仕事で成功する人の特徴は何か。心理学者の内藤誼人さんは「米国ハーバード・ビジネス・スクールのプレゼンでは、エンジェル投資家の興味関心に合わせて、自分のプレゼンを修正しようとすると、かえって悪い評価を受けたことがわかっている。
相手、お客様は意見やアイデアをころころと変えられることが好きではない」という――。
※本稿は、内藤誼人『もの静かで繊細なあなたが生きやすくなる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■もの静かな人ほど「実はクリエイティブ」
「内向的な人は、杓子定規なモノの考え方をする、つまらない人間だ」と誤解されることがありますが、決してそんなことはありません。むしろ、常識に縛られず、すごく自由な発想をする人であることのほうが多いのです。
内向的な人は、あれこれと頭の中で熟慮していますが、じっと黙って考えているだけで、あまり口には出しません。だから、周囲の人にはその豊かな発想力が伝わらないのです。
考えたことをきちんと口に出して他の人に話すようにすると、その考えのユニークさをわかってもらえるはずなのですが、発言をためらいがちで、その点では損をしていることになります。
たとえば、あのアインシュタイン。
彼は子どもの頃から非常にもの静かで繊細なタイプで、周囲から心配されるほどでした。
そんなアインシュタインは、「光の先端に乗って飛びまわっていたら、世界はどんなふうに見えるんだろう?」「落下するエレベーターの中で硬貨を落としたら、どうなるんだろう?」などと空想して、一人で楽しんでいたといいます。
■内向的な人の「頭の中」はどうなっている?
「それはアインシュタインだからであって、ごく平凡な控えめな人は違うのでは?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。内向的な人ほど、クリエイティブな発想ができることを示す研究もあるのです。

米国ニューヨーク州立大学のジュリー・ボーカーは、295名の大学生に、内向性・外向性を調べる心理テストと、創造性を測定する心理テストを受けてもらいました。
すると、内向的な人ほど創造的、つまりクリエイティブな発想をすることがわかったのです。
内向的な人は、頭の中で非常に面白いことを考えています。ただ残念なことに、それを他の人に話しません。だから、一見すると地味な人、面白みのない人という印象を与えてしまうのです。
もし読者のみなさんが上司や管理職で、部下たちに新しい商品や企画のアイデアを出してもらいたいと思っているのであれば、できるだけ内向的な人、もの静かな人たちを選んで頼んでみるといいかもしれません。
「従来の常識に縛られずに、好きなようにアイデアを出してみてよ」とお願いすれば、彼らは、周囲を驚かせるようなアイデアをポンポンと出してくれる可能性が高いと思われます。
ただ、もともと熟慮タイプが多いので、時間的なプレッシャーがあると緊張してアイデアを出せなくなってしまうかもしれません。そのため、期限を区切ったりせず、好きなように考えてもらうのがコツです。
内向的な人のクリエイティブな発想で、新しいビジネスチャンスが見つかるかもしれませんね。
■その「粘り強さ」を誇ってもいい
内向的な人は、物事を何でも深刻に考えてしまいます。
そのためでしょうか、内向的な人ほどうつ病になりやすいとされています。

内向的な性格とうつに関連性があることはすでに多くの研究で明らかにされているのですが、それでは、うつになりやすいことはマイナスなのでしょうか。
たしかに、うつ病にはマイナスの点もあります。楽観的になれないことや、自殺する意図が高くなってしまったりすることは、明らかにマイナスでしょう。
けれども、プラスの面もたくさんあるのです。
カナダにあるコンコルディア大学のカーステン・ロッシュは、青年期の122名を対象に、ほぼ半年おきに3回の調査を行いました。
その結果、抑うつ(気分が落ち込み、意欲が低下した状態)傾向が強い人ほど、頑張り屋さんで、簡単に物事を諦めないことがわかったのです。
「私は目標達成のための努力を厭わない」

