ビジネスパーソンの多くが、会議に時間を取られている。無駄な会議を減らすことはできないのか。
マイクロソフトやコカ・コーラなど400以上の世界的企業で組織改革を支援してきたコンサルタントの著書より、一部を紹介する――。
※本稿は、ケヴァン・ホール、アラン・ホール『ダメな会議をゼロにする方法』(早川書房)の一部を再編集したものです。
■その議題、本当にいま必要ですか?
世界中で数多くの会議を観察するなかでわかってきたのは、一般的な会議で話し合われる議題の多くが、そもそもアジェンダに載せるべきではないということだ。
・ 出席者の多くに関連しない情報、あるいは出席している個人が改善に活かせない情報が共有されている。

・ メールや一対一の対話など、ほかの手段のほうが効果的な場合でも会議を開いている。

・ 出席者の積極性がなくてもいいような会議を設定している。

・ 議題の多くは、話し合いで到達したい結果が明確にされていない。
これでは莫大な時間のムダづかいであり、イライラも募る。本稿では、ありがちな失敗が会議のどこで発生しているかを分析し、それに対処する考え方を紹介する。
■会議中にチェックマークを入れていくと…
各種の、特に時間ばかり長い会議やウェビナーを分析するには、以下に示すような会議チェックシートを使う。
この情報をもとに、後述するガイドラインを当てはめれば、必要のない議題を一掃し、最終的に会議そのものを減らすことができる。
図表1のように、シンプルな一枚のスプレッドシートを作成する。
議題やアジェンダを左端の列に記入し、各列の一行目には出席者の名前(図の例ではイニシャル)を記入する。
会議が始まったら、話し合っている議題ごとに発言者の列にチェックマークを入れていく(発言が長い場合にはチェックマーク二つ)。
こうすると、どの議題に誰が積極的に関わったかを視覚的にとらえることができ、どの議題がどの出席者に関連しているかもひと目でわかるようになる。
もちろん、発言の回数だけが積極性や関連度の指標ではないが、これなら一目瞭然で、会議後に事実とパターンに基づいて話し合いを始めやすくなる。
何より、個々人が会議に出席する価値を全体として示す重要な指標にもなる。会議に貢献していなくても、他の出席者から学ぶ人もいるだろうが、学ばない人もいるだろう。これ以降でも見るように、情報の流れが一方通行の場合、出席者を巻き込む会議という形態は適切でない可能性が高い。
■「スターグループ型」と全体会議の相性は×
手帳の一ページを使って、次回の会議のチェックシートを作成し、発言があるたびにチェックを入れよう。
あるクライアントのリアルタイム会議に参加してそれを観察したことがある。その結果、会議の内容のうち40パーセントは出席者全員に関連があるわけではないと判明した。
一回の会議から関連度の乏しい議題を除外できれば、残りの内容が充実する。少人数の集中した会議や一対一の話し合いをもち、会議の外で論じたほうがいい重要な課題を扱うこともできる。

会議での対話には、二つのタイプがある。
①スターグループ型の対話――次のいずれかになる場合が多い
・ 一対一の会話。他の出席者にとっては関連度が低い

・ 一人(上司や専門担当者)から全員に向けた一斉の情報通達
このような対話を、われわれは「スターグループ型」(ハブアンドスポーク型)の対話と呼んでいる。
スターグループ型は一対一か一斉通達なので、実際には全体会議を開いて全員が同期的に(つまり同時に。場所は違うこともある)そこに参加する必要はない。
■上司には有益でも、部下にはつらい時間
スターグループ型の対話としては、次のような例が典型だろう。
・ 一人(たいていは上司)から大勢に向けた一斉の情報通達

口を挟んだり、その情報に何らか対応をしたりする余地はない。前出の会議チェックシートでは議題1の「事業の概況」がこれに当たる。上司が概況を語り、質問者は一人だけだった。こうした情報なら、議論の必要はほぼないので、事前の回覧でも済ませられただろう。
・ 近況報告

前週にあったことを各人が報告するが、その情報は本人とその上司にしか関連がない。前出の会議チェックシートでは議題2の「現状報告」がこれに当たり、ほぼ全員が発言しているが、各自から報告があっただけだ。
上司からはいくつか質問も出たが、それ以外の誰からも発言はなかった。上司には有益な時間かもしれないが、他の出席者からすれば自分に関連しない情報をえんえんと聞かされるだけになる。
・ 個々の対応の再確認

各自が上司や会議リーダーに向かってそれぞれの活動や成果、たとえばプロジェクトの進捗などを報告する。これも他の出席者には関連しない内容だ。この内容なら、一対一の電話をひととおり続ければ済ませられるはずで、他の出席者にとっては大幅に時間の節約になる。
・ 会議リーダーと発表者のほかには一人にしか関連せず、他の出席者には意味がない詳細な議論

