■安倍晋三が語った「普通の国」というビジョン
【渡瀬】日米関係と台湾・米国関係について、どのような見解をお持ちですか?
【イエーツ】どちらもいくつかの重要な点で進行中の課題だと思います。私が安倍晋三と知り合ったのは、彼が小泉政権で内閣官房副長官を務めていたときで、当時、私はホワイトハウスで働いていました。
安倍晋三は、国家安全保障会議や国務省、その他の機関で多くの人々に知られていました。彼は私たちが小泉政権と国家安全保障について議論するための窓口役でした。そのやり取りを通じて、私たちは日本の未来に関する異なるビジョンを感じ取るようになりました。日本がジュニアパートナーの地位から脱却するビジョンです。そして、安倍が首相を務めた2期の間、そのビジョンはさらに発展したと思います。
これは、西側の分析用語では「普通の国」というスローガンに簡素化されがちです。経済的な要素を含み、日本から東南アジアを経てインドまで広がる「自由と繁栄の弧」というビジョンを包含していました。これがのちに「インド太平洋地域」と呼ばれるようになったものですが、安倍晋三はそれ以前にこの「自由と繁栄の弧」について言及していました。
■核保有の議論は続けるべき
【イエーツ】私は安倍晋三のビジョンに深く感動し、強く共感しました。
私は「普通の国」プロジェクトが重要な成果を挙げたものの、未完成であると考えています。私の希望は、日本国内の他の政党を含む勢力が集まって、できれば自民党内の改革派が「普通の国日本」のビジョンを維持し、そのプロセスを完成させることです。
それでこそ、米国にとって真に価値ある、長期的な信頼できるパートナーになると思うのです。逆に、米国は日本にとって長期的な確固とした同盟国となるでしょう。世界の中でも特に不安定な地域において土台となる同盟国です。
私はこの同盟がまだ進行中の作業であり、その段階に達しつつある段階であると考えています。経費の分担、製造の分担、人員と軍事物資の分担、最終的には、核の傘あるいは核保有。これらの問題は、日本の有権者が今、決定する準備や関心を持っていないかもしれません。
また、韓国や他の国々と共に議論されるべき問題かもしれません。しかしそれは、日本が戦後憲法の下で永久に甘んじるのではなく、現代的で民主的な日本の価値観を反映した独自の憲法を持って対処すべき問題です。
■トランプは日本をどう見ているのか
【イエーツ】第2次世界大戦によって判断される時代は終わりました。歴史を消し去るわけでも、忘れるわけでもありませんが、アメリカは常に友邦や同盟国との関係において、「第2のチャンス」を与える国であるべきです。特に私たちの共通の繁栄、共通の安全保障、共通の価値観に多大な貢献をしている国に対してはなおさらです。
私にとって、日米同盟は米国が世界に持つ同盟関係のなかで最も重要なものの一つですが、このニュー・ノーマルに適応させていく必要がある同盟です。トランプ大統領が私の見解をすべて共有しているとは確約できませんが、トランプ大統領が安倍晋三の人物像とリーダーシップに深く感銘を受けていたことは事実です。
そして、私たちの多くが明確に感じたのが、安倍元首相が皇室に対する深い尊敬の念を持っていたことと、彼が掲げたビジョンです。彼は貿易における公平性を主張し、厳しい言葉を使うこともありますが、そのなかには、私が先に述べたような日本の再興を望む人物からの「厳しい愛」が込められていると思います。
彼のチームは、異なる方法で、そのニュー・ノーマルをできるだけ早く実現するために努力していると思いますが、最終的には、その決定は日本の国民に委ねられています。
■なぜ中国共産党の自滅を待てなかったのか
【渡瀬】米台関係についてはどうですか?