「私はうまくいくまで頑張る」
といった項目で高得点を挙げるのは、抑うつ的な人でした。
内向的な人は、難しい仕事を任されても、すぐに諦めたりはしません。とことん頑張ろうとします。
どんな業界の、どんな仕事もそうだと思うのですが、粘り強く取り組み続ければ、必ずうまくいきます。うまくいかないのは、途中で「もう、やめた」と投げ出してしまうからです。諦めなければ、仕事は必ずうまくいきます。

内向的な人は、そういう努力を厭いませんので、結果として仕事も成功するのです。
■「口先だけ」の人が多い中で貴重な存在
努力は人を裏切りません。
「努力してもうまくいかないことだって、現実にはあるのではないか?」と反論したい人もいるでしょうが、うまくいかないのは努力が足りないからです。本気で取り組まないから、うまくいかないのです。
たとえ独学で、しかも効率の悪いやり方でも、何十時間、何百時間も勉強をすれば成績は伸びます。成績が伸びないのは、中途半端な努力しかしていないからです。仕事も同じで、投げ出さずに頑張り続ければ、必ず道は開けます。
内向的な人は、就職面接での自己アピールはうまくできませんが、私が人事担当者なら、外向的な人でなく、内向的な人を多く採用すると思います。
外向的な人は「口先だけ」の人が多い傾向にありますが、内向的な人はそうではありません。どんな仕事にも実直に取り組むので、会社に大きな利益をもたらしてくれる素晴らしい人材だといえるのです。
■「正直者」はバカを見ない?
「正直者はバカを見る」ということわざがあります。
世の中を生き抜いていくためには、少しくらいずる賢く立ち回らないと、不利益をこうむってしまうよ、という意味です。

内向的な人は、自分の気持ちを伝えるのが、そもそもあまりうまくありませんし、ウソをつくのも下手ですので、どうしても正直者にならざるを得ません。そのため、人生で損ばかりをすることになってしまうのでしょうか。
……大丈夫。「そんなことは決してありませんよ」ということを示す、内向的な人にとってはものすごく勇気づけられる研究があるのです。
米国ハーバード・ビジネス・スクールのフランチェスカ・ジーノは、166名の起業家(平均年齢28.1歳)にベンチャーのアイデアを競うコンペでプレゼンをしてもらいました。そのプレゼンは、経験豊富なエンジェル投資家たちに判定してもらうことになっていました。
エンジェル投資家というのは、まだ実績も何もなく、海のものとも山のものともわからない起業家に、その将来性を信じて応援する投資家のことをいいます。
ジーノは、各自のプレゼンが終わった直後に声をかけ、「あなたはどれくらい正直に伝えましたか?」という質問と、「投資家の期待や要望にどれくらい合わせようとしましたか?」という質問をしました。
その結果、正直に話したほうが、エンジェル投資家の判定で勝者に選ばれることが多いとわかりました。
投資家の興味関心に合わせて、自分のプレゼンを修正しようとすると、かえって悪い評価を受けることもわかりました。
■「信用」こそが豊かさを入手するチケット
私たちは、お客さまに気に入ってもらえるように、自分の意見やアイデアをころころと変えることが少なくありません。ですが、そんなことをしていると、相手の目には、「こいつは信用できない」と映ってしまうようです。

その点、「私はこういうアイデアのビジネスをやりたいのです」と正直にプレゼンをしたほうが、投資家には好ましい印象を与えます。
「正直者はバカを見る」ということわざはありますが、実際のところ、「正直者ほどトクをする」のが現実です。
アパレルの店員さんもそうですね。
お客さまは、正直に話してくれる店員が好きなのです。どんな服を試着しても、「これも似合いますね」「あれも似合いますね」と、お追従ばかりの店員は心に裏表があるように感じられてしまいます。お客さまは、そういう人から商品を買おうという気持ちにはならないのです。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)

心理学者

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

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(心理学者 内藤 誼人)
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