同窓会に行くのは面倒くさいと思う人は多いだろう。しかし、博報堂シニアビジネスフォースの三嶋(原)浩子さんは「どんなに忙しくても同窓会には行くべき。
その理由は公私共にさまざまなチャンスがそこにはあるからだ」という――。
※本稿は、三嶋(原)浩子『“引退しない人生”をデザインする 無定年の設計図』(高橋書店)の一部を再編集したものです。
■同窓会欠席は多大なる「機会損失」
50代の同窓会では、欠席者の噂話で盛り上がります。「森くんがいないね」から始まった彼の消息は華々しい話でした。
森くん(仮名・57歳男性)は、大手IT企業でシステムエンジニアとして活躍、早期退職後はベンチャー企業の役員として、地方創生に不可欠なITインフラの整備に取り組んでいるそうです。「あいつ故郷愛が熱いから、地方創生に興味を持ったみたい」、消息を知るクラスメイトの解説です。ネクストキャリアでも大忙しのため「同窓会は欠席」と連絡が来たそうです。
長年培ったITスキルで、社会に直接的な貢献をしたい、という思いは立派です。定年に縛られず、大企業勤務の立場に甘んじることもなく、自らの意志と情熱で新たな道を切り開いた。無定年のお手本です。しかし森くんは「同窓会の欠席だけは失敗」と考えられるのです。
■「キャリア自律」の意味を考える
森くんの失敗を解説する前に、「キャリア自律」の意味をまとめます。
今の50代は「人生100年時代のキャリアを自ら考えよう」と、突然「キャリア自律」を迫られています。キャリア自律を「自立」とする、間違った漢字変換が散見されますが、両者は本質的に異なります。
キャリア文脈で言えば「自立」は、企業や組織に依存せず、生計を立てられる状態。フリーランスが分かりやすい例です。対して「自律」は、キャリアの方向性や選択を自身の信念に基づいて決定し、行動していく能力とプロセスのこと。時にはキャリアの方向性を大胆に転換する勇気をも含みます。
同窓会を欠席した森くんは、まさにこの「キャリア自律」を実践しました。「キャリア自律」のプロセスを具体的にまとめると、次のようになります。
①自己理解の深掘り:自身の強み・弱み・興味・価値観・情熱、働くうえの最優先事項を明文化すること。これはキャリア形成の羅針盤かつ基盤。
②環境認識と変化への対応:社会、経済、産業の変化、テクノロジーの進化が自身のキャリアにどんな影響を与えるかを認識し、学習やスキルの更新を怠らない。
③目標設定と計画:自己理解と環境認識に紐づく、具体的なキャリア目標を設定。
達成に向けた計画を立てる。計画は固定せず、状況に応じて柔軟に修正。
④行動と学習の継続:目標達成のために積極的に行動し、その結果を振り返り、新たな学びを得て、次の行動へとつなげていくサイクルを回し続けること。
⑤主体的な意思決定:企業や組織の方針にひたすら従うのではなく、自身のキャリアにとって何が最善かを常に問い、自らの意思で決断を下す。

■「自律」の先が「孤立」でいいのか
「自立」と「自律」の違い、ご理解いただけたでしょうか。どのプロセスも文字通り自分を「律しながら」の行動になっています。
さて、そんな「キャリア自律」を果たした森くんが、なぜ「欠席は失敗」と言われてしまうのか。それは同窓会の欠席で、IT整備に関係する自治体人脈を逃がしたからです。私の母校OB・OGは、公務員が多く、同窓会も地方自治体に勤める人が多く参加していました。今後の仕事につながるかもしれない、オイシイ人脈を森くんはみすみす逃がしたのです。
さらに、「キャリア自律」を果たした後、コミュニティからの「孤立」を選んだことは、「老後孤立」にもつながってしまいます。今を生きる森くんにとって同級生は「過去の人」かもしれない。
しかし「孤立」は認知症にも関連します。50代のうちから何かのコミュニティに所属しておきましょう。森くん、次の同窓会はぜひ参加してくださいね。
■人気者シニアだった元上司のこと
さて、上司だったシニア・コピーライターの話をします。残念なことに76歳で急逝されました。亡くなった日の朝も、Facebookに「今日は飲み会!」と、明るく投稿をされていただけに信じられません。偲ぶ会では、退職後の人生をどのように送ってこられたかが分かりました。
ひと言で言うと「人気者シニア」。家庭で地域で職場で、たくさんの人に愛されながら、充実した退職後を過ごしておられたことを知りました。例えば、“市民記者”として地域の情報記事を執筆、市の広報誌には次のようにプロフィールが紹介されています。「広告会社を経て大学で講師を務めた後、地域の広報やイベント活動にも参加。読書、映画、川柳、お笑いなどを楽しみながら、足で情報を集める〈団塊シルバー〉」。

