嫌われやすい人がやりがちな行動は何か。心理学者の内藤誼人さんは「『みんなが私に組織のリーダーになってくれってうるさいんだ』などと、謙虚さを装って自慢する人は身近に意外に多いことがわかっている。
米国ノースカロライナ大学の研究によると、こういった人ほど嫌われることも判明している」という――。
※本稿は、内藤誼人『もの静かで繊細なあなたが生きやすくなる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「内省する力」があるから成長できる
「自分は引っ込み思案で、目立つ行動ができないから、成長の機会を逃しているのではないか?」
人見知りで、大勢の場ではついつい発言をためらってしまう内向的なあなたは、そう感じてしまうかもしれません。しかし、心配は無用です。
外向的な人が「行動」によって成長するのに対し、もの静かな人の成長の原動力は、誰にも邪魔されない「内省」の時間にあります。人とワイワイ過ごすより、一人静かに考える時間を大切にするあなたこそが、最も着実に成長できるタイプなのです。
たとえば、何かアクシデントが起きたとき、内向的な人ほど、「自分が悪かったのでは?」とすべての責任が自分にあるかのように考えてしまいます。
仕事がうまくいかないのは、自分のせい。

恋人ができないのも、自分のせい。

不運続きなのも、自分のせい。
とにかく、内向的な人ほど、何でもかんでも自分が悪いと考えてしまいます。本当はまったく自分に責任がないときでも、内向的な人は「自分が悪かった」と結論する傾向があるのです。

では、ここで読者のみなさんに質問です。
「すべて自分が悪い」と考えてしまうことは、そんなに悪いことでしょうか。
実のところ、そういう思考をとることは決して悪いことでもないことが、心理学の研究で明らかにされています。
中国の北京にある清華大学のミシェル・リウによりますと、悪い出来事を自分のせいだと考える人は、仏教徒に多い傾向にあるそうです。
リウは、ソーシャルメディアで募集した120名の仏教徒と、177名の仏教徒以外の人を比較していますが、仏教徒ほど「自分が悪い」という思考をとりがちであることがわかりました。
では、そのような思考習慣がある仏教徒は不幸せなのかというと、そんなことはありませんでした。むしろ仏教徒以外の人より、人生満足度は高いことが明らかになりました。
■「謙虚さ」は向上心の証
「私はちっとも悪くない」という考えをしていると、人は成長できません。
仕事がうまくいかないとき、「今は不況だから」とか「社長がロクでもない人だから」などと、周囲に原因をなすりつけていたら、成長しようという気持ちにもならないでしょう。自分は悪くないわけですから。
その点、「自分が悪い」と考える人は、たとえば仕事がうまくいかないとき、新しい仕事のやり方を試してみるとか、本を読んで勉強するとか、いろいろな努力をして現状を打破しようとします。それが自己成長を促すのです。

