コンサル業界が岐路に立たされている。かつての大口顧客からは、「食い物にされている」の声が噴出。
世界的に需要は低迷し、業界大手は数千人規模の削減計画を明らかにしている。世界各地で進む「コンサル離れ」の実態を、海外メディアが報じている――。
■100周年イベントの影で進むリストラ計画
昨年10月、シカゴ。マッキンゼー創業の地に、同社のトップ経営層にあたる「パートナー」らが世界中から集結した。
会場には数千人の出席者が詰めかけ、同社の100周年を華やかに祝った。グローバル・マネージング・パートナーのボブ・スターンフェルズ氏は壇上で、「我々は2世紀目の幕開けとともに、大いに成功を収める」と高らかに宣言。低成長とスキャンダルを乗り越えてきたパートナーたちへの檄でもあった。
ブルームバーグによると式典には、米国の国民的司会者オプラ・ウィンフリー氏がサプライズ登壇。世界最大級の資源企業リオ・ティントのドミニク・バートン会長、国際決済大手ビザのライアン・マキナニーCEO、そしてコンドリーザ・ライス元アメリカ国務長官らが顔を揃えた。
だがその華やかな宴の裏で、経営陣は静かに人員削減の計画を描いていた。
人事・IT・経理などサポート部門の約10%、実に数千人という規模を、18~24カ月かけて段階的に削減する計画だと、ブルームバーグは報じる。2023年にも「Project Magnolia」で約1400人を削減したばかりだ。

■時価総額600億ドルが消えた
マッキンゼーは長年、クライアントにコスト削減を説いてきた。いまは自ら、社内のコスト削減を進める身となった。
ブルームバーグによれば、2012年に1万7000人だった従業員数は、2022年には4万5000人に膨張。その後、約4万人に縮小した。
全社収益はこの5年、150億~160億ドル(約2兆円)で頭打ちだと報じられている。10年間で急成長を遂げた同社だが、完全に停滞期に入った。
もう一つの業界大手、アクセンチュアに目を向ければ、落差はさらに大きい。
エコノミスト誌によると、好調だった2015年初頭から2024年末までの10年間では、配当込みの株主の総リターンは約370%を記録。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーをも凌駕した。2025年2月にアメリカの株式市場が史上最高値を記録した際、時価総額は2500億ドル(約38兆2000億円)に達し、両投資銀行を凌ぐ存在になっていた。
しかしその後の不調で、時価総額から約600億ドル(約9兆2000億円)が失われた。同誌は昨年7月時点で、6月20日の四半期業績が期待を下回ったことから、株価が7%下落したと報道。
新規契約額も2四半期連続で減少している。
今年2月23日時点での時価総額は約1238億ドル(約19兆2000億円)となっており、報道時点からさらなる下降曲線を描いている。最盛期の半分を割った。
■コンサルバブルの暗転
現場からは、コンサルの費用対効果に疑いの目が向けられている。
かつて、コンサルタントにとっての黄金郷と言われたのが、サウジアラビアだ。欧米市場が停滞するなか、サウジを含む湾岸諸国だけは別世界だった。
フィナンシャル・タイムズ紙によれば、湾岸のコンサル市場は2024年に70億ドル(約1兆1000億円)規模に達した。世界4大会計事務所の一つであるPwCの中東事業は2024年6月期、収益26%増。同期間の英国事業はわずか3%増にとどまったのと対照的だ。
とりわけ巨大な“財布”となったのが、サウジの新経済圏「Neom(ネオム)」だ。政府系ファンドPIFが主導するインフラ投資に、マッキンゼー、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、ベイン・アンド・カンパニーが群がった。迅速な立ち上げを名目に、コンサル各社が大量の人員を送り込む「ボディショッピング」も常態化した。