現役時代のスキルが活かせる文章講座の講師も務めてられていて、亡くなるには早かったけれど、最後まで自分の殻に閉じこもることなく社会人として活動されていた、幸せな晩年だったと分かります。
■周囲から声がかかるのはどんな人か
上司の退職後を検証していくと、いろいろなコミュニティから「声がかかった」ことが分かりました。声がかかって、大学や文章講座の講師を務めた。声がかかって、地域のイベントに参加した。
「声がかかる」のは、ざっくり言うと人柄が良いから、ということです。しかし、人柄の良さって、この方の場合、どんなことだろう。考えると、思い出すのは上司の「人の話を取ってはいけない」という話です。「人の話を取る」とは、例えば誰かが、「万博で○○を見て来た」と話し始めたら、「私は万博で△△を見た」と、主たる話を横取りする行為のことです。上司は決して人の話を取らず、最後まで聞く人でした。
しかし、そんな人柄の良さだけで、「声がかかる」人になるのでしょうか。偲ぶ会では、上司の形見分けとして、たくさんの本が並べられました。ご遺族から「どうぞお持ち帰りください」とご厚意を頂きました。
ここで発見したのは、最後の最後までコピーライターとして学び続けていた上司の姿です。ずらりと並んだ本はどれも言葉を磨く、教え方、話し方を磨くテーマの書名でした。すべて頂いて帰りたいほど、学びにつながる本ばかりです。「声がかかる」人は、人柄が良いだけではなかった。向上心を絶やさず、目立たぬところで、自分をアッブデートさせる努力を怠っていなかった、ということです。
■目指せばなれる「人気者シニア」
亡くなった上司のように、人気者になるにはどうしたら良いのか。それは持って生まれた性質からだろう、狙ってなれるものではない、とは思いません。60代からでは手遅れだろう、とも決めつけません。
無定年が目標なら、「人気者シニア」を目指そうではありませんか。「人気者シニア」になるためには、亡くなった上司が残してくれた「人気者シニアの法則」をトレースするのが合理的なので、箇条書きでまとめます。
①「聞く力」の装着……人の話を取らない、最後まで興味を持って聞く。

②「学び続ける」……長年のキャリアやテーマにおける新しい情報を仕入れ続ける。


③「いっちょかみ」……面白いことに参加してみる。好奇心の炎を消さない。
たった3つ、されど3つですが、意識するだけで進化は始まります。60歳から、無定年を目指して新しい波を起こすために。いろんな方面から「声がかかる人気者シニア」を目指してみませんか。

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三嶋(原) 浩子(みしま(はら)・ひろこ)

博報堂シニアビジネスフォースディレクター

博報堂 関西支社CMプランナー、ディレクター、コピーライター、動画ディレクター。博報堂シニアビジネスフォース ディレクター。テレビCM・新聞広告・WEB動画制作で活躍する一方、高齢化社会において「シニアの人生をクリエイティブする」ため、キャリアコンサルタント(国家資格)を取得。著書に『未定年図鑑~定年までの生き方コレクション~』(中央経済社)、『就活・受験に効く! 自分キャッチコピー』(中央経済社)がある。

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(博報堂シニアビジネスフォースディレクター 三嶋(原) 浩子)
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