インフルエンザへの対応を甘く見てはいけない。とくに“薬選び”には注意が必要だ。
一歩間違えると命を落とすリスクもあるという。『知らないと後悔する市販薬の最高の選び方』(ライフサイエンス出版)より、一部抜粋してお届けする――。
■「風邪」と「インフルエンザ」との違い
【いろは(聞き手)】「インフルエンザ対策にどんな市販薬を用意しておけばいいのかしら?」
【メディ(薬事情に詳しい)】「インフルエンザは基本的に病院を受診しないといけないのよ」
【いろは】「それは分かってるけどさ、微妙な時とかあるじゃない?そもそもインフルエンザって結局風邪と何がどう違うのよ」
【メディ】「まず症状としては風邪もインフルエンザも熱や喉の痛み、鼻水、咳などが出る。これらは一般的に風邪症状、感冒症状と言われるものなんだ」
【いろは】「インフルエンザは違うの?」
【メディ】「インフルエンザはそれらに加えて、関節痛や高熱、頭痛が現れたりするよ。後は場合によるけど、食欲不振や全身のだるさなどが出たりもするね」
【いろは】「インフルエンザのほうが遥かにしんどいイメージよね」
【メディ】「症状の現れ方として、風邪は比較的ゆっくり症状が出るのに対してインフルエンザは急激に全身に症状が現れることが多いとされているよ」
【いろは】「イッキに症状が出たらつらいわよね」
【メディ】「風邪は一年中どの時期でもひく可能性があるけど、インフルエンザは主に冬に感染する点も違いの一つね。それに風邪とインフルエンザには原因のウイルスの違いもあるんだ」
■「風邪」を治す薬は存在しない
【いろは】「風邪ウイルスっていうのがいるわけ?」
【メディ】「実は風邪っていうのは正式な病名ではないんだ。正式な名称としては、風邪症候群、感冒、急性上気道炎などと言われたりするよ」
【いろは】「確かに、喉風邪多いものね」
【メディ】「風邪のウイルスは、ライノウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなどでその他にも各種細菌が原因ウイルス・原因菌となっているんだ」
【いろは】「たくさん種類があるのね」
【メディ】「インフルエンザは、インフルエンザウイルスが引き起こす一連の感染症のことを指している。実はインフルエンザも、風邪症候群の中の一つだったりするんだけど、あまりにも同じウイルスで流行するから、別枠みたいな感じで呼ばれているイメージだね」
【いろは】「風邪のボスって感じなのね」
【メディ】「実は風邪症候群の原因ウイルスに効く薬はないとされているのよ」
【いろは】「え、風邪薬とかあるじゃない! わたし騙されたってこと?」
【メディ】「風邪薬は原因菌に直接作用しないの。熱を下げる、鼻水を止める、咳を止める、喉の痛みを抑えるなどの各症状に効く成分が配合されている複数の薬の集合体なんだ」
【いろは】「風邪は治んないけどつらい症状だけを和らげるって感じなのね」
■「タミフル」と「イナビル」は何が違う?
【メディ】「インフルエンザの症状緩和に効果的な市販薬を解説していこう。基本的にはインフルエンザに効く抗インフルエンザ薬はお医者さんの処方が必要で、一般の薬局やドラッグストアでは購入できないわ」
【いろは】「じゃあ、抗インフルエンザ薬(図表1)ってどんな種類があるの?」
【メディ】「代表的なのが、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ、シンメトレル」
【いろは】「何が何だかさっぱりよ!」
【メディ】「タミフルはA型・B型両方のインフルエンザウイルスの増殖を防ぐと言われている。体重37.5kg以下の小児にも使用可能な飲み薬なんだ」
【いろは】「吸入するお薬もあるわよね?」
【メディ】「リレンザやイナビルだね。リレンザ、イナビルはタミフルと同様にA型・B型両方に有効と言われている吸入薬だよ。
これらの吸入薬は呼吸器に病気のある人の場合、慎重に使用する必要があるけど、イナビルは長時間作用型の薬で1回使用するだけでいいというのもメリットなんだ」
【いろは】「いろんな薬があるのね!」
【メディ】「ラピアクタは点滴の薬で、吸入や内服ができない場合に選択されることがあるよ。シンメトレルはA型インフルエンザウイルスにのみ効果のある飲み薬なんだ」
■「薬局で済ませる」が危険な理由
【いろは】「それぞれ特徴があるのね。そう言えば、インフルエンザの薬を飲んだ後の異常行動がなんちゃらってニュースを見たことあるわよ」
【メディ】「インフルエンザ治療薬には、吐き気、下痢、口内炎、めまい、頭痛、不眠など様々な副作用があるんだ。インフルエンザ罹患時は異常行動を発現することがあるから、薬の服用にかかわらず、特に未成年の場合は一人になる時間を作らないなどの配慮が必要になっているの」
【いろは】「要注意ね。薬局で済ませたいって時はどうしたらいいのよ!」
【メディ】「っていうか病院に行きなさいよ!」
【いろは】「忙しいこともあるじゃない」
【メディ】「結論から言うと、インフルエンザの時に市販薬の解熱鎮痛剤を使うことはできるんだ。ただ知識なしでテキトーに市販薬を使うと特大級の副作用が発生する可能性があるの」
