子どもに「クソババア」「あっち行って」などと反抗的な言葉をぶつけられるとイライラしたり、自分の育て方が悪かったのかと落ち込んだりする親は少なくない。精神科認定看護師のこど看さんは「むしろお子さんが順調に成長している証だ。
おすすめの対処法があるのでぜひ知っておいてほしい」という――。
※本稿は、こど看『児童精神科の看護師が伝える 10代のこわれやすいこころの包みかた』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■子どもの「NO」は自立し始めた証
子どもが成長するにつれ、子どもとの距離感に悩まされる方は少なくありません。「あっち行って!」と突き放されたと思ったら、翌日にはケロッとした顔で甘えてくる。「これまでうまくかかわれてきた」と感じていた方も、戸惑ってしまうことがあるかもしれません。ですが、そんなときこそ思い出してほしいのです。
これまでのあなたのかかわり方や距離感は、決して間違っていなかったことを。
子どもが「NO」をはっきり言えるようになったということは、自分の意思を持ち、少しずつ親の保護的な距離から離れる準備が整ってきたということ。つまり、その子が自立へ向かって、確実に歩みを進めている証でもあるのです。
あなたがこれまで無条件に子どもを守り、時に口を出しながらも懸命に支えてきたからこそ、その子は安心して「離れては戻ってくる」という経験を始めることができたのです。「いつでも手を差し伸べられる距離」にいたあなたの存在が、その子の安心の土台となっていたことは間違いありません。
■距離感を見直すべき時期が来ただけ
だからこそ、これまでのかかわり方や距離感を「近過ぎた」「甘やかし過ぎた」と嘆く必要はありません。
むしろ、今は、その距離感を見直す時期がきた、というだけのことなのです。
子どもは今この瞬間も、大人の想像を遥かに超えるスピードで成長しています。思春期に入るとさらにそのスピードは速くなるので、その急激な成長を目の当たりにすると、「大丈夫かな」「ちゃんとやっていけるかな」と不安になるのも当然です。
なぜなら、これまでの子どもとの距離感が、とても保護的な距離感だったので、子どもが不安定ながら前に進もうとしている姿を見ると、つい後ろにピッタリと張り付いて、「大丈夫?」「ちゃんとやってる?」と声をかけたくなってしまうのです。これは責められるようなことではなく、子どもの不安定な前進を近くで見ているあなただからこそ、どうしても余計な干渉をしてしまうのです。
■子どものこころの中で起きていること
さて、肝心の子どものこころの中では、何が起きているのでしょうか。実は、「本当は親に頼りたい。けど、やっぱり親はうざい」といった、なんとも複雑で純粋な葛藤を抱えています。はたから見れば「めんどくさい」と思われてしまうかもしれませんが、その子は本気で悩んでいるのです。
だからこそ、大人も「この子、どうしたらいいの……」と悩んでしまうのですが、そんなときこそ「今の子どもとの距離感を見つめ直す」ことを意識してほしいのです。「子どもの歩みを阻むように口を出し過ぎていないか」「子どもの甘えを受け入れずに厳しくし過ぎていないか」と、自分と子どもの距離感を改めて見つめてみましょう。その上で、私のおすすめは「木陰から見守る距離感」です。

