■箱根駅伝出場20校中、19校が売上高100億円超
大学経営が「冬の時代」を迎えている。直近の2025年3月期決算で私立大学を経営する545法人のうち、半数を超える287法人が赤字だったのだ。日本私立学校振興・共済事業団公表によると、2024年度は約6割の私立大学が定員割れを引き起こしていたという。
18歳人口の減少が加速しており、文部科学省は「2026年以降は大学進学者数が減少傾向に入る」と予想。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏も「今後10年で4年制大学は、少なくとも50校、多ければ100校減る可能性があります」と指摘している。
“2026年問題”を抱える中で、正月の超人気コンテンツである箱根駅伝に出場した大学の経営はどうだったのか。東京商工リサーチによると、今年の箱根駅伝に出場した20校のうち、実に19校が売上高100億円超で、黒字だった。
他方、箱根駅伝も“改革案”を打ち出し、話題になっている。2年後の第104回大会(28年)から出場校が現行の20校から23校に増加することにより“新たな戦い”が幕を開けることになる。箱根本戦出場枠の獲得という競争は、同時に各大学が法人として生き残りをかけた「経営健全化」の強化や足掛かりとなるのだ。
■箱根駅伝の出場校は「15」が常識だった
筆者は第72回大会(96年)に選手(東京農業大学)として出場しているが、当時の出場校はわずか15校だった。調べてみると、箱根駅伝の出場校が15校になったのは第23回(47年)からで、その年から予選会が始まった。
半世紀以上も「15校時代」が続いたが、第79回(03年)から出場枠が「20」(19校+関東学連選抜)に拡大。第91回(15年)からは「21」(20校+関東学生連合)となった。それが第104回大会(28年)から「24」(23校+関東学生連合)となるわけだ。
従来から「+3校」となり、何が変わるのか。
今年の箱根駅伝で総合7位に入り、初の4年連続シードを獲得した城西大・櫛部静二監督は、「3校増えると予選会は少し楽になるのかな、と。ただ(選手獲得に向け)投資しようという大学の噂もちらほら聞いていますし、より力を入れる大学が増えると、また競争が激しくなると思いますね」と予想した。
予選会をトップ通過しながら、本戦(総合11位)でシード権(10位以内)に一歩届かなかった中央学大・川崎勇二監督も「出場を目指している大学にとっては朗報じゃないでしょうか。3校増えるだけでも、まったく違うと思います」と話していた。
両校とも予選会で何度も苦い思いをしているだけに、3校増を歓迎している。
一方、櫛部監督が指摘したように出場枠が増えることで、本格強化する大学も増えていくだろう。そうなると別の問題が浮上する。第79回大会で出場枠が15校から19校になったときは、有力選手の争奪戦が過熱した。
例えば、授業料免除は序の口で、なかには高額な「奨学金」を出す大学も出てきた。少子化が進むなかで才能あるランナーのパイが少なくなることを考えると、今後はさらにお金にモノを言わせるような動きが激化するだろう。
■初出場やカムバックの可能性のある大学は?
