呼べない」「重要な会食に同席させられない」と判断され、本人の知らぬ間に機会を失っていきます。
私も「結局、これは何の話なんだろう?」と思いながら人の話を聞く経験は少なくありません。部下や親しい間柄であれば「もっと話を整理してから話して」と注意できますが、そうでなければ、そこまでストレートに伝えることもできません。
こうした機会損失は、自覚しにくいのが怖いところです。注意されないだけで、実は相手に「この人は仕事ができない」と思われている可能性があります。
■経営層や役員クラスの「脳の単価」
理由2 部下は上司の脳を疲れさせてはいけない
もう一つの本質的な理由は、「聞く側の脳を疲れさせないため」です。
会話においては、話す側よりも聞く側のほうが脳を使うという話を前項でしました。話す側は自分のなかの情報を出すだけですが、聞く側は未知の情報を理解・整理し、判断まで求められるからです。
つまり、報告や相談を受ける上司のほうが、脳のリソースを多く消費しているのです。
特に経営層や役員クラスは、意思決定のための「脳の単価」が非常に高い。
部下がダラダラ話すことで時間を浪費するだけでなく、上司の判断力そのものを下げてしまう危険があります。
上司の脳内リソースを奪うことは、会社全体の生産性を下げることにも直結します。つまり、「結論から話す」は上司のためであると同時に、組織全体のパフォーマンスを守る行為でもあるのです。
■不寛容な環境が人を育てる
では、どうすれば「結論から簡潔に話す」力が身につくのか? 答えの一つは「圧をかけられる環境に身を置くこと」です。
私自身、若手時代には「話が長い」「で、結論は?」「何を言っているかわからない」と何度も指摘されました。
私が新卒で入社したときのサイバーエージェントには、仕事ができて、常に忙しくしている先輩や上司がたくさんいました。彼らに時間をもらうために、こちらも必死でした。
そこで、上司に話しかける前に準備とシミュレーションをする癖がつきました。ちょっとした会話をするときも、事前に考えを構造化し、脳内でシミュレーションして、想定質問も用意しました。こうすれば、上司との会話も必要最低限で終わらせることができます。
職場環境が「ダラダラとした報告」に不寛容であればあるほど、新人の話し方も自然と矯正されていくのです。
しかし現代では、「それはパワハラだ」と受け取られる恐れから、上司が厳しく指摘しにくくなっています。

部下の要領を得ない報告も、上司が「いいよ、いいよ」と辛抱強く話を聞いてもらえる環境で、「結論から簡潔に話す」力を身につけるのは、かなりのメタ認知力と努力を必要とします。
だからこそ、私は部下や後輩に対して「忙しい人の脳のリソースを奪うな」と言い続けています。上司が「俺の時間を無駄にするな」「話をまとめてから来い!」とキレて見せたりすることも、部下の成長の手段としては有効なのかもと思っています。
もしあなたの職場がピリついているなら、それはむしろ成長のチャンスかもしれません。
■結論から簡潔に話すための3つのスキル
結論から簡潔に話すスキルは、大きく3つに分解できます。
① 要約力(結論を一言で伝える力)

② 想像力(相手が知りたい情報を取捨選択する力)

③ 構造化力(適切な順番でわかりやすく話す力)
これらをいきなり身につけるのは難しいですが、次のように練習するとよいでしょう。
①要約力を磨くには、「一言で言うと~」「結論は~」を口癖にしましょう。 特に上司に話すときや会議で発言するときに強く意識してください。うまく話せなければ、書いて整理してみるのがおすすめです。
②想像力を磨くには、上司に「この報告では何を知りたいですか?」と直接聞いてみましょう。相手が知りたい情報を想像するにはそれなりの経験と知識が必要ですから、最初はとにかく聞いてみるのです。
また、報告や発言をした際、「なんで?」「ここはどうなっているの?」と突っ込まれたら、突っ込みをしてきた上司や同僚に、後で「ありがとうございました」とお礼を言って、なぜあそこで聞いてきたのか質問してみるのもいいでしょう。

