2024年の夏以降、世界的に不動産投資が活発化した。それに伴って、昨年、日本における不動産投資額も最高水準を記録した。
近年、世界的にインフレが進んだことで、お金の価値が下落傾向を辿った。それぞれの主体が保有する資産の価値を守るためには、お金ではなく実物資産を保有することが有利になる。代表的な資産は金(ゴールド)なのだが、すでに金は価格が高騰している。そこで、不動産に対する需要が増えたということだ。
特にわが国では円安が進行したため、欧米や一部アジア、中東などの投資ファンドがこぞってわが国の不動産の購入を積極化した。その結果、わが国の不動産価格は上昇し、東京都心部の中古マンションの平均価格は1億円を超えるまで上がっている。
■外国人の不動産取得を規制する国も
そこまで不動産価格が上昇すると、若年層などが東京都内に住居を購入することは難しくなってしまった。それは無視できない弊害だ。
不動産市況の安定は、国民生活の安心に大切だ。政府も、不動産価格の安定に向けた具体的な政策を検討する時期かもしれない。
シンガポールのように、非居住者には特定地域の不動産しか取得できないという制度を設けている国もある。わが国では、すぐにそうした厳格な制度の導入は難しいだろうが、何らかの形で、外国人による購入制限を加えることも選択肢になるかもしれない。
■世界中で不動産の投資熱が高まったワケ
不動産調査会社の推計によると、昨年、世界の不動産投資額は前年比19%程度増加したという。金額ベースで見ると約8400億ドル。1ドル=155円で換算すると、130兆円近くに達した。
主な国や地域別にみると、景気が安定していた米国で不動産投資の伸び率が高かった。四半期ごとに変動はあったものの、欧州、アジア太平洋地域でも不動産投資は増加した。
その要因として、インフレが進んだため、投資の矛先が金や不動産など実物資産に向かったことが挙げられる。また、米国、ユーロ圏で金融政策が緩和に転じたことも見逃せない。
2024年後半、米国の連邦準備制度理事会(FRB)や、欧州中央銀行(ECB)は利下げを実施した。昨年も利下げは続いた。それにより金融機関の貸出金利は低下し、不動産の投資熱は高まった。
■巨大テック企業はデータセンター投資を加速
主な不動産の4分野(オフィス、住宅、宿泊、産業用)ごとに見ると、AI(人工知能)用のデータセンターの投資増加は鮮明だった。2026年12月期、アマゾン、メタ、アルファベット(グーグル親会社)の3社だけで、データセンター投資額は5200億ドル(約81兆円)に達する見込みだ。
一部では、データセンター投資の負担が増大し、財務内容が悪化する大手IT企業や投資ファンドも出始めた。それでも、世界のIT先端企業にとって、高い推論性能の開発、AI関連分野事業の成長にデータセンター投資は積み増さざるを得ない。インドではアダニ・グループが、2035年までに1000億ドル(約15兆5000億円)のデータセンター投資を実行する模様だ。
また、2022年以降の世界的な金融引き締めの影響で、ビル建設が減少し、不動産物件の供給が減ったことがある。物価上昇で建材や作業員の人件費などコストも増え、欧米などの主要都市でオフィスの供給は減少した。供給が少なくなった中で金利引き下げ、在宅勤務からオフィス勤務への回帰は続いた。オフィス需要が増加したことも、投資を押し上げた要因だ。
世界的な金利低下や、人手不足を背景とする賃金上昇で居住用物件、ホテルなど宿泊施設への投資も増えた。投資の増加で、米国の一部地域では住宅の価格が高騰し、「中流層はマイホームを買えない」との指摘もある。資産を持つ人と、持たない人の経済格差は拡大している。
■日本ではオフィス投資が半分を占める
世界的な不動産投資増加を背景に、わが国でもオフィスやデータセンターなどへの投資は増えた。
国内外の投資家別にみると、主に欧米、アジア、中東など海外の投資ファンド(機関投資家)の割合が高かった。2023年、海外の投資ファンドなどは約1兆円をわが国の不動産市場に投じた。2024年は1.5兆円を上回る規模になり、2025年は2兆円台に達した。海外投資家の投資増加ペースは前年比34%、国内投資家より高い。
分野別にみると、海外投資家による物件取得の40%程度はオフィスだった。住宅は30%程度、データセンターなど産業用施設は20%程度、宿泊施設は7%程度と推計される。なお、国内投資家を含めた全投資家ベースでは、オフィス投資が50%程度を占めるようだ。住宅は20%程度、産業用は15%、宿泊用は15%程度のようだ。
■実質金利マイナス+円安でお得感アップ
わが国の不動産投資増加の要因の一つは、実質金利が依然としてマイナスであることだ。お金は、利回りの低いところから、高いところに向かう。
海外投資家の目から見ると、為替レートの変動も重要だ。2021年1月から足元まで、円はドルやユーロなど、主要な通貨に対して独歩安だった。外貨を保有する投資家にとって、円が減価する分だけわが国の不動産は取得しやすくなる。円安進行で割安感が高まったといってもよい。
実質金利がマイナスであることは、資金調達コストの抑制にもつながる。日銀の金融政策正常化のペースはかなり緩やかに進行した。短期間で政策金利が大きく上昇し、投資家の借り入れコストが急増する展開は考えづらい。
欧米からの観光客の増加などで、高価格帯の宿泊サービス需要も高まった。それらの要因により、わが国の不動産投資は増加した。
■「都心にマイホーム」なんて夢のまた夢
今年1月、東京23区の中古マンションの希望売り出し価格(平均、70平方メートル)は、前月比1.4%高の1億2123万円だった。
若年層や子供を持つ勤労者世帯にとって、住宅を取得することが困難になりつつある。それは、わが国に重要なデメリットだ。希望する場所で安心、安定した住居を確保する。それは、個々人の人生に多大な意味を持つ。
不動産価格を安定させるためには、為替レートの安定化が欠かせない。円安によって海外の投資資金の流入が増えたり、輸入物価の上昇で建材や人件費が増加したりすると、不動産の価格の上昇には歯止めを掛けることは難しい。さらに、マンションやビルの建設が遅れる恐れも高まる。そうなると若年層を中心に不動産取得の難しさは増す。
■若い世帯を優遇する制度も必要になる
政府は、何らかの形で不動産価格の安定化を目指す取り組みが必要になるだろう。外国人による不動産取得に、一定の規制を設けることも一つの選択肢になるだろう。これまでも、「経済安全保障を含め、外国人による不動産取得を規制すべき」との主張はあった。
カナダやオーストラリアは、外国人を対象に不動産取得規制を強化した。ただ、想定通りに持続的な効果は出づらかったようだ。一定の規制は必要だが、それで十分とは考えづらい。
一方、若年層などへの不動産取得支援の拡充の重要性は高まるだろう。ドイツのKfW(復興金融公庫)は、“Kredit Nr.300”という支援策を提供している。年収9万ユーロ(2026年2月末時点のレートで約1650万円)を上限に、18歳未満の子がいる世帯が対象だ。新築住宅取得時などに、市中の住宅ローンより低い金利でローンを借りることができる。
わが国は、子育てグリーン住宅支援事業を運営している。それに加え、若年層、子供を持つ世帯への金利優遇を行うことは、人々の生活の安心、安定につながるだろう。
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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
多摩大学特別招聘教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。
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(多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫)

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