箱根駅伝の新時代に向けて、これまで全く無名の大学も本格強化で本戦に出るところがあるだろうが、実際、数年後に“栄光のスタートライン”に立つのはどの大学なのか。
第102回大会予選会で本戦に届かなかった11~32位の大学は以下の通りだ(予選会の順位)。
⑪法政大、⑫明治大、⑬専修大、⑭日本薬科大、⑮駿河台大、⑯筑波大、⑰拓殖大、⑱芝浦工業大、⑲国士舘大、⑳上武大、㉑麗澤大、㉒明治学院大、㉓桜美林大、㉔平成国際大、㉕流通経済大、㉖武蔵野学院大、㉗亜細亜大、㉘東京経済大、㉙関東学院大、㉚慶応義塾大、㉛育英大、㉜立正大
もし出場枠が23校だったら、11~13位の法大、明大、専大の“常連校”は通過していたことになる。2013年に創部した14位日本薬科大は「強化費予算の削減」がありながらも、初出場に1分19秒差まで迫っていた。
以下、15位駿河台大、16位筑波大、17位拓大、19位国士大、20位上武大、24位平国大、27位亜大、29位関東学院大は本戦出場経験があり、21位麗澤大、23位桜美林大、25位流経大、26位武蔵野学大は留学生がいるチームだ。
■古豪・慶應の箱根駅伝出場はあるのか
今後の注目は、18位芝浦工大、22位明治学院大、それと30位慶大だ。
芝浦工大は2025年4月から、かつて法大のエースとして活躍した徳本一善氏が監督に就任。
慶大は100年近い昔の話ではあるが、1932年のロス五輪に5人の学生代表を送り込んだ古豪。近年も100m日本記録保持者・山縣亮太をはじめ、小池祐貴(100m)、横田真人(800m)、豊田兼(400mハードル)らオリンピアンを輩出しており、競走部は超名門だ。
箱根駅伝は第1回大会(20年)から参戦するも、第70回記念大会(94年)の出場が最後。2017年に「慶應箱根駅伝プロジェクト」を始動したが、苦戦が続いている。低迷の理由は明確だ。スポーツ推薦制度がないため、有力選手を集めるのに苦労しているのだ。
慶大にスポーツ推薦枠ができれば、すぐに箱根駅伝の上位校になるだけの“ポテンシャル”を秘めている。大学界きってのハイブランドで、経営的にも安泰、今さら箱根駅伝で大学名をアピールする必要はない。ただ、推薦枠誕生なら、有望選手が多数入学を希望し、たちまち箱根出場となって、まさに「陸の王者」時代到来となるかもしれない。
また31位の育英大は陸上競技部が強化クラブに指定されており、今年1月には日本選手権1500mを2度制している戸田雅稀が駅伝監督に就任。32位立正大は日本体育大時代に箱根駅伝5区で大活躍した服部翔大監督が2024年4月から指揮を執っている。
現時点で箱根駅伝を目標に“本格強化”している大学は40校以上ある。出場校が「23」になっても、数年で今以上の“大激戦”になるだろう。
■箱根駅伝の出場を狙うなら年間で1億円が必要?
では、新たに強化を始めた場合、箱根駅伝の出場はどれほど難しいのか。
箱根駅伝の出場を目指す大学の多くはここ12年間で9度の箱根駅伝騒動優勝をしている青山学院大を含め、10人ほどのスポーツ推薦枠を持っている。新興チームの場合は1学年で20人近くの選手をとることも珍しくない。実績のないチームに有力選手を勧誘するなら授業料免除だけでなく、奨学金の用意も必要になるだろう。
そして年間の強化費は数千万円という大学が多い。なかには1億円以上の予算を持っている大学もある。さらに40~50人を収容できる寮と全天候型の400mトラックなどを完備した場合は別途、数十億円のお金がかかると言われる。
さらに指導者も大切だ。ネームバリューがあり、理論的で情熱を持っているカリスマを招聘できるのか。とにかく高校生ランナーが魅力を感じる競技環境を作らないと、才能ある選手を集めることができず、チームビルディングがうまくいかない。
また数万人の学生を誇る総合大学と数千人の単科大学では売上高が違うため、駅伝の強化に影響している。
■“甘い果実”を得るための険しい道
今年の箱根駅伝出場校で唯一、売上高が100億円に届かなかった中央学大の川崎勇二監督は、「私どもの大学は駅伝部にそれほど予算をかけられません。同規模の大学もありますが、(今後)本格的に参入するとなるとかなりの予算が必要になってくるでしょう。また綿密なビジョンを立てて、本気で取り組まないと、お金を出したものの、箱根駅伝に出場できないというケースになってしまうと思います」と小規模大学の難しさを語った。
その一方で、「我々も含めて生き残りをかけて強化している大学もあります。若者のテレビ離れが進んでいるとはいえ、箱根駅伝に出ることは宣伝効果として抜群なものがあります」と受験シーズンの直前に30%近い視聴率を叩き出す箱根駅伝のPR力を実感している。
学生数が数千人規模の大学にとって箱根駅伝の出場枠は“甘い果実”だが、それを獲得する道は険しいものになるのは確かだ。
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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)
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(スポーツライター 酒井 政人)

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