子どもの後ろにピッタリ張り付くのではなく、木陰の後ろにそっとしゃがんで子どもを見守り、子どもが頼ってきたタイミングでスッと手を差し伸べる。そして、手を差し伸べたあとはサッと定位置である木陰に戻りましょう。なぜ木陰に戻るかといえば、「やっぱり親はうざい」からです。
どうですか? 超めんどくさいですね? ただ、忘れないでください。「自分って超めんどくさい」と一番悩んでいるのは、その子自身だということを。
■反抗的言動をスルーするのは難しい
実際、子どもの反抗的な言動を受ける側も大変です。「またクソババアって言われた」「無視しないでよ……」など、これまで子どもが見せなかった言動を「スルーしましょう!」と言われても……。それができれば苦労はしませんよね。
そんなときは、子どもと少し距離を置いて、あなた自身を休ませることも大切です。子どもの反抗的な言動は適度に受け止めつつも、あなたはあなたで自分を休ませたり、気分転換をしてもよいのです。そうでもしなければやっていけないほど、思春期のお子さんの毎日を支えるのは大変なことです。
少し距離を取ることで、子ども側としてはある程度自分の判断と責任で行動できるようになるため、「あれ? これも大丈夫なの?」と今までの距離感との違いに戸惑いつつも、「もしかして信じてもらってる?」と、遠回しにですが自分を認めてもらっていると感じるのです。
この感覚は、子どもの自己肯定感や自立心を育む大きな要素となります。
反抗的な態度を取る子どもに対して、「転ばぬ先の杖」として先回りして支えるのではなく、「転んだ先のオアシス」として、いつでも戻って休める場所でいる。そんな距離感が、思春期における、お互いを尊重し合った関係と言えるのではないでしょうか。
■反抗期はあったほうが良いかどうか
では、いわゆる「反抗期」はあったほうが良いのでしょうか、それとも無いほうが良いのでしょうか。この問いに答える前に、私が勤務している児童思春期精神科病棟の現場のことをお話しさせてください。
実はこの「反抗期」という言葉、私の勤める病棟ではあまり耳にしないのです。というのも、この文章を書きながら、ふと「あれ? そういえば使っていないな……」と気付いたからなのですが、これは単なる偶然ではなさそうです。なぜなら、この「反抗期」という言葉は、子どもの反抗的な言動への理解を妨げてしまう可能性を大いに秘めた言葉だからです。
例えば、子どもが「クソジジイ」「育ててくれなんて頼んだ覚えはない」などの強い言葉をぶつけてきたとき、私たち大人は傷ついたり、イライラしたり、落ち込んだりするものです。私自身も、新人の頃に子どもの反抗的な言動に対して「今なんて言ったの⁉」と感情的に反応してしまい、帰りのバスで毎日セルフ反省会を開催していました。バスに揺られながら、「どうしてあんなひどいことを言えるんだろう……」「大人だって傷つくんだからね⁉」「まあ、反抗期だから仕方ないのかな……」と脳内で自問自答していたのですが、もし、あの頃の自分にひとことだけ声をかけられるとしたら、「子どもであっても、理由なき反抗はないんやで」という言葉を贈ります。
■まずは反抗の理由を聞くことが大切
「言い訳はいいから」と子どもの話を遮ぎってしまうのは簡単です。
しかし、子どもの話に耳を傾けると、「あ、そういうことだったんだ」と納得する瞬間が、意外と、というか、かなり多いのです。
例えば、「あの先生はうざいからもう挨拶しない」と高らかに宣言したAくんがいたとします。このような強気の宣言を受けると、大人は「先生には挨拶しなきゃさ……」とすぐに正論&お説教モードになりがちですが、まず大切なのは「なぜAくんは先生のことをうざいと感じているのか」に関心を向け、理由を聞くことです。
実際にAくんの話を聞くと、その先生にはちゃんと挨拶をしたのに「声が小さい」と何度もやり直しをさせられたそうです。Aくんは「どうして僕の声は先生に届いているのに怒られなきゃいけないの?」と納得できず、「挨拶しましたよ?」と返したそうです。しかし、先生は「挨拶の声は大きくないとダメ」と、理にかなっていない説明を繰り返すばかりなので、Aくんにとってその先生は「うざい先生」になってしまったのです。
■反抗期のラベルで見えなくなるもの
このように、大人には「言い訳」に聞こえる子どものやや強引な言い分は、子ども自身が抱えている「納得できない思い」や「わかってほしい気持ち」の表れかもしれないのです。自分の思いをわかってもらえない苦しさから、時に強い言葉や態度を出すことで、「わかってくれよ!」と大人に助けを求めている可能性があります。
だからこそ、「反抗期だから」とその子の状態を決めつけたり、子どもの話を「言い訳だ」と安易に判断して話を遮ったりしないでほしいのです。おそらく、そのような決めつけをする大人に対して、子どもはより反抗をすることでしょう。なぜなら、その大人は自分という存在ではなく、「反抗期」という言葉だけを見ているからです。
発達心理学上では、幼児期のいわゆる“イヤイヤ期”を「第一反抗期」、思春期のいわゆる“反抗期”を「第二反抗期」と呼びますが、それぞれ必ず出現するものではありません。
そのため、「反抗期」というラベルを一方的に貼ってしまうと、その子が見えなくなってしまう可能性があるため、私はこの「反抗期」という言葉を慎重に取り扱うというか、ほとんど使わないのです。
■子どもの主張を受け止めるのが基本
「反抗期はあったほうが良い、無かったら良くない」といった話もよく聞きますが、正直な話、私は「反抗期」という言葉にとらわれること自体が、目の前にいる子どもの思いや気持ちを軽視することにつながるのではないかと思うのです。
大切なのは、「反抗期かどうか」ではなく、「この子が今、どんな気持ちでこの言動をしているのか」に目を向けることではないでしょうか。
子どもであっても、理由なき反抗はありません。
その子が示す反抗の裏には、切実な思いが隠れているかもしれないのです。だからこそ、正論や説教で子どもを押さえつけたり、ましてや「反抗期」とレッテルを貼ったりするのではなく、子どもの主張に耳を傾け、しっかりと受け止める。その姿勢こそが、子どもの反抗を理解するための基本姿勢だと私は思うのです。

----------

こど看(こどかん)

精神科認定看護師

精神科単科の病院の児童思春期精神科病棟に10年以上勤める。現在も看護師として病棟勤務しながら、「子どもとのかかわりを豊かにするための考え方」をSNS等で精力的に発信中。メンタル系YouTuberの会所属。一児の父。

----------

(精神科認定看護師 こど看)
編集部おすすめ