転職や再就職でうまくいく人と、うまくいかない人の差はどこにあるのか。人材コンサルタントの大塚寿さんは「学歴が高くても、大手企業出身であっても“使える人”とはみなされない。
過去の成功体験がしみついている人ほど苦戦する」という――。
※本稿は、大塚寿『定年5年前からの「やってはいけない」 1万人の体験談からわかった「後悔しない会社人生の終え方」』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
■「有名大学卒の肩書」は通用しない
シニア転職の際、受け手の企業が重視することはいったい何だと思いますか?
学歴や出身企業が自分の武器になると信じて疑わない人はおそらくつまずきます。ご注意を。
新卒採用で学歴を重視する企業は多いかもしれません。人気企業は応募も多く、足切りのために「学歴」「SPI」「筆記試験」などでフィルターにかけます。
しかし、シニア転職となると、ピカピカの出身大学も出身企業も参考程度。決め手になることは少なく、マイナスに作用することすらあります。また、天下りや子会社・融資先への転籍時以外、前職の役職もほとんど武器にならないことを知っておきましょう。
もし、高偏差値の超一流大学出身者だらけの企業があったとしても、そこは残念ながらシニア転職の受け皿になりえません。
一番大事なことをお伝えします。シニア転職の受け皿となる中小企業では、超一流大学や大手企業出身者を「使える人」と考えていません。
18歳時の学力や大手企業出身であることが、仕事ができる証明にはならないからです。
むしろ、「大手企業出身者は仕事の守備範囲が狭い」「優秀な部下のマネジメントはできても、玉石混交な部下のマネジメントができない」と、過去に繰り返された失敗から身をもって学んでいます。
■「過剰品質」は求められていない
大きな組織の歯車として、ごく一部の専門領域に長けているだけでは、とても中小企業のお眼鏡にはかないません。
中小企業では超マルチタスクで業務を回し、どんな部下でも戦力化しなければならないので、広範囲の実務経験や、多様な部下のマネジメント経験を積んでいないと通用しないのです。
そうした中小企業がシニア転職者をお断りする際、失礼のないように「過剰品質」などの表現を使ったりしますが、その背後には「あなたの仕事のスキルや実績では即戦力になりません」という意味が込められています。
あるいは、それほど仕事ができて実績があったら、リストラの対象にならないだろうし、中小企業に応募などしてこないだろうと、邪推しているかもしれません。
しかし、○○の設計ができる、海外工場の立ち上げの経験が豊富といった人材は引く手あまたです。また、「技術士」や「薬剤師」といった資格も決め手になりますので、そこははき違えないようにしてください。
■バブル入社組のプライドが命取り
役職定年や60歳定年を見すえ、今から転職活動を考え始める人の多くがバブル期に就職した人たちではないかと思います。
好景気に沸き、大手企業が競うように大量採用した時代です。空前の売り手市場だったため、“就職強者”と呼ばれた一部の大学出身者は大手企業から面白いように内定を取り付けたに違いありません。
そのまま「入社してやった」という上から目線で過ごすうち、就職氷河期世代の精鋭に30~40代で追い抜かれた、と世間から揶揄される世代でもあります。
就活の成功体験がしみついているバブル世代は、シニア転職で苦戦するとは想像すらしていないかもしれません。ここは気をつけましょう。
ある意味、シニア転職は出身大学や出身企業に左右されない、真の実力の世界です。
一流大学、大手企業出身であることに過度にプライドを持つ人は、そのプライドが時に障害となります。もし運よく転職できても、そのプライドはプラスに作用しないでしょう。
なぜなら中小企業の現場では、シニア転職してきた大手企業出身者は、外様(とざま)で異質な存在だからです。「お手並み拝見」を決め込み、協力を得られない可能性もあります。それによって孤立し、居心地悪くなるケースはとても多いのです。
中小企業にうまく転職できたら、「能ある鷹は爪を隠す」振る舞いが、勝者の方略と言えそうです。
【ポイント】

