移民との共生はどうすれば上手くいくか。イギリス在住で著述家の谷本真由美さんは「イギリスで行われたイスラム系移民による大規模性犯罪スキャンダルは、イーロン・マスク氏が事件の詳細をXに投稿したために全世界に初めて知れわたった。
外国人移民を大量に入れようとしている我が国にもこの事件は他人事ではない」という――。
※本稿は、谷本真由美『日本のメディアが報じない「世界の真実」』(ワック)の一部を再編集したものです。
■英国イスラム系移民による大規模性犯罪
イギリスではイスラム系移民による大規模性犯罪スキャンダルが国を揺るがしている。
私は2024年末から25年にかけて日本に滞在していたが、欧州だけではなくアメリカでさえ大騒動になったこの事件は、なぜか日本のテレビではほとんど取り上げられていないので大変驚いた。しかしXでこの事件の解説を投稿したところ、多くの方から反響があった。
移民問題に興味がある日本の有権者も興味を持つはずなのに、である。
この事件の発端は、20年以上前に遡る。イギリスの北部の元炭鉱町や工業町で、小中学生白人女児約1400名あまりが長期間に渡り、「グルーミングギャング」の被害にあっていたことが様々な調査により判明したのだ。
被害者はさらに多い可能性があるとされる。グルーミングとは児童や若者に物や金品を与えて心理的に安心させ、性的な被害を与えることをいう。
この事件が大変な議論を呼んでいる理由が、加害者の大半がパキスタン系、バングラデシュ系のイスラム教徒で移民1世~3世だったことである。その多くはタクシー運転手、ケバブ屋の経営者などで、サービス業や自営業に従事する。

事件の中心となった北部のロザラムという街は産業革命後に工業が盛んになった小さな田舎町だ。かつては世界中に薬品瓶などを製造し輸出していた。
■IT業界にいる英国人の多くは没落した北部出身
隣の街はハードロックバンドのデブ・レパードの出身地であるシェフィールドだ。シェフィールドはナイフやフォークの製造で有名で、バンドが売れない頃はデブ・レパードのメンバーも工場で働いていた。
この地域は炭鉱があり、工業が盛んだったのだが、サッチャー改革でサービス業が盛んになると没落し、貧困地域になった。
1990年代から2000年代中頃までの80年代のイギリスの炭鉱夫による大規模ストや北部の地域社会を描いた映画『リトル・ダンサー』や『ブラス!』などの作品の舞台がこれらの没落した北部だ。
私は実はヨークに住んでいたことがあるのでこれら地域を訪問しているし、イギリス人夫の出身地は元炭鉱町でまさに没落した北部。
仕事がなく鬱屈した地元を捨てて夫は南部にやってきた。彼は帰省すら嫌がる。私はIT業界にいたが、IT業界にいるイギリス人の多くも北部の故郷を捨てた人々だ。
■イーロン・マスク氏が投稿した事件の詳細
1950~60年代には第2次大戦後の人手不足でイギリス政府は北部の工業地帯に旧植民地から次々に労働者を入れた。だが工業が下火になっても移民は帰国しなかった。

彼らは教育レベルや言語の問題で知識産業には移行できず、低賃金労働者や零細自営業者、失業者になった。北部の没落が移民のタコツボ化と貧困に拍車をかけた。
イギリスの社会に溶け込まず、同じ宗教や人種と固まって生活するようになる。途上国の価値観をそのまま持ち込んだため、地元と軋轢を生んだ。
加害者のほとんどはそのような移民である。しかし多様化の時代、差別主義者と呼ばれるのを恐れたマスコミと政府は事件に触れず、事件の存在を主張してきた人らは陰謀論者と呼ばれた。
しかしここ最近になり、イーロン・マスク氏が事件の詳細をXに投稿したために全世界に知られるようになった。
被害者の少なからずが貧しい家庭出身の小学生だ。殺害された少女は複数。だが全国ニュースにはならなかった。少女達は男らに「白い売春婦」と呼ばれた。残虐な事件は組織的に行われ、無視され、隠蔽された。

■事件を握りつぶした可能性
私は独立機関による報告書や裁判記録を読んだが、あまりの内容に数日間具合が悪くなった。小学生の親として涙なしに読めなかった。
マスク氏はこの事件が明るみになった頃にイギリスの現在の首相で労働党党首のキー・スターマー氏がイギリスの検察庁、公訴局(CPS)のトップだったのを指摘している。事件を握りつぶした可能性があるとの指摘だ。
加害者の多くの罪は軽く、検挙されない者もいた。スターマー氏は司法の公平さ、デュープロセスを捻じ曲げた可能性があり、白人と移民の間で司法判断に二重基準を適用したと非難されている。
外国人移民を大量に入れようとしている我が国にもこの事件は他人事ではない。外国人差別主義者と呼ばれることを恐れるあまりに、臭いものには蓋をし、犯罪にまで目をつぶるのは「正しい多様性」ではない。司法が機能しないのでは民主主義国家の崩壊である。
■一国内に「異なる国」が国内に出現
アメリカではトランプ大統領の再選で、不法移民の強制送還や不法移民による福祉の不正受給洗い出しの徹底化など、移民政策が大きな転換を迎えているが、これまで移民や難民にはかなり寛容な姿勢を見せていた欧州でも大きな変化が起きている。
その中でも大きな話題になっているのが移民の統合である。欧州では移民と地元民の間で「異なる国」が国内に出現してしまっており、地域の分断や格差の拡大を招いている。

