■中古マンションが「贅沢品」になってしまった
ここ数年、「家が高くて買えない」という声をよく耳にするようになりました。
新築マンションの価格は上昇を続け、立地の良い物件ほど手が届きにくくなっています。
そんな中、東京23区の中古マンションも、
「平均売り出し価格が、前年比34.6%上昇し、70平方メートルあたり1億393万円に達した」
こうした報道が先月の日経新聞で伝えられました。
これは、2025年の東京23区における中古マンションの売り出し価格の平均値であり、データを遡れる1997年以降で初めて1億円の大台を超えたというものです。
かつては「手の届く選択肢」だった中古マンションも、いつの間にか、多くの人には手の届かないぜいたく品になっていることを実感させる金額です。
だからこそ、そのような「贅沢品」であるマンションを購入する際には、立地や価格だけでなく、購入後に快適に暮らせるかどうかをしっかり見極める視点が重要になっています。
とくに、室内の快適性や光熱費に直結する“断熱性能”は、購入後に後悔しやすいポイントです。
筆者は高性能な住まいづくりをサポートする会社を経営しています。
本稿では、その専門家の観点から、マンションを購入する前に抑えておくべきポイントをわかりやすく解説します。
■「中古+リノベ」の落とし穴
中古マンションは、新築に比べて価格を抑えやすく、立地条件の選択肢も広がります。
そのため、住宅購入のハードルが上がるなかで、中古物件に目を向ける人は確実に増えています。
ただし、中古マンションには一つ大きな課題があります。
それが、断熱性能です。
築年数が古いマンションほど、
・アルミサッシの単板ガラス
・不必要に大きすぎる窓
・断熱をあまり重視していない設計
といった仕様が多く、住み始めてから寒さ・暑さや冷暖房光熱費に悩まされることになります。
■熱の約4分の1以上は「窓」から逃げる
「RC造のマンションであれば、コンクリートに囲まれている分、寒さには強いはずだ」
そう考えている方も多いのではないでしょうか。
確かに、同じ断熱性能の戸建住宅に比べれば暖かいのは事実です。
ですが、マンションでも実際には、「暖房をつけているのに部屋が暖まらない」と感じている人は少なくありません。
RCマンションであっても、室内の熱は意外なほど簡単に外へ逃げています。
そして、その最大の逃げ道が「窓」です。
1980年から1998年までの間に建てられたマンション(確認申請が1999年3月以前)は、一般的には「昭和55年基準」という省エネ基準に即して建てられています。
この時代のマンションは、窓はアルミサッシに単板ガラスという仕様が一般的です。
一般的な仕様の75㎡程度の妻側住戸(端の住戸)を前提に試算すると、冬の暖房エネルギーのうち、26.2%が窓から流出していることになります。
なんと、熱の全体の4分の1以上が窓から逃げるのです。
それに対してもっと面積が広い外壁面※からの熱流出は15.2%なので、いかに窓から熱が漏れているか、よくわかると思います。
※隣戸との間の界壁ではなく、外気に面する壁
窓を仮にアルミのペアガラスに置き換えると、窓からの熱の流出割合は20.2%まで減ります。
とはいえ、アルミは樹脂の約1400倍も熱を通します。ペアガラスでも、室内を適切な湿度環境にすると、アルミの枠部分に結露が生じるなど、窓が弱点であることには変わりません。
RCマンションというと、戸建住宅に比べて暖かいという印象を持たれがちですが、窓は大きな弱点になっているのです。
窓からの熱流出を考える上で、窓自体の性能に加え、もう一つ重要なポイントがあります。
■「大きい窓」が寒い家をより寒くする
それが、「窓の面積」です。
かつて「窓が大きい=良い住まい」という価値観が、現在よりもはるかに強い時代がありました。そのため、古いマンションは、リビングの掃き出し窓をはじめ、窓が大きな傾向があります。
「窓の断熱性能の低さ」と「大きな窓面積」との掛け算で起こるのが、以下のような悪循環です。
・暖房してもすぐに寒く感じる
・エアコンの設定温度を上げがちになる
・結果として冷暖房光熱費がかさむ
■「室温は正常なのに、寒い」の正体
窓の断熱性能が低いと、何が起きるのか。
問題は、熱が流出することだけではありません。
断熱性能の低い窓は、冬場、表面温度が大きく下がります。
暖房されて上昇した暖気が窓で冷やされて重くなり、足元に降りてきます。この現象を「コールドドラフト」と言いますが、日本の住宅の足元が寒い最大の原因になっており、住まいの快適さを阻害する大きな要素になっています。
もう一つ、窓が厄介なのは、室温計には表れにくい形で寒さをつくり出す点です。
人は、空気の温度だけで暖かさや寒さを感じているわけではありません。窓や、壁・床・天井などの周囲の表面温度からも、強く影響を受けています。
これを専門的には、「冷輻射」といいますが、室内を暖房して十分な室温があっても、身体から窓に向かって熱が奪われ、寒く感じてしまいます。
この状態では、室温は温度計で測ると十分暖かいはずなのに、どうも寒い、底冷えがするという状態になるのです。
■寒さに弱い部屋の位置3つ
ここまで見てきたように、RCマンションの寒さ対策で最優先すべきなのは窓です。
これは、階数や方角、間取りなど、住戸の条件にかかわらず共通しています。
ただし、すべての住戸が同じように寒さを感じるわけではありません。
マンションの住戸を選ぶ際には、住戸の位置も実はとても重要です。具体的には、1階、最上階、角住戸は要注意です。
