年齢を重ねても元気で過ごすには何を食べるといいか。医師の帯津良一さんは「100歳以上まで健康で長生きしている人は、男性も女性も平均的な日本人と比べて摂取している総エネルギー量に対するたんぱく質の割合が高いというデータが出ている。
講演に行く経営者の集まりには年配の人も多いが、みなさん顔がつやつやしていて見るからにエネルギッシュで食欲旺盛だ」という――。
※本稿は、帯津良一『やり残したことは、死んでからやればいい』(廣済堂出版)の一部を再編集したものです。
■がんが増えたのは食の欧米化が原因か
かなり前になりますが、管理栄養士で日本の伝統的な食を研究している幕内秀夫さんに患者さんの食事指導をしてもらっていたことがあります。大ベストセラーになった『粗食のすすめ』の著者と言えばわかる人も多いかもしれません。
粗食というのは、何も粗末なメニューということではありません。日本人は日本の伝統的な食事をした方がいいということです。
戦後、食生活ががらりと変わりました。肉食、乳製品、パンやパスタが中心になって、ご飯に味噌汁、漬物といった日本の伝統食は粗末に見えました。体が大きくて筋肉隆々のアメリカ人。
それに対して、小さくて貧弱に見える日本人。食べ物が違うからこんなにも差が出るんだ、日本人もアメリカ人のような食生活に変えて、もっと強くならないといけないという風潮でした。
さらに、その延長として、便利だからということでファースト・フードや加工食品が食卓を占領していきます。
外食も増えました。
確かに日本人は体も大きくスマートになり、私のようなずんぐりむっくりな人は少なくなりました。
しかし、本当にそれでよかったのか。
がんが増えたのは、食の欧米化が原因だと指摘する人もいます。
健康に生きるには、日本人がどんなものを食べてきたのか見直す必要があります。欧米で日本食が健康食として注目されても、なかなか日本人の欧米志向は変わりませんでした。
■カタカナではなく、ひらがなの食べ物を
私たち戦前に生まれた日本人は、日本食が体に染みついています。食糧難も体験しています。ですから、食に対する節度をもっています。私も食べることは好きですが、テレビでやっているような、食べ歩きとかグルメ特集というのにはなかなかなじめません。
だからこそ、私も89歳ですが、戦前生まれの人はけっこう長生きしているのかもしれません。戦後に生まれた人たちは、このままの食生活を続けていると、健康で長生きできないのではと心配したりもします。

私は湯豆腐が大好きです。昆布の出し汁を飲むようになって体調もよくなりました。
それに刺身も欠かせません。納豆、漬物など発酵食品もよく食べます。締めはやはりご飯です。ニンジンご飯、タケノコご飯、栗ご飯と、旬の食材を使った炊き込みご飯が大好きです。
朝ご飯に塩鮭や塩辛が出てくれば、いい気持ちで一日のスタートが切れます。
そんなわけで、自分の食生活を振り返ると、図らずも日本食が中心になっています。
日本食が嫌いな人には無理にとは言いませんが、せっかく日本に生まれてきたのですから、日本の伝統食を楽しんでみてはいかがでしょうか。
幕内さんは、カタカナの食べ物ではなくひらがなのものにするといいと言っています。
たとえば、「パスタ」ではなく「うどん」、「ラーメン」ではなく「そば」、「パン」ではなく「ごはん」、「ステーキ」ではなく「すきやき」、「シチュー」ではなく「みそ汁」、「サンドウィッチ」ではなく「おむすび」でしょうか。これも日本の伝統食の判断材料になるかと思います。

■心身の疲れが一気に消し去るような食べ物はこれ
日本食ばかりかというとそうでもありません。
若いころは牛肉のステーキが大好きでした。3センチくらいの厚みのあるステーキをぺろりと平らげたものです。特に、手術が終わったあとは必ずステーキでした。
「よく手術のあとにステーキが食べられますね」
患者さんの胸からお腹を切り開いたあとですから、肉料理なんかほしくならないだろうと、みなさん思うようです。
私の専門は食道がんで、食道の手術は時間がかかります。何時間も立ったままで体力を消耗します。
細かいところまで気をつかわないといけないので神経も疲れます。やっと終わってホッとしたときはクタクタです。こういうときには、肉がほしくなるものです。
ステーキを食べると、心身の疲れが一気に消えていく感じがしました。
年をとるとさすがに分厚いステーキは食べる気がしません。
今はもっぱらすき焼きをいただいています。
■健康で長生きする人は牛肉を食べている
栄養学的に言うと、牛肉は高たんぱくで、筋肉作りに必要なアミノ酸などの成分を豊富に含んでいます。そのため、筋肉の老化を抑えられ、丈夫な体を保てるのです。
経営者の集まりでもよく講演を頼まれます。けっこう年配の人も多いのですが、みなさん顔がつやつやしていて見るからにエネルギッシュです。懇親会があると、私もびっくりするくらい食欲旺盛で、分厚いステーキもおいしそうに食べています。
高齢になっても会社のトップとして活躍しようと思うと、粗食では気力体力がもたないのかもしれません。
百歳以上まで健康で長生きしている人は、男性も女性も平均的な日本人と比べて摂取している総エネルギー量に対するたんぱく質の割合が高いというデータが出ています。たんぱく質の中でも動物性たんぱく質が多いこともわかっています。
経営者でなくても、元気で長生きしようと思うなら、あっさりしたものばかりではなく、たまには肉を、それもせっかくですから高級なおいしい牛肉を食べるといいのではないでしょうか。

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帯津 良一(おびつ・りょういち)

医師

1936年埼玉県生まれ。1961年東京大学医学部卒業。
東京大学医学部第三外科医局長、都立駒込病院外科医長を経て、1982年に埼玉・川越に帯津三敬病院を開業。2004年に東京・池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設。主にがん治療を専門とし、西洋医学と中国医学などの代替療法を用いて、患者一人ひとりに合った診療を実践している。体だけでなく、こころといのちも含めた人間まるごとをみるホリスティック医学を提唱。89歳になる現在もホリスティック医学の実践、講演や執筆など精力的に活動。著書に『89歳、現役医師が実践! ときめいて大往生』(幻冬舎)など多数。

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(医師 帯津 良一)
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