人を動かすには何をすればいいか。5つの仕事を掛け持つ時間管理コンサルタントの石川和男さんは「『俺についてこい』と背中を見せるのがリーダーシップというスタンスで部下に接すると、うまくコミュニケーションを図れなくなる。
一方で、リーダーが頭を下げるとチームメンバーのモチベーションが高くなり、仕事のスピードもパフォーマンスも良くなる」という――。
※本稿は、石川和男『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■キラキラと輝く瞳で上司の武勇伝に耳を傾ける
リーダーになる人は、過去に輝かしい業績を上げ、何かで結果を残し、何かに秀でている人が多くいます。数多くの自慢話、武勇伝を持っています。それを言うか言わないかの違いだけです。
もし、あなたの上司がこのような武勇伝を語ってきたら、我慢して耳を傾けてあげてください。上司の自慢話に相槌を打ちながら、キラキラと輝く瞳で聞いてあげるのです。
上司が語れる唯一の武勇伝です。1年に4回ぐらい、一つしかない自慢話を同じようにするでしょう。もう耳にタコができて、暗唱までできるかもしれませんが、それでも耐えてください。そうすれば、上司からあなたは気に入られ、コミュニケーションも円滑になる可能性が高くなるからです。
同時に「自慢話は部下をこんなにイヤな気持ちにさせるんだ。
上司はイヤな役を演じて、それを教えてくれているんだ」と思えばいいのです。
あなた自身は部下に自慢話、武勇伝を語るのは絶対にやめてください。
その理由は「部下から嫌われないためかな?」と思ったかもしれません。確かにそれもあります。しかし一番の理由は、情報から取り残されないためです。
リーダーになると、チームの中では自分が一番仕事ができると勘違いしがちです。すると、部下の話に耳を傾けなくなります。
私自身がそうだったのですが、ひどいときは社内で仕事が一番できると思っていた時期もありました。今となっては恥ずかしい限りです。同じ部下と5年以上つき合っていたら、もう自慢話(武勇伝)は言い尽くしたと思ったほうがいいでしょう。
■我以外皆我が師の精神で全ての人から学ぶ
若手のメンバーは、子どもの頃からパソコンや携帯電話に精通しています。高校や大学でもパソコンの授業があり、知識も豊富です。

