※本稿は、『日本初の女性宰相 高市早苗研究』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
■中国で反日運動が起こらない2つの理由
【編集部】存立危機事態の発言以降、中国との関係が厳しくなりました。一方、中国国内ではあまり反日運動が起こっているように見えないのですが、どのようになっているのでしょうか?
【山上信吾氏(以下、山上)】両面あると思います。かさにかかってきている部分とそうでない部分とあります。できたら高市政権を潰したい。できなくても、あの答弁は撤回させたい、ということで、かさにかかって攻めてきている面と、そして、中国国内が制御不能にならないようにコントロールしながらやっている面と、両方あると思います。前者について言うと、外務省の問題もあります。
今回のきっかけは薛剣(せつけん)・駐大阪総領事の暴言でした。ところが中国側は論点をずらしました。薛剣の暴言は中国人でもひどいと思うわけですよ。たかが一総領事が言っていい言葉ではありません。
こんな4点セットで無罪放免となるわけにはいかない、さすがにやりすぎたなと思っている中国人もいます。
■沖縄の領有権まで否定し始めた中国
【山上】ところがそこに光が当たらないように、問題は薛剣ではなく、高市さんの予算委員会での答弁だとしたわけです。
典型的な中国外交の論点ずらしなのです。ところが、それに対して、日本の野党はそうだ、そうだと騒いで、外務省も媚中外交が残っていて、結局、薛剣を国外追放できませんでした。
この日本政府の弱さを見て、中国は次から次と、観光客止めるぞとか、留学生止めるぞとか、水産物全面禁輸だ。のみならず、沖縄の領有権も疑わしいとまで言いだしました。さらに、今度は自衛隊機へのレーダー照射もして、経済的・軍事的に威圧してきたのです。中国は相手が毅然と対応しないと、かさにかかって攻めてきます。
特に中国共産党はその傾向が強いんですね。
“水に落ちた犬は叩け”という言葉があります。
ただし、その一方で興味深いのは、いまだに不買運動につながってはいないことです。
■習近平が恐れる「ブーメラン」の正体
【山上】通常、中国が怒ったときには不買運動をします。それから大使館や総領事館にデモで押しかけて火炎瓶や卵を投げ込むことまでします。実際、2012年の尖閣諸島「国有化」のときにはしました。
ところが、その前段階として、あんまり知られていないのは、新華社や人民日報が、このことをほとんど報じていないことです。先週、中国出身の柯隆(かりゅう)さんが、YouTubeの動画に一緒に出たときに話していました。中国国内で報じると、火の粉が広がってしまうので、中国政府自身がコントロールしているようです。
現在、中国経済が疲弊していて習近平体制に対する不満が高まっています。習近平としては、民衆の不満が自分たちに向くのが怖いのです。だから、日本に対して攻撃している分には問題ありませんが、日本に向かっていたはずの不満が自分たちに向かってきたらどうしようと習近平や中国共産党は戦々恐々としている面があるのです。
歴史を紐解けば、中国の王朝変換は易姓革命で、地方での反乱や民衆の不満から起きています。
■だから領事の暴言を許す
【山上】義和団や太平天国の乱が一例です。だから、中国の為政者は民衆の不満に非常に敏感なのです。今は蛇口の水の開け閉めをするように民衆をコントロールしようとしていると感じます。
仮に不買運動が起きて、日本のものが買えないことになったら、民衆の反乱が起きる可能性があります。だから、日中関係がもめている最中であっても、イオンStoreは長沙に新たな店を開くことができました。経済がかなり低迷しているだけに、ここで外国資本に退かれたらとんでもないことになると思っているはずです。特に、言うことを聞きやすい日本企業は大切にとっておきたいでしょう。
【編集部】このような状況で高市政権がすべき態度はどのようなものでしょうか?
【山上】日本政府としては毅然と今までどおりの対応をしていくことが一番大事だと思います。ただし、今の日本政府で、私が一番改めなくてはいけないと考えているのが、情報戦への対応です。
薛剣の言動は誰も弁護できません。私は、主要国の大使や情報機関の幹部から、なぜ日本は薛剣を国外追放しないのかと問われたくらいです。
■台湾を「内政問題」にさせてはいけない
【山上】ところが、日本は中国を刺激するのが嫌だということで、薛剣をペルソナ・ノン・グラータとして追放しないだけでなく、その後の中国の情報戦で後手、後手に回っています。
例えば、先ほどの論点ずらしです。中国政府は、高市答弁を、一つの中国の原則に反する、あるいは中国の内政への粗暴な干渉だと言っているわけです。冗談じゃありません。なぜ言い返さないのか。
日本は「一つの中国」、すなわち台湾が中国の領土だと認めたことはありません。「一つの中国」を唱える中国の立場に対して、“十分理解し尊重する”で止まっています。合意するとか、同意するとは一切言っていないのです。
これを言った途端に、台湾は中国の内政問題になって、中国に武力行使をさせることになりかねません。1972年から日本だけでなくアメリカもそうです。
「一つの中国」を受け入れると言ったことは一度もありません。
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山上 信吾(やまがみ・しんご)
前駐オーストラリア特命全権大使
1961年東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、1984年外務省入省。コロンビア大学大学院留学を経て、2000年在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官、その後同参事官。北米二課長、条約課長を務めた後、07年茨城県警本部警務部長という異色の経歴を経て、09年には在英国日本国大使館政務担当公使。国際法局審議官、総合外交政策局審議官(政策企画・国際安全保障担当大使)、日本国際問題研究所所長代行を歴任。その後、17年国際情報統括官、18年経済局長、20年駐オーストラリア日本国特命全権大使に就任。23年末に退官し、現在はTMI総合法律事務所特別顧問等を務めつつ、外交評論活動を展開中。著書に、駐豪大使時代の見聞をまとめた『南半球便り』(文藝春秋企画出版部)、『中国「戦狼外交」と闘う』(文春新書)がある。
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(前駐オーストラリア特命全権大使 山上 信吾)

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