例えばイギリスの場合は、移民の多くは同じ国や宗教の人が住む地域に固まることが多い。これは政府が強制しているのではなく、移民自身が親族や同じ村の人々を頼って移民してくるからである。
特定地域の移民が増えてくると、学校の生徒が特定国の生徒だらけになり英語のレベルや学習進度が下がるので、それを嫌う家庭は他の地域に引っ越していく。
また移民向けの店舗や飲食店だらけになるので生活の不便さや景観、雰囲気の変化を嫌う人も多い。フランスやドイツ、スペイン、イタリアも同じである。
■「ゲットー」を統合と再開発するデンマーク
デンマークも移民だらけの地域が統合化を拒んでいることに悩んできた。スウェーデンは小国であるが、その寛容さから、多くの難民や移民を受け入れてきた。
だがシリアやアフガニスタンの紛争で起きた難民危機により、ここ数年、デンマークでは従来左派系だった人々の間でも移民に対しては大変厳しい意見を持つ人が増えており、移民の統合を強力に進めるべきだという意見が主流になっている。
デンマーク政府は移民が多く住む公営住宅のうち29カ所を「脆弱な住宅地」(ゲットー)と呼んで2010年から公式発表しており、統合と再開発の対象にしている。
「ゲットー」の定義は大変明確で、「18~64歳の40%の住人が無職か教育を受けていない」「18歳以上の住人の2.7%が犯罪で検挙されたことがある」「50%以上が非西洋圏からの移民」という条件のうち2つ以上に当てはまるところになっている。
このリストに掲載されているなかで最も有名なコペンハーゲンの郊外にあるミョルニルパルケン(Mjolnerparken)の扱いが大変な議論になっている。コペンハーゲンの国会や国立博物館まではバスなどの公共交通機関で30分ほどとアクセスも良い。

■家族が犯罪を犯した場合は全員が公営住宅を強制退去
1993年には住民の約36%がデンマーク系住民だったが、2000年代以降は移民系住民が大多数となり、2016年には約82.6%を占めた。パレスチナ系の過激派もここで育ち、イスラム系などのギャングの抗争による殺人や暴力事件も問題になっている。
デンマーク政府は、こうした「ゲットー」を移民統合政策上の課題と位置づけ、2018年以降、さまざまな対策を導入してきた。例えば、対象地区の公営住宅では、家族の一人が犯罪で有罪となった場合、家族全体を退去させることが可能とされている。
また、対象地区に住む子どもは、1歳から就学前まで週25時間の保育施設に通うことが義務付けられ、従わない場合は児童手当が停止される場合がある。
さらに政府は「並行社会をなくす」政策の一環として、2030年までに対象地区の公営住宅の割合を最大40%まで削減する方針を掲げ、建物の売却や取り壊し、再開発などが進められている。
英デイリー・メールによれば、このような政策を支援してきたラース・ロッケ・ラスムセン元首相は、このような「ゲットー」が暴力を広めることでより多くの犯罪が起き、移民が巻き込まれる可能性があり、「ゲットー」は「デンマークを分裂させてしまった」と述べているとしている。
デンマーク政府は、こうした「ゲットー」を社会の分断を生む「並行社会」と位置づけ、統合政策を進めてきた。対象地区では、子どもにデンマーク語や社会規範を教える保育制度などが導入されている。
■移民問題にEUなすすべなし
ところがコペンハーゲンのミョルニルパルケンの住民らが2020年に提訴した裁判では、こうした政策が人種差別に当たるかが争われ、2025年には欧州連合の司法裁判所で審理が行われた。
デンマークは欧州連合に加盟しており、欧州連合人権規約に縛られるため、人種差別などで国内の施策などが訴えられた場合は、欧州連合の規制や命令が国内の施策を左右する。
ところが欧州では、この様に国内で悪化している問題をなんとか解決しようという「前向きな施策」を、理念優先で現実を見ていない法で縛ろうとし、現実的な解決策を引き出せないということが起きる。
これでは欧州連合の存在意義は一体何なのか? と疑問が湧く。
デンマークだけではなく欧州各国は右傾化しているが、理由の一つが欧州連合脱退を進めるためだというのがわかるだろう。
本書にはこれら欧州の移民問題のほか、中国の脅威など、日本が置かれた状況を認識するための全40編が掲載されています。是非ご一読ください。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

著述家、元国連職員

1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

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(著述家、元国連職員 谷本 真由美)
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