※本稿は、谷本真由美『日本のメディアが報じない「世界の真実」』(ワック)の一部を再編集したものです。
■韓国の「キッザニア」で嫌われるブルーカラー
「キッザニア」という子供に職業体験をするテーマパークがあり各国で人気である。子供は様々な職業を遊びを通して体験し、将来の職業観を養う。遊びを通して社会勉強をするという施設なので、教育熱心な親にも大人気だ。
「キッザニア」で提供される職業は各国によって違いがあり、それが国民性を表すのが面白い。
例えば日本だと消防士、整備士、ガソリンスタンド店員、警察官、介護福祉士、パティシェ、機械開発者等、様々な仕事が提供されているが、体を動かしたり手を使う「ブルーカラー」の仕事も人気がある。経済統計では「熟練労働者」に分類されるものも多い。
ところが春木育美氏の『韓国社会の現在―超少子化、貧困・孤立化、デジタル化』(中公新書)によれば、韓国の保護者たちは「キッザニア」でブルーカラーの仕事が提供されることを嫌がる。
韓国の「キッザニア」では国家代表選手、外交官、考古学者、国税庁の公務員など、日本の「キッザニア」では提供されていない仕事が存在している。「手を動かすもの」が極端に嫌われ、「権力」「国家」「ホワイトカラー」重視である。
この様な違いから、韓国の階級意識がよくわかる。
しかしこういう職業に関係する階級意識というのは、実は国家の経済発展に深く関わる重要な問題なのだ。
■途上国で「気さくな社長」は機能しない
韓国の職人やブルーカラー軽視は、韓国には中小企業が少なく、起業精神に欠け、工業発展が遅れたことに深く関わっている。これは経営学でも有名であり、韓国の根深い問題の一つである。
韓国は格差が凄まじいことも関係する。体を動かす人、手職系の人の重要性を理解しているなら、政策を取り決める人間が、所得を分配し格差を少なくするような経済政策を行う。
韓国というのは、ごく一部の社会の上層や、貴族系の人々、ホワイトカラーが富を独占する仕組みを社会が許容しているのである。
実は途上国の民は似た様な意識のところが多く、手仕事、ブルーカラー、職人、エンジニアを下に見る文化がある。
これは特に南アジアや北アフリカ、中東、南米で顕著である。植民地宗主国からもたらされた文化もあるが、元々遊牧や狩猟が主体で、農業に向かぬ土地はその傾向がある。
またその様な途上国は、自分で手を動かさずに使用人にやらせる文化があるため、社長や管理職は作業着を着て従業員と一緒に作業してはならないし、食堂や生活空間も別にしなければならない。日本の感覚で気さくな社長をやると一気に尊敬を失う。
■日本の技術者はドイツ人は好相性
ちなみにアメリカや日本やドイツが工業で成功したのは、実学や手仕事への敬意があったからである。
アメリカはドイツ移民が多かったため、その影響で手仕事や技術者を尊重する社会で泥臭い部分がある。
特にドイツは応用技術者への尊敬の高い社会であり、名刺に「エンジニア」と堂々と刷る社会である。東欧もドイツに似ている。日本の技術者はドイツ人との仕事は楽しいと言う人が多い。
一方でイギリスではかつては日本やドイツのようにエンジニアや手仕事が経済の主体だったので、手や体を使って働くことが社会的に大変尊敬されている部分もあったが、1970年代から80年代のサッチャー改革により経済を知識産業中心に大きく変換したために、現在ではリス系(手に職系)の仕事は報酬が低いこともあってあまり尊敬されていない。
昔は親子代々で同じような技術系の仕事を受け継いで行くのがごく当たり前のことであったが、今それは消滅している。
手を使って仕事をする人々の多くは東欧からの移民であったり、インドやパキスタンの人々だ。我が家の大工さんはブルガリア、リトアニア、ドイツ、インドの人々である。
インドは特にシーク教の職人さんに頼んでいる。彼らは体が大きく、手を使って仕事をする伝統があるので大変技術が高く、仕事も日本の技術者以上にしっかりやってくれる。
■日本は世界で最も老舗が多い国
リトアニアはもともと技術が高く、ソ連に支配されていた頃も工業製品の製造をやっていたので技術者の層に厚みがあり、教育体系も割としっかりしている。
若者は地元の賃金が安いので、多くがイギリスに出稼ぎにやってくるが、英語だけではなく他の言語にも堪能で、ドアの修理人などが大卒の理系の人だったりする。
しかも非常に興味深いことにイギリスではITの技術者も手に職系の分野として考えられるので金融やコンサルティングに比べると社会的地位が低くなってしまう。その結果アメリカに比べると実はイギリスはITの技術系の層が大変薄いのである。
また日常生活においても電子工作やコンピューターに興味があると言う人はアメリカや日本に比べると少ないように思う。
日本は東アジアの中では例外的に手仕事や技術、工業を尊ぶ文化のある国だが、これは古来、地理的、気候的な条件が不利なため、創意工夫が必要であったのが関係あると思う。島国で耕作地も少なく動物もあまりいないから狩猟や交易では暮らせない。
さらに日本は歴史的に政権が工業や手工業を重んじ、取引の仕組みを作ってきたのも大きい。非血縁者により「疑似家族」を作り、親方から弟子に技術を継承する文化があるのも重要である。他のアジア圏はこれが薄い。
だから老舗が極端に少ない。日本は組織としての仕事に強みがあり、技術が継承され、世界で最も老舗が多い国である。
■途上国で漫画や文学が発展しない理由
今考えるとこれは地震や台風による死亡率の高さが関係していたのだろう。身内が死亡した際に非血縁の関係に頼るのはリスク回避となる。これは先ごろの震災で実感した方も多いのではなかろうか。
「疑似家族」を作れないアジアの国は韓国が典型的である。韓国の血縁による排他性は日本人の想像を凌ぐ。
また資格職や支配者的仕事重視も血縁社会だからである。血縁者以外は信用できないので、資格で自分の地位の安全を保ったり、支配者になって権力を独占しなければならない。
途上国で漫画や文学が発展しないのもこれが原因である。身分が不安定なので芸術をやる余裕がない。
子供向けサービスを通してその国を観察すると、親が子供に望む生活スタイルや好まれる肩書き、職業、教育がわかり、その社会の本質が見えてくるのであるが、日本はまだまだ潜在力が高い国だということがおわかりだろうか。
本書にはこれら日本の強みのほか、欧州の移民問題や中国の脅威など、日本が置かれた状況を認識するための全40編が掲載されています。是非ご一読ください。
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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)
著述家、元国連職員
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国での就労経験がある。ツイッター上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。
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(著述家、元国連職員 谷本 真由美)

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