シニア転職は真の実力の世界です。就活で無双したバブル世代は特に気をつけてください。
■「管理業務をやりたい」は傲慢
異業種を転職先にするのはOKです。
でも、デスクワーク中心の元管理職が介護の現場で働けるでしょうか? 人とのコミュニケーションが苦手なエンジニアが接客業に就けるでしょうか?
フットワークやサービス精神が求められる職場に、それまで主にデスクワーク系の管理業務をしていたシニアが多数、応募してくるそうです。
たとえば、介護施設では率先して汗をかく人物を求めているのに、異業種出身の元部長が「いや、デスクで管理業務に携われたら……」と希望しても、最初から話が噛み合うはずがありません。
介護の現場に携わった経験のない人にいったい何ができるのでしょう。自分のキャラクターを無視した迷走は実を結びません。むしろ、はた迷惑です。
もちろん、介護の仕事に携わりたくて資格を取り、現場で汗をかくことを望むのでしたら、何の問題もありません。しかし、前職のようなデスクから指示を出す仕事を介護施設に求めるのは認識不足と言わざるをえません。
デスクワーク中心の業務をしていた元管理職が、転職先に同様の仕事を希望する気持ちはよくわかりますが、正直、50代後半以降はツテがないかぎり、非常に難しいです。
■マンション管理人の倍率は意外と高い
この“インクルーシブ時代”にステレオタイプな表現はしたくありませんが、わかりやすく言うと、自衛隊や警察・消防OBはマンション管理の仕事よりも警備会社のほうがおすすめですし、合格率もケタ違いです。
シニア転職でなくとも、自衛隊や警察からの警備会社への転職は、互いの需要と供給が一致する鉄板ルートです。
シニアたちの大きな受け皿となっているマンション管理の仕事は、実はかなり倍率が高いのです。きちんとやれば、住人から「ありがとうございます」とじかに感謝され、やりがいも感じられるため人気があります。
そのため、なかなかの学歴や職歴の人も転職先に選びます。
私がお世話になった売上数兆円の企業の元部長は、子会社の役員を務めたあと退任して、マンション管理の仕事に就きました。
また、歳下の上司にあれこれ指示されたり、苦言を呈されるのは「プライドが許さない」と感じる方は、マイペースで仕事ができる職場を探すべきです。本人も不愉快ですし、歳下の上司もやりにくいでしょうから、お互いのためです。
■性格に合わない仕事は不幸になるだけ
このあたりは「自分のキャラ」次第ですから、歳下の上司に「あれこれ指示されたくない/仕事なら許容できる/まったく気にしない」のどのタイプに自分が当てはまるのか、事前に分析してください。
「あれこれ指示されたくない」人は、志望先の年齢構成、管理職の年齢や特性などもあらかじめ聞いておくといいでしょう。
「上司が歳下なんて」とか「歳下なんかに」と考えること自体がシニア転職の幅を狭める場合もありますが、まずは「自分のキャラ」に合った職種や職場を探すことが第一です。
同様に、他者とのコミュニケーションについて、自分は「嫌い/苦手/苦にならない/好き/得意」のどれなのかも、シニア転職ではキーファクターとなります。
「人とのコミュニケーションが嫌いでエンジニアになったのに……」と愚痴っていたビジネスパーソンを私はたくさん知っています。営業に同行し、自分が顧客と技術的な折衝をすることに、彼らは心底うんざりしていました。
克服して苦にならなくなった人はともかく、「仕事だからイヤイヤやっていただけで、今でも苦手」という人は、シニア転職でサービス業や接客業を避けたほうがよいでしょう。
たとえば、接客業である家電量販店やホームセンターの相談員は、専門知識がものを言います。
自分の専門が活かせること、お客様に喜んでもらえることが、「他者とのコミュニケーションが苦手」を上回るなら、選択肢としてアリです。下回るなら、別の職種を探したほうがいいかもしれません。
【ポイント】

自分のキャラに合わない仕事や職場を選んでも、双方が不幸になるだけです。

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大塚 寿(おおつか・ひさし)

人材コンサルタント、エマメイコーポレーション代表

1962年群馬県生まれ。リクルートを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。現在、オーダーメイド型企業研修、営業コンサルティングを展開するエマメイコーポレーション代表。著書に、『リクルート流 「最強の営業力」のすべて』『法人営業バイブル 明日から使える実践的ノウハウ』『50歳からは、「これ」しかやらない 1万人に聞いてわかった「会社人生」の上手な終わらせ方』(以上、PHP研究所)や、『40代を後悔しない50のリスト』(ダイヤモンド社)など多数。

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(人材コンサルタント、エマメイコーポレーション代表 大塚 寿)
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