長生きするにはどんな食事をとるといいか。医師の帯津良一さんは「私の肝臓はγ-GPTは3ケタと基準を大きく上回る数値だったが、病院の栄養科の科長さんがあるとき作ってくれた出し汁を飲み出すと、その後検査数値に異変が起き2ケタになった」という――。

※本稿は、帯津良一『やり残したことは、死んでからやればいい』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。
■「高値安定」の肝臓の検査数値に異変
私は肝臓の検査数値は最悪で、定期健診ではγ-GPTは3ケタでした。男性で50以下が基準です。それが3ケタですから、「お酒の飲み過ぎです。禁酒しなさい」と普通は言われてしまいます。
しかし、私の場合は、何十年も前から数値は高かったですし、高いからといって体調に問題があったわけではありませんでした。だから、「高値安定だ」と笑って過ごしてきました。もちろん、お酒を控えることもしません。
その高値安定の検査数値が2ケタになりました。
特別なことは何もしていません。毎日飲むお酒の量も減っていません。食べ物も大きく変えた覚えはありません。

「どうしてだろう?」
不思議でたまりませんでした。
あるとき、ふっと思い当たることに出くわしました。
昆布です。
だいたい夕方の6時半ごろですが、診療が終わると病院の食堂へ行き、晩酌で一日の疲れを癒します。私は湯豆腐が大好きで、病院の栄養科の科長さん(女性です)が私のために毎日のように作ってくれます。
■昆布の出し汁の驚くべき効果
あるとき、科長さんが「湯豆腐の出し汁も飲んでみませんか。おいしいし昆布だから体にもいいですよ」と言って、コップについだ出し汁をもってきてくれました。飲んでみたらなかなかいけます。
そんな経緯から、病院で食事をするときにはいつも昆布の出し汁を、ウイスキーのチェイサーとしてコップで何杯も飲むようになりました。検査数値の異変は、そのあとに起こったことです。
γ-GPTがいきなり2ケタになった理由は昆布。そうとしか考えられないのです。

昆布はカルシウムが2に対してリンが1の割合で含まれています。これが一番効率的に吸収されやすい割合です。
カルシウムばかりをとっても、吸収されないのでは意味がありません。カルシウムが吸収されれば骨も強くなります。骨粗しょう症にもなりにくいし、ちょっと転んだだけで骨折をして寝たきりになってしまうリスクも少なくなります。
肝臓に対してだけではなく、骨にもいいし、ほかにもいいことがいっぱいある食材だと思いながら、ありがたく昆布の出し汁を飲んでいます。
■食事は「少し足りない」くらいがちょうどいい
牛肉もよく食べます。
若いころは3センチほどの厚さのステーキをぺろりと食べていました。さすがに年をとったら分厚いステーキは食べたいと思わなくなり、すき焼きを食べることが多くなりました。
牛肉は、高たんぱくで筋肉を作るのに必要なアミノ酸などをたくさん含んでいます。筋肉が老化するのを抑える働きがあるわけです。できるだけ筋肉を弱らせないことで、強い体を維持できます。

刺身も好きですが、魚にはDHAやEPAといった健康にいいと言われている脂質がたくさん含まれています。同じく大好きな豆腐には、植物性のたんぱく質やイソフラボンが豊富です。
栄養素を意識して食事をしたことはありませんが、結果として体にいい食生活をしてきたことになります。
養生訓』を書いた貝原益軒も、「食べたいものこそ、体が必要としているもの」というようなことを言っています。
私も、あれは体にいいとか、これは悪いといった知識、情報に振り回されることなく、今日は何が食べたいかをベースにその日の食事を決めてきました。本能の求めに従って食べてきたのが正解だったと私は思っています。
さらに、80歳を過ぎてから少食になりました。
よく行くうなぎ屋さんでも、70代のころはコース料理を全部おいしくいただけたのに、このごろは、最後に出るうな重はお土産で持ち帰ることが多くなりました。
年をとると食が細くなる。これも自然の摂理かもしれません。
ただ、お腹いっぱい食べるよりも、少し足りないくらいで抑えておいた方が、体調はいいように感じています。家に帰ったころにはお腹がこなれて、お風呂へざぶんと入り、ベッドにもぐりこめばすぐに眠りにつけます。

私の今の食事の流儀は、「食べたいものを少なめに食べる」ということです。
■漢方が示す確固たる教え
「好きなものばかり食べていて、栄養のバランスは大丈夫でしょうか?」
私が食べたいものを食べるのがいいと話すと、決まって出てくる質問です。
何かとバランスのいい食事が大切という言い方がなされます。しかし、バランスのいい食事とは何かと問うと、結局は「肉も魚も野菜も好き嫌いなく食べましょう」ということになってしまいます。
これでは漠然としすぎて、言われた方はピンときません。
私は、漢方薬のこともずいぶんと勉強しました。漢方には、「弁証論治(べんしょうろんち)」という確固たる基本があります。弁証というのは、証を診るということ。証というのは、簡単に言うなら体質のことです。
患者さんの脈や顔色、舌ベロ、お腹の具合、声の質などをチェックして、熱証(体が熱っぽい)か寒証(体が冷えている)か、実証(血気盛ん)か虚証(弱々しい)かといった状態を知り、それに応じた治療を施す(論治)わけです。バランスがいいという漠然とした言い方ではなく、冷えている人は体を温めるものを、熱っぽい人は冷やす食べ物をすすめます。
■食べたいものは体が欲しているもの
本来、自分がどういう証(体質)で何を欲しているかは、体が知っているはずです。
冬の寒い日、ぶるぶる震えながら帰宅して何が食べたいか。温かいうどんとかラーメンがほしくなります。体が冷え切っているときに熱いお茶を飲んだら、こころの底からほっとするのではないでしょうか。
私は冬でも病院では靴下をはきません。外出のときもコートを着ません。寝ているときも足は布団から飛び出しています。体が熱い、つまり熱証だからです。
熱証だから、仕事のあとの冷えたビールが格別においしいのです。体を冷やすという面では生野菜も食べたくなってもいいのですが、どういうわけか、そういう気持ちになったことはありません。生野菜で体を冷やす以上にビールの方が効果的だから、それでいいのだと思っています。
つまり、そのときに食べたいものという欲求は、体が欲しているからこそ出てくるものなのです。

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帯津 良一(おびつ・りょういち)

医師

1936年埼玉県生まれ。
1961年東京大学医学部卒業。東京大学医学部第三外科医局長、都立駒込病院外科医長を経て、1982年に埼玉・川越に帯津三敬病院を開業。2004年に東京・池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設。主にがん治療を専門とし、西洋医学と中国医学などの代替療法を用いて、患者一人ひとりに合った診療を実践している。体だけでなく、こころといのちも含めた人間まるごとをみるホリスティック医学を提唱。89歳になる現在もホリスティック医学の実践、講演や執筆など精力的に活動。著書に『89歳、現役医師が実践! ときめいて大往生』(幻冬舎)など多数。

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(医師 帯津 良一)
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