私は当然、パソコンなどのITスキルが彼らよりも劣っていると分かっていたのですが、認めることができませんでした。
当時の私は、部下に教えてもらうなんて上司の恥だと思っていたのです。
今は、意味のないプライドは捨て、分からないところは聞いていますが、このまま聞かずに仕事をしていたら、仕事が遅いリーダーになるところでした。
変化のスピードが激しい現代において、成功は過去のものです。過去の成功はすぐに通用しなくなってしまいます。
仕事が速いリーダーは、各々が強みを持っていると考えています。上司や先輩にはもちろん、部下にも教えを請うことがあります。まさに「我以外皆我が師」の精神で、全ての人から、学べることがあると考えるのです。
■バスで車酔いするまでビジネス書を読む
私もITスキルの他に現場で得た情報などは、部下に対して上下関係を考えず、フラットな目線でもらっていました。
会社からだけではありません。リーダーとしていろいろな知識が必要だと思っていたため、書籍を読んだり、ビジネスセミナーに出席したりして学んでいました。
通勤バスの中ではビジネス書を読みあさり、車酔いしてしまうこともありました。
常に前進していこうという気持ちが強かったのです。
当然、知識も知恵もつきましたし、この部分は部下に聞いたほうがいいなと思った点は素直に聞きます。
リーダーになったら、過去の栄光にとらわれてはいけません。自分が一番だと思わないことです。自分は補佐役だと思えばいいのです。
仕事が速いリーダーは、自慢話に酔う暇があったら、部下から一つでも多く仕事のノウハウを聞き出し、仕事のスピードアップに役立てます。
仕事が速いリーダーは、知らないことを誰からでも謙虚に学ぶ!
■「仕事は先輩から盗むものだ」というスタンス
以前勤めていた会計事務所での話です。
通信販売会社である顧問先は、春の新商品のカタログを顧客に送らなければなりませんでした。しかし、完成したカタログに不備があり、変更を余儀なくされます。
例年4月の上旬は、エース級商品の販売が大きく見込めます。しかし、一昨年あたりから、ライバル会社が類似商品を提供しはじめました。
宣伝広告費を使い、徐々に売上も追いつかれてきています。
そのような状況の中、遅れてカタログを発送するわけにはいきません。手直しの期限は3日間。
今回の不備の発生は、仕事が遅いリーダーのBさんが、部下と意思疎通ができていなかったことが原因でした。
Bさんは、「俺についてこい」と背中を見せるのがリーダーシップだと思っているタイプ。Bさん自身が若手社員の頃、上司の背中を見て育ったこともあり、「仕事は聞くものではなく先輩から盗むものだ」というスタンスだったのです。
だから、Bさんのところへ部下が質問に来ても、「そんなことも分からないのか」と厳しい表情で接していました。こういう態度をとられると、部下はBさんに相談しづらくなり、コミュニケーションが図れなくなってしまいます。
結局、カタログの修正は、金曜の夜から土日も含めた3日間で、なんとか終わらせることができました。しかし、休日出勤により余計な人件費が発生しました。
さらには、急な出勤で休みの予定を変更させられた部下たちのモチベーションは低下し、翌週のパフォーマンスも下がってしまいました。
■腹を見せて助けを求めたら全員が動いた
一方、仕事が速いリーダーのAさんも、似たような経験をしたことがありました。
そのときAさんは、「カタログに不備があったのは俺の責任だ。
なんとか期日に間に合わせたいから助けてほしい」と頭を下げたのです。
つまりAさんは、自分の責任であると認め、背中ではなく腹を見せて「助けてほしい」と最初に語ったわけです。
さらにAさんは、「自分もこのページでミスしたから、注意してほしい。二重チェック体制をとりたい」と、自己開示してから不備を直しました。加えて、「何かいいアイデアがあったら教えてくれ」と部下に相談します。
すると、ある部下がこのように言いました。
「それぞれが仕入を担当している商品カテゴリーがあります。まずはそこを担当者がチェックしますので、そのうえでAさんがチェックしてください」
このような対策は当たり前ですが、緊急事態の場合には思い浮かばないことも多いでしょう。
何よりAさんの部下は、リーダーから相談されたことに対して助けることができたので、この仕事を「自分事」として捉えられたのです。
Bさんの部下が「やらされ仕事」と感じたのとは対照的です。
■チームが能動的に動くようになる方法
また、Aさんの部下は、同じ休日出勤でもイベントのあとのような達成感を皆で共有できました。
Aさんは、困ったら見栄を張らずに自己開示するので、部下はリーダーを助けようという気持ちで仕事をしていました。
人によっては、そのようなリーダーは情けないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。上司と部下は役職が違うだけで主従関係ではないのです。
こうなると、チームメンバーのモチベーションが高くなり、仕事のスピードもパフォーマンスも良くなるのです。
仕事が速いリーダーは腹を見せる、心の内を見せる、部下との打ち合わせを密にする。そうすることで、部下も信頼されているのだなと感じ、能動的に動くようになるのです。
仕事が速いリーダーは、見栄を張らずに相談する!

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石川 和男 (いしかわ・かずお)

時間管理コンサルタント

1968年、北海道生まれ。現在は建設会社総務経理担当部長、税理士、セミナー講師など、5つの仕事を掛け持ちしている。大学卒業後、建設会社に入社。はじめて管理職になったときに、時間管理やリーダー論のビジネス書を1年で100冊読み、仕事術関係のセミナーを月1回受講するというノルマを自らに課し、良いコンテンツやノウハウを取り入れ、実践することで徐々に残業を減らしていく。さらに1日の時間の使い方を徹底的に見直すことで、最終的には業績を保ったまま残業ゼロを実現させる。また空いた時間で、各種資格試験にも挑戦。働きながら、税理士、宅地建物取引士、建設業経理事務士1級などの資格試験に合格。仕事が速いリーダーの研究を日々続けている。著書に『仕事が速い人は、「これ」しかやらない ラクして速く成果を出す「7つの原則」』(PHP研究所)など多数。

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(時間管理コンサルタント 石川 和男 )
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