【いろは】「それはヤバいわね。気になるわ!」
【メディ】「まず、インフルエンザが疑われた時の受診の目安。インフルエンザの症状は急激に全身に現れるよ。38度以上の高熱が出る、強いだるさや悪寒がある、筋肉痛・関節痛がある、激しい頭痛がするなどの場合、インフルエンザに感染している可能性が高いんだ」
■受診の目安は「発症から半日~2日」
【いろは】「いつもと何か違うってやつね」
【メディ】「ただ予防接種を受けていると症状が軽くなる場合もあり、風邪と勘違いしてしまう可能性もあるわ。判断基準として風邪は症状出現が緩やか、インフルエンザは急激な症状が目安になる。
それにインフルエンザが疑われる場合は少し時間を置いたほうがいいともされているんだ」
【いろは】「病院にはすぐ行ったほうがいいんじゃないの?」
【メディ】「緊急性がある場合を除いて、インフルエンザが疑われる場合は初期症状が現れてから12時間以降、48時間以内に受診するのが最適とされているね」
【いろは】「半日から2日以内ってこと? 何でなの」
【メディ】「これには大きく二つの理由があるの。まず、正確な検査を行うためにある程度ウイルスが増えている状態での検査が好ましいんだ。
発症から12時間以降の検査が推奨されているよ。
二つ目の理由は、抗インフルエンザ薬を有効に投与するためなの。抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を防ぐ、つらい症状を軽減してくれるんだけど、発症から48時間以内に投与しなければ十分に効果が発揮されにくいと考えられているんだ」
【いろは】「時間との勝負だったのね。ちなみに受診するのは何科がいいの?」
【メディ】「基本的には内科、もしくは発熱外来などだね」
■「解熱剤」がもつ特大級の副作用
【いろは】「それでインフルエンザの時に使ってはいけない市販薬(図表2)って何なの?」
【メディ】「解熱鎮痛剤のほとんどが使ってはいけないんだ。インフルエンザ脳症のリスクが高まってしまうから危険とされているよ」
【いろは】「こわ!」
【メディ】「商品名で言うと、ロキソニンシリーズのすべて、イブシリーズのすべてになるよ。データによると『インフルエンザ脳症は子供のほうがリスクが高い』と言われているんだ。
ただ、大人でもリスクがゼロというわけではないの。もう一つ、アスピリン系の解熱剤を服用すると、ライ症候群を引き起こす可能性があるよ。これは急性脳症や肝臓の脂肪浸潤などを引き起こして命に関わる重症な病気なんだ」
【いろは】「インフルエンザ脳症とは違うの?」
【メディ】「インフルエンザ脳症は単一の脳の疾患ではなく、意識障害などを起こす複数の疾患を含んだ症候群だから、広いくくりではライ症候群もインフルエンザ脳症の一つだね」
【いろは】「どちらも恐ろしいのね」
■インフルで使える解熱剤3選
【メディ】「同じく商品名で言うと、バファリンシリーズのバファリンAも使ってはいけないよ。バファリンシリーズはそれぞれの商品で成分がまったく違っていて分かりにくいんだ」
【いろは】「無知って怖いわね」
【メディ】「効き目が良いからといってインフルエンザの時はロキソニンシリーズやイブシリーズ、バファリンAを飲むのは避けたほうがいいね。 アセトアミノフェンなどの別の解熱鎮痛剤の成分が入ったものを選ぶのがお勧めだね」
【いろは】「ちなみに商品名で言うとどんなものが使えるの(図表3)?」
【メディ】「一例だけど、タイレノールAは15歳以上なら使えるアセトアミノフェン単剤の市販薬だよ。
他には、7歳以上で使えるバファリンルナJ、3~15歳に使える小児用バファリンチュアブルなどがあるわね。
インフルエンザの時は、普通の風邪と比べて気を付けるべき点がたくさんあるから、しっかり知識をつけておくことをお勧めするよ」
【いろは】「知識は心身を守る盾なのね」

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ゆっくりドラッグストア
ドラッグストア店長と薬剤師のユニット

【ドラッグストア店長】2003年、ドラッグストアA社入社。2009年、A社にて店長昇格、登録販売者資格取得(初年度試験)。2021年、B社に転職、同年店長昇格。2025年までに17店舗を経験し、1日あたり10人程度の接客業務を行う。22年間の店舗経験で約5万人以上の健康相談に応じる。【薬剤師】2016年、薬学部卒業後C病院に勤務。2018年、D薬局に転職。複数店舗を経験。年間10000枚以上の処方に触れ、2025年までに総合病院、内科、整形外科、眼科、皮膚科、小児科、精神科の調剤に携わる。

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(ドラッグストア店長と薬剤師のユニット ゆっくりドラッグストア)
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