■「7戸に1戸が空き家」実家放置のリスクをチャンスに
「親が亡くなって実家を相続したものの、住む予定もなく、かといって売るのも腰が重い」
そんな方は少なくないのではないでしょうか。総務省「令和5(2023)年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は約900万戸に達し、過去最多を更新しました。空き家率は13.8%。実に7戸に1戸が空き家という計算です。
こうした空き家の取得経緯で最も多いのが「相続」で全体の約8割です。つまり、「親が亡くなって実家を引き継いだが、使い道がない」という状況が、日本全国で増えてきています。不動産を相続すると、維持費や固定資産税などの支出がかさみます。これらのコストは通常は相続した人が支払わなくてはならず、家計を圧迫します。
そんな「負動産」を放置するくらいなら、早めに売却して現金化するほうが得策ですが、売却益に対しては税金がかかります。保有期間「5年超」の物件については、所得税として15.315%、住民税として5%の税率となっています。計20%超。
なお、同「5年未満」の場合は、短期譲渡所得という扱いになり、所得税30.63%、住民税9%となりますが、相続した場合、元の所有者(被相続人)の取得時期を引き継ぐことができます。つまり、亡くなった方が5年超にわたって保有していた物件であれば、相続後すぐに売却しても長期譲渡所得の税率(所得税15.315%+住民税5%=合計20.315%)が適用されるため、短期譲渡所得の高い税率を心配する必要はありません。
とはいえ長期譲渡所得の税率の計20.315%という数字はかなり大きなものですが、この税金に対して使える強力な武器があるのです。いわゆる「空き家特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の3000万円特別控除)」です。3000万円の特別控除ですから、これをうまく使えば、前述した売却益にかかる所得税・住民税を0円にできる可能性もあります。
ただ、この空き家特例は、平成28(2016)年度の税制改正で創設された、比較的新しい制度のためか、制度の存在自体を知らないという人も少なくありません。
知らずに使い損ねるのはもちろんもったいない話です。そして、仮に知っていたとしても安心はできません。なぜなら、この特例にはいくつもの落とし穴が潜んでいるからです。以下では、見落としがちなポイントを具体的な試算とともに解説します。
■「昭和56年5月31日以前」の建築ならチャンス
空き家特例を使うためにまず確認すべきは、対象となる家屋の建築時期です。
「なぜ45年以上も前の古い家に限定されているのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。この特例は、老朽化した空き家の流通促進と解体を後押しする政策の一環として設けられたものだからです。
その他の主な要件も整理しておきましょう。まず、マンションなどの区分所有建物は対象外で、一戸建てに限ります。相続開始直前に老父・老母など被相続人が一人で住んでいたことも必要です。そして、相続から売却までの間、事業や賃貸に使ったり、誰かが住んだりしていないこと。売却価額は1億円以下であること。
相続人自身は都心の会社で働き、家族とともに生活する一方、地方にある実家で老父・母が古い戸建てで一人暮らしするケースは多く、この要件に該当するケースは少なくないでしょう。
【空き家特例の要件】
建築時期:昭和56年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)
建物の種類:区分所有建物(マンション)でないこと。一戸建てに限る
居住状況:相続開始直前に被相続人が一人で住んでいたこと(老人ホーム入居の場合は後述の緩和あり)
利用制限:相続から売却まで、事業用・賃貸用・居住用に使っていないこと
売却価額:1億円以下(複数の相続人が分割売却した場合は合計額で判定)
売却先:親族等への譲渡でないこと
期限:相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9(2027)年12月31日まで
控除額:最高3000万円(相続人3人以上の場合は1人あたり2000万円)※令和6(2024)年1月以降の譲渡の場合
■3000万円控除で、税金はいくら浮くのか
では、具体的にどのくらいの節税になるのでしょうか。
まず、税金を計算する基準となる譲渡所得。譲渡所得は、「相続した実家の売却価額−(取得費+譲渡費用)」で計算します。取得費とは、その不動産をもともと手に入れたときの購入代金や建築費用のことです。相続で取得した場合は、被相続人(この例では父)が取得した当時の金額を引き継ぎます。
ただし建物については、取得費から経年による価値の目減り分(減価償却相当額)を差し引く必要があります。もともと住まいとして使用していた木造住宅の場合、耐用年数は33年(法定耐用年数22年×1.5)です。昭和52年築であれば築49年となり、耐用年数を大幅に超過しているため、建物の取得費はほぼゼロに近くなります。
一方、土地には減価償却がないため、当時の購入価格がそのまま取得費になります。しかし50年近く前の売買契約書が残っていないケースも珍しくありません。
実額の取得費が不明な場合や、実額が極端に小さい場合には、売却価額の5%を「概算取得費」として使うことが認められています。
今回のケースでこの概算取得費を使って試算します。
2500万円−(125万円+250万円)=2125万円
前述のとおり、不動産の所有期間によって税率が変わりますが、相続で取得した不動産は親の保有期間を引き継ぎます。そのため、多くのケースでは「長期譲渡所得(保有期間5年超)」に該当し、税率は所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%となります。
もし「空き家特例」を使わない場合、譲渡所得2125万円に20.315%をかけると、税額は約432万円になります。一方、特例の3000万円を適用すれば、課税譲渡所得はゼロ。税金もゼロ円です。特例を使えるかどうかで、実に約430万円の差がつくわけです。
とにもかくにも、家屋の建築時期をしっかり把握して、この特例を行使する権利があるかどうかを見極めることが重要です。
改めて数字を整理するとこうなります。
売却価額:2500万円
概算取得費(売却価額×5%):125万円
譲渡費用(仲介手数料・解体費等):250万円
譲渡所得(特例適用前):2125万円
↓
課税譲渡所得:特例なし2125万円vs.特例あり0円
① 所得税・復興特別所得税(15.315%):同約325万円 vs.同0円
② 住民税(5%):同約106万円 vs.同0円
税負担合計(①+②):同約431万円 vs.同0円
特例をぬかりなく使えるか否かで、例えば、課税譲渡所得が1500万円なら約305万円、1000万円なら約203万円、500万円でも約102万円という大きな額の差を生むことになるのです。
この空き家特例の期限は、先に触れた概要の最後に書きましたが、「相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ令和9(2027)年12月31日まで」(延長の可能性あり)の限定ということも重要なポイントです。
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小林 義崇(こばやし・よしたか)
フリーライター
1981年福岡県生まれ。西南学院大学商学部卒業。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、東京国税局を退職し、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、お金に関するセミナーを行っている。『超改訂版 すみません、金利ってなんですか?』『僕らを守るお金の教室』(ともにサンマーク出版)、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)、『2050年のインド経済 急成長する巨大市場の現在地と未来図』(NEXTRAVELER BOOKS)、『相続税調査でわかった 富裕層が大事にしている「お金の基本」』(講談社)ほか著書多数。
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(フリーライター 小林 義崇)

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