■23歳新卒が4.5億を稼ぐケースのあったが…
だが、湯水のごとくカネが注がれるなか、不満の声も上がっていた。フィナンシャル・タイムズ紙の取材に、プロジェクト関係者はこう漏らす。「(Neomは)ぼったくられていた。より広い視野においても、コンサルティング企業が(一般的に)ギガプロジェクトをいかに食い物にしているかという問題がある」
高額請求はサウジに限らない。シカゴ大学ブース・ビジネススクールの経済と国家に関する研究所「スティグラー・センター」が運営する学術系メディア、プロマーケットが2020年、驚きの数字を報じている。
記事によるとマッキンゼーは実務経験のない23歳の新卒を政府に派遣し、週5万6707ドル(約866万7000円)、年間約295万ドル(約4億5100万円)を請求していたという。BCGも新卒社員を派遣し、週3万3000ドル(約500万円)超を得ていたと報じられている。
なぜ実態の伴わない高額請求が可能だったのか。政府機関は予算を使い切ることで評価される。そこに経費節約の動機は乏しく、コンサル各社はその構造に乗じた――と同メディアは指摘する。
■AIに仕事を奪われる
価格に見合う効果が、コンサルから得られないのではないか。そんな疑問が、進化するソフトウェア技術を背景にますます深まっている。

エコノミスト誌によれば、アクセンチュア経由で自社ソフトを顧客に届けてきたテクノロジー企業の一部が、仲介者であったアクセンチュアを飛ばして直接商品を販売する機会をうかがっているという。
ソフトにはAIが組み込まれており、これ自体が外部コンサルの必然性を打ち消すものだ。さらに、インストールすればすぐに使うことができ、起動すれば必要なシステムが自動で更新される。定期的にコンサル企業から人材を呼び寄せ、独特で難解な業務ソフトウェアの更新作業をしてもらう必要もなくなった。
データ分析プラットフォームを提供するパランティア(Palantir)などの新興企業は、自社のエンジニアを顧客企業に常駐させ、直接サポートする体制を整えている。こうしたスタイルの方が、「コンサルタント費用を節約できる」と、ある技術系企業の経営者は率直にそう語る。
■「パワーポイントを持ってくる人間を求めていない」
仲介役の座を奪われるだけでなく、ビジネスモデル自体の妥当性も問われているようだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、AIの導入でプロジェクトが少人数で回るようになり、大規模プロジェクトでの定型業務を担うジュニア層が真っ先に削られると分析。戦略的アドバイスを得るだけのためにコンサルを雇う顧客は減った、と報じている。
今後求められるのは、新システムの導入支援や、変革管理、新スキル習得のサポートなど、いずれも手を動かす仕事だという。コンサルティング会社オリバー・ワイマンのニック・スチューダー最高経営責任者(CEO)は同紙に、「経営コンサルタントの傲慢な時代は終わった」と認めた。
「企業はパワーポイントを引っ提げスーツ姿でやって来る人間を求めていないのです。
彼らが求めているのは、現場に入り込んでチームの業務遂行を手伝い、チームと一緒になって物事を創造しようとする人材です」
変化の波は、業界大手にも容赦なく襲い来る。デロイト、EY、KPMG、PwCの4大コンサル、いわゆるビッグ4も例外ではない。
オーストラリアン・フィナンシャル・レビューによれば、コンサルティングサービスの需要は2025年までに2年連続で減少し、2026年も回復の兆しは見えない。KPMGが「レガシーサービス」と呼ぶ従来型コンサルから、顧客が離れ続けているという。
「基礎的なリサーチ業務は死んだ」と、あるコンサルタントは言い切る。資料を調べてまとめ上げれば重宝された時代は去り、今後生き残れるのは、特定分野で本物の専門知識を持つ人材だけとなりつつある。
■世界で加速するコンサル離れ
顧客らはすでに、コンサルタントに見切りをつけ始めた。
最大顧客の一つ、サウジアラビアでも離反が始まっている。公共投資基金(PIF)は昨年2月、PwCに対し1年間の新規アドバイザリー業務の受注を禁止した。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子主導の国家変革プロジェクトを推進する上で、コンサルタントに支払われる巨額の費用に対する政府の不満が背景にあると、業界関係者の間では見られている。
同国で業務を行うコンサルティング企業の幹部は、「“コンサル疲れ”は治まるどころか、むしろこうした声は大きくなる一方だ」と指摘する。
打撃を受けるのはPwCだけではない。
ブルームバーグによると、マッキンゼーは2024年までの10年間、同国から年間少なくとも5億ドル(約764億円)の報酬を得ており、サウジは同社の最大顧客の一つとなっていた。政府が支出を削減したことで、同社の巨大な収益源が揺らいでいる。
逆風はサウジにとどまらず、世界的に広がる。中国は外資系コンサルを締め出し、国内勢を優遇する姿勢を鮮明にした。アメリカではトランプ政権が政府支出の削減に乗り出しており、コンサルもその例外ではない。
■4000万円以上払った報告書は架空の内容だらけ

