■年15万人以上が罹患し、5万人以上が亡くなる
2月17日、ロックバンド「LUNA SEA」のドラマー、真矢さんが56歳でお亡くなりになったことが報道されました。1989年にバンドを結成し、1992年にメジャーデビュー、数々の曲がヒットし、力強い迫力あるパフォーマンスで多くのファンを魅了した真矢さん。2020年にステージ4の大腸がんと診断され、手術や抗がん剤・放射線治療を受け、2025年9月には脳腫瘍が見つかったことも公表していました。彼の訃報は、多くの人に衝撃を与えたと同時に、大腸がんという病気を改めて自分ごとと捉えるきっかけになると思います。
こうした報道に触れたとき、重要なのは一時的な話題で終わらせず、大腸がんは予防できるがんであり、早期発見で死亡を減らせるがんでもある点を理解することです。
大腸がんは日本人に最も身近ながんの一つで、2021年の罹患数は約15万5000人、2024年の死亡数は約5万5000人と報告されています。
しかし、大腸がんの多くは腺腫など良性の前がん病変を経て何年もかかって進展するため、その徴候を早めに見つけて切除すれば予防できる可能性があるのです。そんな大腸がんに関する、よくある誤解を整理しご紹介してみましょう。
■大腸がん予防のためのリスクの考え方
大腸がんのリスクを上昇させる要素として、加齢、大腸がん・進行ポリープの家族歴、大腸ポリープの既往、炎症性腸疾患、加工肉の多い食習慣、飲酒、過体重・肥満、運動不足・長い座位時間、喫煙が挙げられています。これらの要素は単独ではなく、複合的に作用します。だからこそ、完璧主義ではなくとも満遍なく対策を地道にやることが重要です。
大腸がん予防の最適解は、「健康診断で拾い上げる仕組み」を土台に、科学的根拠のある生活習慣を組み合わせることです。過体重・肥満といった体脂肪、特にお腹ぽっこりの中心性肥満は大腸がんリスクと関連する因子とされています((https://www.nature.com/articles/s41366-024-01680-7)。体重は「見た目」ではなく、インスリン抵抗性、慢性炎症、胆汁酸代謝、腸内環境など、腫瘍発生の元となる要因として働きます。体重を増やし続けないことは、がん予防の観点から重要なのです。
また、身体活動は大腸がんリスク低下と関連します。総身体活動量と大腸がんリスクとは反比例し、運動するほど少しずつリスクが下がると考えられています。運動の目標を完璧にしなくても、「座りっぱなしをしない」「少し息が上がる運動強度を生活にときどき入れる」といった注意が有用です。さらに大腸がんを含む複数がんで、アルコール摂取はリスク上昇と関連します((https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2025/10/pr371_E.pdf)。特に「多量・習慣的」な飲酒は避けることが大切です。禁煙も、大腸がん予防でも費用対効果が極めて高い方法です。
さらに家族歴、特に第一度近親者(両親、兄弟姉妹、子供)に大腸がん・進行ポリープの方がいる場合、また、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など)、過去にポリープなどの既往がある場合は、大腸がんになりやすい「高リスク」に当てはまります。
これらの要素がない平均的なリスクの方と違い、高リスクの方は年齢通りではなく、医師とよく相談する必要があります。
大腸がんは、がんの中でもポピュラーであり、日ごろから注意している方も多いですが、医師から見ると平均的なリスクの方でもしばしば誤解が見られます。
■誤解1:「便潜血陽性でも無症状だから様子見」
大腸がんに関する日本の対策型検診は、便潜血検査が基本です(https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/62/8/62_1519/_pdf/-char/ja)。便潜血陽性なら精密検査として大腸内視鏡へ進むことが重要で、ここを先延ばししないことが生死を分けます。日本の対策型検診では、40歳以上を対象に年1回の便潜血検査(免疫法2日法)が用いられ、ガイドラインでも高く推奨されています。ただし、便潜血検査でがんを見つけるというより、出血しやすい病変を探って精密検査につなぐきっかけであることに注意が必要です。
最も大切なのは、陽性のときに「何の症状もないから」「もう一回便潜血して陰性だったから」「痔だから」といった理由でスルーしたり様子見したりしないで、大腸内視鏡などの精密検査をやっておくことです。
便潜血検査で1回でも陽性が出たら、症状がなくても原則として大腸内視鏡を受けておくべきでしょう。なぜなら、便潜血陽性はたまたまではなく、大腸のどこかで出血が起きている可能性を示すからです。
がんや前がん病変は、初期には無症状のことが多く、出血も持続せず断続的に起こるため、次の検査で陰性になることもあります。しかし、それは異常なしの証明にはなりません。実際、便潜血陽性後に精密検査を受けない人では、進行がんで見つかる割合や死亡リスクが高いことが報告されています。
「お尻にカメラを挿入する」ことに恥ずかしさや痛み、恐怖など心理的な抵抗感を抱くのは理解できます。ただ、最悪、命にかかわることなので検査結果を放置しないほうがいいことは確かです。
■誤解2:「大腸内視鏡は症状が出てから受ける」
大腸内視鏡の価値を最大にするのは、無症状のうちに受けるスクリーニングとしての役割です。血便、便通異常、原因不明の貧血、体重減少などがある場合は診断目的の検査で、年齢にかかわらず早めの内視鏡検査が勧められます。