前出の会議チェックシートでは議題5の「予算」がこれに当たる。
・ 個人の間で交わされ、本来の議題とは関連のない脱線した話題
■「毎週1時間の近況報告」はムダだった
会議チェックシートで、一対一の対話あるいは一斉通達の内容だけ、またはほぼそれだけの議題に注目しよう。
出席者の発言があるたびにチェックシートにチェックを入れていくと、スターグループ型になっている議題はすぐに特定できるようになる。一人が発言しているだけ、あるいは二、三人が会話に参加しているだけだからだ。
これが自分の開いた会議なら、他の出席者の反応に特に注意しよう。自分がスターグループ型の中心的な「ハブ」になっているなら、どの議題も意味があると感じるかもしれない。どれも自分個人に関わっているからだ。
あわせて、議題が他の出席者全員にとっても関連があるかどうかを自問する必要がある。
アランの職歴がまだ浅かったころのエピソードです。営業会議が週に一度あり、12人のメンバーそれぞれが5分ずつ近況を報告することになっていました。アランがこの会議の意味について疑義を表明したところ、ある事実が判明します。マネージャーが近況報告を実施していたのは、チームのメンバーに必要だと思っていたからだったというのです。

一方、チームメンバーのほうは、チームリーダーが実施するよう主張したと思い込んでいるだけでした。誰ひとりとして、この時間に意義を見いだしていないことがわかり、報告の習慣はただちに廃止されました。
この会議はせいぜい60分続くだけで、準備にかかる時間も15分程度だった。それでも、この一回の会議のために13人が一週間の営業時間のうち1時間を費やしていた。年間で換算すると、600時間以上がムダになっていたことになり、営業担当者一人ならその勤務時間の3分の1を浪費していた計算になる。
■全員が参加する「スパゲッティ」型
②「スパゲッティ」型の対話
同時的なコミュニケーション、議論、共同創作、積極的な参加を必要とする業務を、われわれは「スパゲッティ型」と呼んでいる。共同の目的を達成するために、関係者がきわめて複雑に絡み合った状態で取り組むことから命名された。

スパゲッティ型チームの対話としては、次のような例が一般的だ。
・ 決定を下すための議論を進める

・ 複数の部門にまたがる問題解決をめざす

・ リアルタイムの会議で新しいアイデアや提案を共同で生み出す

・ 共通の問題を解決する

・ 共通のスキルを習得する
前出の会議チェックシートでいうと、4の「次年度計画」と6の「人事」がスパゲッティ型の議題のように見える。ほぼ全員が関心を示し、積極的に関わっているからだ。
■一部メンバーだけ盛り上がる議題は削減対象
ただし、スパゲッティ型の対話でも、出席者の一部にしか関連しないものもある。数人の出席者にしか関連のない議題がいくつか議論される会議というのも珍しくはない。
前出の会議チェックシートでこのパターンが見られるのは、議題3の「マーケティング部門からの報告」だ。上司を含めて関連する三人は盛んに発言したが、それ以外の出席者はまったく発言していない。
一部の議題が部分的な出席者にしか関連しない場合、その内容は関与する必要のある人だけが出席する少人数の会議で論じたほうがいい。
出席者の全員に関連し、全員の対話を生む議題こそ、今後の全体会議で中心に据えるべき議題ということになる。
一部にしか関連しない議題なら、もっと簡単に同じ目的を達成できる方法が、たいていはあるはずだ。
■一斉通達ならメールを使ったほうが効果的
会議チェックシートで、議題ごとのチェックマークを横方向に見ていきながら、そこでわかる情報を再確認しよう。
この情報をもとにすれば、会議を組み立て直すことができる。

1 議題が主に一対一の対話、または一斉の情報通達にとどまる場合
出席者のほとんどにとって関連度が低く、会議でなくても対応できる議題だ。
・ 一対一

これには、関係当事者だけいれば会議以外の場で対応することができる。個人寄りの会話を許してしまうと、他の出席者の膨大な時間がムダに使われかねない。会議チェックシートで二人しか関わっていない議題がこれに該当する。
・ 一斉通達

一方向で伝えられ、受動的に消費される情報やプレゼンテーションであり、全員が同じ場所に同時にいる必要はない。一斉通達する当人だけがたくさん言葉を費やす議題であり、他の出席者はほとんど、あるいはまったく受け答えしない。
大量の情報共有は同期的なコミュニケーションを必要としないので、メール、ブログ、ファイル共有などの非同期ツールのほうが、コスト面でも時間面でも効果的だ。複数の拠点やタイムゾーンにまたがって活動するチームの場合、特に効果は大きい。
「一斉通達」する情報が会議当日の対話に必須な場合、たとえば共有しておいた情報に基づいて何かを決定したり論じたりする場合には、その情報をあらかじめ配布しておくべきだろう。会議以外の場で情報を提供するときのヒントは、本書の第10章で示している。
■年間23億円を役員会議で浪費している企業
「私は、業務と個人についての近況報告を廃止しました。それで誰も不満は感じなかったようですし、その分で浮いた時間はもっと関連度と重要性の高いことに使えるようになりました」

