なぜ、腸の状態が健康に影響するのか。『「免疫力が強い人」の習慣、ぜんぶ集めました。
』(青春出版社)を監修した内科医の工藤孝文さんは「人間の腸には、体内の免疫細胞の6~7割が集まっている。腸内環境が悪くなれば、免疫力が落ちて病気になりやすくなり、がん細胞を攻撃する力も弱まってしまう」という――。
■腸内に6~7割集まる体の免疫細胞
毎日のお通じが順調で、おならも臭くない。そんな人の腸内環境は、とても良好に保たれている。免疫力も強く、病原菌が少々侵入してきても、頼りになる免疫細胞たちがすみやかに退治してくれそうだ。
人間の体のなかで、免疫細胞が最も多く存在しているのは腸だ。こう聞くと、いや、血液に多いのではないのか? と疑問に思う人がいるかもしれない。
確かに、血液やリンパ液のなかでは、免疫細胞が常にパトロールしている。しかし、それでも外敵を迎え撃つ本陣は腸なのだ。
腸にはじつに、体内の免疫細胞の60~70%が集まっている。
よく考えたら、それもそのはず。病原菌やウイルス、取り除かなければいけない異物などは、多くの場合、食べものや飲みものといっしょに体に侵入してくる。
そして、それらの外敵は、必ず腸に入ってくるのだ。
この人体の仕組みから、免疫力と腸内環境に深いつながりがあるのは当然だろう。
■腸内細菌3タイプのベストバランスとは
腸内環境が良い場合は、免疫細胞が活発に働いて、外敵や異物をやっつけられる。一方、腸内環境が悪くなれば、免疫力が落ちて病気になりやすくなり、がん細胞を攻撃する力も弱まってしまう。
腸内環境は腸内に生息する500種類以上、100兆個ともいわれる腸内細菌のバランスで決まる。
腸内細菌には3タイプあり、激しい勢力争いを繰り広げている。体にとって良い環境をつくるのが、ビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌だ。一方、大腸菌などの悪玉菌は、体に有害な物質を作り出す。もうひとつの日和見(ひよりみ)菌は、普段はどちらにも加勢しないが、悪玉菌の勢力が強くなるとその味方につく。
これら腸内細菌は「善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7」のバランスを保つのがベスト。この良好な腸内環境のなかで、免疫細胞は最も元気に働くことができる。
腸内環境を整えるにはどうしたらいいのか、具体的な策を考えていこう。

■発酵食品の「量」よりも「数」が大事
腸内環境を良くするには、善玉菌が豊富な発酵食品を補給することが大切だ。だからといって、同じ味噌やヨーグルトだけを食べても、高い効果は得られない。
良好な腸内環境を保っている人は、数種類の発酵食品をよく食べているものだ。
腸内環境に関連する菌は、まさに千差万別。発酵食品についても、少し材料や製造方法が違うだけで、異なる菌が含まれていることが多い。どういった種類の菌が、自分の腸内の善玉菌と相性がいいのか、実際にはなかなかわからない。日ごろから、いろいろな発酵食品を食べるようにしよう。
例えば日本の代表的な発酵食品、味噌にも米・麦・豆の3タイプがあり、生産地もさまざま。好みがあるだろうが、ずっと同じ味噌を使わないで、ときどきは違う商品を買うのがおすすめだ。
■自家製ぬか漬けで腸内環境は安泰
発酵食品といえば、真っ先にヨーグルトを思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、菌を生きたまま腸に届けるという点では、ぬか漬けや味噌、キムチなどのほうが効果が高い。
植物性の乳酸菌がそのまま腸まで届くことが多い一方で、動物性の乳酸菌は胃酸に弱く、腸に届くまでに多くが死んでしまうからだ。