「自分が悪い」と考えるのは、成長の第一歩。
自分の努力不足を棚に上げて、「先輩や上司の教え方が悪いから、私はいつまで経っても仕事を覚えられない」といった考え方をする人は、たぶん、いつまでも成長することはできません。
そういう人は、自分の成長を実感して幸せな気分になることもなく、つまらない人生を歩むことになります。
内向的な人は、何かあると自分を責めてしまうものですが、「悪いのは努力しない自分」と考えることは、決して悪い思考習慣でもないことは覚えておきたいものです。
■「知ったかぶりをしない」ので好印象
あなたは、自分の知識に自信が持てず、知っていることなのに「発言をためらう」ということはありませんか?
考えすぎる性格ゆえに、完璧でない知識を人前で披露するのを恐れてしまうのです。
しかし、その「謙虚さ」は、実は人間関係で最強の武器となります。無理して自分を大きく見せない姿勢こそが、あなたを「好印象な人物」にする魔法なのです。
外向的な人は、そんなに詳しく知らないことでも、うろ覚えの知識でも、「ああ、それはこういうことだよ」と得々と話したりします。
内向的な人にこういうことはできません。
実際のところ、相当に知識があっても、「私は、あまり詳しくありませんので」と言ってしまいます。
内向的な人は、とにかく知的に謙虚。
賢人ソクラテスは、「自分が知らないことを正直に知らないと自覚することが、真の知恵の出発点」と考え、“無知の知”という概念を自分の哲学の中心に置きました。
内向的な人は、自然にソクラテスと同じような思考法をとっていることになります。
知らないことを認めるのは、とても素晴らしいことなのです。
■「薄っぺらな知識」は必ず見透かされる
内向的な人は、外向的な人を羨みます。
「私も、○○さんのように、堂々と話せたらどんなに素晴らしいことか……」と。
しかし、それは違います。
知ったかぶりなどしないほうが、周囲の人からのウケは絶対によくなります。知らないことを「知らない」と謙虚に認める人のほうが、確実に好かれるのです。これはウソではありません。
米国ミシガン州にあるホープ大学のベンジャミン・ミーガーは、新聞広告などで集めた162名の成人(平均年齢34.65歳)に、「知的謙虚さ」を測定する心理テストを受けてもらいました。
「知的謙虚さ」という言葉はあまり聞いたことがないかもしれませんが、わかりやすく言うと、「知らないテーマでは、知ったかぶりをしない」という特性のことを指します。
次に、ミーガーは、「死刑」「安楽死」「積極的格差是正措置」「遺伝子組み換え食品」の4つのテーマについて、3人以上のグループで30分間の討論をしてもらい、討論後には、各メンバーについてどれくらい好印象を持ったかを尋ねました。
すると、「知的謙虚さ」のテストで高得点だった人ほど、他のメンバーから好意的に評価してもらえることがわかりました。

「ごめん、私はあまり○○に詳しくなくて……」と素直に認めたほうが、知らないテーマなのに、さも知っているかのように振る舞ったりするよりも、他のメンバーから好かれるということが明らかになったわけです。
世の中には、ほんの少ししか知らないことを得々としゃべる人もいますが、そういう人が「薄っぺらい知識」しか持っていないことなど、他の人にはちゃんとお見通し。謙虚で誠実な人は、そういう恥ずかしい姿をさらすこともありませんので、ずっと好かれるのです。
■「なぜか好かれる」のは自慢しないから
自慢話ばかりする人は、たいてい嫌われます。自慢話を聞かされると、こちらが見下されているように感じて、不快になるからです。
「僕がフランスに留学してた頃の話なんだけどさ……」

「私の彼氏って、年収が一億円くらいなんだけど……」

「私のおじいちゃんは大臣経験者でね……」
このような自慢話を聞かされると、私たちはうんざりするものです。
一方、性格的に控えめで謙虚な人は、決して自慢などしません。自分を大きく見せようとはしないので、嫌われずに済みます。
世の中には、謙虚さを装いながら、さりげなく自慢をする人もいます。
こういう人を、英語では、「ハンブルブラギング」(humblebragging)といいます。
米国ノースカロライナ大学のオーブル・セザーは、全米から集めた646名に、ハンブルブラギングの事例をいくつか示し、「こういうタイプの人が、あなたの身近にいませんか?」と聞きました。セザーが例として挙げたのは、次のような人です。

【さりげなく美貌自慢】
「私のことをモデルか何かだと勘違いする人が多くて困っちゃう」
【さりげなく実力自慢】
「みんなが私に組織のリーダーになってくれってうるさいんだ」
調べてみると、70.1%の人が「いるいる、こういう人、私の身近に」と回答しました。謙虚さを装って自慢する人は、意外に多いみたいですね。
セザーはさらに別の研究で、ハンブルブラギングをする人にどんな印象を受けるか尋ねてみましたが、こういった人ほど嫌われることも判明しました。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)

心理学者

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

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(心理学者 内藤 誼人)
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