それぞれの弱点を見ていきましょう。
【1階】
1階の住戸は、床の下が地面やピロティ、駐車場になっているケースが多くあります。そのため、床の表面温度が下がりやすく、足元の冷えを感じやすくなります。
この場合でも、寒さの主因は窓であることが多いのですが、窓に加えて床の影響が無視できなくなるのが1階住戸の特徴です。
【最上階】
最上階では、天井の上が屋外や屋根に近い環境になります。
その結果、暖かい空気が上方向に逃げやすくなり、天井付近の寒さを感じることがあります。
また、反対に、夏は日射で天井面が熱くなり、天井面からの輻射熱で室内が室温以上に熱く感じられることがあります。
【角住戸】
また妻側の住戸(角住戸)も人気がありますが、断熱の観点では要注意です。
外気に接する面が増える分、窓の数や窓面積が大きくなりやすいからです。
つまり、妻側住戸の寒さは「壁が多いから」に加えて、窓が増えることで、熱の逃げ道が増えていることが主な理由になります。
■暖かくて安い“ねらい目”の位置
妻側の住戸や最上階の住戸は、人気があるため、価格も高くなります。
一方、上下・左右に住戸がある中住戸は、比較的リーズナブルになっています。
その上、外気に直接さらされている外壁は、玄関側とバルコニー側の2面だけなので、妻側や最上階の住戸に比べて、実はとても快適で、冷暖房光熱費も安く済みます。
中住戸は、人気があまりありませんが、実はねらい目なのです。
家選びも、リノベーションも、キッチンや浴室、内装デザインに目が向きがちです。もちろん、暮らしやすさや満足度の面では重要な要素です。
しかし、住んでからの快適性や光熱費を大きく左右するのは、見た目よりも断熱性能です。
とくにマンションの場合、構造そのものを変えることはできません。
壁や床、天井の断熱性能を大きく変えるには、大規模な断熱リノベ工事が必要になります。
だからこそ、こうした要素は慎重に選ぶ必要があります。
一方、窓は比較的リーズナブルに対策が取りやすい部位です。
窓の断熱性能を高めるだけでも、変化が、すぐに体感できます。
窓リノベで手に入る3つの効果
・寒さの感じ方が変わる
・暖房の効きがよくなる
・冷暖房光熱費の増加を抑えやすくなる
■リノベをするなら今年中がいい理由
「家が買えない時代」において、中古マンション購入と窓の断熱リノベは、現実的で賢い選択肢です。
後悔しない家選びに重要なのは、変えられない部分と、変えられる部分を知っておくこと。そして、手が入れやすく、リノベ効果の高い「窓」に関しては、購入時にその可能性についてきちんと確認しておくことです。
そして、アルミ単板ガラス、もしくはアルミペアガラスのサッシの場合には、できることなら、入居前にリノベを済ませておくと新生活への移行がスムーズです。
少し高いなと感じるかもしれませんが、マンション価格の高騰を鑑みれば、中古マンションの購入費用に比べて、窓の断熱リノベの費用は知れています。冒頭にお話しした、日本のRCマンションの基準を考えれば、元から窓の性能にこだわってマンションを選ぶよりも効率的と言えるでしょう。
健康・快適な暮らしのために、この費用はケチるべきではありません。
ちなみに、窓に関しては補助金が使えるというメリットもあります。
国は、「先進的窓リノベ事業」というかなり手厚い補助金事業を実施しています。条件にもよりますが、概ね5割程度の補助が得られる制度です。
内窓設置でかかる費用は、戸建かマンションか、また窓の数等により費用は変わりますが、75㎡程度のマンションの中住戸の場合は、1戸あたり50万円以下で収まります。
先進的窓リノベ事業を活用すれば、自己負担はだいたいこの半額の25万円程度です。
ただし、こうした大型補助は、永遠に続くわけではありません。
「先進的窓リノベ事業」は、当初今年度までの3カ年の事業の予定でしたが、2026年度も延長されることになりました。
今年度で、終了の可能性が高いため、中古マンションを購入した方だけでなく、現在の戸建住宅やマンションの寒さに悩んでいる方にも、ぜひ活用いただきたいと思います。
計画的に窓の断熱リノベを行い、快適な新生活を送っていただきたいと思います。
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高橋 彰(たかはし・あきら)
住まいるサポート社長/日本エネルギーパス協会広報室長/一般財団法人 ひと・住文化研究所理事
東京大学修士課程修了。リクルートビル事業部、UG都市建築、三和総合研究所、日本ERIなどで都市計画コンサルティングや省エネ住宅に関する制度設計等に携わった後、2018年に高気密・高断熱住宅の工務店を無料で紹介する「高性能な住まいの相談室」を運営する住まいるサポートを創業。著書に、『元気で賢い子どもが育つ! 病気にならない家』(クローバー出版)、『人生の質を向上させるデザイン性×高性能の住まい:建築家と創る高気密・高断熱住宅』(ゴマブックス)、『結露ゼロの家に住む! ~健康・快適・省エネ そしてお財布にもやさしい高性能住宅を叶える本~』などがある。
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(住まいるサポート社長/日本エネルギーパス協会広報室長/一般財団法人 ひと・住文化研究所理事 高橋 彰)

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