政府など大口顧客がコンサル費用を切り詰める昨今、コンサル企業自身も需要減への対応を迫られる形で、支出の引き締めと効率化を進めざるを得ない。

その一環としてAIの導入を進める動きがあるのだが、安易にAIを導入した結果、皮肉にも信頼が失墜するケースが相次いでいる。
ビジネス誌フォーチュンによると、デロイト・オーストラリアが政府に提出した報告書は、契約額29万ドル(約4400万円)という高額の成果物にもかかわらず、その品質はひどいものだった。
存在しない学術論文を出典として挙げ、連邦裁判所の判決とした引用部分にも捏造が含まれていた。シドニー大学の医療・福祉法研究者クリス・ラッジ氏はメディアに対し、「捏造された参考文献だらけだ」と警告している。
デロイトは誤りを認め、部分的に返金に応じた。最終的に納品された修正版には、マイクロソフトの生成AIサービス「Azure OpenAI」を使用していることが明記された。
オーストラリア緑の党のバーバラ・ポコック上院議員は、「大学1年生(のレポート課題)でも深刻な問題になるようなことだ」と批判し、全額返金を求めている。
カナダでも同じ失態が繰り返された。
ニューファンドランド・ラブラドール州がデロイトに委託した医療人材計画は、契約額が約160万カナダドル(約1億8000万円)に及ぶ。だが、カナダのオンライン紙インディペンデントによると、この報告書にも架空の引用が4件含まれていた。
州保健省の広報担当ブライアン・スコット氏によると、デロイトは誤りを認めつつ、報告書の結論と所見は正しいと主張する。だが同州では数カ月前にも、別の政府報告書で15件以上の存在しない引用箇所が発覚していた。
■AIにAIで対抗するコンサル大手
それでも業界は、AIの導入に活路を見いだしたい意向だ。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、マッキンゼーは人員を削減すると同時に、AIエージェント約1万2000件を展開した。コンサルタントの業務を幅広く補佐させるためだ。
よく使われているのは、論理展開の妥当性を検証する機能だという。コンサルが売りにしてきた「ロジック」を、今やAIがチェックする形となった。
「鋭く、簡潔」を良しとする同社流の文体に整える機能も、多くの社員が日々活用している。同社のボブ・スターンフェルスCEOは、いずれ従業員1人に1体のAIエージェントがつく時代が来るとのビジョンを描く。
アクセンチュアもAIを主軸に対策に動いている。CNBCによると、AI・データ専門職を2023年の4万人から昨年時点で7万7000人へほぼ倍増させ、全従業員55万人に生成AIの基礎訓練も施した。今年度の売上高は697億ドル(約10兆7000億円)で前年比7%増を記録。ジュリー・スウィートCEOは、AIを導入したい顧客が多く、その需要が成長を支えていると語る。
だが、こうした取り組みが業界全体の地盤沈下を食い止められるかは、まだ見通せない。
■業界が岐路に立たされている
コンサルティング業界の黄金時代は終わりを告げようとしている。
もちろん、大型イベントが控える限り、需要が消えるわけではない。サウジアラビアでは2029年アジア冬季競技大会の人工スキー場計画が動いており、2034年サッカーワールドカップに向けたプロジェクトも控える。
だが業界関係者の多くは、減速は避けられないとみる。ある大手コンサルティング企業の幹部は、フィナンシャル・タイムズ紙に、「費用対効果の問題について、業界内では以前から見直しが必要だと予想されていた」と語る。
今後求められるのはコンサルの看板と頭数ではなく、業界で身体を動かして習得した専門知識であり、チームと共に現場で働ける人間となる。
マッキンゼーは舵を切り始めた。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、同社はAI時代に減りつつある需要への対応として、今後は顧客企業向けに幹部候補の発掘・育成支援サービスを強化するという。同社内の人材育成で得た知見を顧客企業に展開し、付加価値の高い人材育成業務へと裾野を広げたい方針だ。
新人がパワーポイントスライドを作るだけで巨万の富を生み出せた華の時代は終わった。変化する現場のニーズといかに向き合うか、今後のコンサル像が問われている。

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青葉 やまと(あおば・やまと)

フリーライター・翻訳者

1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。

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(フリーライター・翻訳者 青葉 やまと)

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