【イエーツ】米台関係は多層的な課題です。
当時、中国は「大躍進」を通じて経済を破壊してしまい、その後の「文化大革命」では社会と政治体制を破壊しました。当時、中国共産党は世界の大多数が中国と認識していた地域を支配していましたが、その最も脆弱な時期でした。私たちは、その無法で無責任な政権が「天命」を失うに任せ、代わりに別の改革連合と協力すべきでした。
しかし、ベトナムからの撤退を迫られる絶望感、冷戦期にソ連の脅威に対する相対的な弱さを意識した絶望感から、妥協が成立し、アメリカ、日本を含む諸国は、過剰に配慮したかたちでの「一つの中国」政策を採用し、道徳的に問題があり、衰亡しつつある共産党政権に新たな生命を吹き込むこととなったのです。
当時、台湾の独裁者であった蔣介石もまた、台湾が外交的承認から排除され、国際システムから追放されることとなった責任の一翼を担っていたと思います。北京政府が「中国」として知られていた地域を統治しており、台湾政府が本土を奪還する可能性は極めて低いことが明白だったにもかかわらず、蔣介石は二つの中国という解決策を受け入れようとしませんでした。ですから私は、最も責任を負うべきは蔣介石だと考えています。
■誤解されていた台湾の素顔
【イエーツ】アメリカや他の国々は、2つの異なる国家を承認する用意がありました。当時の中国共産党は弱く、その提案を受け入れざるをえなかった可能性が大いにあります。そして、キッシンジャー、ニクソン、そして正直にいって日本やヨーロッパその他の指導者たちは、台北にその道を受け入れさせるための明確で十分な強さを持っていませんでした。彼らは本気でしようと思えば、正常化を推進することができたのです。
そして今日、私たちはその結果に直面しています。その一部は、先ほどお話ししたように、過剰なほど寛容に製造技術を移転してしまい、中国に依存せざるをえない関係となり、ついには〔中国の〕軍や核兵器を近代化させるに至ったのです。しかも、世界がこれまで見たこともないような速いペースで進行しています。
これが、台湾に対する私たちの見方を根本から変えました。李登輝の10年間は独裁政権の時代から脱却し、多党競争への扉を開きました。これにより、世界が台湾を見る目も大きく変わりました。そして今、これは単なる「大中華」と「小中華」の民族問題ではないことが明白になりました。台湾は自主的な政治体制であり、世界最大級の経済大国かつ貿易主体の一つであることが明らかになったのです。
■世界が信じてしまった中国のウソ
【イエーツ】そして、台湾の現実を根本から変えた3つ目の変化は、高度な半導体製造プロセスを会得し、世界が最も先進的なチップの供給を台湾に依存する仕組みを確立したことです。これにより、以前には存在しなかった力と危機の依存関係に陥ることになりました。
私たちは、1970年代や1980年代のような弱い中国ではなく、より強力な中国と対峙し、中国への経済的依存を抱えています。しかしその一方で、チップに関しては台湾に依存しています。
また、私たちの台湾周辺の海上交通路への依存度は極めて高く、世界の貿易量の半分が台湾周辺の海域を通過しています。中国が紛争を起こし、台湾周辺の貿易を混乱させたり、台湾を支配して同地域における船舶や貨物の流通に制限を課すような事態が発生すれば、世界貿易に壊滅的な打撃を与えるでしょう。まず第一に被害を被るのは日本と韓国で、その経済に致命的な打撃となります。
私たちは互いに主張し合います。今や雄弁や誇張による言論政策(歴史戦などを含む)が至るところで行われていますが、嘘が多く、それが通るとは思えません。特に、台湾が中国の一部であるというのは嘘です。明らかに違います。
中国は「再統一」をしようとしているのではなく「統一」しようとしているのです。中華人民共和国は、台湾を支配したことはありません。これまで私たちがその嘘を許してきたことで、困難な状況に陥っているのです。
■米中衝突の可能性が高まっている
【イエーツ】私たちは現在、中国が台湾を支配下に置く事態を文字通り許容できないという状況に陥っていますが、このままではいけません。
私たちは自分たち自身を必要以上に脆弱な状態にしており、中国が自らの意志を強要する展開を許す余裕はありません。したがって、我々の側のすべての国が遠くない将来、公式の政策を調整せざるをえなくなると思います。
しかし、それは北京にとって非常に挑発的なものとなるでしょう。もっとも彼らが挑発的なことを宣言するからですが。残念ながら、彼らの強制と私たちの依存が、その衝突を引き起こす要因となっていると思います。米国と中国、そしておそらく同盟国も巻き込んだ正式な軍事衝突よりも、我々の表明した政策をめぐる衝突の方が先に起きる可能性が高いと考えます。
私は間違っているかもしれませんし、何も仮定すべきではありません。私たちは、両方の可能性を考慮して、政策と経済関係を構築すべきです。
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スティーブ・イエーツ
ヘリテージ財団シニア・フェロー
ラジオ・フリー・アジア社長、ボイシ州立大学教授、ディック・チェイニー副大統領の国家安全保障問題担当副補佐官、AFPI、アイダホ州共和党委員長などを経て現職。
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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員
パシフィック・アライアンス総研所長。1981年東京都生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。
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(ヘリテージ財団シニア・フェロー スティーブ・イエーツ、早稲田大学公共政策研究所 招聘研究員 渡瀬 裕哉)

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