米国では45~75歳で定期スクリーニングが標準とされ、平均的なリスクの人でスクリーニング内視鏡を選ぶ場合、10年ごと(結果が正常で高品質の検査が前提)が代表的な検査の頻度とされています(https://www.cdc.gov/colorectal-cancer/screening/index.html)。
やや古いですが重要な研究結果では、腺腫性ポリープを内視鏡で切除したグループで、その後の大腸がん罹患が予想される値より低いことが示されました。さらに長期追跡で大腸がん死亡が低下したことが示され(Zauber et al., NEJM 2012)、ポリープ切除が将来の死亡を減らしうる予防方法であることが強く裏づけられました。
つまり大腸内視鏡は、診断の道具であると同時に、がん予防に踏み込める治療的検査なのです。ポリープを内視鏡で切除することが、その後の大腸がん死亡を減らしうることが長期データで証明されているのです。
■誤解3:「内視鏡検査きれいならずっと大丈夫」
大腸内視鏡検査で異常なしと言われると「もう大丈夫」と思いがちですが、これは危険な誤解です。
ポリープ切除後の実施頻度は「何個」「何ミリ」「顕微鏡の検査結果」の3点で変わります。2021年の米国の推奨では、1~2個の10mm未満の低リスク腺腫を完全切除し、かつ高品質の検査だった場合、再検査は7~10年の幅とされています。しかし3~4個なら3~5年など、所見が増えるほど推奨される検査間隔は短くなります((https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2779985)。
この「検査の間隔を伸ばす/縮める」は、単に医師や検査を受ける本人の好みではなく、将来の大腸がんリスクの違いで個人ごとに異なるのです。そのため再検査を次にいつ受けたらよいかは自己判断せず、検査結果に基づいて担当医師に必ず確認してもらうとよいでしょう。
■誤解4:「AIなら経験の浅い医師でも見逃しゼロ」
近年注目されているのは、人工知能(AI)の画像診断技術を応用し、医師の技術が不十分だったり疲労の蓄積だったりなどによる病変の見逃しを防ぐ技術です。すでに実用化され、大腸内視鏡検査の精度向上に貢献しています。AIが病変を検出すると通知音が鳴り、モニターに印で表示されるため、医師の見逃し回避をサポートします(「大腸がん検査で導入中! AI診断で『見逃し』は減らせるのか?」2025年10月24日、プレジデントオンライン)。
しかし、AIはあくまでバックアップ役です。ある研究報告では、大腸内視鏡検査の経験が5年以上ある医師は、AIを使うことで腺腫発見率が41%から58%まで上昇しました。一方、経験5年未満の医師では23%から32%への上昇にとどまりました。
大規模研究では、内視鏡医ごとの腺腫検出率が高いほど、その後の経過で発生するがんや大腸がん死亡が低いことが示されました(Corley et al., NEJM 2014)。大腸内視鏡をやったかどうかだけでなく、質が結果に直結するのです。検査を受ける側としては、実績や体制が整った信頼できる施設を選ぶ、検査所見や病理検査結果の説明が十分か確認する、必要に応じてセカンドオピニオンの相談をする、という行動が、エビデンスに沿った賢い備えになります。
■誤解5:「赤肉・加工肉は少量なら毎日OK」
食事で最も確実に大腸がんのリスクを上げるのが赤肉・加工肉です(https://link.springer.com/article/10.1007/s11357-025-01646-1)。
ステーキなどの赤肉は、食べ過ぎるほど大腸がんのリスクが高まることが知られています。国際的には、赤肉は週に調理後350~500g程度までが目安とされています。多くても手のひら大のステーキを週2~3回までが一つの基準です。毎日の習慣にせず、魚や鶏肉、大豆製品と組み合わせること、そして強い焦げや炭化を避けて焼きすぎないことも大切です。
WHO/IARCの評価では、加工肉は「ヒトに対して発がん性あり(Group1)」と分類されており、大腸がんリスク上昇と関連し、加工肉50g/日でリスクが約18%増と推定されています((Bouvard et al., Lancet Oncol 2015))。もう少し直感的に言うと、ハムやソーセージを毎日50g食べ続けると、リスクが約2割増えるという計算です。
定義上の「加工肉」は、保存性や風味を上げる目的で、塩漬け・塩蔵、発色(亜硝酸塩等)、燻製、発酵などの保存・加工をした肉です。
ここで重要なのは、加工肉をたまの嗜好品として扱うのと、日常的に毎日食べるのとでは意味が違う、ということです。現実的には毎日食べず、頻度と量を減らすだけでも、理論上はリスク低下につながります。
加工肉を減らすだけでなく、食物繊維を十分に摂ることも重要です。全粒穀物や野菜、豆類に多い食物繊維の摂取量が多いほど大腸がんリスクは低下する傾向が示されています。目安は1日25~30g程度で、日本人の平均摂取量はこれを下回ります。白米や精製小麦中心の食事を、全粒穀物や豆類に置き換えることが現実的な対策となります。
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谷本 哲也(たにもと・てつや)
内科医
鳥取県米子市出身。1997年九州大学医学部卒業。医療法人社団鉄医会理事長・ナビタスクリニック川崎院長。日本内科学会認定内科専門医・日本血液学会認定血液専門医・指導医。2012年より医学論文などの勉強会を開催中、その成果を医学専門誌『ランセット』『NEJM(ニューイングランド医学誌)』や『JAMA(米国医師会雑誌)』等で発表している。
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(内科医 谷本 哲也)

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