※本稿は、帯津良一『やり残したことは、死んでからやればいい』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。
■生野菜は健康のために必須ではない
「生野菜は嫌いだから一切食べません」
講演会で話すと、ほとんどの人が「えっ」という顔をします。
健康のためには生野菜を食べないといけないと、いつのころからか言われるようになって、みなさん、生野菜のサラダをせっせと食べているようです。
もちろん、生野菜を食べることは健康を維持するには大切なことです。ビタミンCやE、カロチノイド、ポリフェノールといった抗酸化作用がある成分がたくさん含まれています。抗酸化というのは、体が酸化するのを防ぐ効果です。酸化するというのは錆(さ)びる、腐るということです。体が錆びたり腐ったりするのを防ぐのが抗酸化物質です。
酸化という意味でやっかいなのが「活性酸素」です。
人間が活動する上で、体の中には強烈な酸化作用をもつ活性酸素という物質がたくさん作られます。
■酸化から体を守り健康にいいのは間違いない
そのせいで体内に大量の活性酸素が発生して、体の中で暴れまくります。すると細胞が錆びつき老化が進みます。活性酸素が遺伝子を傷つけることでがんを発症することもあります。
生野菜は酸化から体を守ってくれます。食物繊維も多くあって、健康にいいのは間違いありません。生野菜が好きな人はどんどん食べるといいでしょう。
しかし、それはあくまでも好きな人におすすめするのであって、私はキャベツやレタス、キュウリなどが生で皿の上に並んでいるのを見ると、途端に食欲が減退してしまいます。どうしても食べる気になれないのです。だから、いくら健康にいいと言われても見向きもしません。
ずいぶんと前のことですが、ある菜食療法の会に誘われました。がんの患者さんがたくさん参加されていて、私が講演をすることになったのですが、講演後、せっかくですから夕飯もどうぞと言われて食堂に行きました。
そうしたら、ずらっと生野菜が並んでいました。失礼とは思いましたが、急用ができたと言って東京へ帰ることにしました。
■生の野菜と人糞がセットの記憶
おそらくですが、野菜嫌いの理由は子どものころにあると思います。
昭和20年代、30年代、生の野菜が食卓に上がることはありませんでした。だいたい、生野菜のサラダを食べるという文化は1964年の東京オリンピックのころから始まったのではないでしょうか。
世界中から人が集まってきましたので、西洋の食文化が入り込んできて、日本人も野菜サラダを食べるようになったのかと思います。
私が子どものころは、畑に人糞を肥料としてまいていました。私の家のまわりにも畑が広がっていましたから、農家の人が人糞をまいているのを見ましたし、畑の香水と言われた、鼻をつまみたくなるにおいはしょっちゅう嗅いでいました。
人糞にはさまざまな寄生虫や菌が含まれていることがあります。生で野菜を食べるのは、とても不衛生なことだったのです。
そのときの記憶が残っているのではないでしょうか。
生の野菜と人糞がセットになってしまっていて、今は人糞なんか使ってないと言われても、いいイメージがもてなくて生野菜を食べる気にならないのです。
■栄養素だけではなく、楽しむことも大切
ただ、生野菜は食べなくても、煮たり焼いたりと火を通した野菜はいただきます。
私が大切にしているのは、旬の野菜であること、それから新鮮であることです。今は、どんな野菜も一年中食べることができます。しかし、冬にピーマンを食べてもおいしくありません。
春ならタケノコ、夏はピーマン、枝豆、秋はなす、冬は大根、白菜、ほうれん草。
旬の野菜、新鮮な野菜は栄養素も豊富で、何よりも大地のエネルギーをたくさん含んでいます。食というのは、私たちが生きるためのエネルギーを大地からいただく行為です。そのエネルギーのひとつとして、ビタミンやカルシウムといった栄養素があるのです。
生野菜を食べることはとても健康的ですが、私のようなタイプの人は、無理して食べる必要はないでしょう。煮たり焼いたりした野菜で十分です。
昔の人は生野菜を食べなくても元気でした。
食は栄養素を取り込むだけではなく、楽しむことも大切です。
■食と健康は密接な関係があり治療にもなる
60年以上、がんの患者さんの診療をしてきて気づいたのは、患者さんも医者も食事については無関心だということです。
患者さんは、手術をして退院して家へ帰ったあとは、病気になる前と同じ食生活に戻ります。
医者も食事については、「バランスよく食べてください」とか「食べ過ぎないようにしてください」といった程度のアドバイスしかできない人がほとんどですから、患者さんが「いつもと一緒でいいだろう」と考えるのも当然のことです。
医学部時代、食事と病気についての講義を受けた記憶はまったくありません。医者になってたくさんの医者と付き合いましたが、何を食べればいいか、どう食べればいいか、食べない方がいいものは何か、といったことにはだれも関心をもっていませんでした。
