すぐに仕事に取り掛かるにはどうしたらいいか。医師の奥村歩さんは「『金曜日までに面倒な仕事を片づけると、清々しい気分で週末を迎えられる』というのは間違いだ。
脳内物質の観点から考えると、この行動こそが、休み明けの仕事がうまくいかない原因となりえる」という――。
※本稿は、奥村歩『10万人の脳を診てきた脳神経外科医が教える 脳を休めて整える習慣』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「行動してからやる気を出そう」が合理的
仕事へのモチベーションはあり、体調も悪くないはず。なのに、いざ机に向かっても、どうも意欲が湧いてこない。集中できない……。
そんな経験、誰にでもあるのではないでしょうか。
私たちは「やる気が出たら行動しよう」と考えがちですが、脳科学の最新の知見では、その順番は逆であることがわかっています。
行動の動機付けとなる、ドーパミンという脳内物質の研究から明らかになったのは、次のような真理です。
× ドーパミン → やる気 → 行動 ○ 行動 → ドーパミン → やる気

つまり、「やる気が出てから行動しよう」よりも「行動してからやる気を出そう」のほうが、脳にとってははるかに合理的だということです。作業をこなすのが億劫なときに、あれこれ悩んでなかなか行動に移すことができないと、ますます億劫さが増してしまうのはこのためです。
そして、脳疲労の状態では、この傾向が顕著になります。
■五感を心地よく刺激するシンプルなルーティン
そういうときは、難しく考えるのをやめ、まずはシンプルなルーティン(決まった行動)を開始してください。

おすすめは、鉛筆をカッターナイフなどで丁寧に削ってみることです。シャリシャリとリズミカルな作業は五感を心地よく刺激し、心を落ち着かせるセロトニンが脳から分泌されます。
そして、その削った鉛筆で、1枚の紙に今日の「やることリスト」を書き出してみましょう。次に、そのリストに優先順位をつけて、順に並べ替えたものをもう一度書き出すのです。
この「書く」という具体的な行動により、あなたが億劫だと感じていた作業の全貌が可視化され、じつは後回しにしても問題ない仕事、あるいは意外と簡単に手がつけられる仕事に気づけるようになります。
まずは、優先順位が上位で、抵抗なく手をつけやすい仕事から始めてみましょう。メールやチャットの返信、不要なファイルの削除や整理は、その典型例です。
その作業を少しでもこなしている間に、脳の「アクセル」であるノルアドレナリンが活性化され、自然とやる気が湧いてきます。
こうして脳のエンジンがかかってから、本当に面倒だと感じていた仕事に取りかかればいいのです。
このように、まずはシンプルなルーティンワークと「やることリスト」の作成で脳を整え、「簡単で大事な作業」からスタートすることで、上手にやる気を引き出していきましょう。
■金曜の達成感が、月曜の閉塞感につながる
「金曜日までに面倒な仕事を片づけると、清々しい気分で週末を迎えられる!」
そう思っていませんでしょうか?
しかし、脳内物質の観点から考えると、この行動こそが、休み明けの仕事がうまくいかない原因となりえます。
金曜の達成感が、月曜の閉塞感につながるのです。

仕事をやり終えると、脳ではドーパミンが分泌されます。目標を達成したときに幸福感や満足感を感じるのは、このドーパミンの働きによるものです。
また、空腹の状態で食事をしたときに「美味しい」「心地よい」と感じるのも、ドーパミンの作用です。そして、満腹になってドーパミンが十分に分泌されると、脳は「これ以上はもう食べられない」と抑制を促します。
このようにドーパミンには、欲求がある程度満たされると、その後はその行動に抑制をかける仕組み(ネガティブ・フィードバック)があるのです。
ネガティブ・フィードバックによって、脳は満足するとストップをかけます。つまり、金曜に仕事を完璧にやり遂げ、ドーパミンが十分に分泌されてしまうと、あなたの脳は働きにくくなってしまうのです。
そのため、月曜の朝は、どの仕事から手をつけていいか迷ってしまい、仕事がなかなか軌道に乗らなくなってしまいます。
■月曜の憂鬱がなくなる「中途半端法」
これを防ぐためには、金曜の夕方は「中途半端なところで切り上げて、脳をあえて欲求不満の状態にしておく」のが、賢い方法だと言えます。
さらに月曜の朝の仕事の能率を上げるために、金曜の帰宅前に、来週の「やることリスト」をメモしておくのもいいでしょう。
これは、何も週末に限ったことではありません。毎日の仕事終わりに、「今日やり残したけど明日もやるべき仕事」のリストを書く習慣をつけることで、あなたの脳は常に「次への意欲」を保ち続けることができます。

あえて少しだけ未完了を残すことで、翌朝のあなたの脳では自然とノルアドレナリンが働き、スムーズに仕事を始めることができるわけです。

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奥村 歩(おくむら・あゆみ)

医学博士

1961年生まれ。おくむらメモリークリニック院長。岐阜大学医学部卒業、同大学大学院博士課程修了。2008年に「おくむらクリニック」を開院し、設置した「もの忘れ外来」ではこれまでに10万人以上の脳を診断した。著書に『スマホ脳・脳過労からあなたを救う 脳のゴミを洗い流す「熟睡習慣」』(すばる舎)、『ボケない技術』(世界文化社)、『スマホ脳の処方箋』(あさ出版)、『脳の老化を99%遅らせる方法』(幻冬舎)、『あなたの脳は一生あきらめない!』(永岡書店)など。

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(医学博士 奥村 歩)
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