フランスの製薬企業、ブランドチームマネージャー
本書の第1章で、一年のうち30万時間を費やし、年間1500万ドル〔約23億円〕前後のコストを使っている役員会議の事例について触れた。この役員会議で掲げられていた目的は、「事業のあらゆる面について最新情報を伝達する」ことだった。
この役員会議について個人的に知っているわけではないが、その目的設定が、スターグループ型にありがちなたくさんの事項を生み出している可能性は高い。つまり、最新情報と状況の再確認だ。会議の目的がこれなら、そのほとんどはメールかファイル共有で達成できてしまう。毎年30万時間、1500万ドルを費やす意味はあるのだろうか。役員会議が、こんなことに時間を使っていていいのだろうか。
■「途中退OK」にするとムダを減らせる
2 議題が出席者の全員ではなく一部にしか関連しない場合
議題によっては、複数人の対話は生まれるが、全員が関わるわけではないものもある。議論に値する内容ではあるものの、それが全員にとってというわけではない。そのアジェンダについて知らなくていい人に情報を提供し、時間をムダにする結果になる。もともと無関係な人まで巻き込まなければならなくなるので、意思決定の良し悪しとスピードを損ねる可能性もある。
自分が会議リーダーであれば、この議題に直接関わる一部の出席者だけで話し合う会議を別途開いたほうがいい。
全員に関連する議題を会議の最初にもってくるという手もある。そうすれば、一部の出席者は途中退出でき、残った出席者は自分たちにだけ関連する問題に専念できるからだ。
3 議題が出席者の全員に関連する場合
全員が発言した議題があるようなら、朗報だ。理想的な会議の土台になる議題といえる。会議は本来、出席者の全員に関連する議題だけで成立しているのが理想的だ。
かといって、議題の関連度が高く発言が活発というだけで、対面会議を開いて対応する必要があるとは限らない。いつでも、次の点を確認しよう。
・ その議題を扱うのに、会議は最善の手段か?

・ 権限のある個人や少人数チームで対処できないか?

・ テクノロジーを使って対面会議を代替できないか、出張は減らせないか?
■ダメな会議を生産的な会議にするには
一年に30万時間、1500万ドルが使われている役員会議の例に戻ると、最新情報を共有するのではなく、どんな議題なら役員会の全員に関連度が高そうだろうか。
役員会で「スパゲッティ型」につながる、つまり全員が関わるのは、たとえば次のような議題であることがわかっている。
・ 戦略の策定

・ 後継者選びと人材育成

・ 共通の学習

・ コミュニティーと関係性の構築

・ ポテンシャルの高い人材の評価

・ コミュニケーション戦略
役員会は通例、全員ではなく一部にだけ関連する問題を話し合う下位のチームをいくつか抱えている。
共通認識のために情報を伝えさえすればいいなら、そこにはテクノロジーを利用できる。関連度が高そうなのに出席者があまり積極的でない場合は、そこを見直して会議を改善する余地がある。
■会議の後に必ずしてほしい「問いかけ」
「結果は相応だったか。議題についての話し合いから得られたものは、そこにつぎ込んだコストと労力に見合っていたか?」と、自問してみよう。
会議に残った議題が、この基準を満たすようなら、これ以降の会議ではその議題を中心に据え、それを十分に解決できるだけの時間を確保する。
自分が会議リーダーではなく、会議に関する変更を実行に移す権限をもっていない場合には、このアプローチを会議リーダーに見せて、次の会議を分析することを提案してみるのはどうだろう。そのうえで会議に臨み、あとで一緒に分析の結果と対策を判定するのである。
出席者を巻き込み、特に関連度の高い内容はどれかを一緒に判断し、時間の使い方がよくなるように会議を組み立て直すことができれば、通常はかなり好ましい反応を得られる。
定例会議の議題のどれ一つとして「スパゲッティ型」になる基準をクリアしないとしたら、その会議はまったく不要と判断していいだろう。

----------

ケヴァン・ホール
グローバル・インテグレーション創業者・CEO

マイクロソフトやコカ・コーラをはじめとする400以上の世界的企業で、15万人超をクライアントに組織改革を支援してきた。著書に『Speed Lead』や『Making the Matrix Work』など。

----------
----------

アラン・ホール
グローバル・インテグレーション キーアカウントマネージャー

ネスレを経て現職。会議運営や協業を専門領域とする。

----------

(グローバル・インテグレーション創業者・CEO ケヴァン・ホール、グローバル・インテグレーション キーアカウントマネージャー アラン・ホール)
編集部おすすめ