この意味から、家にぬか床がある人の腸内環境は安泰だ。さまざまな野菜の自家製ぬか漬けを毎日のように食べていると、良い腸内環境をキープできないはずがない。
ぬか漬けで得られる乳酸菌は、昔から食生活に取り入れられているものだから、日本人の体との相性もいい。乳酸菌が多くついているのは、漬物の表面。水でしっかり洗うと流れてしまうので、ぬかを軽く洗い流してから食べるといい。
■納豆は夕食のおかずがベストタイミング
日本人にとても身近で、すごいパワーを持っている発酵食品がある。ネバネバ食品を代表する納豆だ。
含まれている納豆菌は胃酸に強いので、生きたまま腸まで届きやすい。強力な免疫細胞であるNK細胞を活性化させたり、胃潰瘍(かいよう)や胃がんの原因になるピロリ菌の増殖を抑えたりする働きも持っている。
あのネバネバに含まれている成分、ナットウキナーゼの健康効果も高い。特殊なたんぱく質分解酵素で、血液をサラサラにする作用があり、血栓を予防してくれる。
ナットウキナーゼが効果を発揮するのは、食後4時間ほどたってから。
このため、腸内環境が良好で、しかも睡眠中に発症しやすい脳梗塞と無縁の人は、夕食で納豆を食べているものだ。
寝ている間、ナットウキナーゼ効果で血液がドロドロにならなければ、朝の顔のむくみも予防できる。ぜひ、夕食の1品に納豆を加えよう。
■自分の腸に合ったヨーグルトの選び方
ヨーグルトには乳酸菌がたっぷり含まれている。とはいえ、その多くは胃酸にやられて、生きたまま腸までたどりつかない。
では、ヨーグルトを食べても腸内環境は改善されないかといえば、そんなことはない。生きた乳酸菌を補給するのは難しくても、死んだ乳酸菌が腸に届き、ほかの善玉菌のエサになって勢力が強くなるからだ。
ただ、近年は商品のバリエーションがとても多く、どれを選んだらいいのか迷うかもしれない。使っている菌も、R1やLG21といった乳酸菌のほか、ビフィズス菌やガゼリ菌を配合しているものも多い。
そこで、いろいろなタイプを試してみよう。半月ほど同じものを食べて、体調が良くなったら、自分の腸に合ったヨーグルトだと判断する。改善しなかったら、別のヨーグルトを試す。
そのうち、自分にぴったりのヨーグルトが見つかるはずだ。
■免疫力を高めるヨーグルトの食べ方
三択問題を解いていただきたい。①朝の起きぬけ、②朝食といっしょ、③朝食のあと。このなかで、ヨーグルトを食べるのにベストなタイミングはいつなのか。
答えは、③の朝食のあと。ヨーグルトの特性をよく理解し、その力を借りて免疫力を強めようとしている人は、いつも心がけていることだろう。
朝の起き抜けや、朝食といっしょにヨーグルトを食べると、含まれている乳酸菌の多くが胃酸の攻撃を受け、その多くが胃の中で死んでしまう。
一方、食事を済ませたあとなら、胃の中に食べものがあり、胃酸が薄くなっていることから、生きたまま腸まで届く可能性が高まるのだ。
腸内細菌のエサになるだけでも、ヨーグルトを食べる価値はあるが、乳酸菌を生きたまま利用できるのなら、それにこしたことはない。ヨーグルトは食後のデザート感覚で食べるのが正解だ。
■腸に一層効くヨーグルトの種類
ヨーグルトとは本来、牛乳または乳製品と乳酸菌のみからつくられる。ところが、こういった本格派ではない商品も、意外に多いのを知っているだろうか。

そのひとつが、寒天も原料にしているヨーグルトだ。プレーンヨーグルトとは違う、余計なものを加えた水増し商品か、などと侮ってはいけない。
よりなめらかになって、食感が良くなり、スプーンでもすくいやすいというのが、寒天を使う理由のようだ。腸内環境を大事にする人のなかには、こちらのタイプを好んで購入している場合もありそうだ。
寒天とはテングサなどの海藻を原料とする食品。ということは、腸内環境を整えるもうひとつの成分、食物繊維がたっぷり含まれているのだ。乳酸菌プラス食物繊維で、腸を一層健康にする寒天入りヨーグルト。もっと注目されていい商品だ。

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工藤 孝文(くどう・たかふみ)

内科医

工藤内科院長。福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。著書に『痩せグセの法則』(枻出版社)ほか多数。

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(内科医 工藤 孝文)
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