私も外科医のころは、いかにうまく手術をするかで頭がいっぱいで、食の大切さについて考えたことなどありませんでした。
食べたものが血となり肉となるとは知っていても、食べるという行為はあまりにも日常的なので、医学の対象とはならなかったのです。
私は中国医学を学んだことがきっかけで、食と健康は密接な関係があって食による治療も必要だと知りました。
■病院でも一時ブームになった玄米菜食
それで、故郷の埼玉県川越市に病院を開設したときには、入院患者さんの朝食に、漢方粥(かんぽうがゆ)という漢方薬の原料となる薬草を入れたお粥を出すようになりました。
さらにホリスティック医学を取り入れたときには、食事療法も始めました。専門家を呼んで食事指導をしてもらったりもしました。
そのころは、玄米菜食が注目を集めつつあり、食事に関心をもつ患者さんが徐々に増えていました。
私も、食事療法に取り組む患者さんの様子を観察したり、本を読んだりして、食と健康・病気との関係について、よく考えたものです。
がんの患者さんの中には西洋医学だけの治療では不安に思う方も多く、西洋医学以外の代替療法と言われる治療法を取り入れる方がいます。そういう人が最初に取り組もうとするのが食事療法です。
私の病院でも、一時、玄米菜食がブームになりました。私たちが食べている白米にする前の茶色っぽい米を玄米と言います。玄米を精米して白米にすると、多くの栄養素が失われるということで、玄米のまま柔らかく炊いて、それをよくかんで食べるわけです。
そして、肉食はよくないということで、極力動物性たんぱく質をとらないようにします。これが玄米菜食の基本です。
■喜びや楽しみがあってこその健康食
玄米菜食で元気になった方はたくさんいます。
しかし、食事というのは毎日、それも三食ですから、簡単に変えられるものではありません。海外旅行に一週間も行っていれば日本食が恋しくなるのと同じです。
食べ慣れない玄米を毎日食べていると、うんざりしてしまう人も多いのです。しかし、がんを治すためには食べないといけない。
ついには食事の時間が苦痛になってきてしまうのです。
私も白米派なのでよくわかります。私の大好きな刺身は、玄米と一緒に食べる気にはなれません。
回診に行くと、玄米に飽きた入院患者の方は冴えない顔をしています。
「どうしたのですか? 具合が悪いのですか?」
「いえ、体調はいいのですが」
患者さんが口ごもります。
私は、彼の憂うつの原因を即座に察して、こう言います。
「今度の日曜日、町へ出て、ステーキかうなぎでも食べてきたら」
ぱっと患者さんの顔が明るくなります。
「いいんですか」
私はにこっと笑って病室を出ます。
日曜日、患者さんは意気揚々と町へ出てきます。エネルギーにあふれています。
■がんが必ず消える食べ物はこの世に存在しない
そして、翌日からまた玄米菜食をがんばって、飽きたらおいしいものを食べに町に出るのです。
食事が修行とか治療の手段というだけではあまりにも空しい気がします。玄米を半年なり一年食べれば、がんが必ず消えるならともかく、そんな食べ物はこの世に存在していないわけで、そこに人生をかけるかどうか、自分で考えてみるといいと思います。
私は玄米に人生をかけることはできません。
一日の仕事を終えて、私の食卓には、お酒はもちろん、湯豆腐にお刺身があって、そして白米から湯気が立ち上っているのを見たとき、「今日一日、がんばってよかった」とうれしくなります。食事にはそんな側面があるということです。
栄養素もカロリーも大切です。
しかし、私たちは人間ですから、私たちにとっての食事は自動車にガソリンを補給するのとは違うはずです。
楽しみ、喜びがあってこその健康食でしょう。
私はいくら体にいいからと言われても、おいしく感じないものは食べません。
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帯津 良一(おびつ・りょういち)
医師
1936年埼玉県生まれ。1961年東京大学医学部卒業。東京大学医学部第三外科医局長、都立駒込病院外科医長を経て、1982年に埼玉・川越に帯津三敬病院を開業。2004年に東京・池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設。主にがん治療を専門とし、西洋医学と中国医学などの代替療法を用いて、患者一人ひとりに合った診療を実践している。体だけでなく、こころといのちも含めた人間まるごとをみるホリスティック医学を提唱。89歳になる現在もホリスティック医学の実践、講演や執筆など精力的に活動。著書に『89歳、現役医師が実践! ときめいて大往生』(幻冬舎)など多数。
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(医師 帯津 良一)

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