そうすれば「この点を確認しておかないと、この先のことを考えられないから」「他部署との連携に関わってくるから」などと、理由を教えてくれます。そうしているうちに「相手が知りたい情報」がどんなものかがわかってきます。
③構造化力を習得するには、話す前に、テキストで話の構成を書き出してみることをおすすめします。書き出すことで、論理の穴が見えやすくなります。
最初は情報が不足しても構いません。結論から簡潔に話し、足りない部分は相手に質問してもらえばいい。
「まず減らして、必要に応じて足す」ことで、各層に最適な情報量が見えてきます。
■ビジネスシーンでは、大いに他人と比較せよ
話が長い人が減らないもう一つの理由は、「他人と比較しないから」ということもあるかもしれません。
「他人と比べずに自分らしく生きなさい」などと言われるように、人生において他人と比較することは否定的に語られがちですが、ビジネスにおいては、他人と比較しなければ自分の現在地を把握できません。しっかり他人と比較してください。
優秀な人と自分を比べて、今の自分に何が足りないか、何を身につけるべきか、というように、“差分”を意識しましょう。話し方であれば、話が簡潔でわかりやすい人と自分を比較することで、自分の話の長さに気づくことができます。

結論から簡潔に話す練習として、プレゼンやピッチなど、大勢の人の前で話す機会を増やしましょう。noteやXなどで発信するのもいいでしょう。これらに共通するのは、時間や文字数の制限があるため、物理的に簡潔にせざるを得ないということです。ぜひ試してみてください。
■ピリつく経験が人を成長させる
「結論から簡潔に話す」を身につけるには、何よりも「ピリつくような体験」をたくさん積むことだと思っています。
ある程度の規模の会社では、出世すればするほど、「社長への報告が30秒しかもらえない」「取締役の会議で、自分の意見を一言で伝えなければならない」といった場面が増えていきます。そうした緊張感のある環境では、自然と「結論から簡潔に話す」力が磨かれていきます。
出世するということは、脳のリソースが高価な人たちに囲まれて仕事をするということです。だからこそ、話は短く、要点だけを伝えなければなりません。逆にいえば、その対応ができない人がさらに上のステージへ進むのは難しいわけです。
ピリつくような瞬間こそが、成長のチャンスです。限られた時間と緊張感のなか、どう伝えれば相手に届くのかを必死に考える――その経験の積み重ねが、あなたの“即答力”を確実に鍛えていきます。

皆さんも明日からさっそく、「結論から簡潔に話す」を徹底してみてください。

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宮脇 啓輔(みやわき・けいすけ)

unname 代表取締役、マーケティングコンサルタント、日経COMEMOキーオピニオンリーダー

1991年3月生まれ。滋賀出身、立教大学卒。2014年、新卒でサイバーエージェント入社。社会人としてのスタンス、コミュニケーション力、基礎動作などのソフトスキルを習得し、Web広告運用コンサルタントとして月間1.5億円の運用実績をあげる。2017年、上場前のBASEに入社し、アプリマーケティングを担当。2018年、ペイミーにCMOとして参画し、BtoBマーケの立ち上げから、ビジネスチーム全体のマネジメントまで行う。2019年、unnameを創業。BtoB企業を中心に累計約50社のマーケティング支援を行う。現在は総合マーケティングカンパニーとして、支援業務以外に、研修事業、プロダクト事業などを展開している。社内Slackで情報発信をしていたところ、「外に発信しないともったいない」と言われ、Xとnoteで20~30代向けに発信を始める。その一つである“「頭の回転が速い」を科学する”がnote社主催の創作大賞2024入選。本書が初の著作となる。

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(unname 代表取締役、マーケティングコンサルタント、日経COMEMOキーオピニオンリーダー 宮脇 啓輔)
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